今回はBob Marleyのアルバム「Rastaman Vibration」
より、「War(ウォー)」の詩を紹介してみたいと
思います。

Bob Marleyは私の若かった70代の二十歳
代頃に、一番初めにレゲエで好きになった
ミュージシャンです。
当時の私は他の若い人達と同じようにロック
などを聴いていたのですが、その頃ロックの
ギタリストEric Claptonの「I Shot The Sheriff」
がヒットして、初めてその曲の作者である
Bob Marleyというレゲエ・シンガーの存在を
知りました。
おそらく当時の多くの若者がレゲエという
音楽の存在を知ったのは、この「I Shot The S
heriff」だったんじゃないでしょうか?
そして私が買った初めてのアルバムがこの
Bob Marley & The Wailersのアルバム
「Rastaman Vibration」だったという訳です。
そして徐々にBob Marleyのアルバムを集める
ようになり、それを入り口にレゲエという
音楽を聴くようになっていったんですね。

このアルバムは当時東芝EMIから発売されて
いて、中にはジャケット大の18ページにも
及ぶ「The Marley Scorebook 1976」という
Bob Marleyの英字新聞の切り抜き写真集と、
ジャケット大の4ページのライナー・ノーツが
付いていました。
ライナー・ノーツには山本安見さんという方の
解説文とGreg Starrという人の解説の訳文、
それにBob Marleyの歌詞の山本安見さんの訳文
が付いていました。

bob_marley_05a
Bob Marley - Rastaman Vibration (1976)

今回はその中から「War(ウォー)」を紹介して
みようと思うのですが、この曲は「ウォー
(われらが讃えるハイレ・セラシエ一世、
演説より)」となっています。
この訳詩の最後にも

王の中の王 神の中の神
そして ユダ族の勇敢なる英雄として
われらが称えるH.I.M HAILE SELASSIE 1
による演説。カリフォルニアにて
2.28.1968

とあるので、1968年の2月28日の
エチオピア皇帝ハイレ・セラシエ一世の演説
をそのまま歌詞にした内容のようです。


●ウォー(われらが讃えるハイレ・セラシエ一世、演説より)/ War

”人生が私に何を教えてくれたか―
学びたいと思っている人々に
私はぜひ話して聞かせたい”

優性人種と劣性人種とを
わけへだてている社会の規律が
ついに そして永久に
葬り去られるその日まで
(戦争は留まることを知らずに広まっていく
Mr. War… Mr.War…)

人類のあいだに
一流とか二流とかの人種差別が
すべて失くなるその日まで
人間の肌の色の違いが
瞳の色と同じように
たいして重要なものでなくなるその日まで
(戦争は留まることを知らずに広まっていく
Mr. War… Mr.War…)

すべての人間が
人間としての基本的権利を
平等に保証されるその日まで
(戦争は留まることを知らずに広まっていく
Mr. War… Mr.War…)

永遠の平和 世界の市民権
そして 世界共通道徳へのあこがれが
求めても得ることのできない
束の間の幻想ではなく
現実のものとして得られるその日まで
(戦争は決して留まることを知らない
Mr. War… Mr.War…)

アンゴラ モザンビーク
そして 南アフリカで
人間以下の扱いをされているわれらの仲間
彼らを縛る下劣で不当な政治組織が
完全に崩壊されるその日まで
(戦争は到る所にはびこっている
Mr. War… Mr.War…)

その日がこなければ
アフリカ大陸は平和になれない
私たちアフリカンは
いざとなれば 立ちあがる
そして 私たちは必ず勝ってみせる
なぜなら 私たちは確信している
善は必ず悪に打ち勝つと…
善は必ず悪を制すると…

(東芝EMIのアルバムBob Marley & The Wailers
「Rastaman Vibration」より山本安見さんの訳文より)

War - Bob Marley (lyrics)



このアルバム「Rastaman Vibration」が作られた
のが1976年で、さらにこの歌詞で使われた
ハイレ・セラシエ一世のカリフォルニアでの
演説が1968年です。
このアルバムから数えても39年経った今の
世の中は、この時代より果たして平和になって
いるのでしょうか?
人種差別や階級差別はなくなっているので
しょうか?

つい先日に起きたパリのISによる襲撃事件
などをみると、かえって昔より悪くなっている
気がして、すごく暗い気持ちになってしまい
ます。

今回の襲撃事件などを見ても、元をただせば
ロシアやアメリカといった大国の思惑で戦争が
起こり、さらにそうした大国の支援でISの
ようなさらに過激な組織が出来て、争いがさらに
複雑化長期化して、空爆などで難民となった人々
がヨーロッパに流れ込み、その難民に紛れて入国
したテロリストが事件を起こすという、かなり
複雑な経緯を辿っています。

今回の襲撃事件の被害者は、カンボジア料理店で
食事をしていた人や、ロックのコンサートを見に
行った観客という何も罪深い事をしていない人々
です。
そういう人々を無慈悲に殺すというのは、いくら
思想的理由があるとはいえ、許される事ではあり
ません。

ただそうした凶行を起こすISというキチガイ
集団に身を落としたのは、イスラム教徒という事
で職を得られないという、民族差別や宗教差別が
引き金になっている事も事実なんですね。
だからといって人を殺して良いという理由には
なりませんが、この世の中はいまだにけっして
平等でなく、民族間の差別や対立の色濃く残って
いるという事です。

いくら報復の攻撃を繰り返しても、さらなるテロが
起こり、お互いの憎しみは強くなりこそすれ、
薄れるという事は無いのが今の状況です。
まさに今回の歌のように、全ての人が平等になる
日が来るまで、お互いの憎しみが消える事なく
戦争は起き続ける…。
人間というのは何と愚かなのでしょう。

自分と同じ人種のみが生き残れば、
あなたは幸せでしょうか?
自分と同じ宗教の人間のみが生き残れば、
あなたは幸せでしょうか?
自分と同じ国の人間のみが生き残れば、
あなたは幸せでしょうか?
自分と同じ思想の人間のみが生き残れば、
あなたは幸せでしょうか?

Bob Marley - WAR