今回はKing Tubbyのアルバム

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「Fatman Presents: Unleashed Dub Vol.1 From King Tubby's Studio」です。

King Tubbyは70年代のルーツ・レゲエの
時代から80年代のダンスホール・レゲエ
の時代にかけておもにダブのミックスを
手掛けた、レゲエの歴史の中の最重要人物
のひとりです。
もともと電気技師だった彼は、音楽を感性や
芸術的に捉えるのではなく、技師のように
職人的分析的に捉えてダブという音楽を制作
しました。
元になる歌入りの音楽を、まるですべての
ネジを外すように分解して、さらにエコーや
リバーヴというエフェクトを入れて組み立て
直す、それがこのKing Tubbyにとってのダブ
という音楽だったんですね。

実はダブというのは一度録った音源を再利用
するために発展した音楽のようなんですよね。
当時ジャマイカではプロデューサーがスタジオ
を借り、ミュージシャンを日雇いで雇い、録音
してレコードを制作していたらしいんですよね。
そうなると毎回毎回録音するよりは、一度
録った音源が再利用出来た方が経済的に良い
訳です。
その再利用の方法として生み出されたのが、
ダブという手法だったんですね。

初めてのダブのアルバムが発表されたのが
だいたい1973年頃だったと言われて
います。
ただダブの発明には諸説あり、誰が初めに
ダブを作ったのかはハッキリとは解って
いません。
ただプロデューサーのBunny 'Striker' Lee
は、King Tubbyが偶然の失敗からダブを発明
したという説を唱えています。

いずれにしてもダブというスタイルを完成
したのはKing Tubbyだと言われており、自身
のスタジオKing Tubby'sで弟子のPrince Jammy
やScientistなどとともに、その後もダブを
量産したのがこのKing Tubbyだったんですね。

その後助手だったPrince Jammy→King Jammy
の80年代半ばに起こした「デジタル革命」、
コンピューター・ライズドの大ブームの時代
まで活躍したKing Tubbyでしたが、89年に
自宅前で何者かに射殺されて亡くなっています。

King Tubby (キング・タビー)

今回のアルバムですが、King Tubbyが亡く
なった2年後の91年にFatman Recordsから
発売されたアルバムのようです。
ちなみにプロデューサーがFatmanとなって
いますが、FatmanというエンジニアがKing
Tubby'sで働いていたと思うんですが、その人
なのかは解りません。

全12曲で収録時間は43分24秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Musicians: The Aggrovators
Engineers: King Tubby's, Scientist, Professor, King Jammys, Pat Kelly
Mixed at King Tubby's Studio
Tracks Made by 'Striker Lee'
Tracks Compiled by Flip

Published by Ken Songs / Paul Rodriguez Music
Specially Mixed by Fatman
Produced by Fatman

となっています。

そのFatmanのレーベルからリリースされた今回
のアルバムは、演奏はThe Aggrovatorsで、
エンジニアがKing Tubby's, Scientist, Professor,
King Jammys, Pat Kellyといった人達で作られた
曲を、さらにFatmanが「Specially Mixed」=再
ミックスしたアルバムなんじゃないかと思います。

バックがThe Aggrovatorsとしか解らないのが
ちょっと残念なところですが、ダブのミックス
したものをさらにミックスしているようなので
致し方ないところかもしれません。

また今回のアルバムはジャケットがとても
素晴らしいのですが、残念ながらその作者に
ついての表記がありません。
確かKing Tubbyは晩年FirehouseやWaterhouse
などのレーベルを持っていたと思うのですが、
今回のアルバムはそのWaterhouseのアルバム
なのかもしれません。
似たような絵柄で火を噴いているFirehouseの
ジャケットがあるんですよね。

このアルバムの元の音源がThe Aggrovatorsと
いう事などから見て、ダブの元の曲は70年代
後半ぐらいに録音されたものと考えられます。
ただ英語のサイトなどを見ると、バックとして
The Aggrovatorsと並んでRoots Radicsの名前を
表示しているサイトもありました。
確かに曲を聴いてみると、80年代前半のダンス
ホール・レゲエっぽいスローなワン・ドロップの
曲がいくつかあります。
The AggrovatorsよりRoots Radicsっぽいん
ですよね。
表記が無いのでハッキリとは断定できませんが
、Roots Radicsの曲が使われた可能性はかなり
あると思います。

さてここまで読んできて多くの方は気付かれた
と思いますが、今回のアルバムはKing Tubbyの
アルバムというよりはFatmanのアルバムという
方が正しいでしょう。
一応多くのサイトと表記を合わせましたが、
エンジニアにKing Tubby'sという事でKing Tubby
本人も元のミックスをしている可能性はあります
が、アルバム全体のダブのテイストを作っている
のはFatmanなんですよね。
つまりFatmanのダブ・アルバムというのが
正しいようです。

さて今回のアルバムですが、Fatmanの音楽センス
がよく解る出来でとても良いアルバムだと思い
ます。
もうこの91年というと機材もだいぶデジタル
になって来ていると思うのですが、そのデジタル
で70年代のアナログの音源をうまく料理して
いるのが素晴らしいです。

彼のミキシングにはクールさがあり、洗練された
感覚の持ち主で、大人のダブといった印象が
あります。
どうもダブというと80年以降徐々に下火に
なって行ってしまう印象があるのですが、今回
のアルバムなどを聴くと、この91年ぐらいの
時点でもまだまだ新たな可能性のあるダブが
作れたんじゃないか?そんな気がしました。

3曲目「Satta Dub」は超有名曲「Satta
Massagana」のダブです。

全体に重いベースの音を主体としたダブが多い
のも、今回のアルバムの特徴的なところです。
やはりThe AggrovatorsといえばベースはRobbie
Shakespeareのベースです。
よくThe Aggrovatorsとのリーダーとして
Robbieの名前が書かれる事がありますが、彼が
The Aggrovatorsのサウンドをコントロールして
いたのは、間違いのないところです。

このアルバムは70年代から80年代のダブが
好きな人なら、まずツボのアルバムといって
間違いないでしょう。
1曲として駄曲なし、このFatmanという人の音の
センスがよく解るアルバムです。

機会があればぜひ聴いてみてください。

King Tubby - Satta Dub


King Tubby - Puppy Dub


King Tubby - Easy Dub



○アーティスト: King Tubby
○アルバム: Fatman Presents: Unleashed Dub Vol.1 From King Tubby's Studio
○レーベル: Fatman Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年:

○King Tubby「Fatman Presents: Unleashed Dub Vol.1 From King Tubby's Studio」曲目
1. Harder Dub
2. Nuclear Dub
3. Satta Dub
4. Puppy Dub
5. Dubbing My Way
6. Conqueror Dub
7. Confinement Dub
8. Herbal Dub
9. Leggo Dub
10. Easy Dub
11. Shining Dub
12. No Idiot Dub