今回はJimmy Cliffの名曲「Many Rivers To Cross」
の歌詞を紹介してみたいと思います。

この歌の歌詞は私が若い時に買った東芝EMIの
LP、Jimmy Cliffの「The Best Of Jimmy Cliff」
に付いていました。

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Jimmy Cliff - The Best Of Jimmy Cliff (1975) LP

昔は英語が得意な人は少なかったので、こうした
「洋盤」にはよく英語の対訳が付いていたん
ですね。
少しでも多くのリスナーを獲得するために、
レコード会社も努力していたんだと思います。
そうした歌詞を、当時のリスナーだった私たちは
食い入るように読んで、だんだんレゲエという
音楽が好きになっていったんですね。

ただ70~80年代当時の私には、なぜこれだけ
Bob Marleyをはじめとするアーティストが社会に
対して怒っているのか?感覚的に解らないところが
ありました。
当時の日本は高度成長期に入っていて、日本の
社会はこれから良くなって行くという希望が
あったんですね。
ところが今の時代の方が、彼らの階級差別や
人種差別に対する怒りが、よりリアルに
聞こえます。
それはもしかしたら当時感じていた楽観的な
未来が、今の日本の社会に現実味が無くなって
いるからかもしれません。
だとしたらとても残念な事です。

ただそうした70年代のレゲエという音楽が
持っていたリリックが今の社会に、より重要に
なっているのかもしれません。

さて今回のJimmy Cliffですが、レゲエ・アーティスト
の中でもその才能を早くから認められ、海外で
活躍したアーティストとして知られています。
彼はまだジャマイカがスカの時代だった60年代
に、才能を認めれらてイギリスに渡っているん
ですね。
そこでしばらく芽が出ずに苦労する事になるの
ですが、レゲエの時代になった70年代に映画
「The Harder They Come」の主人公アイヴァン役
などをきっかけに人気レゲエ・アーティストと
して活躍するようになるんですね。

アーティスト特集:Jimmy Cliff(ジミー・クリフ )

この「Many Rivers To Cross」は、その苦悩する
イギリス時代に作られた曲で、「The Harder They
Come」や「Wild World」などと並ぶ彼の初期の
代表曲のひとつです。


●遥かなる河(Many Rivers To Cross) - Jimmy Cliff

渡る川は数多くあれど
私の渡るべき河はいずこ?
さまよい、道を見失いつつ
ドーヴァーの白き絶壁に沿って
私は独りさすらう
この信念だけを支えに
私は今日も生きてゆく

流れゆく歳月に押し流されながらも
私は心のプライドだけを信じて
どうやら生きのびてきた
それでも、この孤独は拭われようもなく
独りで生きて行くのはこんなにも辛い
訳も言わずに去ったあの女を偲び
その面影に悩みつづける私

渡る河は数多くあれど
いったいどこから始めれば良いのやら…
恐ろしい罪を犯してしまおうと
思ったこともある
何度あったことか…

渡る河は数多くあれど
私の渡るべき河はいずこ?
ドーヴァーの白き絶壁に沿って
私は独りさすらう
この信念だけを支えに
私は今日も生きてゆく…

(東芝EMIのアルバムJimmy Cliff「The Best Of Jimmy Cliff」
山本安見さんの対訳より)

Jimmy Cliff - Many Rivers To Cross



この曲は彼の主演映画「The Harder They Come」
の中でも使われている名曲です。
バラード調のナンバーなので「My Way」か何かの
ように人生を謳歌するような事が歌われているのか
と思ったら、けっこう素直に自分の苦悩を歌った歌
なんですね。
このあたりは彼Jimmy Cliffのイギリス時代の苦悩が、
素直に反映した歌詞なんですね。

映画「The Harder They Come」の主人公アイヴァン
は、やる事なす事がすべてうまくいかずに、
ついには強盗にまで身を落としてしまいます。
ただその強盗になった事で、彼は初めて「英雄」
になれるんですね。
そして最後は女に裏切られ、警官隊に包囲されて
銃でハチの巣になって死んでいく…。
映画の冒頭に映画館でマカロニ・ウエスタンを見て
いるシーンがあって、暗がりで誰かの声で「主役は
最期に死ぬものだ」という言葉をアイヴァンは聞く
んですね。
その言葉通りに死んでいくアイヴァン…。

その映画の主人公と裏腹に、苦悩の時期があった
とはいえ、Jimmy Cliffは次々と成功を手にし、
世界のレゲエ・スターへと成長して行きます。
しかし今回の歌詞にあるように「恐ろしい罪を犯して
しまおうと思ったこともある 何度あったことか…」
というのは彼の本音で、この成功も紙一重の差で
全く逆のアイヴァンの人生を歩んだかもしれない
事を、このJimmy Cliffはしっかりと自覚している
んですね。

この歌の中で歌われている彼は、まだ苦悩の中に
居ますが、おそらく彼はけっして過ちを犯さなかった
でしょう。
何故なら彼は、その瞬間に成功が一瞬で消えてしまう
事をしっかりと自覚しているのですから。
ただプライドにすがりながら歯をくいしばって耐えて
いるJimmy Cliffの姿が、この歌詞からは見えます。

成功と失敗は紙一重である、しかし成功するには
それなりの理由もある。
その事が解っている者だけが、成功できるのかも
しれませんね。

Many Rivers To Cross ~ Jimmy Cliff ~ Live 1984