今回はDub Specialistのアルバム

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「Better Dub From Studio One」です。

Dub Specialistは本名Sylvan Morrisという人で、
このDub Specialist名でStudio Oneレーベルに
多くのダブを残した事で知られている人です。
この人がDub Specialist名でStudio Oneで活躍
したのは、70年半ばから後半にかけての時期
だったんですが、その後も本名のSylvan Morris
名で他のスタジオなどでミキサーとして活躍して
います。

レーベル特集 Studio One (スタジオ・ワン)

今回のアルバムは1974年にStudio Oneから
発表されたダブ・アルバムで、Dub Specialist
のStudio Oneでの代表作ともいえるアルバム
です。
手に入れたのはLPの中古盤でした。
CDが出ているかは調べたけれど、解りません
でした。

このアルバムには一つ表記の誤りがあります。
裏ジャケに書かれている曲の表記と、LPの盤面
に書かれている曲の表記が合っていないんですね。
具体的には裏ジャケに書かれているSide 1の曲目
がSide 2に書かれていて、Side 2の曲目がSide 1
に書かれています。
これは裏ジャケに書かれている表記が合って
います。
つまり盤面のSide 1とSide 2の表記は合っている
けれど、曲目は裏表逆なんですね。

Side 1が5曲、Side 2が6曲の全11曲。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

By Dub Specialist
All Tracks Published by Jamerec Music
Produced by C.S. Dodd
Recorded by: Jamaica Recording Studio

Cover Art & Design: O'neil Harris-Nanco

という記述があります。

今回のアルバムについて2003年リットー
ミュージック刊行の本「スカ・ディスク・ガイド」
には、「本根」さんという方の文章で次のような
記述があります。

「74年から5年くらいの間にトッドは、かつて
発売したマルチ・テープを引っ張り出し、ミットゥー
&リロイ・シブルスを軸とした、当時のハウス・
バンド、ブレントフォード・オール・スターズと
エンジニア、シルヴァン・モリスによるインスト
12タイトル出した。これはそのうちの1枚。歌
が抜かれたトラックのみを再演LPを延々と聴い
ていると、アメリカのファンクなんかより早い
時期から、(歌メロでなく)リズムにグルーヴの
軸が置かれていた事に驚く。」
(リットーミュージック刊行の本「スカ・ディスク・
ガイド」より「本根」さんという方の文章より)

Brentford All Starsはその後Soul Defenders→
Soul Vendors→Sound Demensionと発展して
行ったJackie MittooやLeroy Sibbles、Roland Alphonso
などを中心としたStudio Oneのハウス・バンド
の前身のバンドのようです。
こうしたバンドが活躍したのは、ジャマイカの
音楽がスカからロックステディに変わった60
年代後半の時期だったんですね。
そうしたロックステディから初期レゲエぐらい
までの音源を再利用して、今回のアルバムを
はじめとするアルバムが作られたようです。

ちなみにこの70年代の半ば頃になると、
C.S. Doddは一線から身を引いてStudio Oneの
仕事はSylvan Morrisに任せていたというのを、
Steve Barrow氏の著書「The Rough Guide To
Reggae」で読んだ記憶があります。
この70年代の半ばを過ぎると老舗レーベル
だったStudio Oneは徐々に勢いを失い、それに
替わってChannel Oneが一番勢いのあるレーベル
になって行くんですね。

さて今回のアルバムですが、Dub Specialist
ことSylvan MorrisのStudio Oneでの代表作
ともいえるアルバムで、内容はとても良いです。
彼の作るダブはあまり派手なエフェクトとかは
使っていないんですが、とても聴き心地の良さを
重視したシブいダブを作る人なんですね。
上に紹介した「本根」さんという方の文章にある
ように、まさにグルーヴ感を重視したダブを
作る人です。

この人、Lee Perryとか他のダブのクリエイター
と較べるとちょっと知名度に劣る印象があります
が、ダブ好きだったら絶対に押さえておいた方が
良い人だと思います。
その中でもこのアルバムは特に聴いておいた方が
良いアルバムだと思います。

ちなみに多くの販売サイトには、このアルバムの
B面の最後の曲「Gready G」に触れているものが
多かったです。
なんでもこの曲は、多くのヒップ・ホップ系の
アーティストなどにサンプリングされている曲
なんだとか。
その為に他ジャンルの人にも人気のアルバム
なんだそうです。

Side 1の1曲目は「Banana Walk」です。
Studio Oneのコンピュレーション・アルバムなど
でも取り上げられる、彼の代表曲のひとつです。
彼の音作りのウマさがよく解る1曲です。

Dub Specialist - Banana Walk


2曲目は「Quick Stick」です。
イントロを聴くとすぐに解る、Dawn Pennの
「No No No」のオケを使った曲です。
音の抜き差しのウマさがよく解る曲です。

3曲目は「Rub A String」です。
ロックステディ期の大スターKen Bootheの
「Puppet On A String」という曲を使った曲の
ようです。

