今回はKing Tubby'sのアルバム

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「African Love Dub 1974-1979」です。

King Tubbyは本名をOsbourne Ruddockと言い、レゲエの
ダブのミキサー、プロデューサーとして大きな功績を
残した人です。

ダブという音楽は70年代の初めぐらいからレゲエで
作り始められた音楽で、元の楽曲のカラオケにエコーや
リバーブなどのエフェクトをかけることで、全く別の
曲に作り変える手法を言います。
73年にそのダブのアルバムが一斉に発売されたことで、
一気にレゲエの1ジャンルとして確立しました。

ダブ - Wikipedia

ただダブを誰が一番最初に発明したのかは諸説あり、
はっきりとは解っていないんですね。
ただプロデューサーのBunny Leeなどは彼King Tubbyが
偶然の失敗からダブ(ヴァ-ジョン)を発明したという
説を唱えています。
ただKing Tubbyがダブを完成させたという事は、多くの
人が認めているところです。

そうしたレゲエのダブに功績のあったKing Tubbyですが、
70年はは自分のスタジオKing Tubby'sで多くのダブを
作成していますが、80年代に入りダンスホール・レゲエ
の時代になると助手だったPrince JammyやScientistに
ダブのミックスの仕事を任せ、自分はあまりダブの
ミックスをしなくなり、電気技師の仕事をしていた
時期があります。
ただその二人の助手が独立して去ってしまうと、再び
King Tubby'sで当時流行していたデジタルのダンスホール・
レゲエで、「Tempo」などのヒットを飛ばし復活するん
ですね。
ただ89年に何者かに自宅前で銃殺されて、亡くなって
います。

King Tubby(キング・タビー)


今回のアルバムはClocktower Recordsから出ている
アルバムで、1974年から1979年までにKing
Tubby's作られたダブを集めた作品集のようです。
ちなみにKing Tubby'sと言った場合はKing Tubby's
StudioのKing Tubbyと助手の誰か、King Tubbyと
いった場合はダブ・マスターKing Tubby本人を
指すようです。

さて今回のアルバムですが、初めに断っておくと
Clocktowerのアルバムって、どうも音質がイマイチ
なんですよね。
今回のアルバムもハッキリしたパリパリ音までは
確認しませんでしたが、多少くぐもったような
音質です。
購入の際はその事を理解して購入して下さい。

全13曲で収録時間は44分55秒。

今回のアルバムはいわゆる「Bunny Lee音源」で、
演奏は彼のハウス・バンドThe Aggrovatorsが担当
しています。
(今回のアルバムでは綴りがThe Agrovatorsに
なっています。)
裏ジャケットにメンバーの名前が乗っていますが、
楽器の表記は無し。
それを写すと、

Carlton Barrett, Sly Dunbar, Carlton 'Santa' Davis
Robbie Shakespeare, Aston Barrett, Tony Chin
Shelly Sims, Bobby Ellis, Lennox Brown, Gefferey Chung
Earl Smith, Carl Harvey
Keith Sterling, Jackie Mittoo, Winston Wright

となっています。
ドラム、ベース、ホーン、ギター、キーボードと
いった順ですかね?

プロデュースとアレンジはBrad Osbourne & Bunny
Leeです。
Brad OsbourneはアメリカのClocktowerレーベルの
主催者です。
このBrad OsbourneとBunny Leeは仲が良かったよう
です。
Bunny Leeはアメリカへの販路拡大に、このClocktower
レーベルを使っていた節が見られます。

2曲目「Irce Man Dub」にはフルートが入っていて、
どうもTommy McCookあたりが吹いているんじゃないか
と思うんですが、リストには名前がありません。

さて今回のアルバムですが、音源としてはJohnny Clarke
やLeroy Smart、Harace Andyあたりの曲が多く使われて
いるようです。
特にKing TubbyはJohnny Clarkeが「お気に入り」だった
のか、彼のダブを聴いているとJohnny Clarkeが使われて
いるケースってすごく多いんですよね。
彼の作るダブのイメージにJohnny Clarkeが合っていたん
でしょうか?
いくつかの曲は聴き覚えがある気がするのですが、
King Tubbyはけっこうたくさん聴いているので、
かえってどのアルバムで聴いたのか解らなくなっちゃう
んですよね(笑)。

今回のアルバムでは銃撃の音などエフェクトが多く
使われているのも印象的です。
エフェクトを多用するLee Perryなどと較べると、
King Tubbyはどちらかというとエコーやリヴァーヴを
多く使うタイプで、こういうエフェクトは控えめな
タイプなんですよね。
今回このアルバムはKing Tubby'sとなっているように、
King Tubby's Studioのアルバムなので、誰か別の
人のミックスなのかも…。
比較的装飾的な音作りをしないKing Tubbyにしては、
今回のアルバムは、微妙に音が華やかな印象があります。

