今回はThe Congos & Friendsのアルバム

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「Fisherman Style」です。

The Congosは1977年にLee Perryプロデュース
のアルバム「Heart Of The Congos」でデビュー
した、リード・ヴォーカルのCedric Mytonの
ファルセット・ヴォイスが印象的なルーツ・
コーラス・グループです。

コンゴス - Wikipedia

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The Congos - Heart Of The Congos (1977)

今回のアルバムは2006年にレゲエ・リイシュー・
レーベルBlood & Fireから発売されたアルバムで、
そのThe Congosのデビュー・アルバム「Heart Of
The Congos」にも入っている代表曲「Fisherman」
のリディムだけを集めたCD2枚組のワンウェイ・
アルバムです。
ネットの情報によると、曲は2005年に再録
されたのもので、ミックスはベルリンのRhythm And
Soundが担当しているそうです。
参加アーティストはThe Congosのほか、Big Youth、
Horace Andy、Max Romeo、Freddie McGregor、U Roy、
Sugar Minottなど、かなり豪華なメンツが揃って
います。

CD 1は全12曲で収録時間は44分28秒。
CD 2は全12曲で収録時間は42分46秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Musicians:
Drums: Paul Douglas
Bass: Geoffrey Chung
Guitar: Robert 'Billy' Johnson
Organ: Winston Wright
Piano: Keith Sterling
Percussion: Uziah 'Sticky' Thompson, Lee 'Scratch' Perry
Vocals: Cedric Myton, Roydel Johnson, Watty Burnett

となっています。

このメンバーは「1977」となっているので、
The Congosの「Heart Of The Congos」の録音時
のオリジナル・メンバーと考えられます。
その元の録音に2005年に、ヴォーカルや
別のサウンドを足してミックスし直したのが
今回のアルバムという事らしいです。

さて今回のアルバムですが、ワンウェイ・アルバム
の面白さが、うまくまとめられたアルバムだと
思います。
収められているアーティストはThe Congosをはじめ、
Big Youth、Horace Andy、Max Romeo、Tony Tuff、
Prince Jazzbo、Freddie McGregor、Dean Frazer、
U Roy、Sugar Minott、Dillinger、Mykal Rose、
Luciano、Lutan Fyah、Paul St. Hilaire、
Country Culture、Early One、MacLaw、Mr. Raggamonica、
Gregory Isaacs、Lucan I、Al Pancho、The Upsetters
と多彩です。
2005年の録音なので、さすがに70~80年代
を中心に聴いている私の知らないアーティストも
けっこう居ますが、ベテランから今活躍している人、
歌からディージェイ、インストと幅広く取り揃え
られていて、なかなか面白いアルバムだと思います。

やはり一番印象に残るのは、たったひとつの楽曲
でもこれだけ多才なイメージの広がりがあると
いう事です。
レゲエというのは、それが20年以上前のクラシック・
リディムでも、何度でも何度でも再生して使い回す
音楽ですが、それを可能にしているのは作り手の
果てしないイマジネーションなんですね。
たとえ古いリディムでも、常に新しいイメージを
盛り込んでいく。
それがあるから古いリディムでも、常に新鮮に
聴く事が出来るんですね。

今回のアルバムは2005年に作られたアルバム
ですが、28年前の1977年に作られた楽曲
「Fisherman」を、それぞれの歌手がそれぞれの
解釈で新しい楽曲に生まれ変わらせています。
同じ曲を24回聴いても楽しめてしまうのは、
その楽曲にそれぞれに盛り込まれたものがあるから
なんですね。
それがこのアルバムの一番の面白さでもあります。

CD 1の1曲目はThe Congosの「Fisherman」です。
言わずと知れたThe Congosの大ヒット曲。
Lee Perryプロデュースのこの曲は、30年以上
経った今聴いても秘めた魔力のようなものが
あります。
ルーツ・レゲエを代表する1曲と言っても
過言ではないでしょう。
Cedric Mytonのファルセットが本当に魅力的な
1曲です。

The Congos - Fisherman


2曲目はBig Youthの「Feed A Nation」です。
ルーツ・レゲエ以降は時代の波に乗り切れなかった
硬派ディージェイのBig Youthですが、やっぱり
ルーツ曲を歌わせたらこの人の世界観に敵う人は
そうは居ないディージェイなんですね。
独自の世界を「Fisherman」に乗せて来るトースティング
がキマっています。

Big Youth - Feed The Nation


3曲目はHorace Andyの「Love Love Love」です。
国民的歌手とまで言われたHorace Andyですが、
この曲出は抑え気味のヴォーカルが光ります。
3曲聴いただけでもまったく違う「Fisherman」
というところに彼らのスキルの高さがはっきりと
解るんですね。

4曲目はMax Romeoの「Give Praises」です。
こちらもMax Romeoによる聴きどころ満点の
Jah賛歌です。

Max Romeo & The Congos - Give Praises


5曲目はTony Tuffの「Master Builder」です。
こちらもCedric Mytonと思われるコーラス・ワーク
の入った魅力的な曲です。

6曲目はPrince Jazzboの「Live Good Today」です。
こちらもルーツ・ディージェイとしての彼の魅力が
よく出た1曲です。

7曲目はFreddie McGregorの「Man Should Know」
です。
名シンガーといわれた彼の一言一言を丁寧に歌う
歌いぶりが印象に残る1曲です。

