今回はKing Jammy'sのアルバム

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「The Rhythm King」です。

King Jammy(Prince Jammy)はレゲエの歴史の中で、
師匠のKing Tubbyと並ぶ最も偉大なプロデューサー
であり、ミキサーである人です。
彼のレゲエに残した功績は計りしれません。
その中でも彼のもっとも置きな功績は、80年代
の半ばにWayne Smithのヒット曲「Under Me Sleng
Teng」をきっかけにレゲエにデジタル革命を引き
起こした事です。

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Wayne Smith - Under Me Sleng Teng

彼はこのヒットをきっかけにそれまでKing Tubby's
のエンジニア時代から名乗っていたPrince Jammy→
King Jammyに改名しています。
それまでの生演奏の録音からデジタルのコンピューター
を使った作成「打ち込み」に変化した事で、音楽制作
は劇的に効率化して行くんですね。

King Jammy (キング・ジャミー)

制作のコストも安く、スピードも早くなった反面、
それまでミュージシャンとして活躍していた人が
職を失ったという負の側面もあります。
この80年代から90年代にかけてというのは、
事務処理などもそれまでのアナログからパソコンに
よる処理に代わって行ったりと、他の仕事でも
職場環境が劇的に変わっていった時代なんですね。
ジャマイカの音楽界で、その先鞭を付けたのが
このKing Jammyだったという訳です。

今回のアルバムはそんなKing Jammyが率いるKing
Jammy's Recording Studioの音源を集めた1枚です。
副題に「18 Dancehall Classics!!」とあるように、
Jammy'sのヒット曲が18曲収められたベスト盤の
ようです。

全18曲で収録時間は62分49秒。

詳細なミュージシャンの表記はありませんが、
「Musicians」としてSteely And Cleavie、Mikey Bennett、
Dean Fraserの名前があり、さらに「Background Vocals」
として、Brian And Tony Gold、Home T、Dean Fraser
の名前があります。

プロデュースはもちろんKing Jammyです。

収録されているアーティストは、Dean Fraser、
Johnny Osbourne、Eccleton Jarrett、Sugar Minott、
Admiral Bailey、Admiral Tibet、Chuck Turner、
Horace Andy、Super Black、 Little John、Wailing Souls、
Little Twitch、Brian & Tony Gold、Frankie Paul、
Eak A Mouse、Home T、OTといったおもにダンスホール
で活躍したと思われる面々です。

さてアルバムの内容ですが、King Jammyが80年代に
成し遂げて来た仕事がよく解るアルバムになって
います。
有名無名といろんな人が居ますが、トータルで聴くと
やっぱり良きにつけ悪しきにつけ「King Jammyの音」
になっているんですね。

この時代、80年代のダンスホール・レゲエの音に
なると、もはや70年代のルーツ・レゲエの面影は
全くありません。
それほど音楽自体が洗練されて、同じレゲエという
名前でもメタモルフォーゼしているんですね。
ある意味この80年代のレゲエの音というのは、
行くとこまで行っちゃった音なのかもしれません。

1曲目はDean Fraserの「Dean In Chinatown」です。
この80年代のダンスホール・レゲエの時代になると、
あまりインスト・ナンバーは聴かれなくなるのですが、
その中でひとりサックス勝者として頑張っているのが
このDean Fraserです。

2曲目はJohnny Osbourneの「Chain Grabber」です。
Johnny Osbourneはロックステディ期から活躍する
ベテラン・シンガーです。
ロックステディの時代にソロアルバムまで出している
んですが、そのアルバムの発売当日に彼はカナダに
移住してしまうんですね。
そして70年代後半に再びジャマイカに帰って来て、
ダンスホール・レゲエの時代に活躍しだすという
変わった経歴を持った人です。
このデジタルの時代になっても活躍できたのは、
やはりその歌唱力にあった気がします。