ダブという音楽は面白い音楽で、作る人が違えば
コンセプトも違うし、同じダブという名前が付いて
いても180度ぐらい違う音にになってしまう音楽
なんですよね。
今回のアルバムはたぶん全てが彼のダブでは無いの
だけれど、それでも彼King Tubbyの目の効いたKing
Tubby'sのダブである事は間違いがありません。

2曲目「Irce Man Dub」はJohn Holtの「Ali Baba」、
6曲目「African Congo Dub」はHarace Andyの
「You Are My Angel」など名曲をうまく混ぜ込んで
いるのもニクイところです。
アルバムに華やかさがあるのは、こうした仕掛けが
あるからなんですね。

このアルバムから感じるのはKing Tubby'sという
スタジオの異常なほどのクウォリティの高さです。
このスタジオで多くのプロデューサーがダブの
ミックスを願いしたのは、他より高いクウォリティ
のダブが確実に作れたからなんですね。
ダブというのはある意味一度録音したテープの
「再利用」の方法であった訳なんですが、確実に
元の音源とはまた違う面白いサウンドが作れた事が、
この70年代のレゲエという音楽の幅を広げていた
ことは間違いありません。

機会があれば聴いてみてください。

Out Of This World dub - King Tubby


King Tubby - Bondage Dub



○アーティスト: King Tubby's
○アルバム: African Love Dub 1974-1979
○レーベル: Clocktower Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年:

○King Tubby's「African Love Dub 1974-1979」曲目
1. Bondage Dub
2. Irce Man Dub
3. The Spliff Dub
4. Babylon Dub
5. Giveaway Love Dub
6. African Congo Dub
7. Ready Out Dub
8. African Tribal Dub
9. Winds Of Dub
10. Forgive & Forget Dub
11. Strong Love Dub
12. Me Lover Gone Dub
13. Wicked Man Dub
14. Out Of This World Dub

●今までアップしたKing Tubby関連の記事
〇King Tubby & Friends「Dub Gone Crazy: The Evolution Of Dub At King Tubby's 1975-1979」
〇King Tubby & Soul Syndicate「Freedom Sounds In Dub」
〇King Tubby & Friends「Dub Like Dirt 1975-1977」
〇King Tubby & Prince Jammy「Dub Gone 2 Crazy: In Fine Style 1975-1979」
〇King Tubby And The Aggrovators「Shalom Dub」
〇King Tubby, Scientist「Ranking Dread In Dub」
〇King Tubby, Errol Thompson「The Black Foundation In Dub」
〇King Tubby「100% Of Dub」
〇King Tubby「Dangerous Dub: King Tubby Meets Roots Radics」
〇King Tubby「Dub From The Roots」
〇King Tubby「Fatman Presents: Unleashed Dub Vol.1」
〇King Tubby「King Of Dub」
〇King Tubby「King Tubby Presents The Roots Of Dub」
〇King Tubby「King Tubbys Presents Soundclash Dubplate Style Part 2」
〇King Tubby「Rocker's Almighty Dub」
〇King Tubby「The Fatman Tapes」
〇King Tubby「The Sound Of Channel One: King Tubby Connection」
〇King Tubby's (Scientist)「King Tubby's Answer The Dub」
〇King Tubby's「King Tubby's Present Two Big Bull In A One Pen Dubwise」
〇Augustus Pablo「King Tubbys Meets Rockers Uptown (Deluxe Edition)」
〇Augustus Pablo「Rockers Meets King Tubbys In A Fire House」
〇Prince Jammy VS King Tubbys「His Majestys Dub」
〇Tommy McCook & The Agrovators「King Tubby Meets The Agrovators At Dub Station」
〇African Brothers, King Tubby「The African Brothers Meet King Tubby In Dub」
〇Aggrovators「Dubbing At King Tubby's」
〇Bunny Lee & King Tubby Present Tommy McCook And The Aggravators「Brass Rockers」
〇Various (King Tubby & Clancy Eceles All Stars)「Sound System International Dub LP」
〇Various「Firehouse Revolution: King Tubby's Productions In The Digital Era 1985-89」
〇Various「King Tubbys Presents Soundclash Dubplate Style」
〇Various「Once Upon A Time At King Tubbys」
〇Augustus Pablo「Ital Dub」
〇King Tubby's (Prince Jammy) And The Agrovators, (Delroy Wilson)「Dubbing In The Back Yard / (Go Away Dream)」
〇Harry Mudie, King Tubby「Harry Mudie Meets King Tubby's In Dub Conference Volume One」
〇Harry Mudie, King Tubby「Harry Mudie Meet King Tubby In Dub Conference Vol.2」
〇Harry Mudie, King Tubby「Harry Mudie Meet King Tubby In Dub Conference Vol.3」
〇Niney The Observer All Stars At King Tubby's「Dubbing With The Observer」
〇Niney The Observer「At King Tubby's: Dub Plate Special 1973-1975」