今回はGlen BrownとKing Tubbyのアルバム

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「Big Dub: Glen Brown Meets King Tubby
15 Dubs From Lost Tapes」です。

Glen Brownはプロデューサー、メロディカ奏者
として知られている人です。
ただこの人は一時期Peter Toshの(おそらく
ツアーの)料理人をしていた事などがあるように、
プロデューサーとしてはマイナーな人だったよう
です。
おそらくお金を貯めてはシングル盤などを出す、
マイナーなプロデューサーだったようです。
そのせいか彼の曲は一度録音した曲を、何度も
何度も使い回している形跡が見られます。
それでも後になってレゲエ博士Steve Barrow氏
などから、その内容を再評価された人なんですね。
彼のアルバムは活躍していた70年代のものは
あまり無く、後に作られたコンピュレーション・
アルバムが多いです。

Glen Brown - Wikipedia

King Tubbyはレゲエを聴く人なら知らない人は
居ないくらい有名なダブのミキサーであり、
プロデューサーとしても活躍した人です。
ダブという音楽はレゲエという音楽が誕生した
70年代の初めごろに誕生した、エコーやリバーブ
などのエフェクトを多用して音楽を別の音楽に
作り変えてしまう音楽形式を言います。

ダブ - Wikipedia

誰が初めに作ったかは諸説あり本当には解って
いないのですが、ダブを完成したのはこのKing
Tubbyだと言われています。
リミックスの元祖だと言われるダブですが、今の
時代に聴かれる音楽はすべてこのKing Tubbyが
作ったと言われるほど、現代に通じる音楽を初め
に作ったのがこのKing Tubbyという人なんですね。

そんなKing Tubbyですが、1989年に自宅前で
何者かに銃殺されて亡くなっています。

アーティスト特集 King Tubby (キング・タビー)

今回のアルバムですが、2009年に日本の
Drum & Bass Recordsというレーベルから
「Rock A Shacka」シリーズの「Vol. 18 」と
して発売された、Glen Brownがプロデュース、
King Tubbyがミックスした曲を集めたコンピュ
レーション・アルバムです。
Sylford WalkerやBig Youthなど彼Glen Brown
がプロデュースしたシングルのB面に収められ
ていたヴァージョンのアウト・テイク集との
事です。

全15曲で収録時間は51分51秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Drums: Lloyd Adams, Carlton Barrett, Carlton 'Santa' Davis,
Winston Grennan, Lloyd Knibbs, Mikey 'Boo' Richards
Bass: Aston 'Familyman' Barrett, Jeffrey Chung, Val Douglas,
Jackie Jackson, Lloyd Parks, Robbie Shakespere
Keyboards: Gladstone Anderson, Glen Brown, Ansell Collins,
Earl Lindo, B.B. Seaton, Joe White, Winston Wright
Melodica: Glen Brown, Joe White
Guitar: Ronny 'Bop', Glen Brown, Hux Brown, Jeffrey Chung,
Mikey Chung, Eric Frater, Bertram 'Ranchie' McClean,
Lloyd Willis
Trombone: Vin Gordon, Carl Masters, Ron Willson
Tenor Sax: Carl Bryan, Richard Hall, Tommy McCook
Alto Sax: Lennox Brown
Flute: Tommy McCook
Percussion: Glen Brown, Bongo Herman, Denzil Laing, Skully Simms,
Uziah 'Sticky' Thompson

All Tracks Produced by Glen Brown
Mixed by King Tubby

となっています。

録音しているメンバーの数がすごく多いのは、
1曲1曲がシングルを録音するためにそのたびに
集められたメンバーだからじゃないかと思います。
顔ぶれを見るとスカの頃から活躍した人も混ざって
いるので、70年代の初めから中盤ぐらいまでに
録音された音源かと思います。

さて今回のアルバムですが、アウト・テイク集
という事もあるのか曲の一部だけを聴いていると
ドラムとベースのみがズンズンとリズムを奏でて
いるところなどもあり、正直ちょっと地味かなぁ
と思うところもあります。
ただそういう地味な部分も含めてこのGlen Brown
の飽くなき音楽愛、情熱が伝わって来るアルバム
なんですね。
内容は悪くないと思います。

1曲目は「Dubs Lives」です。
Bib Youthの「Opportunity Rock」のダブです。
元の曲と較べると野太いベースを中心とした、
ちょっと地味だけれど味わい深いダブになって
います。
この「Opportunity Rock」は、Hot Potレーベル
から出ているGlen Brownのコンピュレーション・
アルバム「Rhythm Master Volume One」に収め
られています。

