今回はThe Overnight Playersのアルバム

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「Babylon Destruction」です。

The Overnight Playersをネットで調べてみました
が、よく解りませんでした。

今回のアルバムは昨年2014年の秋頃にdisk
unionなどで売られていたCorn-Fedというレーベル
のCD-Rです。
CD-Rの為機種によっては再生出来ない事もある
との注意書きが付いて売られていました。

ネットのdisk unionには、このアルバムについて
「フル・アルバムの復刻が待たれていたUKメロウ・
ダブの頂点級の一枚!」という事が書かれていました。
またアルバムの表ジャケの裏側に

Original Album Released Cha Cha (UK) CHALP 008 (1980)

という記述があるので、Cha Chaというイギリスの
レーベルから1980年に発表されたアルバム(LP)
らしいです。
つまりUKメロウ・ダブである事と、1980年に
作られたこと以外は残念ながらあまりよく解り
ません。

全10曲で収録時間は47分04秒。
最後の1曲ははCDボーナス・トラックです。

バックのミュージシャンは「Over Night Players」
と「Horns」に別れて記されています。

●Over Night Players
Drums: Mikey Bo Richards
Percussion: Sky Juice
Bass: Ranchie, J.Jackson
Rhythm Guitar: D. Bryan
Lead Guitar: W. Lindo, E. 'Chinna' Smith
Piano: W. Wright, A. Collens
Organ: W. Wright, A. Collens
Harmonica: J. Brecker

●Horns
Sax: Dean Frazer
Trumpet: Nambo Clive Hunt

となっています。

プロデュースの表記はありません。
レコーディングがChannnel Oneで、エンジニアが
Crucial Bunny,Dub Master Andy,Peterとなって
います。

さて今回のアルバムですが、これがなかなか
素晴らしいダブ・アルバムなんですね。
UKメロウ・ダブという言い方をされていますが、
一見優しいメロディ・ラインの裏にそこはかとなく
狂気が散りばめられているような、すごくヤバイ
空気感が素晴らしいです。

1曲目「Shaka The Great」はパイプ・オルガン
のような音色で始まるんですが、1曲1曲の楽器の
使い方がとても繊細な気配りがされていて、例えば
途中に急にアコースティック・ギターが入って来たり
して、それが美しい音色の中に何とも言えない
緊張感を生んでいます。
かなり計算された上質なダブという感じがします。

Overnight Players - Shaka The Great + Pt 2 (Babylon Destruction Lp 1981)


メロウ・ダブというと、かなり優しいホンワカと
したダブというイメージを持つ人も居ると思い
ますが、実際の音はその正反対なんですね。
ミディアム・テンポでありながら実はハード・コア、
それがレゲエの世界観なのです。
アップ・テンポにする事でヘヴィーを実現しようと
するのがへヴィー・メタルなどの手法ですが、
あくまでミディアム・テンポでヘヴィーを実現
しようとするところにレゲエという音楽の知性が
あります。
その為の細工が、ダブで用いられるエコーや
リヴァーヴといった手法なんですね。

今回のダブは80年と、ダブがかなり成熟した
時期に作られたダブのようです。
一見ソフトで刺激の無いように感じられてしまう
かもしれませんが、けっこう計算された内容の濃い
ダブという気がします。
美しいメロディの裏に隠れた狂気、それがこの
ダブの魅力なんですね。

この頃からジャマイカでは徐々にダンスホール・
レゲエが盛んになって行くんですが、このアルバム
からはまだそれほどダンスホールの匂いは感じ
ません。
それよりもルーツ・レゲエの中でも特別なポジション
にあった、ダブという音楽の行き着いた先の爛熟
した香りが、このアルバムからは濃厚にするん
ですね。
ある意味ルーツの時代のダブの完成形が、この
アルバムにはある気がします。

原爆の写真にドレッド・ロックスの男のコラージュ
のジャケットも強烈です。

ルーツの時代に誕生したダブという音楽は、他の
ジャンルの音楽とはかなり性格の違う現代性を
持った音楽なんですね。
レゲエがただの民族音楽と一線を画していたのは、
こうした現代性を持っていて、少なくとも70年代
から80年代は世界の音楽をリードしてきた側面が
あったからなんですね。
そうしたレゲエのダブの中でも今回のアルバムは、
完成度も高くなかなか面白いダブだと思います。

機会があれぜひ聴いてみて下さい。

The Overnight Players - Marcus Garvey


The Overnight Players - Lumumba - Babylon Destruction



○アーティスト: The Overnight Players
○アルバム: Babylon Destruction
○レーベル: Corn-Fed
○フォーマット: CD-R
○オリジナル・アルバム制作年:

○The Overnight Players「Babylon Destruction」曲目
1. Shaka The Great
2. Part 2
3. Malcolm X
4. Marcus Garvey
5. Toussaint L'Ouverture
6. Dumas, The Greatest
7. Lion Of Judah
8. Lumumba
9. Cetewayo
10. Bubble Up Dub *
* CD Bonus Track