今回はPeter Toshのアルバム

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「The Toughest」です。

Peter Toshはレゲエの世界では、とても有名な
シンガーです。
彼が一番よく知られているのは、Bob Marleyが
居た伝説のグループThe Wailersのメンバーの
一人だった事です。

このThe Wailersというグループはいろいろな
変遷があって、60年代のスカの時代はBob Marley
とPeter ToshとBunny Livingston(Wailer)の
3人組のコーラス・グループでした。
こうの当時はバックはThe Skatalitesなどが
つけていたんですね。
その後にロックステディからレゲエの時代に
なるうちに楽器も演奏するようになり、Barrett
兄弟のリズム隊も含めた5人組のレゲエ・バンド
の形態になり、メジャー・レーベルIslandから
メジャー・デビューし、世界的に知られるバンド
になるんですね。

ところがIslandから2枚のアルバムを出した
ところで、Peter ToshとBunny Livingston
(Wailer)が脱退し、バンド名はBob Marley &
The Wailersとなり、The Wailersという名前は
バック・バンドの名前になってしまうんですね。
ふたりがThe Wailersを離れたのは、ツアーの
辛さに耐えかねての事だと言われています。

その後Bob Marley & The Wailersは世界的に
有名なレゲエ・バンドとなり、一方のPeter
Toshはソロとしてアルバムを発表し、その実績
が徐々に認められて、ロック・バンドThe Rolling
Stonesにレゲエの手ほどきをした事をきっかけに
Stonesのレーベルからアルバムを出したりして、
世界的に活躍するアーティストになって行くん
ですね。
一方のBunny Wailerはジャマイカでアルバムを
出したりするものの、畑仕事をしたりしながら
自由な生き方を選んでいくんですね。

世界的にも活躍したPeter Toshですが、1987年
に強盗に殺害されて亡くなっています。
ただ彼やBob Marleyがその後のアフリカのレゲエ・
ミュージシャンに与えた影響は大きく、今も尊敬を
集める存在になっています。

アーティスト特集 Peter Tosh (ピーター・トッシュ)

今回のアルバムは1996年にHeartbeat Records
から発売された彼Peter Toshの、The Wailers時代
にリード・ヴォーカルをとった曲を集めたアンソロジー
です。
The Wailersは3人組のコーラス・グループでしたが、
リード・ヴォーカルはBob Marleyの曲が多く、次に
Peter Toshがリード・ヴォーカルをとった曲が
けっこうあり、Bunny Wailerのリードという曲は
ほとんどないんですね。
メジャー・デビュー・アルバムの「Catch A Fire」
でもPeter Toshは「400 Years」や「Stop That Train」
などでリード・ヴォーカルを聴かせています。

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The Wailers - Catch A Fire (1973)

今回のアルバムではそのThe Wailersのメジャー・
デビュー前の時代、3人組のコーラス・グループ
として活躍していた時代から、ロックステディ
から初期レゲエのバンド編成になった頃の音源まで
が集められているようです。
全19曲のうち1曲目から13曲目までが「The
Coxsone Years」となっていて、スカの時代に
Studio OneのC.S. Doddの元で録音した音源、
14曲目から19曲目までが「The Lee Perry Years」
となっていて、Studio Oneを離れLee Perryの
元に音源を残したロックステディから初期レゲエ
の時代の音源となっているようです。

全19曲収録時間は55分14秒。

今回のアルバムではミュージシャンが「The Studio
One Years」(63年~66年)と「The Lee Perry
Years」に分かれて記載されています。

●The Studio One Years

Recorded at Studio One, Kingston Jamaica, 1963 to 1966

Lead Vocals: Peter Tosh
Harmony Vocals: Bob Marley, Bunny Wailer, Junior Braithwaite, Rita Marley,
Marlene Gifford, Constantine Walker, Beverly Kelso, Clement Dodd,
B.B. Seaton, Winston Stewart, Maurice Roberts
Drums: Lloyd Knibbs
Bass: L. Brevette, Bryan 'Bassie' Atkinson
Gitars: P. Tosh, Jah Jerry, L.Taitt
Key Boards: J. Mittoo
Horns: R. Alphonso, T. McCook, L. Sterling, H. Bennett, 'Ska' Campbell,
J. Moore, D. Drummond


●The Lee Perry Years

Recorded at Randy's Studio
Engineer: Errol Thompson, Lee Perry

Lead Vocals: Peter Tosh
Harmony Vocals: Bob Marley, Bunny Wailer
Drums: Carlton Barrett
Bass: Aston 'Family Man' Barrett
Guitar: Alva Lewis, Peter Tosh, Lloyd Willis
Keyboards: Glen Adams, Gladdy Anderson
Percussion: Sticky