Johnny Osbourne - Chain Grabber HQ


4曲目はSugar Minottの「Conscious Lover」です。
4大ヴォーカリストのひとりとまで言われるSugar Minott
ですが、このデジタルの時代になっても素晴らしい歌声
を聴かせています。

Sugar Minott - Conscious Lover


5曲目はAdmiral Baileyの「Think Me Did Done」です。
Admiral Baileyはこのデジタル期に人気を博したシンガー
のひとりです。
彼の歌を聴いていると、このデジタル期のリズムの乗り
こなしのウマさが光ります。

6曲目は同じくこのデジタル期に活躍したAdmiral Tibet
の「Runnning From Reality」です。
King Jammyらしいリズムの作り方のウマさが光る1曲です。

Admiral Tibet - Running From Reality


8曲目はHorace Andyの「Love Light Of Mine」です。
ルーツ期から独特のファルセット・ヴォイスで活躍する
Horace Andyですが、やはり歌いこなしのウマさが光ります。

10曲目はLittle Johnの「Nuff A Dem A Gwan」です。
Little Johnはデジタル以前ののダンスホール・レゲエ
の時代から活躍するシンガーです。
(Dub Plate Special)と銘打っているだけに、出だしから
ちょっと凝った作りの曲です。

King Jammy's The Rhythm King - Little John - Nuff A Dem A Gwan (Dub Plate Special)


11曲目はルーツ期から活躍するコーラス・グループ
Wailing Soulsの「Move On」です。
このWailing Soulsのコーラス・ワークの素晴らしさを
生かした1曲です。

12曲目はLittle Twitchの「Devil Send You Come」です。
ロックステディ期から使われているAfrican Beatリディム
をうまく使った曲です。

13曲目はBrian & Tony Goldの「Pass Me A Dub Plate」
です。
Moodiscのクラシック・リディム「Drifter」の使い方が
絶妙な1曲です

Brian & Tony Gold - Pass Me A Dubplate


14曲目はFrankie Paulの「Leave It To Me」です。
「レゲエのスティービー・ワンダー」と呼ばれた盲目の
天才シンガーFrankie Paulの歌唱力を生かした1曲です。

以下は省略しますが、どの曲を聴いてもかなり凝った
作りで、King Jammy'という人のセンスがよく出た
アルバムになっていると思います。
この時代になるとプロデューサーの力が強くなって、
その分歌手は歌う事だけを求められるようになって
行くんですね。

たぶん70年代のルーツにあって、80年代の
ダンスホール・レゲエに無いものもあるでしょう。
でも70年代のルーツに無くて、80年代のダンス
ホール・レゲエにあるものもあるという事です。
時代が変われば音も変わる。
まずは偏見を持たずに聴くことで、新しい発見が
あるかもしれません。
大切なのは心を閉ざさずに聴く事です。
まあ、それが一番難しいのだけれど…(笑)。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: King Jammy's
○アルバム: The Rhythm King
○レーベル: Maximum Pressure
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2003

○King Jammy's「The Rhythm King」曲目
1. Dean In Chinatown - Dean Fraser
2. Chain Grabber - Johnny Osbourne
3. Rock Them One By One - Eccleton Jarrett
4. Conscious Lover - Sugar Minott
5. Think Me Did Done - Admiral Bailey
6. Runnning From Reality - Admiral Tibet
7. We Rule - Chuck Turner
8. Love Light Of Mine - Horace Andy
9. Bad Boys - Super Black
10. Nuff A Dem A Gwan - Little John (Dub Plate Special)
11. Move On - Wailing Souls
12. Devil Send You Come - Little Twitch
13. Pass Me A Dub Plate - Brian & Tony Gold
14. Leave It To Me - Frankie Paul
15. Taller Than King Kong - Eak A Mouse
16. If The Rockers Don't Groove You - Home T
17. I Like Yvonne - OT
18. King Jammy You Hit Me - Brian & Tony Gold (Dub Plate Special)