今回はPrince Jammyのアルバム

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「The Crowning Of Prince Jammy」です。

Prince Jammyはダブ・マスターKing Tubbyの元で
ミキサーとして仕事をした後に独立し、プロデューサー
として成功した人です。
85年にジャマイカ初のデジタル機材を使った大ヒット
曲Wayne Smithの「Under Me Sleng Teng」で、デジタル
のダンスホール・レゲエ、いわゆるコンピューター・
ライズドの大ブームを起こすんですね。
それを機にPrince Jammy→King Jammyに改名し、今までの
生録からデジタルによる「打ち込み」の録音へと音楽界
全体を変えてしまう、大ムーヴメントを引き起こした
のがこの人なんですね。

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Wayne Smith - Under Me Sleng Teng (1985)

Prince Jammy (プリンス・ジャミー)

今回のアルバムは1999年にレゲエ・リイシュー・
レーベルPressure Soundsから出されたアルバムで、
そのPrince JammyがまだKing Jammyと名乗る前の
音源を集めたアルバムです。
時期としては70年代後半からそのデジタルのヒット
を飛ばす直前の、80年代前半の音源が集められて
いるようです。

この時期というのは、70年代後半がレゲエという音楽が
10年ぐらい経っていわゆるルーツ・レゲエにそろそろ
陰りが見えてきた頃で、そして80年代初めにダンス
ホールなどでかけられるレゲエ、ダンスホール・レゲエ
が新しく誕生し、人気を博すようになり始めた時代だった
んですね。

その80年代の初めぐらいまではPrince Jammyはまだ
King Tubbyのスタジオで働いているのですが、徐々に
独立して自分で歌手のプロデュースやダブ・アルバムの
制作などをするようになって行くんですね。

ブレイク直前のPrince Jammyは、いったいどういう仕事
を残しているのか?
そこに焦点を当てたのが今回のアルバムです。

ちなみに「The Crowning Of Prince Jammy」を自動翻訳
してみると、

「ついている王子を王位につかせること」

というのが出て来ました(笑)。
まあ、「ジャミー王子の戴冠式」みたいなタイトルなん
ですかね?

全16曲で収録時間は65分57秒。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

今回のアルバムはもうかなりレアになっていて、なかなか
見かけないアルバムです。
アルバム自体の存在はいろいろ調べた時に見つけて
知っていたのですが、実際にアルバム自体を見かけた事
がありませんでした。
それだけに池袋のdisk unionで中古で見つけた時は、
嬉しかったです。
ただ上蓋のツメが折れていて、上蓋が外れてしまうほどの
状態でした。
それでも手に入っただけ良かったのかもしれませんね。

さて今回のアルバムですが、内容はかなり良いです。
やっぱりJammyというとコンピューター・ライズド以降
のKing Jammyの方が強烈なイメージがあるのですが、
こうしたアナログの時代の方がアーティストの個性もよく
出ていて、1曲1曲に幅がある感じで面白いんですね。
ある意味「Jammy's一色」という感じでないところが
イイんですね。

実は私自身も6年ぐらい前に再びレゲエを聴き始めた時に、
コンピューター・ライズド以降のサウンドってすごく
抵抗がありました。
私が若い時にレゲエを聴いていたのはルーツ・レゲエの
頃の音だったので、どうも初めはコンピューター・ライズド
の薄っぺらに聴こえるサウンドに馴染めなくて、イマイチ
良いと思えなかったんですね。
ただそれもレゲエを聴いて行くうちにやっぱり認めざるを
得なくなっていくんですね。
基本はルーツや初期のダンスホールのアナログのサウンド
の方が好きなところはありますが、デジタルはデジタルで
また違った面白さがあるんですね。
特にこのKing Jammyの煌めくような才能は、認めざるを
得ません。

ただ意外とこのコンピューター・ライズド以前のPrince
Jammyって必ずしも順風満帆という感じではないんですね。
彼の経歴を見ていくと、弟弟子のScientistの売り出しの
ために「漫画ジャケ・シリーズ」で「負け役」を演じて
Scientistの後塵を拝する形になったり、順調にリリースを
重ねている割には、この80年代の前半は何となく
心の曇りみたいなものを感じるんですね。

ただ今回のアルバムでは、すごくセレクションが良くて
Prince Jammyのコンピュータ・ライズド以前のベスト
といったセレクションになっています。
こういうのを聴くとやっぱり「以前」でも、この人は
やっぱり良い作品を残しているんだなぁと、あらためて
思い知らされます。
1曲1曲の質が他の人に無いくらいに、明らかに高いん
ですね。
このレゲエ・リイシュー・レーベルPressure Sounds
らしい素晴らしいセレクトだと思います。

