今回はScientistのアルバム

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「Wins The World Cup」です。

ScientistはダブのエンジニアKing Tubbyの
スタジオKing Tubby'sでエンジニアの勉強をした
のちに独立し、今回紹介するHenry 'Junjo' Lawes
のプロデュースのもと作成した「漫画ジャケ・
シリーズ」のほか数々のダブを作成したエンジニア
として知られている人です。

Scientist(サイエンティスト)

今回の作品は1982年の作品で、長らく廃盤
状態だった「漫画ジャケ・シリーズ」の5枚目
のアルバムです。
この「漫画ジャケ」シリーズの特徴は、ミックス
がScientist、プロデュースがHenry 'Junjo' Lawes
かLinval Thompson、バックの演奏がRoots Radics、
カヴァー・デザインがTony McDermott、そして
ドラキュラやインヴェーダー・ゲームやボクシング
といったギミックをテーマに曲作りがされて
いるという事です。
ジャケットも漫画ですが、内容もちょっと漫画
チックなんですね(笑)。

今回のテーマは「サッカーのワールド・カップ」
です。
この「漫画ジャケ・シリーズ」が6種類まとめ
て再発された中の1枚です。
表ジャケに「The Final King Tubby's Session」
とあるのですが、King Tubby'sでの最後の仕事
という事でしょうか?
彼が独立したのは82年と言われているので、
符合しますね。

ちなみにこの「漫画ジャケ」シリーズは、
80年にScientistと兄弟子のKing Jammyが対決
して交互にミックスしている「Big Showdown」
から始まって、同年に勝者?のScientist単独の
「Heavyweight Dub Champion」、81年に
「Meets The Space Invadors」→「Rids The
World Of The Evil Corse Of The Vampires」と
続き、今回の82年の「Wins The World Cup」
から「Encounters Pac-Man At Channel One」
となっています。
とりあえずここまでが「漫画ジャケ・シリーズ」
のようです。

これで人気を博したせいか、このScientistは
以降も「漫画ジャケ」のアルバムが多いよう
なんですけど…(笑)。
ある意味Scientist=漫画ジャケというイメージ
作りに成功した好例ですね。

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Scientist, Prince Jammy - Big Showdown (1980)

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Scientist - Heavyweight Dub Champion (1980)

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Scientist - Meets The Space Invaders (1981)

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Scientist - Rids The World Of The Evil Curse Of The Vampires (1981)

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Scientist - Encounters Pac Man (1982)

やっぱりこの「漫画ジャケ」シリーズを
仕掛けたVolcanoレーベルのHenry 'Junjo'
Lawesという人のイメージ戦略は大したもの
だと思います。
この80年代に入ると昔は極貧国だった
ジャマイカも、レゲエというビジネスが成功
したこともあるのか徐々に豊かになって来た
ようで、こういうカヴァー・デザインまで
含めた総合的な販売戦略でものを売る人が
出て来るんですね。

ルーツの頃に白ジャケにスタンプのみで
店頭でゴロっと売られていたダブが、綺麗な
パッケージで売られるようになっただけでも
かなり大きな社会的な変化だったんだと
思います。
その分政治性や社会性は後退して、こうした
ギミックや下世話な話題がレゲエの歌詞の
中心になっていく訳ですが、その功罪は
ともかくとしてそれが時代の変化というもの
なのでしょう。

全16曲で収録時間は49分46秒。

今回のアルバムですが、裏ジャケの表記は次の
ようになっています。

Produced & Arranged by Henry Junjo Lawes

Ten DangerousMatches
Plus 5 Extra Time And The Golden Goals
Played By The Roots Radics Squad
With Referee Junjo

あれ!?曲目がない?と初めは思いました。
そこでネットを調べると10曲目までが
「Ten Dangerous Matches」の1から10、そして
11曲目から15曲目までが「Extra Time」の
1から5、最後が「Golden Goal」となって
いました。
なるほど~~!そういう事だったんですね(笑)。
レフェリーが「Junjo」になっているのも、
ちょっとオシャレですね(笑)。
遊び心満点といったところでしょうか。

今回の「漫画ジャケ」シリーズにはこうした
「遊び」がチョコチョコ入っているのも特徴で、
例えばヴァンパイアをテーマにした「Rids The
World Of The Evil Corse Of The Vampires」
では、13日の金曜日の深夜にミックス
した事になっているんですね。

さて「The Roots Radics Squad」のメンバー
は以下になっています。

Bass: Errol Flabba Holt
Drums: Style Scott
Organ: Winston Wright
Piano: Gladstone Anderson
Lead Guitar: Boo Pee
Rhythm Guitar: Sowell
Percussion: Sky Juice & Skully
Saxophone: Deadly Headley
Trombone: Nambo
Vocals: Hugh Jarrett, Wayne Jarrett, Johnny Osbourne

となっています。

カヴァー・デザインはもちろんTony
McDermott。
今回の「漫画ジャケ」シリーズでは、
この人の存在も欠かせない要素の
ひとつになっています。

さて今回のアルバムですが、とても
バランスの取れた音作りで悪くないと
思いました。
ただエフェクトにもう少し遊びやひと工夫
があると、もっと特徴的なダブになった
のかなという気がしないでもありません。

このScientistの「漫画ジャケ・シリーズ」
をあらためて再検証してみると、やはり
80年代初めのダンスホール・レゲエ移行期
の中でなかなか注目すべきシリーズだと
思います。
今回聴き直してみてあらためて気づかされた
事ですが、この時代はかなりいろいろな
レゲエが入り混じった混沌とした時代だった
んだなぁという事です。

この時代にそれまでのルーツと違うサウンドの
ダンスホールのダブをScientistが作ったという
事は、かなり歴史的な意義は大きいんじゃ
ないかと思います。
そして今あらためて聴き直してみると、この
ルーツとダンスホールが入り混じって混沌とした
80年代前半のレゲエというのは、レゲエの歴史
の中でももっとも注目すべき時代だったのかも
しれません。

そしてその中でもこのScientist + Roots Radics
というユニットは、当時の新しい音楽を創作した
最強のユニットのひとつだった事は否定が出来
ません。

この先レゲエという音楽は85年にPrince Jammy
による「デジタル革命」が起こり、劇的に変わって
行くのですが、そのちょっと前の爛熟した時代に
こうした美しい「華」が咲いていた事は、レゲエ
好きとしては忘れておきたくない事だと思います。

とにかく高い次元でコンテンツとして結実して
いるシリーズなので、特にダブに興味のある人
にはおススメです。

機会があれば聴いてみてください。

Scientist - Dangerous Match 3


Scientist - Eighth Dangerous Match


Scientist - Extra Time part 5 1982



○アーティスト: Scientist
○アルバム: Wins The World Cup
○レーベル: Mirumir Music
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1982

○Scientist「Wins The World Cup」曲目
1. Ten Dangerous Matches 1
2. Ten Dangerous Matches 2
3. Ten Dangerous Matches 3
4. Ten Dangerous Matches 4
5. Ten Dangerous Matches 5
6. Ten Dangerous Matches 6
7. Ten Dangerous Matches 7
8. Ten Dangerous Matches 8
9. Ten Dangerous Matches 9
10. Ten Dangerous Matches 10
11. Extra Time 1
12. Extra Time 2
13. Extra Time 3
14. Extra Time 4
15. Extra Time 5
16. Golden Goal