今回はKing Tubbyのアルバム

king_tubby_04a

「Dangerous Dub: King Tubby Meets Roots Radics」です。

King Tubbyは70年代のルーツ・レゲエの時代
から活躍したダブのミキサー、プロデューサー
として知られている人です。
もともと電気技師だった彼は、ダブの創世記の
70年代初めからダブを作り始め、数々の名ダブ
を世に残した人です。

ダブというのはレゲエの曲の歌を抜いた「カラオケ」
にエコーやリヴァーヴなどのエフェクトをかけて、
わざと歪ませた音楽形態です。
60年代の終わりにレゲエという音楽が誕生して、
73年頃に初めてのダブ・アルバムが作られたと
言われています。
ただダブの誕生には諸説あり、誰が初めのダブを
作ったのかは、ハッキリと解っていません。
ただダブという形態を完成したのはこのKing Tubby
だと言われています。

ただこのダブという音楽形態はルーツ・レゲエの
時代は盛んだったのですが、80年代半ばを過ぎた
頃にはジャマイカでは下火になってしまうんですね。

実はこのKing Tubbyは89年に何者かに銃で殺害
されてしまうんですね。
この偉大なダブ・マスターKing Tubbyを失った事も、
ダブという音楽が下火になった原因の一つかも
しれません。

King Tubby (キング・タビー)

今回のアルバム「Dangerous Dub」は、1981年に
発表されたアルバムのようです。
副題に「King Tubby Meets Roots Radics」とある
ように、King Tubbyが当時ダンスホール・レゲエで
人気を博したRoots Radicsの音源をダブ・ミックス
したアルバムです。

全13曲で収録時間は45分53秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Produced by Jah Screw & Ranking Joe
A Time One Production
Mixed at King Tubby's Studio by King Tubby & Jah Screw
Tracks laid at Channel One Studio
Recording Engineer: Solgie

Musicians: Roots Radics
Drums: Style Scott
Bass: Flabba Holt
Piano: Gladstone Amderson
Keyboards: Steely
Lead Guitar: Sowell
Rhythm Guitar: Bingy Bunny
Percussion: Barnabus & Scully
All Tracks written by P. Love
Published by Greensleeves Publishing Ltd.

となっています。

この81年当時のRoots Radicsというのは、
Tubbyの弟子Scientistと「漫画ジャケ・シリーズ」
を作っていた頃なんですね。
80年から始まったHenry 'Junjo' Lawesプロデュース
の「漫画ジャケ・シリーズ」は、82年までの3年間
に1年2作品のペースで計6作品リリースしています。
特にこの81年はシリーズの中でも一番充実した年で、
「Meets The Space Invaders」と「Rids The World Of
Evil Curse Of The Vampires」の2枚のアルバムを
リリースしていますが、そのどちらも内容がすごく
イイんですね。

scientist_05a
Scientist - Meets The Space Invaders (1981)

scientist_01a
Scientist - Rids The World Of Evil Curse Of The Vampires (1981)

Roots Radicsも80年頃はドラムをSanta Davisが
叩いているんですが、この81年ぐらいからおもに
Style Scottが叩くようになるんですね。
レゲエという音楽もルーツ・レゲエ→ダンスホール・
レゲエの時代になって、Roots Radicsももっとも
ノッていた時期だと思います。

今回のアルバムですが、実はちょっと前から買おう
かなと思っていたアルバムでした。
理由は単純でKing Tubbyのアルバムって70年代の
ルーツ・レゲエの時代の音源はたくさんあるんですが、
この80年代の音源で今売られているものが意外に
少ないんですね。
ネットのレゲエレコード・コムで探してみても、
80年代のKing Tubbyのアルバムとして出てくる
のがこのアルバムぐらいなんですよね。

