今回はMad Professorのアルバム

mad_professor_13a

「Evolution Of Dub: Black Liberation Dub, Chapter 3」です。

Mad Professorは80年代からイギリスにある
自分のスタジオAriwaを拠点に活動を続ける、
プロデューサーでありダブのクリエイターである
人です。
プロデューサーとしてはSandra CrossやKofi
などラヴァーズロック・レゲエのアーティスト
のプロデュースや、JamiroquaiやBeastie Boys、
Rancidといった他ジャンルのアーティストまで
幅広いプロデュースを手掛けています。
またダブのクリエイターとしては、「Dub Me Crazy」
シリーズや「Black Liberation Dub」シリーズ
など多くのダブを作り続けている事でも知られて
います。

mad_professor_02a
Mad Professor - Dub Me Crazy (1982)

レーベル特集 Ariwa (アリワ)

今回の作品は1996年に作られたアルバムです。
1982年から始まった「Dub Me Crazy」シリーズ
は、93年までに計12作を作成しています。
その翌年の94年から始まったのが「Black Liberation
Dub」シリーズで、今回のアルバムはその第3作目
となります。

mad_professor_12a
Mad Professor - Black Liberation Dub Chapter One (1994)

ちなみにこの「Black Liberation Dub」シリーズは、
98年までに5作が作られています。

mad_professor_03a
Mad Professor ‎– Afrocentric Dub: Black Liberation Dub Chapter 5 (1998)

全11曲で収録時間は46分21秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Mixed & Produced by Mad Professor
Recorded & Mixed at Ariwa Studios

Drums: Sinclair, Fluxy, Mad Prof.
Bass: Eddie, Mafia, William
Keyboards: Victor, Mafia, William
Guitars: Black Steel
Violin: Ina
Singers: Horace Andy, Kofi, Comforte
Voices: Louis Farakhan, Lee Perry, Mad Prof. Kofi

となっています。

いつものAriwaのメンバーの他に「Singers」で
Horace Andy、「Voices」でLee Perryの名前が
あります。
Mad Professorがプロデュースした彼らのアルバムが
元の音源として使われたようです。
ちなみにHorace Andyは1995年に「Life Is For
Living」というアルバムを、Lee Perryは1995年に
「Black Ark Experryments」と「Super Ape Inna
Jungle」、1996年に「Dub Take The Voodoo Out
Of Reggae」というアルバムをAriwaから出しています。

lee_perry_08a
Lee Perry Feat. Mad Professor / Douggie Digital / Juggler ‎– Super Ape Inna Jungle (1995)

さて今回のアルバムですが、内容的にはヴァイオリン
が使われていたりして、サウンド的になかなか
面白いアルバムに仕上がっていると思います。

この「Black Liberation Dub」シリーズですが、
「Black Liberation」を自動翻訳で翻訳してみると
「黒人解放」という意味のようで、ちょっと
プロテストの意味を込めたダブのシリーズという
事になりそうです。
ガイアナ人である彼Mad Professorは、80年に
始まった「Dub Me Crazy」シリーズではプロテスト
というよりは冷笑的な態度を貫いて居た印象が
あるのですが、この90年代に入るとレゲエでも
廃れ始めたプロテスト色の強いダブを作り始める
んですね。
第1作目の「Chapter One」では、サウンドもかなり
ルーツ色の強いものになっていました。
ただこの3作目になるとサウンドはかなり遊び心の
溢れたMad Professorらしいサウンドに戻って来て
いるんですね。
そのもっとも象徴的なのが、レゲエではあまり
使われないヴァイオリンが使われている点です。
このレゲエという音楽にこだわらない自由度が、
このMad Professorの真骨頂といえます。

1曲目は「Harder Than Babylon」です。
こちらはホーンが入った比較的ルーツ色の強い
ダブです。
冒頭に今回のテーマである「This Is Evolution
Of Dub」という言葉(Lee Perryか?)が挿入
されています。

Dub Reggae Music - Harder Than Babylon


2曲目は「No Man's Land」です。
こちらはクールな音使いに、いかにもMad Professor
といった魅力を感じるダブです。
この無限ともいえるイマジネーション…それが
このMad Professorという人の魅力なんですね。

Mad Professor No Man's Land


3曲目は「Kunte 96」です。
流行したテレビドラマ「ルーツ」の主人公Kunte Kinte
(クンタ・キンテ)をテーマにしたダブです。
アフリカから「黒人奴隷」として連れて来られた
主人公が苦難の抵抗の道を歩むこのドラマは多くの
人の支持を受け、それとともに徐々に白人優位
だった世の中も変わってきたんですね。

4曲目は「Solar System」です。
こちらはレゲエではあまり使われる事の無かった
ヴァイオリンを用いた、いかにもMad Professor
らしい1曲です。

mad professor - solar system


5曲目は「Kathmandu Dub」です。
こちらはエコーのかかったディープ感のあるダブ。

6曲目は「Cultural Explosion」です。
こちらも「This Is Evolution Of Dub」という
言葉が挿入された、軽快なギターが印象的な
ダブです。

7曲目は「Gringo Dead」です。
こちらはベースとギターを中心としたダブ。

9曲目は「Village Gossip」です。
こちらもヴァイオリンが挿入されたダブで、
4曲目とはまた異質な空間を作っています。

Dub Reggae Music - Village Gossip


10曲目は「Atonement Dub」です。
これまたヴァイオリン使いが面白いダブです。
ひとつの楽器で無限の広がりを作って行ける
ところに、このMad Professorの突出した
プロデュース力を感じます。

11曲目は「Kiwi Culture」です。
気持ち良いギターを中心としたダブです。

ざっと追いかけて来ましたが、いかにもMad
Professorといった遊び心溢れたダブだと
思います。
いつも驚くのはこの人にはアイディアが尽きる
という事が無いんですね。
いつも何かたらしいイマジネーションに満ちて
いる、それがこのMad Professorのダブです。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Mad Professor
○アルバム: Evolution Of Dub: Black Liberation Dub, Chapter 3
○レーベル: Ariwa
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1996

○Mad Professor「Evolution Of Dub:
Black Liberation Dub, Chapter 3」曲目
1. Harder Than Babylon
2. No Man's Land
3. Kunte 96
4. Solar System
5. Kathmandu Dub
6. Cultural Explosion
7. Gringo Dead
8. Cosmic Ray
9. Village Gossip
10. Atonement Dub
11. Kiwi Culture