今回はMorwell UnlimitedとKing Tubbyのアルバム
「Morwell Unlimited Meets King Tubby: Dub Me」です。
ネットの販売サイトなどの情報によると、
Morwell UnlimitedはRoot Radicsの前身の
バンドという事です。
ただいろいろ調べてみると、今回のアルバムは
プロデュースがMorwell Recordsとなっている
ので、そのMorwell Recordsのバック・バンド
ぐらいの意味かもしれません。
この70年代当時はバック・バンドは固定では
なく、集まれるメンバーで録るプラスティック・
バンドの形式がジャマイカでは当たり前でした。
その為The AggrovatorsやThe Revolutionaries
と名前が違っていても、同じメンバーが両方の
バンドに入っていたり、抜けていたりといろいろ
変わっています。
バンド名というのはどのプロデューサーかどの
レーベルかという色分けの方が、意味合いが強い
んですね。
例えばThe Aggrovatorsといえばプロデューサー
のBunny Leeのバック・バンド、The Revolutionaries
といえばChannnel OneレーベルのHoo Kim兄弟の
バック・バンドといった具合です。
そういう風に考えるとこのMorwell Unlimitedは、
Morwell Recordsのバック・バンドというのが
正しいのかもしれません。
そのメンバーの中に後のRoot Radicsのメンバー
が多く含まれていたという事なんじゃないかと
思います。
King Tubbyはダブのクリエイター、ミキサーと
してとても有名な人です。
一説にはこのKing Tubbyが偶然の失敗からダブを
発明した(Bunny Lee説)とも言われています。
ダブというのは元の音楽のカラオケにエコーや
リバーヴなどのエフェクトをかけて、元の音楽
とは全く別の音楽に作り変えてしまう手法を
言います。
リミックスの元祖とも言われています。
ダブ - Wikipedia
70年代のルーツ・レゲエの時代に、そうした
今までにない新しい音楽を創造した人の一人が
このKing Tubbyだったんですね。
その後も活躍したKing Tubbyですが、89年に
何者かに自宅前で射殺されて亡くなっています。
アーティスト特集 King Tubby (キング・タビー)
今回のアルバムですが、そのMorwell Recordsの
3人組コーラス・グループThe Morwellsが
1975年に出したアルバム「Presenting The
Morwells」が元の音源のようで、制作年が不詳に
なっていますがおそらくその時期にMorwell Unlimited
の名前でダブ・アルバム「Dub Me」が発売されて
いるようです。
そのアルバム「Dub Me」をレゲエ・リイシュー・
レーベルBlood & Fireが、1997年にリイシュー
したのが今回のアルバムです。
リイシューに際してジャケットが変わったほか、
全10曲にプラスしてボーナス・トラックが
4曲追加されています。
全14曲で収録時間は44分47秒。
オリジナルは全10曲で、曲順も変わっている
ようです。
残りの4曲はCDボーナス・トラック。
ミュージシャンについては以下の記述があります。
Produced by Morwell Records
All Selections Written and Arranged by M. Wellington, E. Lamont, L. Davis
Published by Red Hills Music Limited
Tracks 1-13 Recorded at Channel One Studio 1974-75by E. Hookim
Tracks 14 Recorded at Black Ark Studio 1975
Tracks 1-10 Originally Released as 'Dub Me' Morwell Esq., Kingston 1975
Mixed at King Tubby's Studio by King Tubby 1975
Originally Mastered at Randy's Studio by Pat Kelly, Errol Thompson, C. Hamilton
Degital Restoration by Andy Walter
Musicians:
Drums: Eric 'Fish' Clarke
Bass: Erroll 'Flabba' Holt
Guitar: Eric 'Bingy Bunny' Lamont, Earl 'Chinna' Smith, Tony Chin
Piano: Theophilius 'Snappin' Beckford
Organ: Ansel Collins, Ossie Hibbert
Percussion: Uziah 'Sticky' Thompson, Shorty The President
Designed by David Smith
Photography by Beth Lesser
となっています。
確かにメンバーを見るとFlabbaやBingy Bunnyなど
後のRoot Radicsのメンバーが居て、「Root Radics