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Glen Brown & Friends - Rhythm Master Volume One (2004)

2曲目は「Big Dub Rocks」です。
こちらはちょっと華やかに始まるダブですが、
それを支える重低音の効いたベースがやはり
魅力的です。

Glen Brown & King Tubby - Big Dub Rocks


3曲目は「Dread Dread Dub」です。
こちらはメロディを奏でるフルートが強い印象を
残す曲です。
インストやダブにおけるこのTommy McCookの
フルートは、アルバムの良い味付けになっている
事が多いんですよね。

4曲目は「Prince On Dub」です。
こちらはGlen Brownの唯一のヒット曲と言われる
「Merry Up」を使ったダブです。
この「Merry Up」はHot Potレーベルから出ている
Glen Brownのコンピュレーション・アルバム
「Rhythm Master Volume Two」に収められて
います。

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Glen Brown & Friends - Rhythm Master Volume Two (2005)

5曲目は「The Collie Man」です。
ホーンの出だしから刻むギターが絡む曲です。

Glen Brown & King Tubby - Collie Man


6曲目は「Dub Happening」です。
硬いドラミングが印象に残る、King Tubbyの
ダブワイズも最高にキマった1曲です。

Glen Brown & King Tubby - Dub Happening


7曲目は「Hit Me Forward」です。
ベースを中心としたゆったりしたリズムに、
エコーの効いたヴォーカルも入る曲です。
一見ユルいリズムにハード・コアがある、それが
この時代のレゲエの面白いところ、スゴいところ
なんですね。

8曲目は「Trouble Not Dub」です。
こちらもベースの効いたダブです。

9曲目は「Lets Dub」です。
こちらはギターが良い味を出しているダブです。

10曲目は「The Clean Dub」です。
男性のヴォーカル(ヴォイス)から入るベースを
基調としたダブです。
飄々とした感じがちょっと面白いところ。

11曲目は「Day After Dub」です。
こちらもベースを中心としたダブです。

12曲目は「Greatest Dub」です。
こちらはサックスやフルートをメインにした
スローなダブです。

13曲目は「Good Dub」です。
こちらもサックスを中心としたダブです。

14曲目は「Dub Special」です。
刻むリズムに乗せた濃厚なサックスが良い味を
出している曲です。
ムーディーでありながらコア、このルーツの時代
の魅力が堪能出来る曲です。

15曲目は「Falling Dub」です。
Glen BrownプロデュースのTommy McCookの
アルバム「The Sannic Sounds Of Tommy McCook」
に収められている「It Ain't Who You Know」の
別テイク、というかほとんど違いが解らない
曲です。
Tommy McCookというサックス奏者の魅力が、
全て詰まっているような1曲です。

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Tommy McCook - The Sannic Sounds Of Tommy McCook (1974)

ざっと追いかけて来ましたが、ちょっと地味ながら
内容はとても良いアルバムだと思いました。
特に最後の2曲14曲目「Dub Special」と15曲目
「Falling Dub」は、このアルバムの中でも特に
素晴らしい曲で、Glen Brownというプロデューサー
とTommy McCookというプレイヤーの相性の良さを
感じさせる曲です。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Glen Brown, King Tubby
○アルバム: Big Dub: Glen Brown Meets King Tubby
15 Dubs From Lost Tapes
○レーベル: Drum & Bass Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2009

○Glen Brown, King Tubby「Big Dub: Glen Brown Meets
King Tubby 15 Dubs From Lost Tapes」曲目
1. Dubs Lives
2. Big Dub Rocks
3. Dread Dread Dub
4. Prince On Dub
5. The Collie Man
6. Dub Happening
7. Hit Me Forward
8. Trouble Not Dub
9. Lets Dub
10. The Clean Dub
11. Day After Dub
12. Greatest Dub
13. Good Dub
14. Dub Special
15. Falling Dub

●今までアップしたGlen Brown関連の記事
〇Glen Brown & Friends「Rhythm Master Volume One」
〇Glen Brown & Friends「Rhythm Master Volume Two」
〇Glen Brown (Various)「Boat To Progress!: The Original Pantomine Vocal Collection 1970-74」
〇Glen Brown (Various)「Check The Winner: The Original Pantomine Instrumental Collection 1970-74」
〇Glen Brown (Various)「Dubble Attack: The Original Pantomine Dee-Jay Collection 1972-74」
〇Glen Brown And King Tubby「Termination Dub (1973-79)」
〇Tommy McCook「The Sannic Sounds Of Tommy McCook」