今回はKing Tubby'sのアルバム

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「King Tubby's Present Two Big Bull In A One
Pen Dubwise」です。

King Tubbyはレゲエの歴史に偉大な功績を残した
ダブのミキサーであり、プロデューサーである人
です。

ダブという音楽は70年代のルーツ・レゲエの
時代に発明された音楽形態で、元の曲のカラオケに
エコーやリバーブなどのエフェクトをかけて
全く別の曲に作り変えてしまう手法を言います。

ダブ - Wikipedia

誰が一番初めにダブを作ったのかは諸説あり
ハッキリとは解っていませんが、プロデューサー
のBunny LeeはKing Tubbyが偶然の失敗から
ダブを発明したという説を唱えています。
73年にLee Perryの「Black Board Jungle Dub」
やRandy'sのImpact All Starsによる「Java Java
Java Java」など最初期のダブのアルバムが一斉に
発売された事により一般に広く認知されるように
なり、ひとつのジャンルとして確立した音楽なん
ですね。
そしてダブという音楽形態を完成させたのが
King Tubbyだと言われています。

そうしてKing Tubbyは70年代に自身のスタジオ
King Tubby'sで、プロデューサーの依頼を受けて
大量のダブを作っているんですね。
ところが80年代に入ると、ダブのミキサーの仕事
は当時助手を務めていたPrince JammyやScientist
に任せて、自身ではあまりダブを作らずに、
もともとしていた電気技師の仕事を多くする
ようになってしまうんですね。
ところがそのPrince JammyやScientistが独立して
King Tubby'sを離れると、再びスタジオに戻り
助手のFatmanやPeegoなどの指揮を執るようになる
んですね。

そして元助手だったPrince Jammy改めKing Jammyが
80年代半ばにデジタルのダンスホール・レゲエで
「コンピューター・ライズド」の大ブームを起こすと、
それに対抗してAnthony Red Roseの「Tempo」などの
ヒット曲を出し、プロデューサーとして活躍する
ようになるんですね。

そうして80年代のデジタルのダンスホールで、
自身のレーベルFirehouseやWaterhouseなどで
プロデューサーとして活躍していたKing Tubby
ですが、89年に何者かに自宅前で銃殺されて
亡くなっています。

アーティスト特集 King Tubby(キング・タビー)

さて今回のアルバムですが、1986年に出された
Anthony Red Rose & King Kongのアルバム「Two Big
Bull In A One Pen」のダブ・アルバムです。

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Red Rose & King Kong - Two Big Bull In A One Pen (1986)

Red Rose & King Kongのアルバムは今年2015年
に日本のDub Store Recordsからリイシューされて
いますが、同年(86年)に出た今回のダブ・アルバム
はFirehouseからLPで発売されたぐらいで、CD
にはなっていないようです。
(ネットで調べた限りではCDは出て来ませんでした。)

実はこのアルバムの存在自体あまり知りませんでした。
たまたまブログを書く都合でKing Tubbyの事を調べて
いた時にこのアルバムの事を知り、どこか売っていないか
調べてみたところレゲエコレクター・コムで売っている
のを見つけました。
値段もそこそこの2700円という値段だったので、
ダメ元という気持ちでゲットした次第です。
やっぱりダブが好きな人間としては、元のアルバムと
ダブ・アルバムの両方を揃えたいんですよね。
出来ればDub Store Recordsさんあたりで、こちらの
アルバムもCDでリイシューしてくれると嬉しい
んですが…(笑)。
まあ、ちょっとマニアックですかね…。

Side Oneが5曲Side Twoが5曲の全10曲で、1曲が
約3分半ぐらいの曲が10曲なので収録時間は約35分
ぐらいです。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Drums: Cleveland Brownie
Bass: Flabba Holt
Piano, Keyboards: Steelie Johnson
Rhythm Guitar: Bingy Bunny
Lead Guitar: Dwight Pickney

Engineers: Peego, Fatman, Anthony Kelly
Edited at King Tubby's by Fatman and Peego
Concept: King Tubby
Art Works: Herman Cain

となっています。

メンバーの記述はRed Rose & King Kongのアルバムと
同じです。
Roots RadicsとSteely Clevieが一緒になったような
布陣です。

Red Rose & King Kongのアルバムの方は、ジャケット
がKing Tubbyが録ったという二人のサッカー姿の写真
でしたが、今回のジャケットは2頭の猛牛のイラスト。
なかなかナイスなジャケットです。

さて今回のアルバムですが、実際に家の安物の
プレイヤーで再生してみたところSide Oneの
4曲目と5曲目で同じところを繰り返し回って
しまう症状が出ました。
このあたりはジャマイカ盤なのでプレスが悪いの
かもしれません。
それ以外はポツポツ音は多少入るものの問題なく
再生出来ました。

ジャマイカ盤は昔から品質が悪いのは有名で、
70年当時日本に進出してきたばかりのTower Records
などでも「ジャマイカ盤なのでかなり雑音が入ります」
と注意書きが付いて売られていたほどだったん
ですね。
そのため私などもジャマイカ盤は避けて買って
いました。
まあそういう事も知っていたので、今回も聴ければ
御の字という気持ちで買いました(笑)。

