今回はMatumbiの1979年の作品「Point Of View」
から、表題曲の「Point Of View (Squeeze A
Little Lovin')」を紹介してみたいと思います。

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Matumbi - Point Of View (1979) LP表ジャケ

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Matumbi - Point Of View (1979) LP裏ジャケ

Matumbiは1978年に「Seven Seals」で
アルバム・デビューしたイギリスのレゲエ・
バンドです。

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Matumbi - Seven Seals (1978) LP

このMatumbiの中でもリーダーでギターを
担当しているDennis Bovellはとくに有名で、
プロデューサーやダブのクリエイターとして
よく知られています。

デニス・ボーヴェル - Wikipedia

今回取り上げた「Point Of View」は彼らの
セカンド・アルバムで、日本では東芝EMI
から同じく79年にLPで発売された
アルバムでした。
Side 1が「Another View」となっていて
6曲、Side 2が「One View」で同じく6曲
の計12曲が収められていて、「Another
View」は社会問題などに対するプロテスト・
ソング、「One View」は私的なラヴ・
ソングが収められた構成になっています。

また当時のLPは表ジャケから見て左側が
空いた仕様になっているのが一般的ですが、
このアルバムは上が空いた仕様になって
います。
つまり取り出し口が上なんですね。

中には折り畳みの4ページのライナー・
ノーツが入っていて、そこには下田誠さん
という方の解説文、英語の歌詞と山本安見
さんという方の対訳が付いています。
今回はその中から「Point Of View
(Squeeze A Little Lovin')」を紹介して
みたいと思います。


●愛をちょっぴり(ポイント・オブ・ビュー)
Point Of View (Squeeze A Little Lovin') - Matumbi

僕の立場に立って
物事を見てごらんよ
その時 きみは初めて知るだろう
僕が心からきみを愛していることを

僕が内に秘めてる愛は
とても温かくて優しい
クールで穏やかな感触が
僕を和ませてくれる
きみの心から
愛をちょっぴり絞りだしたい
きみの心から
愛をもう少しだけ絞りだしたい

ずいぶん長いこと
ふたりは一緒に暮らしたね
ああ なんてステキな気分
きみはぼくひとりのもの

僕の愛は秘密なんだ
他人にはもらしちゃいけない
だから きみも年取るまで
きっと気づかずにいるだろう
だから 僕はきみの心から
愛をちょっぴり絞りだすのさ
きみの心から
愛を少しだけ絞りだしたい
僕にはきみが必要なんだ

僕はきみを愛しているし
きみも僕を愛してる
だけど 僕と同じように
きみも僕を必要としているのかな

理屈を並べたり
疑問を感じることもない
僕は死ぬまで
この心に従うだけさ
きみの心から
愛をちょっぴり絞りだしたい
きみの心から
愛をもう少しだけ絞りだしたい
僕にはきみが必要なんだ

きみのこと求めているんだよ
ABCD
僕におくれよ きみの愛を
1234
もっと もっとおくれよ
ABCD
頼むから 僕におくれよ
1234

(東芝EMIのLP、Matumbi「Point Of View」より
山本安見さんの対訳より)

Matumbi-Point Of View-12"



以上がMatumbiの「Point Of View」の
歌詞です。
今見てもけっこうメロメロのラヴ・
ソングといった内容の歌詞なんですね。

実はこのアルバムは私が20代の頃に
聴いて、もっともガッカリしたアルバム
なんですね(笑)。
彼らのファースト・アルバム「Seven Seals
(7つの封印)」は、おそらく当時セイム・
タイムでレゲエを聴いていた多くのレゲエ・
ファンがシビレたもっともルーツ・レゲエを
感じる素晴らしいアルバムだったんですね。
ところが次に出てすごく期待して買った今回の
アルバム「Point Of View」は、全くと言って
いいほどレゲエの匂いが無く、曲がただの
ポップに聴こえたんですね。
その感じは今回の曲「Point Of View (Squeeze
A Little Lovin')」にも顕著に表れています。
オシャレだけれどルーツ・レゲエの持つビター
なテイストとは、明らかに違うんですね。

