今回はRod Taylorのアルバム

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「Lonely Girl」です。

Rod Taylorはルーツ系のシンガーです。
2002年シンコー・ミュージック刊行の本「Roots
Rock Regae」にはこの人の紹介とアルバムが3枚紹介
されていて、Barry Brownとのグループ「エイリアンズ」
で活躍したのちにソロに転向し人気シンガーとなった
とのことですが、一時歌手を止めて農業をしていた
事もある人なんだそうです。

Rod Taylor (singer) - Wikipedia

今回のアルバムはその「Roots Rock Regae」にも掲載
されているアルバムのひとつで、1983年の作品の
ようです。
80年には代表作のひとつであるアルバム「Where Is
Your Love Mankind」をGreensleevesからリリース
していますが、この時期はまだ彼の人気が一番あった
頃なんじゃないかと思います。

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Rod Taylor - Where Is Your Love Mankind (1980)

全10曲で収録時間は32分24秒。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

All Tracks Produced by E. (Culture) Cooper
Except Track #8 by R. Taylor. Ossie and Culture

Recorded at Channel One Studio, Harry J's Studio Peter
Ashbourne: Creative Sound: Great Shake
Mixed at Channel 1 & King Tubby's Studio by
Scientist. Culture & Professor

という記述があります。

今回のアルバムはバックがなかなか良いので、
表記が無いのはちょっと残念な気がします。
Roots Radicsなどの、この80年代初めのダンス
ホール・レゲエで活躍したミュージシャンが参加
したのは間違いのないところです。
スタジオの多さなどから見て、彼のヒット曲を
まとめたアルバムという事なのでしょうか?
裏面には「!975-1982」という文字があります
ので、もしかしたらその時代の音源を集めた
ベスト集というアルバムなのかもしれません。
ただ聴いた印象としては、ダンスホール期の音源
という感じが強いです。

プロデュースはE. (Culture) Cooper。
ミックスはChannel 1とKing Tubby Studioで行われ、
Scientist、Culture、Professorが担当しています。

さてこのアルバムですが、このRod Taylorは70年代
のルーツ・レゲエの時代から活動を始め、この80年
代前半のダンスホール・レゲエの時代にピークを
迎えているミュージシャンです。
そのルーツとダンスホールの入り混じったような
サウンドがこのRod Taylorにはすごく合っている
ような気がします。
聴いていてすごく気持ちが良いサウンドなんですね。

「Roots Rock Regae」にはこのアルバムについて、
「サイエンティストをはじめとするミキサー陣の、
いかにもゲットー・ロックいう感じのラフで力強い
ミキシング・トラックにのって……(省略)……
アルバム1枚を通してメッセージを貫いた、力の
こもった歌声を聴かせてくれる快作。」という
「林」さんという方の文章があります。
このアルバムがRod Taylorというアーティストの
一番脂の乗り切った良い時期を切り取ったアルバム
であることは間違いが無さそうです。

1曲目「Mr. Music」は、あのMoodiscのHarry Mudie
の超有名曲「Drifter」のリディムです。
この80年代前半特有のルーツの香りを残した
ダンスホールのサウンドはシビレます。

Rod Taylor Mr Music


2曲目「Why (Bad Vibe) 」もこの時代のダンスホール
の特徴がよく表れた1曲です。
何か甘く切ないようなメロディが何とも言えません。

3曲目「Give Thanks & Praise」は、イントロは
あのAugustus Pabloの代表曲「Java」です。
Rod Taylorが歌いだすとちょっと雰囲気が変わります
が、ギターの刻むリズムに乗せたディープ感の強い
曲です。

4曲目が表題曲の「Lonely Girl」です。
この曲はネットで調べてみたところ「Cuss Cuss」と
いうリディムが使われているようです。
まさにこの時代の魅力が集約されているような1曲
です。

rod taylor - lonely girl


5曲目「Never Give Up」は、エコーのかかった
Rod Taylorの陰影の濃いヴォーカルがすごく印象的
な曲です。

Rod Taylor - Never Give Up (Lonely Girl - 198X)


7曲目「Step Right In」は、Rod Taylorのエコーの
かかったヴォーカルにフルートのちょっと明るい
メロディが印象的な曲です。

9曲目「Don't Let Me Down」は、「Roots Rock Regae」
の解説文などを読んでもThe Beatlesのカヴァー曲と
なっているのですが…どうもメロディもちょっと違う
感じの曲です。

10曲目「Mr. Music Dubwise」は、1曲目「Mr. Music」
のダブ・ヴァージョンです。
ベースを基調としたラフなミックスがカッコイイです。

アルバムを1枚通して聴いた印象としては、ラフで
ハードなミックスに乗せたRod Taylorのエコーの効いた
ヴォーカルがすごく気持ちの良いアルバムだと思い
ました。
この80年代前半のルーツの名残りの残ったダンス
ホール・レゲエのサウンドは、この時代ならではの
他にない魅力があります。
ルーツとデジタルのダンスホールの狭間で、ともすると
見過ごされがちなこの時代ですが、混沌とした
「カオスの魅力」のようなものがある面白い時代
なんですよね。

その時代に輝いていたヴォーカリストRod Taylorの
アルバムとして、このアルバムは押さえておいた方が
良いアルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Rod Taylor
○アルバム: Lonely Girl
○レーベル: King Culture
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1983

○Rod Taylor「Lonely Girl」曲目
1. Mr. Music
2. Why (Bad Vibe)
3. Give Thanks & Praise
4. Lonely Girl
5. Never Give Up
6. Black History
7. Step Right In
8. The Lord Is My Light
9. Don't Let Me Down
10. Mr. Music Dubwise

●今までアップしたRod Taylor関連の記事
〇Rod Taylor「Garden Of Eden [1975-82] 」
〇Rod Taylor「Where Is Your Love Mankind」