今回はThe Upsettersのアルバム

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「Blackboard Jungle Dub」です。

The UpsettersはLee Perryのハウス・バンドです。
Lee Perryはレゲエに大きな功績を遺したプロデューサー
であり、エンジニアでもある人です。
プロデューサーとしてBob Marleyをはじめ多くの
人をプロデュースしたのはもちろんですが、この
Lee Perryの一番の功績はやはりダブで新しい
レゲエの歴史を作ったところにあります。

Lee Perry(リー・ペリー)

初めはプロデュース業の傍ら、自らのバンド
The Upsettersでキーボード主体のスッキリした
インストルメンタルのレゲエをプロデュースして
いて、これがイギリスの不良少年「スキン・ヘッド」
にウケていたことから「スキン・ヘッド・レゲエ」
と呼ばれていたんですが、1973年に自身初の
ダブ・アルバム今回紹介する「Blackboard Jungle
Dub」を発表します。
そこからこのThe Upsettersはダブのバンドへと
変貌するんですね。

ダブの誕生は1973年ごろと言われています。
誰が発明したかは諸説あり、解っていません。
ただこの「Blackboard Jungle Dub」がLee Perry
初のダブ・アルバムであり、Randy'sの「Java Java
Java Java」、AquariusのHerman Chin-Royの
「Aquarius Dub」などと並ぶ最初期のダブ・
アルバムであることは間違いがありません。

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Impact All Stas - Java Java Java Java

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Herman Chin-Roy - Aquarius Dub

そういう意味ではLee Perryの歴史の中でも特に
重要なアルバムであり、彼のダブの代表作
「Super Ape」と並ぶアルバムと言えるでしょう。

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The Upsetters - Super Ape (1976)

この73年に最初のダブ・アルバムが多く発売
されたことにより、ダブという音楽が広く認知され
レゲエの1ジャンルとなって行くんですね。

全12曲で収録時間は38分55秒。

The Upsettersの参加ミュージシャンは以下。

Bass: Aston 'Family Man' Barrett
Drums: Carlton Barrett
Guitars: Reggie
Organ: Winston Wright & Glen Adams
Piano: Gladson Anderson
Percussion: Lee Perry & Scully

Produced By Lee Perry / The Great Upsetter
Exective Produer Brad Osborne

となっています。

さて今回のアルバムですが、20代頃にLPで
買ったものの、その後ずいぶん長いことレゲエを
聴かない時期があり、5年前ぐらいにレゲエを再び
聴き始めてからはほとんど聴いていないアルバム
でした。
そこでもう一度しっかりこのアルバムを聴き直して
みようと思って、今回取り上げてみました。

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The Upsetters - Blackboard Jungle Dub」(LP)

実は若い時にLPを買った当時はこのアルバムが
Lee Perryの初めてのダブだという事などあまり
知りませんでした。
当時の私がこのアルバムの事をどう思っていたか
というと、悪くはないけれど「Super Ape」よりは
ちょっと地味かなぁという感じでした。
正直そんなにすごいアルバムだとは思っていなかった
んですね(笑)。

では今回それから30年ぐらい経って聴き直して
みてどう感じたかというと、これが実に良いアルバム
なんですね。
一番特筆すべきはBarrett兄弟のベースとドラムの
リズム隊の素晴らしさです。
このリズム隊がしっかりした緊張感のある演奏を
しているから、どんなにエフェクトをかけても
曲が乱れないんですね。
ある意味Lee Perryがこれだけ自在な音を作れるのは、
このリズム隊あってこそだと思います。

それではなぜ当時はそれほどすごく思わなかった
のか?というと、けっこう参加メンバーがシンプル
で、「Super Ape」程の派手さがないんですね。
記載はありませんが曲によってはホーンも入っては
いるのですが、
曲によってはベースにドラムにパーカッションと
いう曲もあり、シンプルな曲もけっこう多いんですね。
それはそれでなかなか良い演奏なんですが、やっぱり
当時の私は地味に感じちゃったのでしょう(笑)。