1曲目Black Uhuruの「King Salassie I」は、まだ
女性コーラスPuma Jonesが加入する前のメジャー・
デビュー以前の男性3人組だった時代のBlack Uhuruの
ヒット曲です。
この曲が入ったアルバム「Love Crisis」は、この
Prince Jammyプロデュースで77年に発売されるのですが、
その後Michael RoseとPuma Jonesが加入した新生
Black Uhuruが「Sinsemilla」でメジャー・デビューすると、
この「Love Crisis」というアルバムは再びPrince Jammy
の手で再編集されて「Black Sounds Of Freedom」という
アルバム名で81年に再びリリースされるという複雑な
経緯を辿っています。

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Black Uhuru - Black Sounds Of Freedom (1981)

Black Uhuru - I love King Selassie


2曲目Wayne Smithの「Time Is A Moment In Space」は、
まだ「Sleng Teng」以前のWayne Smithのヒット曲らしい
です。

wayne smith time is a moment in space


意外とデジタル以前の彼も悪くないんですね。

3曲目はそのダブ。

4曲目のJohnny Osbourneは「Jahovia」です。
Johnny Osbourneはロックステディ期にアルバムまで
出していながら、その後すぐにカナダに移住して
しまうんですね。
そして70年代の後半に帰ってきて、ベテランながら
このダンスホール期に入ってから活躍し始めたという
面白い経歴の人なんですね。
それが出来たのも、この歌の実力があっての事だと
思います。

Jah Ovah / Jahovia - Johnny Osbourne / Prince Jammy


6曲目はHalf Pintの「Puchie Lou」です。
今回のアルバムで以外に印象が強いのが、この人なん
ですね。
明らかにダンスホールの時代から活躍を始めた人なん
ですが、この人のリズムの感覚とPrince Jammyの感覚の
相性がすごくイイような気がします。
聴いていてもすぐに、あ!Half Pintだ!と解るんですね。

Half Pint - Puchie Lou


8曲目はEarl Zeroの「Please Officer」で、9曲目は
そのダブAugustus Pabloの「Pablo In Moonlight City」
です。
Prince Jammyはダンスホール系の曲の方が好きなんじゃ
ないかと思うんですが、こういうルーツ系の曲の
さばき方もウマいんですね。
8曲目のベースの効かせ方などはやっぱりウマいです。

10曲目で再びHalf Pintの「Mr. Landlord」。
こういう曲を聴くとなぜHalf Pintが、デジタルの時代
も活躍し続けたのかがよく解ります。

Half Pint - Mr. Landlord (HQ)


この「Mr. Landlord」や「Puchie Lou」が入った
84年のアルバム「One In A Million」をプロデュース
したPrince Jammyは、すでにのちのデジタルのダンス
ホール・レゲエの青写真をすでに見せています。

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Half Pint - One In A Million (1984)

11曲目表題曲の「The Crowning Of Prince Jammy」
はベースが効いた渋めのダブです。
このダブや14曲目の「Return Of Jammy's Hi-Fi」
などのダブを聴くとよく解りますが、Prince Jammy
はベースが効いていてしかもカラフルなダブを作る
のがすごくウマいんですね。
むしろ才能があり過ぎるが故の悩みが、この人には
あった気がします。

Prince Jammy - Return Of Jammy's HiFi


ラスト16曲目はHugh Mundellの素晴らしいナンバー
「Jah Fire Will Be Burning」です。
この夭折の天才シンガーもPrince Jammyはプロデュース
しているんですね。

12'' Hugh Mundell - Jah Fire will be burning


こうしてアルバムを見ていくと、あまりの選曲の良さに
圧倒されます。
正にPrince Jammyのデジタル以前のベスト・ワークを
集めたアルバムと言えるでしょう。
この選曲で浮かび上がって来るのは、このPrince Jammy
という天才プロデューサーの圧倒的な才能です。
彼はこの時代にはある意味の人の良さや、こだわりゆえの
才能の散漫さも見せているのですが、亜針その才能は
傑出しているんですね。
こうして1枚のアルバムにまとめると、彼の凄さが
あらためてよく解ります。

なかなか手に入れづらいアルバムだと思いますが、
機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Prince Jammy
○アルバム: The Crowning Of Prince Jammy
○レーベル: Pressure Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1999

○Prince Jammy「The Crowning Of Prince Jammy」曲目
1. King Salassie I - Black Uhuru
2. Time Is A Moment In Space - Wayne Smith
3. Life Is A Moment In Space - Prince Jammy
4. Jahovia - Johnny Osbourne
5. Jahovia (Version)
6. Puchie Lou - Half Pint
7. Waterhouse - Mighty Rudo
8. Please Officer - Earl Zero
9. Pablo In Moonlight City - Augustus Pablo
10. Mr. Landlord - Half Pint
11. The Crowning Of Prince Jammy - Prince Jammy
12. Mr. Vincent - Black Crucial
13. Mr. Marshall - Johnny Osbourne
14. Return Of Jammy's Hi-Fi - Prince Jammy
15. Give The People What They Want - Sugar Minott
16. Jah Fire Will Be Burning - Hugh Mundell