今回はKing Tubby, Scientistのアルバム

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「Ranking Dread In Dub」です。

King Tubbyは創世記からダブを作った人の一人
としてよく知られている人です。
初めてダブ・アルバムが世に出たのは73年頃と
言われていますが、誰がダブを発明したのかは
ハッキリとは解っていません。
ただプロデューサーのBunny Leeは、「偶然の失敗
からKing Tubbyがダブを発明した」という説を
唱えています。
ただ同じ頃に多くの人がそうしたアイディアを
持っていたようで、73年にいっせいにダブ・
アルバムが発売されたんですね。
それを機に「ダブ」という音楽が認知されるように
なります。
そしてこのダブという音楽を完成させたのが、
このKing Tubbyだと言われています。

その後も弟子のPrince JammyやScientistを育て、
ジャマイカの音楽界に大きな貢献をしたKing Tubby
でしたが、1989年に何者かに射殺されて
亡くなっています。

King Tubby (キング・タビー)

ScientistはKing Tubbyの助手としてキャリアを
スタートさせたのちに独立し、ダブのエンジニア
として数々の作品を残してきた人です。
80年に兄弟子のKing Jammyとのダブ対決で始まった
「漫画ジャケ・シリーズ」はとくに有名で、この
King Jammyとのダブ対決盤を含めて計6作品が
80~82年の間にVolcanoレーベルのHenry 'Junjo'
Lawesの元で作られています。

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Scientist VS Prince Jammy - Big Showdown (1980)

この「漫画ジャケ」という「売り出し」に成功した
事もあって、彼Scientistのジャケットには漫画の
イラストが多いんですね。
以降も漫画ジャケのダブのアルバムを多く作って
います。

Scientist (サイエンティスト)

ついでにRanking Dreadについても触れておくと、
彼はU RoyやI Royといったディージェイに影響を
受けて育った第2世代のディージェイです。
ジャマイカ労働党 (JLP)の熱烈な支持者だった彼は
一時は殺人、強盗、強姦など様々な罪でジャマイカを
脱出した事もある人だったのですが、ディージェイ
としても活躍した人だったんですね。

今回のアルバムは1982年に発表されたアルバム
です。
タイトル通りRanking Dreadの楽曲を片面がKing Tubby
のダブ5曲、もう片面がScientistのダブという
ダブの師弟対決盤となったアルバムです。
King Tubbyのダブは演奏が「Sly & Robbie」となって
いますが、実際にはThe Revolutionariesが演奏して
いると思われます。
もう片面のScientistの方は演奏がRoots Radicsと
なっています。

このアルバム一度LPで販売されたのみだったよう
なのですが、2004年にSilve Kamel Audioから
初CD化されたアルバムです。
CDなので片面ずつに分ける事は出来ないので、
前半5曲がKing Tubby、後半5曲がScientistと
なっています。

なおサイトによってはRanking Dreadのアルバムという
記述になっていましたが、今回はレゲエレコード・コム
などの記述に合わせて、「King Tubby, Scientist」
としました。

全10曲で収録時間は36分03秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Arranged & Produced by Ranking Dread
Tracks Laid at Channel One, Kingston, JA.
Overdubs: Ranking Dread at Black Star Studio, London

となっています。

あとは曲目と「Sly & Robbie」のミックスがKing Tubby、
「Roots Radics」のミックスがScientistという事が
書かれているぐらいです。

あと興味深いのは、Channel Oneで制作された音源に、
さらにロンドンのBlack Star StudioでRanking Dread
によってさらにオーヴァーダブの処理がされている事
です。
そういう意味では純粋に、King Tubbyのミックス、
Scientistのミックスとは言えないのかもしれません。

さて今回のアルバムですが、これがけっこう面白い
ダブです。
今回のダブでは前半5曲がKing Tubbyのダブ、後半
5曲がScientistのダブと分かれていますが、特に
前半のKing Tubbyのダブはいつもの彼のダブとは
ちょっと感じが違うんですね。
そこが今回一番このアルバムに惹かれたところでした。

ではどう違うかというと、このKing Tubbyのダブは
原曲よりより輪郭をハッキリさせるようなエフェクト
の付け方が特徴的なんですね。
そのクッキリした硬質なサウンドが、この人のダブの
気持ち良さなんですね。
ところが今回のダブは1曲目の「Bom Dub」から、
もっと輪郭が柔らかいユルイ感じの音作りなんですね。
King Tubbyのダブからイメージするガシッとした
歯応えのダブではなくて、例えれば箸でもホロっと
切れてしまう柔らかい肉のような、まろやかなダブ
という感じです。
その違いにちょっとビックリしました。
ただこのダブはこのダブでまた違う広がりがあって、
とても良いダブなんですね。

このダブが完全にKing Tubbyの作ったサウンドなのか
は解りません。
のちにRanking Dreadがオーヴァーダブの処理をして
いるので、その影響もあるのではと思われます。
実際に後半のScientistのダブも、彼の重量感のある
サウンドよりは幾分角の取れたサウンドになっている
傾向があります。
ただたとえRanking Dreadがオーヴァーダブの処理の
影響があったとしても、このダブはかなり面白いダブ
なんですね。
ダブの好きな人はぜひ押さえておいた方が良い
アルバムだと思います。

1曲目の「Bom Dub」は、Ranking Dreadのヒット曲
「Fattie Boom Boom」のリディムです。
頭のRanking Dreadのトースティングも魅力的な
1曲です。

2曲目「No More Waiting」は、Bob Mrleyで有名な
「Waiting in Vain」のリディム。

5曲目「Jah Dub」は、ちょっと不思議なムードを
持った曲です。
今回のこのKing Tubbyのダブではちょっとこもった
ような不思議な音色の楽器が使われているんですが、
この楽器は何なのでしょう?

個人的にはいつもと違うKing Tubbyのダブに強く
惹かれましたが、Scientistのダブも全く遜色
がなく、とても良いです。
あとSly & Robbie(The Revolutionaries)と
Roots Radicsのサウンドに、あまり違いを感じ
ませんでした。
やはり80年代に入ってからの録音だったの
でしょうか?
どちらかといえばSly & Robbieの方が、Roots
Radicsに近いサウンドを出しているような
感じです。

9曲目「Yes Yes Yes Dub」は、Dawn Pennで
知られる「No No No」のリディムです。

全体にこの80年代前半のダンスホール・レゲエ
の空気も詰め込まれたいる感じで、すごく聴き
心地の良いダブに仕上がっていると思います。

またこの80年代の前半はKing Tubbyはあまり
ダブを作っていないんですね。
70年代にはたくさんのダブを作っていた彼ですが、
80年代に入るとミキサーの仕事は弟子の
ScientistやPrince Jammyに任せ、自分は電気
技師の仕事をする事が多くなっていたようです。
そのため80年代になると寡作になるんですね。
そういう意味では貴重なダブのひとつでは
ないかと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Ranking Dread Fatty Boom Dub


Ranking Dread - No More Waiting



○アーティスト: King Tubby, Scientist
○アルバム: Ranking Dread In Dub
○レーベル: Silver Kamel
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○King Tubby, Scientist「Ranking Dread In Dub」曲目
1. Bom Dub
2. No More Waiting
3. Dub Land
4. Jump Up Dub
5. Jah Dub
6. Give Them Dub
7. Dub It Star
8. 19000 Dub
9. Yes Yes Yes Dub
10. Dub It On Yah