今回は昔買ったレゲエのLPを探してみたら
Peter Toshのアルバム「Mystic Man」が出て来た
ので、その歌詞を紹介してみたいと思います。

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この「Mystic Man」は、Peter Toshの1979年に
リリースされたアルバムです。
この前年の78年にThe Rolling Stonesのレーベル
Rolling Stones Recordsよりアルバム「Bush Doctor」
がされており、それに続くRolling Stones Recordsの
第2弾として発売されたのがこのアルバムだったん
ですね。
「イギリスはBob Marleyではなく、Peter Toshを選んだ」
などと言われて、Peter Toshに一番勢いがあったのが
この時期だったんですね。

Peter Tosh (ピーター・トッシュ)

ちなみにThe Rolling Stonesにレゲエの手ほどきを
したのが、このPeter Toshだったそうです。

日本ではこのアルバムは東芝EMIから発売されて
おり、ライナー・ノーツには田川律さんという方の
解説文と英語の詩、山本安見さんという方の訳詩が
載っています。

今回はその表題曲「Mystic Man」の歌詞を紹介して
みたいと思います。


●Mystic Man ミスティック・マン(自然主義)

俺は自然主義者
自然の神秘を信じてる
俺は自然主義者
自然を愛してる

俺は
シャンペンなんか飲まない
(シャンペンなんか飲まない)
決して飲まない
それに 俺は
コカインを鼻でかいだりしない
(コカインをかいだりしない)
脳ミソがイカレちまうからな
それに 俺は
モルヒネを打ったりしない
(モルヒネを打たない)
危険だからな
それに 俺は
ヘロインもやらない
(ヘロインもやらない)

俺は過去の男さ
こうして 現在に生き
未来に向かって歩いていく
未来に足を踏み入れている
俺は過去の男さ
こうして 現在に生き
未来に向かって歩いていく

俺は自然主義者
自然の神秘を信じてる
俺は自然主義者
自然を愛してる

俺は あんたたちの好みの
フライド・チキンなんて食わない
ちっともうまくないからな
俺は あんたたちの好みの
フランクフルトなんて食わない
あんなスゴイもの ゴメンだね
俺は ハンバーガーも食わない
俺の主義に反するからな
俺は ピンクやらブルーやら
黄色やら緑色のソーダは飲まない

俺は過去の男さ
こうして 現在に生き
未来に向かって歩いていく
未来に足を踏み入れている
俺は過去の男さ
こうして 現在に生き
未来に向かって歩いていく

俺は自然主義者
自然の神秘を信じてる
俺は自然主義者
自然を愛してる

俺は
他の バカな連中みたいに
土曜にゲームをやったりしない
それに 俺は
日曜に集会を開いたりしない
そんなこと やっちゃいられないね

俺は自然主義者
自然の神秘を信じてる
俺は自然主義者
自然を愛してる

俺は過去の男さ
こうして 現在に生き
未来に向かって歩いていく
未来に足を踏み入れている
俺は過去の男さ
こうして 現在に生き
未来に向かって歩いていく

俺は自然主義者
自然の神秘を信じてる
俺は自然主義者
自然を愛してる

(東芝EMIのLP、Peter Toshの「Mystic Man」
山本安見さんという方の訳詩より)


Peter Tosh - Mystic man



この歌詞にはラスタファリアンとして生きたPeter Tosh
の生き方が、よく表れています。

この彼が信奉したラスタファリズムは、60年代のスカ
の頃からジャマイカのミュージシャンの間で信奉され
始めた新興宗教で、アフリカ回帰、自然主義、マリファナ
信仰などを教義としていました。
キリスト教やアメリカの黒人指導者であり貿易商でも
あったマーカス・ガーヴェイのアフリカ回帰運動や、
文明批判などが混ざり合った、かなりカルトな宗教
だったんですね。

ラスタファリ運動 - Wikipedia

私達黒人である「ラスタファリアン」は、退廃した汚れた
文明都市「バビロン」に住むここ頃の汚れた退廃した
人間(白人)「バビロニアン」によって、奴隷として
バビロンに連れて来られた。
しかし心正しく生きる私達ラスタファリアンは、現人神
(あらひとがみ)「ジャー」であるエチオピア皇帝ハイレ・
セラシエによって守られ、どんな苦難も乗り越えられる。
そしてついに「審判の時」が訪れ、罪深いバビロニアンは
神の裁きによって滅び、私達心正しきラスタファリアンは
マーカス・ガーヴェイの用意した船「ブラック・スター・
ライナー号」に乗って、私達の理想郷である「ザイオン」
のあるアフリカへと帰って行く…。