Exective Producer: C.S. Dodd
Track Produced by: C.S. Dodd, Lee Perry

となっています。

「The Studio One Years(The Coxsone Years)」
は1963年から66年で、この時期はジャマイカ
ではスカが大流行していた時期から66年に
ロックステディが誕生した時期なんですね。
Peter Toshはギターを演奏していますが、この時期は
おもにBob MarleyやBunny Wailerとコーラス・グループ
として活躍していた時期で、バックはスカの時代が
The Skatalites、ロックステディの時代は当時の
Studio Oneのバック・バンドだったSoul Defendersか
Soul VendorsかSound Demensionあたりが担当して
いたものと思われます。

またギターにロックステディ期に活躍したLyn Taitt
の名前があります。
コーラスも多彩で、Bob MarleyとBunny Wailerは
もちろんのこと、Bob Marleyの奥さんのRita Marley
やThe Gayladsで活躍したB.B. Seatonの名前が
あります。
ホーンも豪華でThe Skatalitesで活躍したRoland Alphonso
やTommy McCook、J. MooreにDon Drummondのほか、
Deadley Headley Benettの名前もあります。

「The Lee Perry Years」の方は、おそらくその後の
66年以降の録音という事になると思います。
ジャマイカではその時代はロックステディ期から
初期レゲエの時代だと思われます。
ちなみにレゲエの前身となったロックステディの時代
ですが、66年から68年までのわずか3年間だけ
流行した音楽なんですね。
さらにLee Perryのプロデュースという事になると、
Bob Marley & The Wailersをプロデュースした
アルバム「Soul Rebels」が、70年に作られた
初期レゲエの頃のアルバムなんですね。
その時に作られた「400 Years」と「No Sympathy」
が入っているので、その70年あたりの録音と
思われます。

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Bob Marley & The Wailers - Soul Rebels (1970)

この頃になるとメンバーも固定して来ていて、ドラム
にCarlton Barrett、ベースにAston 'Family Man' Barrett
のBarrett兄弟もThe Wailersという扱いで、あとは
Alva LewisやGladdy Anderson、Stickyなどがサポート・
メンバーという形のようです。
ちなみに表ジャケには、「featuring the wailers,
skatalites, upsetters」という文字があります。
このメンバーだとThe Wailersと考えても差し支えない
メンバーですが、The Upsettersという扱いなの
かもしれませんね。

さて今回のアルバムですが、メジャー・デビュー前
のPeter Toshがリード・ヴォーカルをとったThe Wailers
のアルバムという事で、彼らThe WailersとPeter Tosh
の軌跡を知る上ではすごく良くできたアルバムだと
思います。
内容的にもすごく充実していて、Bob Marleyがリード
をとったスカ時代のヒット曲「Simmer Down」の別
ヴァージョン2曲目「Mag Dog」や、アルバム「Bush
Doctor」で再演された表題曲「The Toughest」が収め
られていたり、同じく「Bush Doctor」でMick Jaggar
とデュエットした事でも知られる9曲目「Don't Look
Back」が収められていたり、さらにはThe Wailersの
メジャー・デビュー・アルバム「Catch A Fire」で
Peterがリードを取った「400 Years」が収められて
いたりと、マニアにはかなり嬉しい内容のアルバムに
なっています。

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Peter Tosh - Bush Doctor (1978)

書いたように1~13曲目まではThe Wailersの
スカの時代のStudio Oneの曲が収められています。

1曲目「Hoot Nanny Hoot」は、いかにもスカ
というメロディ・ラインを持った曲です。
ちょっとユーモラスなくらいにノリノリのリズム
に、Peter Toshのちょっと冷めたようなヴォーカル
の取り合わせが面白い曲です。

2曲目は書いたようにBob Marleyがリードをとった
スカ時代のThe Wailersのヒット曲「Simmer Down」
の別ヴァージョンのような曲「Maga Dog」です。
「Simmer Down」もそうなんですが、何とも賑やかな
女性コーラスが楽しい曲です。
このスカの時代のThe Wailersの陽性なノリは、
他に代えがたい魅力があります。

Peter, Bunny & Bob - Maga Dog


4曲目は「Jumbie Jamboree」です。
このStudio One時代にバックを務めたThe Skatalites
は当時のナンバー・ワンのバック・バンドでした。
今聴いても重厚なホーン陣はすごく魅力があります。

