今回はJosey Walesのアルバム

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「The Outlaw / No Way No Better Than Yard 」です。

Josey Walesは80年代から活躍するダンスホール・
ディージェイです。
U Royのサウンド・システムKing Stur Guv Hi Fi
(キング・スター・ガフ・ハイ・ファイ)で、盟友の
Charlie ChaplinやBrigadier Jerryなどと、当時
流行り始めたダンスホール・レゲエを盛り上げた
ディージェイの一人として知られています。
U Roy直系のディージェイとして、当時人気の絶頂に
あったYellowmanと人気を二分するほどの実力者が
彼だったんですね。
当時はやり始めた「スラックネス」ではなく、U Roy
仕込みの硬派なトースティングを貫いた人だった
ようです。

Josey Wales (ジョジー・ウェールズ)

今回のアルバムはそのJosey Walesの1983年の
アルバム「The Outlaw」と、84年のアルバム
「No Way No Better Than Yard 」の2枚を1枚に
まとめた2 in 1のアルバムです。
どちらも彼の人気絶頂の頃のアルバムなので、これを
聴けば一番熱かった頃の彼のトースティングが
聴けるという内容になっています。

全20曲で収録時間は69分30秒。
初めの10曲が「The Outlaw」、残りの10曲が
「No Way No Better Than Yard 」となっています。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

○The Outlaw
All Tracks Written by H. Lawes / J. Sterling
Produced by Henry 'Junjo' Lawes
Backed by Roots Radics
Recorded & Mixed at Channel One
Engineered by Solgie

○No Way No Better Than Yard
All Trackes Written by J. Sterling
Produced by Josey Wales & Mickey Pep A Cornerstone Production
Recorded & Mixed at Harry J's
Engineered by Sylvan Morris
Backed by Hi-Times Band:
Drums: Anthony Benboe
Bass: George Fullwood
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Rhythm Guitar: Frazel Prendergast, Tony Chin
Piano: Asher
Organ: Tarzan
Percussion: Delroy Bailey, Harry J
Special Thanks to Bringle, Leachie Dread, Little Errol

となっています。

作曲に名前のあるJ. Sterlingというのは、Josey Wales
の本名Joseph Winston Sterlingです。
Josey Walesというのはクリント・イーストウッドの
マカロニ・ウェスタン映画「アウトロー」の主人公の
役名なんだそうです。
「The Outlaw」というアルバム・タイトルは、その
映画名から取っているんですね。

83年の「The Outlaw」は、プロデュースがHenry 'Junjo'
Lawes、バックがRoots Radics、ミックスがSolgieという
典型的なVolcanoレーベルのアルバムです。
Roots Radicsの詳細なメンバーが解らないのは、ちょっと
残念なところです。

ちなみにJosey Walesは翌年の84年にこのVolcano
から、プロデュースがHenry 'Junjo' Lawes、バックが
Roots Radics、ミックスがSolgieで、Yellowmanとの
対決盤「Two Giants Clash」を出しています。
(こちらも詳細なミュージシャンの表記はなし。)

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Yellowman VS Josey Wales - Two Giants Clash (1984)

おそらくこのこのTony McDermottの印象的なジャケット
のアルバムが、Josey Walesのアルバムの中でもっとも
有名なアルバムのひとつではないかと思います。
初期のダンスホール・レゲエをけん引したVolcano
レーベルにとっても、Josey Walesは重要なアーティスト
の一人だったのかもしれません。

84年の「No Way No Better Than Yard 」は、
プロデュースがJosey Wales本人とMickey Pep、バック
はEarl 'Chinna' Smith率いるHi-Times Bandが務めて
います。
ネットで調べてみたところ、こちらはVolcanoではなく
Corner Stoneという別のレーベルからジャマイカでは
発売されたアルバムのようです。
(イギリスなど他の国では、どちらのアルバムもGreensleeves
レーベルからの発売です。)

さて今回のアルバムですが、Roots RadicsやHi-Times
Bandによる、いかにも初期のダンスホール・レゲエ
らしいユッタリとしたリズムに乗せたJosey Walesの
トースティングがとても気持ちの良いアルバムです。

ちなみにレゲエレコード・コムのアルバム評など
を見ると、このアルバムについて「ラバダブスタイル」
がカッコイイ!というような事が書いてありました。
ラバダブスタイル?と気になったのでさらに調べて
みると、「サウンド・システム」について書いた
Wikipediaのページに次のような記述がありました。

「多くのディージェイが一堂に会して、セレクターの
かけるヴァージョンに即興でトーストし、次々にマイク
を渡していく1980年代に隆盛を極めたショーの形式を
「ラバダブ・スタイル (rub-a-dub style) 」または
「パート・ツー・スタイル (part 2 style)」 と呼ぶ。」
(Wikipediaの「サウンド・システム」についての記述より)

