今回はJohn Holtのアルバム

john_holt_04a

「Memories By The Score: Classic Singles 1968-74」です。

John Holtはレゲエの前身のロックステディの時代
にコーラス・グループThe Paragonsのリード・
ヴォーカルとしてデビューして「The Tide Is High」
などの数々のヒットを飛ばしたのち、レゲエの時代に
なってもソロとして活躍し、ルーツ・レゲエ→ダンス
ホール・レゲエと常に第一線で活躍し続けたシンガー
です。

paragons_01a
The Paragons - Riding High On The Beach

アーティスト特集 John Holt (ジョン・ホルト)

今回のアルバムは2000年にイギリスのWestside
というレーベルから発売された彼のアンソロジーです。
タイトルに「Classic Singles 1968-74」とあるように、
1968年のまだロックステディの時代のThe Paragons
のヒット曲から74年までのルーツ・レゲエの時代の
彼のシングル曲をコレクションしたアルバムのようです。

ちなみにロックステディの時代というのは、66年
から68年までのわずか3年間で終わってしまった
時代なんですね。
それ以前はブルースやR&B,ジャズなどに影響を
受けたスカが流行っていたんですが、この3年間は
リズムが少し遅くなり甘いメロディを持ったロック
ステディが大流行したのですが、その中心人物だった
Jackie MittooやLyn Taittがカナダに移住してしまった
為に、わずか3年間という短い期間で終わってしまう
んですね。
その次に誕生したのがレゲエ、今で言うルーツ・レゲエ
なんですね。
(ルーツ・レゲエという呼び名は他のレゲエと区別
する為に後から付けられた名前で、当時は単にレゲエ
と呼ばれていました。)

今回のアルバムでは、そのロックステディの時代の
The Paragonsの曲が2曲と、John Holtの初期レゲエの
時代の音源が収められています。

全18曲で収録時間は48分40秒。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

表ジャケが3ツ折りの小冊子になっており、そこの
1ページに曲目とその制作年、レコード会社が書か
れています。
それを写すと、

1 & 4 1968 Trojan Recordings
2,5-9,12 & 16 1971 Trojan Recordings
3 1970 Trojan Recordings
10 1973 Trojan Recordings
11,14 & 17 1972 Trojan Recordings
13,15 & 18 1974 Trojan Recordings

となっています。

曲目は最後に載せましたが、1曲目4曲目のThe Paragons
の2曲が68年、3曲目が70年、2曲目と5~9曲目、
16曲目が71年、11曲目と14曲目、17曲目が
72年、10曲目が73年、13曲目と15曲目、18曲
目が74年となっています。

さて今回のアルバムですが、正直なところ知っている
曲はJohnny Clarkeなども歌っている15曲目「My
Desire」だけぐらいで一見地味なアルバムですが、
内容はすごくイイんですね。
John Holtのヴォーカルのウマさはもちろんなんです
が、特筆すべきは初期レゲエ特有のガシッと硬い
サウンドです。
カシっとしたドラミングやはじき返すようなベースの
音は、この時代特有の魅力なんですね。
甘いロックステディからビターな初期レゲエへという
流れが、このアルバムには刻まれています。

1曲目表題曲の「Memories By The Score」は
The Paragonsの68年のヒット曲のようです。
ロックステディ特有のスローなリズムに甘いメロディ
という特徴がありますが、ロックステディとしては
後期の為かすでに初期レゲエの香りも微妙にある
1曲です。

The Paragons - Memories By The Score


2曲目は71年の「My Heart Is Gone」です。
この曲ではベースが初期レゲエ特有のリズムを刻んで
います。

3曲目は70年の「My Heart Is Gone」です。
鐘の音から船の汽笛というイントロから初期レゲエ
らしい気持ちの良いビートを刻んでいる1曲です。

John Holt - Sea Cruise


4曲目は68年のThe Paragonsのヒット曲
「Number One For Me」です。
こちらはロックステディらしい甘いメロディの曲です。

5曲目は71年の「Strange Things」です。
いわゆるレゲエのウンチャカ・リズムに乗せた曲です。

6曲目は同じく71年の「Any More」です。
サックスとJohn Holtのヴォーカルのカラミが絶妙の
ちょっと甘いムードを持った1曲です。

John Holt - Anymore


8曲目も71年の「Let's Linger Awhile」です。
オルガンのイントロからピアノのメロディに乗せた
John Holtの陽気な感じのヴォーカルが楽しい1曲
です。
9曲目「Linger Version」はその「Let's Linger Awhile」
のヴァージョンになっています。
まだこの時代はエフェクトなどはあまり使われておらず、
多少ヴォーカルにエコーがかかっているといった感じの
曲で、ダブとカラオケの中間のような曲です。
John Holtのトースティングのようなヴォーカルが、
ちょっと面白い味を出しています。

John Holt - Linger A While + Version (Syndicate)


10曲目は73年の「Don't Give Up The Fight」です。
このあたりになると時代が進んだせいか、ラスタファリズム
を感じるタイトルになっています。
この頃からレゲエは徐々に世界的に認められる音楽へと
成長して行くんですね。

11曲目は72年の「My Happines」です。
John Holtらしい丁寧な歌い込みの1曲です。

12曲目は71年の「Give Me Justice」です。
初期レゲエを感じさせるピアノとベースが気持ちの良い
リズムを奏でる1曲です。

13曲目は74年の「I'll Be Yours」です。
初期レゲエらしいギターのリズムにJohn Holtのまろやか
なヴォーカルがイイ味を出している1曲です。

15曲目は書いたようにJohnny Clarkeも歌っている
事で知られる「My Desire」です。
この時代のレゲエ・バラードの名曲です。

JOHN HOLT - MY DESIRE


16曲目は71年の「A Tree In The Meadow」です。
こちらもバラード調のナンバー。
こういう曲の歌いこなしが、John Holtは天才的にウマい
んですね。

ラストの18曲目は74年の「I've Been Admiring You」
です。
この曲にはSlim Smithのロックステディのヒット曲
「The Beatitude」のリディムが使われています。

アルバム全体を通した印象としては、ちょっと粗削りな
初期レゲエのリズムを、John Holtの柔軟なヴォーカルが
うまく乗りこなしている感じです。
その柔と剛の兼ね合いがすごく良くて、面白いアルバム
になっている気がします。
John Holtがこの初期レゲエの面白さを、よく引き出して
いるんですね。

彼はその後もダンスホール・レゲエの時代になっても
活躍するんですが、そうした活躍が出来たのもこうした
柔軟なヴォーカル力があったからこそなんですね。
今回のアルバムはそうした彼のヴォーカル力と、
手記レゲエの持つ粗削りだけれどパワフルな魅力が
うまく詰め込まれたアルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: John Holt
○アルバム: Memories By The Score: Classic Singles 1968-74
○レーベル: Westside
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2000

○John Holt「Memories By The Score: Classic Singles 1968-74」曲目
1. Memories By The Score - The Paragons
2. My Heart Is Gone
3. Sea Cruise
4. Number One For Me - The Paragons
5. Strange Things
6. Any More
7. A Love Like Yours
8. Let's Linger Awhile
9. Linger Version
10. Don't Give Up The Fight
11. My Happines
12. Give Me Justice
13. I'll Be Yours
14. Loving Memories
15. My Desire
16. A Tree In The Meadow
17. Part Of Life
18. I've Been Admiring You

●今までアップしたJohn Holt関連の記事
〇John Holt「500 Volts Of Dub」
〇John Holt「1000 Volts Of Holt (Deluxe Edition)」
〇John Holt「Police In Helicopter」
〇The Paragons「Riding High On The Beach」