実際にこのダンスホール期に入るとKing Tubbyの
ミックスする機会は減っていたようで、スタジオは
弟子のPrince JammyやScientistに任せて電気技師の
仕事に集中していたような事がレゲエレコード・
コムの彼の紹介ページには書かれています。
その為ルーツ期のThe AggrovatorsやThe
Revolutionariesの音源はたくさんあるのに、ダンス
ホール期に入ってからのRoots Radicsとの音源は
あまり多くないみたいなんですよね。
King TubbyとRoots Radicsの組み合わせってどう
なのか?
ちょっと前から気になっていました。

実際に聴いてみた印象ですが、初めはちょっと
地味目なダブという印象を持ちました。
ほとんどがベースとドラムのリズム隊を中心と
したダブで、ルーツ期のような管楽器が多く
使われていないので、ちょっと地味に感じちゃう
んですね。
このダンスホール期、特にダンスホールの初期は
こうしたシンプルな楽器構成になって、リズムも
ルーツ期よりスローなリズムになるんですね。
ある意味ルーツ期の管楽器が入った重厚なサウンド
より少し地味になってしまって、ダブを作るのに
ひと工夫必要な部分があるんですね。

ただそこはさすが「ダブ職人」King Tubbyという
ところがあって、初めの印象は思ったより弱いん
ですが、何度か聴いているうちにジワジワと効いて
くるところがあって、初めの印象とは徐々に
変わってきました。
この人の場合音のポイントみたいなものがすごく
解っている人だから、そういう音のポイントの
「ネジの締め方」がすごくウマいんですね(笑)。
ツボの部分をキチっキチっとまとめてくるので、
ちゃんとダレたところの無い聴き心地の良い
ダブを作って来るんですね。

例えれば一見スッキリして何でもない仕事を
しているように見えて、よく目を凝らしてみれば
すべてに飾り模様が入っているような、これぞ
職人!という仕事なんですね。
こういう美しい仕事が出来るのはこの人ならでは
というところがあります。
じっくり聴き込んでみると、実はかなり良いダブ
なんですよね。

今回のアルバムは、上にあげた弟子のScientist
の同じ年に作られたダブと聴き較べてみると
面白いかもしれません。

80年代に入ると作品の少ないKing Tubbyですが、
Prince Jammyが独立してKing Jammyとして
コンピューター・ライズドの大ブームを起こす
頃になると、Anthony Red Roseの「Tempo」などで
再び活発に活動するようになるんですね。
その様子はPressure Soundsのアルバム
「Firehouse Revolution」に収められています。

king_tubby_05a
King Tubby - Firehouse Revolution

このデジタル時代になった頃のKing Tubbyも、
やっぱりスゴイんですね。
本人はただの職人と思っていたのかもしれません
が、後から見れば、今聴かれている世界の音楽を
初めに作ったのはこの人であったという言われて
いるほどの天才なんですよね。
音楽を感性でなく理性で作る、それこそが彼の
才能であったと思います。

この80年代前半の時代の作品をKing Tubbyが
気に入っていたかは解りません。
ルーツの頃の精力的な制作と較べると、明らかに
作る量が減っていたようなんですよね。
ただ天才King Tubbyを知る上では、この時代の
作品もぜひ聴いておきたいものです。
今回聴いてみても彼の感覚に頼らない理性的な
音作りは、とても魅力的です。

機会があればぜひ聴いてみてください。

King Tubby Meets Roots Radics-Symbolic Dub-( Dangerous Dub Album)


DUB LP- DANGEROUS DUB - KING TUBBY MEETS ROOTS RADICS - Up Town Special



○アーティスト: King Tubby
○アルバム: Dangerous Dub: King Tubby Meets Roots Radics
○レーベル: Greensleeves
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○King Tubby「Dangerous Dub: King Tubby Meets Roots Radics」曲目
1. Country Gal Dub
2. Loud Mouth Rock
3. Up Town Special
4. Hungry Belly Dub
5. Shepherd Bush In Dub
6. London Bridge Special
7. Earthquake Shake
8. Rice Grain Rock
9. Banana And Yam Skank
10. Knife And Fork Dubwise
11. King Stereo Gav Dub
12. King Tubby's Hi-Fi Dub
13. Symbolic Dub