の前身」のグループというのは間違っていない
ところがあります。
さて今回のアルバムですが、これがなかなか面白い
アルバムです。
レゲエのダブ好きにとってはKing Tubbyというのは
絶対にはずせない人ですが、今回のアルバムには
え!?これがKing Tubby!??という意外性が
あります。
King Tubbyを聴いている人の持つ彼のイメージと
いうのは、音の輪郭をキレイになぞってより陰影を
強調するような職人的なダブを作る人のイメージ
だと思うのですが、今回のアルバムではかなり
荒々しい音を破壊するような強烈なダブを作って
います。
その意外性に初めはちょっとビックリします。
ただ聴き慣れて来ると、これがすごくカッコいい
ダブなんですね。
King Tubbyの引き出しの多さを感じるダブで、
彼のダブの中でも特に押さえておくべきダブの
ひとつかもしれません。
1曲目は「Sky Ride」です。
ベースとドラムを中心としたこの荒々しさには
ちょっとヤラレちゃいます。
ただ意外とのちの80年代のベースとドラムを
主体としたダブに通じる部分があるのも、
見逃せないところです。
2曲目は「Bald Head」です。
こちらも同じくベースを主体としたダブながら、
遠くで聞こえるようなヴォーカルが入っている
のが印象的。
荒々しいけど、計算されている?そんなサウンド
です。
Morwell Unlimited & King Tubby - Bald Head
3曲目は「Morwell's Star」です。
こちらもエコーの効いたサウンドの、かなり
トンがったダブです。
Morwell Unlimited & King Tubby - Morwell's Star
4曲目は「Jah Star」です。
こちらも3曲目の「Morwell's Star」とかなり
似たメロディ・ラインを持った曲です。
5曲目は「John Bull」です。
こちらもエコーのかかった強力なリズムに
ギターも絡んだ曲です。
Morwell Unlimited & King Tubby - John Bull
6曲目は「Lightning & Thunder」です。
こちらは雷のサウンドから始まる曲で、荒々しい
エフェクトに応えるようなディープ感のある
演奏の曲です。
Morwell Unlimited Meets King Tubby - Lightning & Thunder
7曲目は「Pegasus Rock」です。
こちらはベースを中心としたエコーのかかった
ダブです。
8曲目は「Morwell's Theme」です。
こちらも重いベースがズンと腹に響くダブです。
9曲目は「Concord」です。
こちらは少し歌が入ったダブで、雷のエフェクト
が効果的に使われています。
その後はベースを中心としたダブになる展開です。
10曲目は「Jungle Shuffle」です。
こちらもベースがズンズンと押してくるダブです。
あとはボーナス・トラックなので割愛しますが、
ここにはKing Tubbyのイメージを覆すような
ちょっと荒々しいダブが収められています。
けれどもそういうダブを作っても素晴らしいダブ
が作れてしまう、それこそがKing Tubbyの凄さ
なのかもしれません。
ただこういうダブは多くのダブのクリエイターが
作りたいと思うダブなんですね。
おそらくそういうクリエイターと競り合っても、
彼のダブは人より1枚上を行っていたと思います。
それはこのダブが証明しています。
ただ彼はその道よりも、他のダブのクリエイターが
作れないような細かい細部まで心の行き届いたダブ
を作る道を作る道を選んだのかもしれません。
その選択がこの70年代に、多くのプロデューサー
が彼にダブの制作を依頼するようになった大きな
理由なのでしょう。
間違いなくこのダブという音楽を完成させたのは、
この偉大なるダブ・マスターKing Tubbyなのです
から…。
このアルバムはその彼がどれほど偉大だった
のかを、あらためて思い知らされるような
アルバムです。
機会があればぜひ聴いてみてください。
○アーティスト: Morwell Unlimited, King Tubby
○アルバム: Morwell Unlimited Meets King Tubby: Dub Me
○レーベル: Blood & Fire
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1997
○Morwell Unlimited, King Tubby「Morwell Unlimited
Meets King Tubby: Dub Me」曲目
1. Sky Ride
2. Bald Head
3. Morwell's Star
4. Jah Star
5. John Bull
6. Lightning & Thunder
7. Pegasus Rock
8. Morwell's Theme
9. Concord
10. Jungle Shuffle
Re-issue Bonus Tracks
11. Swing & Dub
12. Morpheus Special
13. Ethiopians Special
14. Stepping In HQ
●今までアップしたMorwells (Morwell Unlimited)関連の記事
〇Morwells「Crab Race」