ただ今回久しぶりに聴いてみて感心したのは、この
アルバムがLee Perryの初めてのダブ・アルバムと
いう事にもかかわらず、すでにかなりの完成度を持ち、
しかもすでにアクティブな音作りに挑戦していると
いう事です。
Lee Perryは「インスト3部作」といわれる「Kung Fu
Meets The Dragon」で、ゲップの音などを音楽に
しちゃうような、かなり音楽の常識を超えたアグレッシブ
な音作りをしているんですが、このアルバムですでに
口で音を出すような似たような試みをしている
んですね。

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Lee Perry - Kung Fu Meets The Dragon (1975)

そういうあくまでもそれまでの常識を超えた音作りを、
この73年にすでに始めているんですね。
そういう音楽に対する先見性があったからこそ、
彼はレゲエの音楽史に名を留める事が出来たの
でしょう。

このレゲエのダブと言う音楽は、それまであくまで
生演奏を基準に考えられていた音楽を、それまでに
あまり無かった「加工品の音楽」に変えてしまった
画期的な音楽なんじゃないかと思います。
それまでも例えばThe Beatlesの「St.Pepper…」の
ような、加工を加えられた音楽も無い事は無いのですが、
あくまで加工することが前提というのはこのダブが
最初ぐらいなんじゃないかと思います。
いわば音楽の時間軸を変えてしまった音楽なんですね。
そこにダブと言う音楽の先見性があったような気が
します。
その中でもこのLee Perryは特に大きな役割を
果たした人なんですよね。

このLee Perryのダブの特徴というは、あくまでも
彼のダブが「1点もののダブ」であるという事です。
King Tubbyがオリジナル曲に対する「Versionとして
のダブ」を作ったのに対して、Lee Perryはあくまで
オリジナルの「1点もののダブ」を作り続けた人
なんですね。
ダブの歴史の中にこのまったく思想の違うタイプの
二人の天才が居たという事は、とても幸運なこと
だったのかもしれません。

今回のアルバムでもそうしたオリジナルを追及する
Lee Perryという人の良い面がよく出ていると
思います。
1曲目「Blackboard Jungle Dub (Ver. 1)」から
緊張感のある演奏で、一気にアルバムに惹きつけ
られてしまいます。

The Upsetters - Blackboard Jungle Dub - Blackboard Jungle Dub ( Ver. 1 )


曲として特に秀逸なのは、10曲目「Blackboard
Jungle Dub (Ver. 2)」です。
このクレジットにないトロンボーンは特に狂気を
はらんでいてたまりません。
クレジットはないけれど、たぶんLee Perryの
「インスト3部作」の一つ「Musical Bones」で
圧倒的なトロンボーンを聴かせたVin Gordonでは
ないかと思われます。

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Lee Perry - Musical Bones (1975)

The Upsetters - Blackboard Jungle Dub - Blackboard Jungle Dub ( Ver. 2 )


そうした緊張感のある演奏と、時々顔を出す
Lee Perryの遊び心。
この時代のLee Perryにはまだはっきりとした理性
が健在で、今までにない音楽を作り出そうという
彼の意欲が溢れたアルバムになっています。
彼が頂点を極めたBlack Ark Studioでの仕事は、
ここから始まったんですね。

ルーツ・レゲエ好き、ダブ好きの人だったら、必ず
押さえておきたいアルバムではないかと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Lee Perry and The Upsetters - Black Board Jungle Dub - 07 - Fever Grass Dub


Lee Perry and The Upsetters - Black Board Jungle Dub - 12 - Iration Dub



○アーティスト: The Upsetters
○アルバム: Blackboard Jungle Dub
○レーベル: Blue Moon
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1973

○The Upsetters「Blackboard Jungle Dub」曲目
1. Blackboard Jungle Dub (Ver. 1)
2. Rubba, Rabba Words
3. Cloak A Dagger (Ver. 3)
4. Dub From Africa
5. Dreamland Dub
6. Pop Goes The Dread Dub
7. Fever Grass Dub
8. Sin Semilla Kaya Dub
9. Moving Forward
10. Blackboard Jungle Dub (Ver. 2)
11. Kasha Macka Dub
12. Setta Iration Dub