今回は1979年に発表されたSteel Pulseのアルバム
「Tribute To The Martyrs」から表題曲を紹介して
みたいと思います。

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Steel Pulse - Tribute To The Martyrs (1979) LP

Steel Pulseはイギリスのバーミンガムで1975年
に結成されたレゲエ・バンドで、78年に
「Handsworth Revolution」でアルバム・デビュー
しています。

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Steel Pulse - Handsworth Revolution (1978)

この「Tribute To The Martyrs」は、Steel Pulse
のセカンド・アルバムで、日本の東芝EMIから
「殉教者に捧ぐ」という日本語タイトルが付けられて
LPで発売されていました。
このアルバムを私は若い頃に買っていたんですね。

中には2つ折りのライナー・ノーツが入っていて、
片面は英語の歌詞、もう片面に渋谷陽一さんと
森脇美貴夫さんという方の短い紹介文と、高野裕子さん
という方の対訳が載っています。
渋谷陽一さんといえばロック!という感じですが(笑)、

「聞けば聞くほど、その表現の深みへと聴く者を
引きずり込んでいくアルバムだ。」

と、かなり絶賛しています。

今回はそのアルバムから表題曲の「Tribute To The
Martyrs(殉教者に捧ぐ)」の訳詩を紹介してみたい
と思います。


●殉教者に捧ぐ(Tribute To The Martyrs)

それは気の遠くなるような苦難の道だった
俺たちを信じさせ
導いていく道は…
俺たちを諸悪から救うため
彼らは何が何でも完遂せねばならなかった
かつての敵に復習し、尊厳を獲得すること
俺たちを目的地まで守っていくこと
暗黒大陸の志士たちよ
俺は全面的におまえを信じる
俺たちを償ってくれ…

暗黒大陸の志士たちは どこへ行ったのか
どこへ去っていったのか

殉教者を誉め讃えよ
彼らはいったいどこへ行ったのだ
いつこの世を去っていったのだ

殉教者は命に代えて俺たちを救った
苦難の時代に血を流した
選民思想に凝り固まった人種の虐待をうけた
彼らはどこに去ってしまったのか
どこの世界へ行ってしまったのか

1人ははりつけにされた
「死人に口なし」これが奴らの方法だ
幾人かは絞首刑にされた
奴らは彼らを捕え ぶん殴り けとばし
監禁し 牢の奥深くへぶち込んだ
言論で勝利を得ていた彼らを…
なのに愛国者の死に
誰も涙を流さなかった
全世界が彼らに背を向けた

殉教者たちはいったいどこへ行ったのだ
どこへ行ってしまったのだ

大多数の人間が
少数の人間の機嫌をとる為に
事実を無理やり納得しようとした
簡単にかたずけられない事実を…
彼らは俺たちに教えてくれた
川の底ほど流れは静かだと
だから俺たちはいつも彼らの言葉を
心の底に思い浮かべる
彼らは言った
過去の歴史を持たぬ国は
根のない木のようだと

殉教者たちはいったいどこへ行ったのだ
どこへ行ってしまったのだ

鉄は熱いうちに打つのが一番だ
冷えてからでは折れてしまう
友よ今からでも学ぶには遅くない
もし少しでも知識があれば
それは年と伴に熟していく
今こそ目をさませ
圧制者のもたらす苦悩の下で苦しんでいる人々よ
地獄に燃え盛る火は水なんかで消えやしない
だが一度激しい雨が降れば
俺たちは清められ
どんな力にも屈する事はなくなる
殉教者たちの金言は
二度と俺たちの重荷にならない
自由が望めないなら 力で束縛を解け
それが俺たちの方法だ

心に刻み込め
俺たちみんなに送られた殉教者たちのメッセージ
耳をすませ
魂への教義
何かを感じとれ
物語は完結した
何かが解かるはずだ
さあ応えろ 殉教者たちが呼んでいる
何か始めるんだ
破滅の予言も もはや意味はない
俺たちは壁を乗り越えたのだ
何者かになるんだ

殉教者たちはいったいどこへ行ったのだ
どこへ行ってしまったのだ

(以下Steel Pulseのメンバーのアドリブでの過去の
英雄の賞賛や、今起きている社会問題などの事が
語られていますが、省略します。)

日本の東芝EMIのLPSteel Pulseの「殉教者に捧ぐ
(Tribute To The Martyrs)」より高野裕子さんという
方の対訳より)

Steel Pulse - Tribute To The Martyrs



このSteel Pulseは当時のイギリスのレゲエ・
バンドの中でもロック・アゲインスト・レイシズム
の運動に参加するなど、かなり政治的なグループ
として知られています。
まだこの当時、70年代から80年代のイギリス
やアメリカなどは、かなり白人優位の社会で
黒人は低く見られていた時代なんですよね。
ただそうした状況が徐々に変わり始めたのも
この時代で、そうした時代背景からプロテスト・
ソングの要素を持つレゲエや、階層社会への
不満を歌ったパンクなどが受け入れられた
時代だったんですね。
ある意味こうした音楽が社会を変える一助に
なった面もあります。

今回の歌「Tribute To The Martyrs」は、
そうした黒人の歴史の殉教者に対する追悼と
その遺志を継ぐ決意を歌ったものだと思われ
ます。
彼らはその後もこうした差別と闘う姿勢を
貫き続け、91年のアルバム「Victims」では、
ニューヨークのタクシー・ドライバーの差別的
行動を歌った「Taxi Driver」を歌っていたり
します。

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Steel Pulse - Victims (1991)

そういう折れない心を貫き続けているのが、
このSteel Pulseというグループなんですね。
ある意味もっともレゲエらしいコンセプト
を持ったグループだと思います。