「Morwell Unlimited Meets King Tubby: Dub Me」です。
ネットの販売サイトなどの情報によると、
Morwell UnlimitedはRoot Radicsの前身の
バンドという事です。
ただいろいろ調べてみると、今回のアルバムは
プロデュースがMorwell Recordsとなっている
ので、そのMorwell Recordsのバック・バンド
ぐらいの意味かもしれません。
この70年代当時はバック・バンドは固定では
なく、集まれるメンバーで録るプラスティック・
バンドの形式がジャマイカでは当たり前でした。
その為The AggrovatorsやThe Revolutionaries
と名前が違っていても、同じメンバーが両方の
バンドに入っていたり、抜けていたりといろいろ
変わっています。
バンド名というのはどのプロデューサーかどの
レーベルかという色分けの方が、意味合いが強い
んですね。
例えばThe Aggrovatorsといえばプロデューサー
のBunny Leeのバック・バンド、The Revolutionaries
といえばChannnel OneレーベルのHoo Kim兄弟の
バック・バンドといった具合です。
そういう風に考えるとこのMorwell Unlimitedは、
Morwell Recordsのバック・バンドというのが
正しいのかもしれません。
そのメンバーの中に後のRoot Radicsのメンバー
が多く含まれていたという事なんじゃないかと
思います。
King Tubbyはダブのクリエイター、ミキサーと
してとても有名な人です。
一説にはこのKing Tubbyが偶然の失敗からダブを
発明した(Bunny Lee説)とも言われています。
ダブというのは元の音楽のカラオケにエコーや
リバーヴなどのエフェクトをかけて、元の音楽
とは全く別の音楽に作り変えてしまう手法を
言います。
リミックスの元祖とも言われています。
ダブ - Wikipedia
70年代のルーツ・レゲエの時代に、そうした
今までにない新しい音楽を創造した人の一人が
このKing Tubbyだったんですね。
その後も活躍したKing Tubbyですが、89年に
何者かに自宅前で射殺されて亡くなっています。
アーティスト特集 King Tubby (キング・タビー)
今回のアルバムですが、そのMorwell Recordsの
3人組コーラス・グループThe Morwellsが
1975年に出したアルバム「Presenting The
Morwells」が元の音源のようで、制作年が不詳に
なっていますがおそらくその時期にMorwell Unlimited
の名前でダブ・アルバム「Dub Me」が発売されて
いるようです。
そのアルバム「Dub Me」をレゲエ・リイシュー・
レーベルBlood & Fireが、1997年にリイシュー
したのが今回のアルバムです。
リイシューに際してジャケットが変わったほか、
全10曲にプラスしてボーナス・トラックが
4曲追加されています。
全14曲で収録時間は44分47秒。
オリジナルは全10曲で、曲順も変わっている
ようです。
残りの4曲はCDボーナス・トラック。
ミュージシャンについては以下の記述があります。
Produced by Morwell Records
All Selections Written and Arranged by M. Wellington, E. Lamont, L. Davis
Published by Red Hills Music Limited
Tracks 1-13 Recorded at Channel One Studio 1974-75by E. Hookim
Tracks 14 Recorded at Black Ark Studio 1975
Tracks 1-10 Originally Released as 'Dub Me' Morwell Esq., Kingston 1975
Mixed at King Tubby's Studio by King Tubby 1975
Originally Mastered at Randy's Studio by Pat Kelly, Errol Thompson, C. Hamilton
Degital Restoration by Andy Walter
Musicians:
Drums: Eric 'Fish' Clarke
Bass: Erroll 'Flabba' Holt
Guitar: Eric 'Bingy Bunny' Lamont, Earl 'Chinna' Smith, Tony Chin
Piano: Theophilius 'Snappin' Beckford
Organ: Ansel Collins, Ossie Hibbert
Percussion: Uziah 'Sticky' Thompson, Shorty The President
Designed by David Smith
Photography by Beth Lesser
となっています。
確かにメンバーを見るとFlabbaやBingy Bunnyなど
後のRoot Radicsのメンバーが居て、「Root Radics
の前身」のグループというのは間違っていない
ところがあります。
さて今回のアルバムですが、これがなかなか面白い