8曲目はDean Frazerの「Fisherman's Anthem」
です。
ダンスホールの時代になるとインストはあまり
聴かれなくなって来るのですが、その中でも一人
頑張ったサックス奏者の渾身の1曲です。

Dean Fraser - Fishermans Anthem


9曲目はU Royの「Fisherman Style」です。
ディージェイを発明した人U Royの、彼らしい
余裕のある1曲です。

10曲目はSugar Minottの「Captain Of The Ship」
です。
多くんレゲエ・ミュージシャンから尊敬を集め
兄貴と呼ばれた彼のヴォーカルの魅力がよく解る
1曲です。

11曲目はDillingerの「Row Fast」です。
ステッパー・スタイルが人気を博したこのディージェイ
の彼らしさが出た1曲です。

12曲目はMykal Roseの「Let Your Love」です。
おそらくBlack Uhuruのリード・ヴォーカルを
務めたMichael Roseだと思うのですが、CD 1の
トリを務めるだけあって堂々たるヴォーカルの
1曲です。

CD 2はルーツ・レゲエの時代より後のアーティスト
の曲が、多く収められています。
もちろんルーツ・アーティストの歌う「Fisherman」
はとても魅力的なのですが、あえてさらに後の世代の
アーティストの歌う「Fisherman」を盛り込んでいる
ところにこのアルバムの「愛」を感じるんですね。
その期待に応えて、多くのアーティストが遜色の
ない歌声を聴かせています。

CD 2の1曲目はLucianoの「Going Home」です。
もはや大物シンガーともいえるLucianoですが、
説得力のある歌声を聴かせています。

2曲目はLutan Fyahの「Feed A Nation」です。
この人はディージェイのようで、味のある
トースティングを聴かせています。

3曲目はPaul St. Hilaireの「Carthage」です。
Paul St. Hilaireは別名Tikimanというヴォーカリスト。
こちらはシングジェイ・スタイルか?

4曲目はCountry Cultureの「Make Poverty History」
です。
こちらもディージェイでまた違う個性の落ち着いた
トースティングの1曲。

5曲目はEarly Oneの「Jig Jig Jig」です。
こちらもディージェイものです。

6曲目はMacLawの「Nuh Worry Your Mind」
です。
こちらもディージェイですが、2~6曲目まで
ディージェイが続いてもそれぞれに個性が違う
のが、このレゲエという音楽の面白いところです。

7曲目はMr. Raggamonicaの「Fisherman Melody」
です。
このMr. Raggamonicaはメロディカの演奏者の
ようです。
やっぱりメロディカの「Fisherman」は、シビレる
ものがあります。

Mr Raggamonica - Fisherman Melody


8曲目はGregory Isaacsの「Spot And Beat
The Bank」です。
ベテラン・シンガーらしい落ち着いた歌いぶり
の1曲です。

9曲目はRicky Chaplinの「Behold Jah Live」
です。
こちらのディージェイものの1曲。

10曲目はLucan Iの「Nine To Five」です。
こちらもシングジェイに近い歌いっぷりの1曲
です。

11曲目はAl Panchoの「Enjoy Your Blessings」
です。
こちらもディージェイものの1曲です。

トリの12曲目はThe Upsettersの「Bring The
Mackaback」です。
こちらはバックのThe Upsettersによるダブ。

ざっと追いかけて来ましたが、同じ「Fisherman」
のリディムでありながらそのアーティストによって
また別の曲になっているところが、このアルバム
の面白いところです。
こういう楽しみ方も、またレゲエらしい遊びの
精神にあふれた楽しみ方なんですね。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: The Congos & Friends
○アルバム: Fisherman Style
○レーベル: Blood & Fire
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2006

○The Congos & Friends「Fisherman Style」曲目
CD 1
1. Fisherman [Edit] - The Congos
2. Feed A Nation - Big Youth
3. Love Love Love - Horace Andy
4. Give Praises - Max Romeo
5. Master Builder - Tony Tuff
6. Live Good Today - Prince Jazzbo
7. Man Should Know - Freddie McGregor
8. Fisherman's Anthem - Dean Frazer
9. Fisherman Style - U Roy
10. Captain Of The Ship - Sugar Minott
11. Row Fast - Dillinger
12. Let Your Love - Mykal Rose

CD 2
1. Going Home - Luciano
2. Whitewash Walls - Lutan Fyah
3. Carthage - Paul St. Hilaire
4. Make Poverty History - Country Culture
5. Jig Jig Jig - Early One
6. Nuh Worry Your Mind - MacLaw
7. Fisherman Melody - Mr. Raggamonica
8. Spot And Beat The Bank - Gregory Isaacs
9. Behold Jah Live - Ricky Chaplin
10. Nine To Five - Lucan I
11. Enjoy Your Blessings - Al Pancho
12. Bring The Mackaback [Dub] - The Upsetters