これはなんなんだ!?これはレゲエではない!
これは聴きたい音ではない!…当時の私はそう
思ったんですね。

どういう訳か当時のイギリスのレゲエ、当時は
「ブリティッシュ・レゲエ」と呼ばれていた
アーティストやグループは、初めはすごく良い
レゲエのサウンドを出していても、突然ポップに
変わっちゃうグループが多かったんですね。
そのもっとも鮮烈な印象が残っているのが、
このMatumbiなんですね。
その印象が強すぎて、今でもDennis Bovellの
アルバムを買うのは躊躇してしまうし、買っても
すごく手厳しく見てしまう傾向があるんですね。

ただそれから長いことレゲエを聴かない時期が
あったりして再び5,6年前からまたレゲエを
聴き始めて、初めはルーツ・レゲエぐらいしか
受け付けなかったのが徐々にディージェイが
解ってきたり、ダンスホール・レゲエも初めは
ダメだったのが少しずつ解って来たりする経験
をしていくと、当時の私はまだ耳が肥えておらず、
ものの見方も頑な過ぎたという事が解ってきます。
そうなるとこのアルバムの評価も少し変わって
来るところがあるんですね。

実際に今回このアルバムを引っ張り出してきて、
もう一度Side 1の「Another View」サイドの歌詞
を読んでみると、けっこう手厳しいプロテスト・
ソングで良い事を言っているんですね。
歌詞の内容だけ見るとこの「Another View」
サイドの方は悪くはないんですね。
まあ「One View」サイドの方も私的なラヴ・ソング
で、それ自体は悪いことではありません。
当時のレゲエとしてはこれだけメロメロのラヴ・
ソングを歌うのは珍しかったかもしれませんが…。

いろいろ調べていくと解るのですが、実はDennis
Bovellという人はイギリスで誕生した「ラヴァーズ・
ロック・レゲエ」と深い関わりのある人なんですね。

ラヴァーズ・ロック - Wikipedia

彼はこの「ラヴァーズ・ロック」という音楽形態
を作った立役者の一人なんですね。
今回のアルバム「Point Of View」は、その初めの
アルバムという事ではないかもしれませんが、
おそらくけっこう早い時期のラヴァーズ・ロック
のアルバムなんですね。

好き嫌いはあると思いますが、ラヴァーズ・ロック
は80年代になるとイギリスで誕生したレゲエの
1形態として完全に定着して行く事になるんですね。
そういうジャンルの先駆け的なアルバムとして
見た場合、この「Point Of View」はけっこう
貴重なアルバムなのかもしれません。

ただ個人的にはラヴァーズ・ロックって実はあまり
よく解っていないジャンルなんですよね(笑)。
どうもただのポップとしては聴けるけれど、これが
レゲエと言われるとレゲエというテイストをあまり
感じない、正直ピンと来ないジャンルなんですよね。
今回の「Point Of View」などもYouTubeなどで
聴き直してみましたが、やっぱりどうもレゲエという
感じがしないというのが正直なところです。
オシャレなポップスという感じに聴こえちゃうん
ですね(笑)。

あとラヴァーズ・ロックの定義としては、「70年代
半ばにイギリスで誕生した、ラヴ・ソングを歌う
レゲエの1ジャンル」という事になると思うんですが、
レゲエレコード・コムをはじめとする販売サイトの
ラヴァーズ・ロックの仕分けを見ると、何でもラヴァーズ
にし過ぎていませんかね?
年代がずっと前のStudio Oneで活躍した名女性シンガー
Jennifer Laraもラヴァーズに入っているし、Brenda Ray
はリバプールのインディーポップ・シーンで活動する
レゲエに分類するのも?(ハテナ)の人ですよね。
女性だからとかラヴ・ソングを歌っているからという
のは、ちょっと違うんじゃないですかね。
その辺のうさん臭さも、どうもラヴァーズに馴染めない
ところがあります。

まあ、ラヴ・ソングを歌う事自体は悪い事ではない
のですが……(笑)。

話を戻すと、イギリスのレゲエ・ミュージシャンの
多くは、プロテスト・ソング色の強かったルーツ・
レゲエからラヴ・ソング中心のラヴァーズに転向して
行ったミュージシャンも多かったという事でしょうか。

今回のMatumbiの「Point Of View」も、レゲエという
こだわりを捨てて聴けば、歌詞はたわいのないラヴ・
ソングだけれど、それなりにオシャレでカッコいい曲
だと思います。

正直ラヴァーズに関しては、私はまだまだ勉強が
必要なようです。
まだ感覚的に理解しきれない部分があるんですよね。
という事で研究課題とさせてください。

Matumbi - Point of view 1979 Top of The Pops October 4th 1979