今回はMad Professorのアルバム

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「Black Liberation Dub Chapter One」です。

Mad Professorは80年代からイギリスの自分の
スタジオAriwaを拠点に活動を続けるプロデューサー
であり、ダブのクリエイターである人です。
プロデューサーとしてはSandra Crossなど多くの
ラヴァーズロック・レゲエのアーティストの
プロデュースや、Massive AttackやJamiroquaiなど
他ジャンルのアーティストのプロデュースまで
幅広いアーティストをプロデュースしています。
また「Dub Me Crazy」シリーズや今回取り上げた
「Black Liberation Dub」シリーズなどの数多く
のダブを作った事でもよく知られています。

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Mad Professor - Dub Me Crazy (1982)

レーベル特集 Ariwa (アリワ)

今回のアルバムですが、1994年の作品です。
彼の一番の代表作「Dub Me Crazy」シリーズは
第1作が82年に作られており、その後93年に
第12作まで作られています。
祖語に始まったシリーズがこの「Black Liberation
Dub」シリーズなんですね。
このアルバムはその第1作目です。
このシリーズはその後98年の「Afrocentric Dub:
Black Liberation Dub Chapter 5」まで5作が
作られているようです。

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Mad Professor ‎– Afrocentric Dub: Black Liberation Dub Chapter 5 (1998)

ちなみに「Black Liberation」とは、ネットの
自動翻訳で翻訳してみると「黒人解放」という
意味らしいです。
ガイアナ人である彼Mad Professorは、ジャマイカの
アーティストなどと較べるとそれまではあまり
プロテスト色を前面に打ち出した作品は作って
いないのですが、ここに来てそうした作品を作り
始めるんですね。
イギリスで暮らす中で、そういう心の変化が
あったのでしょうか?
このシリーズは彼の作品の中では、比較的
ルーツ色の強いサウンドの傾向があります。

全12曲で収録時間は45分14秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Produced & Mixed by Mad Professor
Recorded & Mixed at Ariwa Sounds

Drums: Drumtan Ward, Robotiks
Bass: Preacher, William, Eddie, Victor
Keyboards: Victor Cross, William
Guitars: Marley, Steel
Hornes: Dean Fraser, Chico, Nambo
Percussion: Drumtan Ward
Vocals: Drumtan, Steve Laing, Shaloma,
Princess Sharifa, Tucker Rainbow, Aisha

Design / Illustration: Cracker Brukout

となっています。

Ariwaレーベルで活躍する多くのメンバーが参加
しています。

ヴォーカルに名前が多いのは、彼がプロデュース
した多くのアルバムから音源を拾ってきている
からのようです。

ホーンにDean FraserとChico、Namboが参加して
います。
今回のアルバムではこのホーンがサウンドに
うまく厚みを付けていて、それが結果的に
ルーツ色を感じるサウンドを作り上げている
ような気がします。

Mad Professorというと「デジタル・ダブ」という
イメージのある人ですが、ネットにあったインタビュー
などを読むと、実はデジタルなサウンドが嫌いで
自身のスタジオAriwa Soundsにはアナログの機材を
揃えているそうです。
そこで自分の好みのMad Professorのサウンドを
作り上げているんですね。
そういう目で今回のアルバムなどを聴くと、確かに
音に表情があって無機質な感じがあまりありません。
とのディテールにこだわった音作りをしている人
なんですね。

1曲目は「Psychological Warfare」です。
イントロの男性のメッセージからホーンを主体と
したリズムという展開です。

2曲目は「Black Liberation Dub」です。
表題曲にもなっているこの曲ですが、こちらも
頭に男性のメッセージが入り淡々と刻むリズムに
シンセサイザーという構成の曲です。
このあたりはいかにもMad Professorという
クールなダブです。

Black Liberation Dub


3曲目は「Riot In Capetown」です。
こちらも男性の声からのクールなホーン・ダブ
という体裁の曲です。

Mad Professor - Riot In Capetown


4曲目は「Slavery 21st Century」です。
こちらは優しい女性ヴォーカルからホーンという
展開の曲です。

5曲目は「Freedom Must Be Taken」です。
こちらは男性ヴォーカルも少し入ったベースを
主体としたダブです。

Mad Professor - Freedom Must Be Taken


6曲目は「Chip On The Slave Master Shoulder」
です。
木琴のような面白い音を中心に組み立てられた
淡々としたダブです。

7曲目は「When Revolution Comes」です。
こちらもホーンを中心とした演奏です。

8曲目は「Black Skins White Minds」です。
華やかなホーンのサウンドを中心とした演奏
ながら、どこか冷めた感覚があるのがこの
Mad Professorらしい個性です。

Mad Professor--Black Skin White Minds


9曲目は「Tribal Dub」です。
冒頭にエコーの効いた女性ヴォーカルが入る曲。
このヴォーカルはAishaのようで、原曲は彼女の
「Only Jah Works」という曲のようです。

11曲目は「Medicine Doctor」です。
淡々としたリズムを刻むダブ。

12曲目は「Colonial Mentality」です。
こちらの音の出し入れで作っているような
クールなダブです。

ざっと見て来ましたが、タイトルには「Black
Liberation」をはじめ「Riot(暴動)」や「Slave
Master(奴隷監督)」「Revolution(革命)」
「Black Skin」などの言葉が並びます。
「Dub Me Crazy」シリーズの頃は政治的という
よりは冷笑的なスタンスを取っていたようなイメージ
のあるMad Professorですが、今回のシリーズでは
より直接的な表現をしているように思われます。
そのあたりは何か心境の変化があったのでしょうか?
もともとクールな音作りを得意としていたこの人
ですが、それに伴ってサウンドもより有機的な
サウンドになっている気がしました。
特にホーンの使い方がその効果を上げています。

時代がどんどんデジタルになっていく中で、
それに逆行するようにもともとクールだった
Mad Professorがホットなメッセージを発し
始めたのはとても面白いところです。
「Dub Me Crazy」シリーズの1作目と並ぶ
彼Mad Professorの代表作と呼べるアルバム
なんじゃないでしょうか。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Mad Professor
○アルバム: Black Liberation Dub Chapter One
○レーベル: Ariwa
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1994

○Mad Professor「Black Liberation Dub Chapter One」曲目
1. Psychological Warfare
2. Black Liberation Dub
3. Riot In Capetown
4. Slavery 21st Century
5. Freedom Must Be Taken
6. Chip On The Slave Master Shoulder
7. When Revolution Comes
8. Black Skins White Minds
9. Tribal Dub
10. Dub In D Minor
11. Medicine Doctor
12. Colonial Mentality