今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

waterhouse_revisited_01a

「Waterhouse Revisited」です。

今回のアルバムは1994年にHightone Records
というところから出されたアルバムで、1983年
から84年の間にFeel The Beat Recordsという
レーベルから出された曲を集めたコンピュレーション
のようです。
今回ネットで調べた時には記事は見つかりません
でしたが、購入したレゲエレコード・コムには
Sugar Minottの「Playing Rub A Dub」などは
かなりレア化した音源だというような事が書かれて
いました。
その「レゲエの兄貴」Sugar Minottをはじめとして、
Junior ReidやMichael Palmer、Half Pintなどこの
ウォーターハウス地域で育った、初期のダンス
ホール・レゲエで活躍したアーティストを集めた
アルバムです。

ちなみにこのウォーターハウス(Waterhouse)
地域ですが、別名ファイヤーハウス(Firehouse)
とも呼ばれる地域で、ジャマイカでももっとも
危険な地域なんだそうです。
またKing Tubbyのスタジオもあった事でも
知られています。
(King Tubbyはこのスタジオのある地名から、
FirehouseとWaterhouseというレーベル名を
使っていたんですね。)

ジャケットは後ろに掘っ立て小屋が見える
そのウォーターハウスの通りと思われる所に
たたずむ3人の若いミュージシャンと思われる
青年の姿があります。
そのヤバい地域の空気感が何となく伝わって来る
ジャケットです。

全12曲で収録時間は44分10秒。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Produced by Myrie & Marshall
Release Co-ordinated by Charlie Morgan
Photo by Beth Kingston
Art and Design by Brian Walls
Mastered by Mark Senasac

という表記がありました。

さて今回のアルバムですが、これがけっこう良い
コンピなんですね。

このデジタル以前のダンスホール・レゲエと
いうのは、70年代隆盛だったルーツ・レゲエ
が一段落しした80年頃から、85年にKing Jammy
がWayne Smithの「Under Me Sleng Teng」で
デジタルのダンスホール・レゲエで大ブームを
起こすまでのわずか5年ぐらいが盛りだった
音楽なんですね。
ただ今の時代から見るとこの時代って、混沌
(カオス)の中で何か誕生しそうな期待感が
あって、ジャマイカの音楽史の中でもとても
面白い時代なんですね。
今回のアルバムはそうした空気感をうまく詰め
込んだようなアルバムになっています。

1曲目はMichael Palmerの「At The Dance」
です。
サックスにヴォーカルが絡む、いかにもこの
時代のダンスホール・レゲエといった空気感を
持った曲です。

Michael Palmer - Saw You At The Dance (Joint Favourites Lp 1986)


2曲目はPad Anthonyの「Molly Molly」です。
こちらもサックスとPad Anthonyのヴォーカル
の絡みが良い味を出している曲です。
サビはポップスのヒット曲「Mamy blue」を
思い出させるフレーズです。

3曲目はSugar Minottの「Playing Rub A Dub」
です。
この曲は彼の作品の中でもかなりレア化して
いた曲のようです。
突出した歌唱力を持った彼Sugar Minottは、
多くの後輩歌手を育てた兄貴的な存在のシンガー
でもありました。

Sugar Minott - Playing rub-a-dub


4曲目はFrankie Jonesの「Nice Like She」
です。
この初期のダンスホール独特の感覚を持った
1曲です。
使われているのは「Pretty Looks」のリディム
らしいです。

5曲目はJohn Wayneの「Live Rocket」です。
西部劇などで有名な映画俳優ジョン・ウエインの
名前を(勝手に)戴いたディージェイJohn Wayne
の、元気溢れる1曲です。
ロックステディ時代のSound Dimensionの名リディム
「Real Rock」が使われています。

6曲目はTonto Irieの「Jah Love」です。
これまたこの時代に活躍したディージェイTonto Irie
の、この時代らしいトースティングの1曲です。
「Answer」のリディムが使われているようです。
「Jah Love」というタイトルからも解るように、
この時代にはまだラスタファリズムの影響も
色濃く残っているんですね。

7曲目はKing Everallの「Tell Me」です。
こちらは切々としたラヴ・ソングといった感じ
の曲です。

8曲目はJunior Reidの「Bank Clerk」です。
Black Uhuruなどにも参加した名シンガーの、
力のこもった1曲です。

Junior Reid - Bank Clerk


9曲目はHalf Pintの「What's Going Down」です。
こちらもこの時代に活躍した名シンガーの
心のこもった1曲です。

10曲目はMichael Palmerの「Don't Run Down Woman」
です。
Moodiscの名リディム「Drifter」に乗せた
いかにもダンスホールという香りの1曲です。

11曲目はPad Anthonyの「I'm Poor」です。
ちょっとルーツ・レゲエの空気感も残した陰影の
濃い印象的な1曲です。

pad anthony i'm poor


12曲目はGeneral Treesの「Come Penetrate」
です。
こちらはダンスホールという空気感が楽しい1曲。
「Heavenless」のリディムが使われているようです。

ざっと追いかけて来ましたが、ルーツとデジタルの
ダンスホールの狭間で忘れられがちなこの初期の
ダンスホール・レゲエの時代ですが、むしろ
この時代ならではというサウンドがあり、なかなか
面白い時代なんですね。
しかも今回のアルバムには、若くてこれから行くぞ!
というヤバい連中が揃っています(笑)。
その「鉄砲玉」揃いというところが、今回のアルバム
の魅力なんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Various
○アルバム: Waterhouse Revisited
○レーベル: Hightone Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1994

○Various「Waterhouse Revisited」曲目
1. At The Dance – Michael Palmer
2. Molly Molly – Pad Anthony
3. Playing Rub A Dub – Sugar Minott
4. Nice Like She – Frankie Jones
5. Live Rocket – John Wayne
6. Jah Love – Tonto Irie
7. Tell Me – King Everall
8. Bank Clerk – Junior Reid
9. What's Going Down – Half Pint
10. Don't Run Down Woman – Michael Palmer
11. I'm Poor – Pad Anthony
12. Come Penetrate – General Trees