70年代当時のレゲエの曲では、だいたいこういう内容が
歌われている事が多いです。
「バビロン(Babylon)」、「バビロニアン(Babylonian)」、
「ジャー(Jah)」、「マーカス・ガーヴェイ(Marcus Garvey)」、
「ブラック・スター・ライナー号(Black Star Liner)」、
「審判の時(Judgement Time)」、「ザイオン(Zion)」
などは、レゲエの歌詞によく出てくるラスタファリズムの
キー・ワードです。

この70年代ぐらいまでは世界はまだまだ白人優位の
世の中で、アフリカから奴隷として連れて来られた
黒人は徐々に人権を認められるようになったものの、
まだまだ低い地位に甘んじていたというのが実情だった
んですね。
特に大きな産業を持たない極貧国だったジャマイカでは、
その最下層に居た黒人層はひどい暮らしを強いられて
いたんですね。
そうした貧しい暮らしをしていた彼らの希望になった
宗教が、このラスタファリズムだったという事です。

このPeter ToshはあのBob Marley以上にストレートな人
で、彼の歌詞には妥協が無いんですね。
この「Mystic Man」では汚れた文明「バビロン」を
真正面から批判しています。

まずシャンペン、コカイン、モルヒネ、ヘロインを
やらないと宣言しています。
酒や化学合成された薬物は「悪」だというのが、
彼の主張のようです。
ただこの人にとっては、マリファナはOKなん
ですね。
彼のファースト・アルバム「Legalize It」では、
逆にマリファナ解放を訴えています。

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Peter Tosh - Legalize It (1976)

人に幻覚を引き起こすものがけっして体に良いとは
思えないんですが、その辺がこのラスタファリズムの
カルトな側面です。

一応書いておきますが私はレゲエという音楽は好き
ですが、けっしてマリファナなどの薬物を吸う事は
肯定しません。
脳に幻覚の作用を引き起こすという事は、脳に相当の
負担がある事なんですね。
そういう事を繰り返すことは体にかなりの負担があり、
正常な生活を営めなくなる危険の高い行為なんですね。
また一度快楽を覚えてしまうと、人間はその快楽から
抜けだせなくなってしまう弱い生き物なんですね。
日本でマリファナが禁止されているのは、そうした
薬物依存の入り口になるとても危険なものだから
なんですね。
間違ってもマリファナや薬物に手を出さないで
ください。
厳しい言い方かもしれませんが、一度手を出したら
けっして「人間」には戻れなくなります。

話を戻すと、次にフライド・チキン、フランクフルト、
ハンバーガー、色付きのソーダといったものを批判
しています。
まさに添加物のいっぱい入った文明の汚れた食い物
といったところなんでしょう(笑)。

最後に「土曜のゲーム」と「日曜の集会」をやらない
と主張しています。
この「日曜の集会」がイマイチ解らなかったのですが、
英語では「Congregate on a Sunday」となっていて、
日曜に群れてパーティーを開く事でも批判しているん
でしょうか?

このゲームというの個人的によく解ります。
私はスマホとか使っていないので、電車に乗った時な
どに老人優先席に大股開きで座ってスマホをイジって
いる若い人を見ると、なんか異様な気がしちゃうん
ですね。
なぜそこに座って、なぜそこまでゲームをしなければ
ならないのか?
まさにPeter Toshの言う「バビロニアン」を見る
思いがしちゃうんですね(笑)。
今の世の中ではこうした「バビロニアン度」が、
この歌が作られた時代より世界的にも上がっている
んじゃないでしょうか。
そうした「バビロニアン」を見るたびに、すごく
もの寂しい気持ちになってしまうんですね。

以上がこのPeter Toshの「Mystic Man」の大まかな
歌詞の内容です。
この歌詞からは彼の自然崇拝するラスタマンとして
の心情が、よく表れているんじゃないでしょうか。
このPeter ToshはBob Marlyと並んで、のちの
アフリカのレゲエ・シンガーたちに大きな影響を
与えています。
それは人種差別や階級差別を歌った彼の歌が、
アフリカの多く人のの心をとらえたからなの
でしょう。
素直過ぎるほどにラスタファリアン、それがこの
Peter Toshという人です。