今回はKing Tubbyのアルバム

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「The Fatman Tapes」です。

King Tubbyはダブのミキサー、プロデューサー
としてよく知られている人です。
一説にはKing Tubbyが偶然の失敗からダブを
発明したと言われていますが(Bunny Lee説)、
誰がダブを発明したかは諸説あり、ハッキリ
とは解っていません。
ただKing Tubbyがダブという音楽形式を完成
させたというのは、多くの人が認めるところ
です。

ダブというのは元の歌ものなどの音源の
カラオケに、エコーやリバーブなどの
エフェクトをかけて、元の音源から全く別の
曲に作り変えてしまう手法を言います。
70年代のルーツ・レゲエの時代に考案された
手法で、それまでの生演奏に近付けるという
音楽から、加工を前提とした現代の音楽に
近い手法を取り入れた音楽だったんですね。
これにより音楽というものは劇的にに変わって
いく道をたどる事になります。

ダブ - Wikipedia

そうして70年代ルーツ・レゲエに革新的な
ダブという手法を推し進めたKing Tubbyは、
この時代に自分のスタジオKing Tubby'sで、
多くのダブを残しています。
しかし80年代のダンスホール・レゲエに
なって来ると、ダブのミックスは助手だった
Prince JammyやScientistに任せて、自分は
あまりダブは作らずに、電気技師の仕事を
中心に行うようになってしまうんですね。

しかしその二人がKing Tubby'sを離れ、
80年代半ばにその助手だったPrince Jammy
改めKing Jammyがデジタルのダンスホール・
レゲエ、いわゆる「コンピューター・ライズド」
の大ブームを起こす頃になると、再びミックス
の現場に復帰してAnthony Red Roseの「Tempo」
などのヒット曲を出して、見事な復活を果たす
事になるんですね。

そうした天才King Tubbyですが、再び
プロデューサーの仕事で活躍していた
1989年に、何者かに自宅前で銃殺されて
亡くなっています。

アーティスト特集:King Tubby(キング・タビー)

今回のアルバムですが、1999年にCulture
Pressというレーベルから発売されたアルバム
です。
このアルバムをネットで調べてみましたが、
残念ながらネット上にはあまり情報があり
ませんでした。

おそらくKing Tubbyのデジタル期にFatman
という助手の人が居たので、その人が保管して
いたKing Tubby'sの音源という事ではないか
と思います。
音を聴いた印象も70年代のルーツ期という
感じではなく、80年代のデジタル期の
ベースが効いたダブという感じがします。
ちなみにこのアルバムは2集目の「Ⅱ」まで
発売されているようです。

またKing Tubby名義のFatmanのアルバム
としては、91年に発売された「Fatman Presents:
Unleashed Dub From King Tubby's Studio Vol. 1」
というアルバムがあります。

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King Tubby - Fatman Presents: Unleashed Dub
From King Tubby's Studio Vol. 1 (1991)

こちらはKing TubbyのFirehouseと並ぶ
レーベル、Waterhouseの音源を集めた
アルバムだと思われます。

いずれにしてもこのあたりの音源は、
70年代と較べるとあまりダブを作らなく
なったKing Tubbyの、貴重な80年代の
ダブ・アルバムなんじゃないでしょうか。

全22曲で収録時間は76分43秒。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Musicians:
Drums: Sly Dunbar
Bass: Robbie Shakespeare
Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Keyboards: Winston Wright, Gladstone Anderson

Recorded at King Tubby's Studio
Thanks to: Webster Shrowder, Ken Gordon,
Laurent 'Jah'so' Jassaud, Enzo Hamilton
Produced & Arranged by Fatman
Compiled by Oliver Merger
Mastered at Alcyon Musique by Frederic Marin
Design by Oliver Ducroq

となっています。

Sly & RobbieにChinna Smith、キーボードに
Winston WrightとGladstone Andersonという
比較的シンプルな構成です。
曲によってはホーンの入っている曲もあり
ますが、全体にはこうしたシンプルなベース
を主体としたダブの曲が並びます。
この演奏の録音自体はまだ完全にデジタル
という感じでもないので、80年代の前半
から中頃ぐらいに録られたものなのかも
しれません。

さて今回のアルバムですが、全体にすごく洗練
されたダブが並んでいる印象です。
特に前半の10曲目ぐらいまではすごく洗練
されたサウンドで、正直なところこのサウンドが
80年代ぐらいに作られたのかな?と思うほど
でした。
このアルバムの発売が99年ですが、もしかしたら
後にFatmanが時代に合わせて作り変えたのかと
思ったほどでした。
ある意味必ずしもKing Tubbyらしさが無いダブ
なんですよね。
ベースを基調にしたあたりはそうかなと思わせる
ところもあるんですが、ちょっとビミョ~な
感じもしました。
もしかしたらKing Tubbyのダブというよりは、
助手などほかの人も含めたKing Tubby'sのダブ
というのが正しいのかもしれません。

ただ聴いた印象としては切れ味のあるクールな
ダブで、内容は悪くありません。
このダンスホール期になると、あまり厚い音が
好まれなかったのか、ルーツ期のようなホーンを
主体とした演奏がえって来るんですよね。
それがダブを作る時にはけっこう大問題で、音が
薄くなった分ダブで変化を付けづらくなって
しまうんですよね。
そのためこの時代のダブはベースを主体とした
ダブが多くなっています。
いくぶんヴァラエティに欠ける面が、出て来て
しまうんですね。
そのあたりのこの80年以降、ダブがあまり
作られなくなった理由のひとつだと思います。

ただそうして作りづらくなった分、ミキサーの
腕も試される事になる訳ですが、その点では
このKing Tubby'sのダブは秀逸な部分があります。
やはり指揮を執るKing Tubbyという人のセンスが
優れているせいか、たとえベース主体のダブでも
うまく聴かせる要素を盛り込んでくるんですね。
このKing Tubbyという人は自分ではあんまり
音楽センスを感じていなかった節があるのですが、
音楽の世界で早くから音楽を感覚でなく理知的に
捉えようとした人で、その裏には音楽に対する
優れた感性のあった人なんですよね。
今回のアルバムにもそうしたKing Tubbyや
King Tubby'sの優れた感覚が随所に見られる
アルバムになっています。

機会があれば聴いてみてください。

King Tubby - Tubby's At The Controls


King Tubby - Puppy Dub


King Tubby - Zion Dub



○アーティスト: King Tubby
○アルバム: The Fatman Tapes
○レーベル: Culture Press
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1999

○King Tubby「The Fatman Tapes」曲目
1. Tubbys At The Control
2. Drop Dub
3. Puppy Dub
4. Zion Dub
5. Confinement Dub
6. Waterhouse Rock
7. Patriotic Dub
8. Farmyard Dub
9. Water Dub
10. Harder Dub
11. Tubbys On The Throne
12. Woodham Slide
13. Dubbing My Way
14. Mount Zion Dub
15. Herbal Dub
16. Soundboy Massacre
17. Jah Guide Dub
18. Boulevard Ride
19. Dubbing My Baby
20. Shining Dub
21. Up In Arms Dub
22. Narrow Dub