6曲目は「Sinner Man」です。
こちらは一転してピアノを主体としたスカ・ナンバー
です。

8曲目は表題曲の「The Toughest」です。
書いたようにこの曲はのちの78年のアルバム
「Bush Doctor」で、「I'm The Toughest 」という
名目で再演されています。
聴き比べてみるとよく解りますが、基本は同じ曲
なのですが、後のヴァージョンだとかなりレゲエに
アレンジされていてずいぶんイメージが違う曲に
なっています。

Peter Tosh - I'm the toughest - old version


9曲目は「Don't Look Back」です。
こちらも後の「Bush Doctor」に収められた曲で、
ロック・グループThe Rolling Stonesのヴォーカリスト
Mick Jaggarと共演している曲なんですね。
その為YouTubeでこの曲を探すと、Mick Jaggar
との共演しているライヴや曲ばかりが出て来ます(笑)。
ただこちらの「Don't Look Back」もなかなか
魅力的です。

The Wailers (Peter Tosh) - Don't Look Back (Rio)


10曲目「When The Well Runs Dry」はちょっと
不思議な空気感を持った曲です。
この女性コーラスは誰なんでしょうか?
けっこういろいろな女性の名前があって特定出来
ませんが、Bob Marleyの奥さんのRita Marley
あたりなのか?

11曲目はそのものズバリのラヴ・ソング
「Making Love」です。
こちらも女性とのデュエット。

13曲目は「Treat Me Good」です。
こちらも女性コーラスと男性コーラスも付く
ちょっと複雑な曲で、このあたりに彼らの
コーラス・ワークのウマさが垣間見えます。

14~19曲目までは「The Lee Perry Years」
となっており、初期レゲエあたりの音源と思われ
ます。

14曲目「Rightful Ruler」は「featuring U Roy」
となっており、ディージェイのU Royと共演した
曲です。
面白いのはPeter Toshも歌わずにトースティング
をしているんですね。

15曲目は「400 Years」です。
この曲はIslandからのメジャー・デビュー・アルバム
「Catch A Fire」で、Peter Tosh自らが再演して
いる曲です。
またこの曲は書いたように、Lee Perryプロデュース
のThe Wailersのアルバム「Soul Rebels」にも収め
られている曲です。

16曲目はこれまたThe Wailersの代表曲のひとつ
である「No Sympathy」です。
この曲も「Soul Rebels」に収められている曲です。

17曲目と18曲目は「Secondhand (a.k.a. Brand
New Secondhand)」の「Ver. 1」と「Ver. 2」です。
この曲はレコーディング風景が解るような曲で、
咳払いなども入っていてリラックス・ムードが
たっぷりの曲です。
このアルバムの中でも目玉曲といって良いほど
イイ感じの曲です

Peter Tosh- Secondhand (A K A Brand New Secondhand( [Version 1]


Peter Tosh - Secondhand (A.K.A. Brand New Secondhand) [Version 2]


ざっと目立った曲を追いかけて来ましたが、
やっぱりスカの時代とレゲエの時代では曲調が
かなり変わります。
またこのThe Wailersの時代のPeter Toshと、
メジャー・デビュー後のPeter Toshでもだいぶ
曲の感じが違うんですね。

メジャー・デビューしてからのPeter Toshは、その
あまりのメッセージ性を重視するあまりに、どうも
曲が単調過ぎる傾向があります。
少なくともこの時代にはそうした欠点があまり
無いんですね。
今聴くとこのThe Wailersのメジャー・デビュー前
からグループを離れる前のPeter Toshが、一番
聴いていて楽しい気がしないでもありません。

アンソロジーとしてもよく出来たアルバム
だと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Peter Tosh
○アルバム: The Toughest
○レーベル: Heartbeat Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1996

○Peter Tosh「The Toughest」曲目
●The Coxsone Years
1. Hoot Nanny Hoot
2. Maga Dog
3. Amen
4. Jumbie Jamboree
5. Shame And Scandal
6. Sinner Man
7. Rasta Shook Them Up
8. The Toughest
9. Don't Look Back
10. When The Well Runs Dry
11. Making Love
12. Can't You See
13. Treat Me Good
●The Lee Perry Years
14. Rightful Ruler - featuring U Roy
15. 400 Years
16. No Sympathy
17. Secondhand (a.k.a. Brand New Secondhand) Ver. 1
18. Secondhand (a.k.a. Brand New Secondhand) Ver. 2
19. Downpresser