アルバムです。
レゲエのダブ好きにとってはKing Tubbyというのは
絶対にはずせない人ですが、今回のアルバムには
え!?これがKing Tubby!??という意外性が
あります。
King Tubbyを聴いている人の持つ彼のイメージと
いうのは、音の輪郭をキレイになぞってより陰影を
強調するような職人的なダブを作る人のイメージ
だと思うのですが、今回のアルバムではかなり
荒々しい音を破壊するような強烈なダブを作って
います。
その意外性に初めはちょっとビックリします。
ただ聴き慣れて来ると、これがすごくカッコいい
ダブなんですね。
King Tubbyの引き出しの多さを感じるダブで、
彼のダブの中でも特に押さえておくべきダブの
ひとつかもしれません。
1曲目は「Sky Ride」です。
ベースとドラムを中心としたこの荒々しさには
ちょっとヤラレちゃいます。
ただ意外とのちの80年代のベースとドラムを
主体としたダブに通じる部分があるのも、
見逃せないところです。
2曲目は「Bald Head」です。
こちらも同じくベースを主体としたダブながら、
遠くで聞こえるようなヴォーカルが入っている
のが印象的。
荒々しいけど、計算されている?そんなサウンド
です。
Morwell Unlimited & King Tubby - Bald Head
3曲目は「Morwell's Star」です。
こちらもエコーの効いたサウンドの、かなり
トンがったダブです。
Morwell Unlimited & King Tubby - Morwell's Star
4曲目は「Jah Star」です。
こちらも3曲目の「Morwell's Star」とかなり
似たメロディ・ラインを持った曲です。
5曲目は「John Bull」です。
こちらもエコーのかかった強力なリズムに
ギターも絡んだ曲です。
Morwell Unlimited & King Tubby - John Bull
6曲目は「Lightning & Thunder」です。
こちらは雷のサウンドから始まる曲で、荒々しい
エフェクトに応えるようなディープ感のある
演奏の曲です。
Morwell Unlimited Meets King Tubby - Lightning & Thunder
7曲目は「Pegasus Rock」です。
こちらはベースを中心としたエコーのかかった
ダブです。
8曲目は「Morwell's Theme」です。
こちらも重いベースがズンと腹に響くダブです。
9曲目は「Concord」です。
こちらは少し歌が入ったダブで、雷のエフェクト
が効果的に使われています。
その後はベースを中心としたダブになる展開です。
10曲目は「Jungle Shuffle」です。
こちらもベースがズンズンと押してくるダブです。
あとはボーナス・トラックなので割愛しますが、
ここにはKing Tubbyのイメージを覆すような
ちょっと荒々しいダブが収められています。
けれどもそういうダブを作っても素晴らしいダブ
が作れてしまう、それこそがKing Tubbyの凄さ
なのかもしれません。
ただこういうダブは多くのダブのクリエイターが
作りたいと思うダブなんですね。
おそらくそういうクリエイターと競り合っても、
彼のダブは人より1枚上を行っていたと思います。
それはこのダブが証明しています。
ただ彼はその道よりも、他のダブのクリエイターが
作れないような細かい細部まで心の行き届いたダブ
を作る道を作る道を選んだのかもしれません。
その選択がこの70年代に、多くのプロデューサー
が彼にダブの制作を依頼するようになった大きな
理由なのでしょう。
間違いなくこのダブという音楽を完成させたのは、
この偉大なるダブ・マスターKing Tubbyなのです
から…。
このアルバムはその彼がどれほど偉大だった
のかを、あらためて思い知らされるような
アルバムです。
機会があればぜひ聴いてみてください。
○アーティスト: Morwell Unlimited, King Tubby
○アルバム: Morwell Unlimited Meets King Tubby: Dub Me
○レーベル: Blood & Fire
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1997
○Morwell Unlimited, King Tubby「Morwell Unlimited
Meets King Tubby: Dub Me」曲目
1. Sky Ride
2. Bald Head
3. Morwell's Star
4. Jah Star
5. John Bull
6. Lightning & Thunder
7. Pegasus Rock
8. Morwell's Theme
9. Concord
10. Jungle Shuffle
Re-issue Bonus Tracks
11. Swing & Dub
12. Morpheus Special
13. Ethiopians Special
14. Stepping In HQ
●今までアップしたMorwells (Morwell Unlimited)関連の記事
〇Morwells「Crab Race」
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