さてアルバムの内容ですが、これがかなり良い
アルバムなんですね。
おそらくDub StoreからリイシューされたRed Rose
& King Kongのアルバムを聴いた人は解ると思い
ますが、この時代のKing Tubby'sはまだ完全な
デジタルの打ち込みのサウンドではなくて、
生演奏も混じったサウンドなんですね。
そのせいか曲に微妙なディテールがあって、
音がすごく面白いんですね。
これがもう少し時代が進むと、演奏もFirehouse Crew
に変わり、もう少しデジタル色が強くなります。
ただ個人的にはやっぱりデジタルになり過ぎる
よりは、こうした「デジタルとの狭間」といった
サウンドの方が、すごく面白く感じるところが
あります。

もうひとつ言うと、このデジタルのダンスホール・
レゲエのサウンドでも、King Jammyがデジタルの
感情を配したスパッとしたサウンドに惹かれている
のに対して、King Tubbyはあくまでそのデジタルの
上に感情を残した余韻のあるサウンドを作ろうと
しているんですね。
それはどちらが良いという話ではありませんが、
このデジタルとアナログの狭間にあくまで感情を
残そうとしたKing Tubbyのサウンドは、やっぱり
どこか捨てがたい魅力があります。
結果としてKing Tubbyはこの後に何者かに暗殺されて
亡くなってしまいますが、もしもこのKing Tubby
が生きていれば、レゲエの未来はまた違ったものに
なっていたのかもしれません。
そう考えると、とても残念です。

このアルバムは残念ながらCD化されていない
ようですが、レゲエの歴史にとってとても大事な
アルバムなんじゃないかと思います。
このアルバムには音楽とは何なのか?音の豊かさ
とは何なのか?そういう答えが隠れているような
気がします。
出来ればこのアルバムがCD化される事を望みます。

機会があればぜひ聴いてみてください。

DUB LP- TWO BIG BULL IN A ONE PEN DUBWISE - KING TUBBY - Ain't Gonna Be No Loafter Dubwise



○アーティスト: King Tubby's
○アルバム: King Tubby's Present Two Big Bull In A One Pen Dubwise
○レーベル: Firehouse
○フォーマット: LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1986

○King Tubby's「King Tubby's Present Two Big Bull
In A One Pen Dubwise」曲目
Side One
1. Two Big Bull In A One Pen Dubwise
2. Body Crazy Dubwise
3. Is It Love I'm Feeling Dubwise
4. Tribulation Dubwise
5. Riddle Me This Dubwise
Side Two
6. Follow Me Now Dubwise
7. Cater Fi She Dubwise
8. Don't Touch My Choo-Choo Dubwise
9. Ain't Gonna Be No Loafter Dubwise
10. Monkey Sample Dubwise

●今までアップしたKing Tubby関連の記事
〇King Tubby & Friends「Dub Gone Crazy: The Evolution Of Dub At King Tubby's 1975-1979」
〇King Tubby & Soul Syndicate「Freedom Sounds In Dub」
〇King Tubby & Friends「Dub Like Dirt 1975-1977」
〇King Tubby & Prince Jammy「Dub Gone 2 Crazy: In Fine Style 1975-1979」
〇King Tubby And The Aggrovators「Shalom Dub」
〇King Tubby, Scientist「Ranking Dread In Dub」
〇King Tubby, Errol Thompson「The Black Foundation In Dub」
〇King Tubby「100% Of Dub」
〇King Tubby「Dangerous Dub: King Tubby Meets Roots Radics」
〇King Tubby「Dub From The Roots」
〇King Tubby「Fatman Presents: Unleashed Dub Vol.1」
〇King Tubby「King Of Dub」
〇King Tubby「King Tubby Presents The Roots Of Dub」
〇King Tubby「King Tubbys Presents Soundclash Dubplate Style Part 2」
〇King Tubby「Rocker's Almighty Dub」
〇King Tubby「The Fatman Tapes」
〇King Tubby「The Sound Of Channel One: King Tubby Connection」
〇King Tubby's (Scientist)「King Tubby's Answer The Dub」
〇King Tubby's「African Love Dub 1974-1979」
〇Augustus Pablo「King Tubbys Meets Rockers Uptown (Deluxe Edition)」
〇Augustus Pablo「Rockers Meets King Tubbys In A Fire House」
〇Prince Jammy VS King Tubbys「His Majestys Dub」
〇Tommy McCook & The Agrovators「King Tubby Meets The Agrovators At Dub Station」
〇African Brothers, King Tubby「The African Brothers Meet King Tubby In Dub」
〇Aggrovators「Dubbing At King Tubby's」
〇Bunny Lee & King Tubby Present Tommy McCook And The Aggravators「Brass Rockers」
〇Various (King Tubby & Clancy Eceles All Stars)「Sound System International Dub LP」
〇Various「Firehouse Revolution: King Tubby's Productions In The Digital Era 1985-89」
〇Various「King Tubbys Presents Soundclash Dubplate Style」
〇Various「Once Upon A Time At King Tubbys」
〇Augustus Pablo「Ital Dub」
〇King Tubby's (Prince Jammy) And The Agrovators, (Delroy Wilson)「Dubbing In The Back Yard / (Go Away Dream)」
●今までアップしたAnthony Red Rose関連の記事
〇Anthony Red Rose「Red Rose Will Make You Dance」
〇Red Rose & King Kong「Two Big Bull In A One Pen」