サウンド・システム - Wikipedia

つまりはサウンド・システムKing Stur Guv Hi Fiなど
で鍛えたあげた即興によるトースティング、ラバダブ・
スタイルがこのJosey Walesの持ち味だったようです。
まさに現場の叩き上げのディージェイ、それがこの人
なんですね。
歌だったら同じ歌詞を歌えば良いけれど、トースティング
はその場その場の空気を盛り込んでいく、高度なテクニック
が要求されるハードな仕事です。
それを毎夜繰り返して鍛え上げたトースティングが
彼の持ち味なんですね。
今回のアルバムでもそうした彼の魅力が、感じられる
アルバムになっています。

まずは83年のRoots Radicsをバックにした代表作
「The Outlaw」から。

1曲目「It A Fi Burn」は、ロックスディの頃の
Studio Oneのヒット曲「Full Up」のリディムです。

Josey Wales - It A Fi Burn


2曲目「Love I Want」は、ネットで調べてみたところ
「A Love I Can Feel 」というリディムが使われている
ようです。

Josey Wales - Jam it again


9曲目「Music Diseases」は、「Youth In The Ghetto」
というリディムが使われているようです。

10曲目「Asking For Love」は、「Everybody Bawling」
というリディムが使われているようです。

Josey Wales - Asking for love


それ以外ンリディムは出て来ませんでしたが、全体に
ユッタリしたリディムの中でJosey Walesの気持ちの
良さそうなトースティングが印象的なアルバムです。
一見すごくユルい感じなんですが、Roots Radicsの
締めるべきところはピリッとしまった演奏がうまく
トースティングを引き立てています。

残りの10曲は84年のHi-Times Bandをバックに
した「No Way No Better Than Yard 」が収められて
います。

11曲目「It Have Fe Sail」は、「Answer」の
リディムです。

12曲目「The World Is Like A Mirror」は、
これまた有名な「Heavenless」のリディムです。

13曲目「Yu Too Greedy」は、「Real Rock」の
リディムが使われています。

Josey Wales - Yu Too Greedy


15曲目表題曲の「No Way No Better Than Yard」は、
「General」のリディムが使われています。

17曲目「Jah Jah Move」は、「Pretty Looks」の
リディムが使われています。

18曲目「Maxine」は、「Queen Of The Minstrel」の
リディムが使われています。

Josey Wales -Maxine


19曲目「Yu Wrong Fe Send Come Call Me」は、
「Vanity」のリディムが使われています。

そしてラスト20曲目「Zion Home」は、「You Should
Have Known」というリディムが使われているようです。

こうして見てくるとこちらの「No Way No Better Than
Yard」は、ロックステディの時代のクラシック・
リディムをうまく使ったアルバムのようです。
こちらはいかにもリーダーがEarl 'Chinna' Smith
らしいポイントポイントでうまくバックのアドリブを
効かせた締まった演奏になっています。
似たような演奏をしていても、微妙にRoots Radics
とは違うんですね。
そのあたりを聴き比べるのも今回のアルバムの面白さ
かもしれません。

アルバム2枚を聴いた印象ですが、やっぱりこの時代の
Josey Walesはディージェイとして生き生きとした
トースティングをしているんですね。
この80年代の前半に彼が素晴らしい仕事を残した
事は間違いがありません。
特にこの80年代のディージェイものが好きな人には
おススメ出来るアルバムだと思います。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Josey Wales
○アルバム: The Outlaw / No Way No Better Than Yard
○レーベル: Greensleeves Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1983, 1984

○Josey Wales「The Outlaw / No Way No Better Than Yard 」曲目
(The Outlaw)
1. It A Fi Burn
2. Love I Want
3. Can't Put It On
4. Beg You Come Home
5. Jam It Again
6. Let Go Mi Hand
7. No Bother Tax Me
8. Stalk Of Sensimilia
9. Music Diseases
10. Asking For Love

(No Way No Better Than Yard)
11. It Have Fe Sail
12. The World Is Like A Mirror
13. Yu Too Greedy
14. Eden A Try
15. No Way No Better Than Yard
16. Drug Abusing
17. Jah Jah Move
18. Maxine
19. Yu Wrong Fe Send Come Call Me
20. Zion Home

●今までアップしたJosey Wales関連の記事
〇Jose Wales (Josey Wales)「Undercover Lover」
〇Josey Wales「How Yu Mouth Tan So」
〇Josey Wales「Special Prayer」
〇Josie Wales (Josey Wales)「Ha Fi Say So」
〇Yellowman VS Josey Wales「Two Giants Clash」