4曲目は「Jamaica Back」です。
The Heptonesの「Heptones Gonna Fight」の
オケを使った曲のようです。

5曲目は「Ready Rock」です。
リディムは特定できませんでしたが、ロック
ステディ期らしいメロディの曲です。

Dub specialist - Ready rock


Side 2の1曲目は「Guiding Star」です。
リディムはLeroy Sibblesの「Guiding Star」
です。

2曲目は表題曲の「Better Dub」です。
この曲も「なんだっけ?」という聴き覚えの
ある曲なんですが…(笑)。
気持ちの良いグルーヴ感のある曲です。

Dub Specialist - Better Dub


3曲目は「Congo Call」です。
こちらはヴォーカルがちょっと入った曲です。

4曲目は「Never Rub A Dub」です。
Big Willeの「College Rock」という曲が
原曲のようです。
気持ちの良いノリがあります。

Dub Specialist - Never Rub A Dub


5曲目は「Dub Me Girl」です。
ホーンの出だしから、気持ちの良い演奏を
聴かせてくれる曲です。

6曲目は「Gready G」です。
ある意味ちょっとレゲエっぽくない、ファンクな
ノリのある曲です。
そのあたりが他ジャンルのアーティストにも
使い易かったのでしょう。

Dub Specialist - Gready G [Audio]


ざっと追いかけて来ましたが、意外と人気の曲
「Gready G」はこのアルバムの中では比較的
地味な曲です。
むしろその事が他のジャンルのアーティストには
サンプリングし易かったのかもしれません。
実際にこのアルバムが当時誰だけ売れたかは解り
ませんが、このアルバムが持つ濃厚なグルーヴ感
は今聴いてもとても魅力的です。

機会があればぜひ聴いてみてください。

(曲目の後にDub Specialistのほかのアルバムに
ついても載せておきます。)


○アーティスト: Dub Specialist
○アルバム: Better Dub From Studio One
○レーベル: Studio One
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1974

○Dub Specialist「Better Dub From Studio One」曲目
Side 1
1. Banana Walk
2. Quick Stick
3. Rub A String
4. Jamaica Back
5. Ready Rock
Side 2
1. Guiding Star
2. Better Dub
3. Congo Call
4. Never Rub A Dub
5. Dub Me Girl
6. Gready G


最後に私が今までに手に入れたDub Specialist
のアルバムを紹介しておきます。
このDub Specialistという人、やはり知名度が
イマイチだったのか名義が彼になっていない
アルバムなどもあり、意外と探しづらい人なん
ですね。
ただアルバムを知っていると、けっこう中古で
売っている事があるんですね。
そういう事なので、探す時の参考にアルバムを
紹介しておきます。

まずはBunny Wailerのダブアルバム「Dubd'sco
Vol. 1」です。

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Bunny Wailer - Dubd'sco Vol. 1 (1978) (LP)

え!?Bunny Wailer!?と思う人も居るかも
しれませんが、このアルバムのミックスが
Sylvan Morris(Dub Specialist)なんですね。
おそらくStudio Oneを離れてからの仕事だと
思いますが、音に遠近感がありとても美しい
ダブです。
おそらく彼Sylvan Morrisのベスト・ワークの
ひとつだと思います。
ちなみに「Dubd'sco」は「Vol. 2」も出て
いますが、そちらはミックスがDevid Hamilton
で、彼ではありません。

次に紹介するのはSoul Jazz Recordsから出て
いる「Studio Oneシリーズ」の2枚CD、

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Various - Studio One Dub (2004)

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Various - Studio One Dub Vol.2 (2007)

です。

こちらは名義が「Various(オムニバス)」と
なっていますが、
実質的にはDub Specialistのアルバムと思って
間違いありません。

次に紹介するのは、

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Dub Specialist - Version Dread (2006)

です。
こちらはHeartbeat Recordsから出ている
Studio One時代のアルバムの編集盤のようです。

次に紹介するのは、

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Dub Specialist - Juck's Incorporation (1976)

です。

こちらもタイトルのみで売られていたCDで、
Dub Specialistという名前は入っていません。

次に紹介するのは、Heartbeat Recordsから
出ている2枚のアルバム、

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Dub Specialist - Dub (2008)

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Dub Specialist - 17 Dub Shots From Studio One (1995)

です。
この2枚は2,3曲の違いはあるけれど、
ほぼ同じ内容のアルバムです。

他にDub Specialist名義ではありませんが、
ディージェイのLone Rangerのアルバム、

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Lone Ranger - On The Other Side Of Dub (1977)

は、全17曲のうち前半10曲がLone Rangerの
ディージェイ、後半7曲がDub Specialistのダブ
が収められています。

書いたように、名前は入っていなくても彼の
ダブ・アルバムというのはけっこうあるんですね。
こうしたアルバムを、たまに中古で見かける事が
あります。
アルバム探しの参考にしてください。

●今までアップしたDub Specialist(Sylvan Morris)関連の記事
〇Dub Specialist「17 Dub Shots From Studio One」
〇Dub Specialist「Dub」
〇Dub Specialist「Juck's Incorporation Part 1」
〇Dub Specialist「Version Dread: 18 Dub Hits From Studio One」
〇Various「Studio One Dub Vol. 2」
〇Various (Dub Specialist)「Studio One Dub Fire Special: Chapter Three 18 Heavyweight Dub Cuts From Brentford Road」
〇Various (Dub Specialist)「Studio One Dub」
〇Bunny Wailer「Dubd'sco Vol. 1」