今回はNitty Grittyのアルバム

nitty_gritty_02a

「General Penitentiary」です。

Nitty Grittyは80年代のダンスホール・レゲエで
活躍したシンガーです。
Tennor Sawと並ぶ「アウト・オブ・キーの使い手」
として有名な人だったらしいのですが、1991年に
34歳で凶弾に倒れて亡くなっています。

アーティスト特集 Nitty Gritty (ニッティ・グリッティ)

ジャマイカの音楽史の中ではこうして凶弾に倒れて
亡くなった人がけっこう多いんですね。
有名なところではKing TubbyにPeter Tosh、Hugh Mundell
Prince Far Iなど……数えたらキリが無いほど
居ます。
そうした人が生きていれば、ジャマイカの音楽の
歴史もまた変わっていたかもしれません。
いつもこの事を書くと、穏当に残念な気持ちが
します。

今回はそんなNitty Grittyが1987年に残した
激レア・アルバムのリイシューとの事です。

全8曲で収録時間は30分05秒。
元歌とダブが交互に並ぶいわゆるショーケース・
スタイルのアルバムです。

バックのミュージシャンは以下。

Studio One Band:
Bass: Bagga
Drums: Clivie
Lead Guitar: Larry
Rhythm Guitar: Dalton
Piano,Organ: Pablo Black
Percussion: Everton
Sax: Jerry Johnson
Trumpet: Kevin

となっています。

プロデュースはIbo Millington。

ピアノとオルガンでPablo Blackと表記されている
のは、Pablove Blackです。

「アウト・オブ・キー」という唱法について説明
しておくと、この80年代にダンスホール・シンガー
に流行った、わざとキーをハズして歌うレゲエ独特の
歌唱法です。
実際にはまったくハズして音痴に歌うという訳では
なく、少しズラシて曲にニュアンスを付けるといった
感じです。
その辺は日本の演歌のコブシを付けるといった感じ
と、似ているかもしれません。
普通にスラッと歌うよりも感情を乗せた分、リズム
が少し重くなる感じです。

ちょっとテクニカルな歌唱法ですが、特にこの
デジタルのダンスホール・レゲエの時代になると、
打ち込みの平板な音をフォローするためか、けっこう
このアウト・オブ・キーを使うシンガーが増えて
くる感じです。
あんまりヤリ過ぎて歌っているのは、個人的には
好きではないんですが、このNitty Grittyはなぜか
このデジタルのダンスホールのアーティストの中
では特に好きなアーティストです。
なんか彼の歌には世界観がある気がするんですね。

ちなみに「アウト・オブ・キー」の解説をした
面白い文章を見つけたので載せておきます。

レゲエDJ HIBIKILLAが選ぶアウト・オブ・キー シンガー & シングジェイ特集!!

さて今回のアルバムですが、内容的にも彼
Nitty Grittyの代表作ともいえるアルバムだと
思います。

1曲目表題曲の「General Penitentiary」は、
彼のヴォーカルの魅力がよく表現された曲です。

Nitty Gritty - General Penitentiary


2曲目「Penitentiary Dub」はその「General
Penitentiary」のダブです。
こちらはバックのStudio One Bandの演奏の良さが
よく解ります。

Nitty Gritty - Penitentiary Dub


3曲目「Can't Test Me」は、Burning Spearの
「He Prayed」というリディムが使われた曲の
ようです。

4曲目「Test Me Dub」は、「Can't Test Me」
のダブ。

5曲目「Tell Me Whata Gwann」は、Nitty Grittyの
ヴォーカルとホーンの掛け合いがイイ味を出して
いる曲です。

Nitty Gritty - Tell Me Whata Gwann


6曲目「Gwann Dub」は、「Tell Me Whata Gwann」
のダブ。

7曲目「Under The Moonlight」は、いかにも
「Nitty Gritty節」といった曲で、気持ち良い
歌声を聴かせてくれています。

8曲目「Moonlight Dub」は、「Under The
Moonlight」のダブ。

Nitty Gritty - Moonlight Dub


今回のアルバムは87年の作品ですがバックも
打ち込みではなく、Studio One Bandの演奏が
このNitty Grittyの歌声にうまく華を添えている
印象です。
バックがあまり無機質でないところも、この
アルバムの魅力になっています。
特にその印象は歌が抜けたダブに強く感じます。
ダブの場合打ち込みだと無機質過ぎて面白みが
あまり無くなっちゃうんですね。
その点今回のアルバムはダブの曲にもディーテール
があるので、聴き易いダブになっていて
ショーケース・スタイルがビシッとキマっている
んですね。
アルバムとしての完成度の高く、良い内容の
アルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Nitty Gritty
○アルバム: General Penitentiary
○レーベル: Dug Out
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1987

○Nitty Gritty「General Penitentiary」曲目
1. General Penitentiary
2. Penitentiary Dub
3. Can't Test Me
4. Test Me Dub
5. Tell Me Whata Gwann
6. Gwann Dub
7. Under The Moonlight
8. Moonlight Dub