今回はMikey Dreadのアルバム

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「World War Ⅲ」です。

Mikey Dreadは歌手やプロデューサー、ディージェイ
として活躍した人です。
ネットの情報によると、ジャマイカで初のレゲエ
だけを流すラジオ番組「The Dread at the Controls」
でDJとして人気を博したのちに、自身のアルバムを
リリースし、シンガーとプロデューサーとして活躍
した人のようです。

彼が最も注目されたのは、80年にUKのパンク・
バンドThe Clashのアルバム「Sandinista」で
プロデュースと数曲のヴォーカルを担当した事なんだ
そうです。
そういうレゲエという枠を超えた、クロス・オーヴァー
な活躍をした人なんですね。

マイキー・ドレッド

Dread At The Controls (ドレッド・アット・ザ・コントロールズ)

今回のアルバムはそのThe Clashのプロデュースを
した翌年の、81年に作られたアルバムのようです。
バックにはRoots Radics、ミックスにはScientist
も参加という、かなり魅力的な布陣で作られた
アルバムです。
ちなみにこのアルバムの邦題は「第三次世界大戦」
というタイトルだったようです。

手に入れたのはHeart Beatから出ているCDでした。

全9曲で収録時間は56分39秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Arranged & Produced by The Dread at the Controls
Recorded at Channel One Studio & Aquarius Sound Studios
Engineers: Lancelot 'Maxie' McKenzie & Mervyn Williams
Mixed at King Tubby's Studio
Mixed by 'Scientist' Overton Brown & M. Campbell
'Jah Jah Love (In The Morning)' mixed at Wessex Studio, London by Bill Price
Remixed at Wessex Studios, by Bill Green
assisted by Jeremy Green

Bass: Errol 'Flabba' Holt
Drums: Lincoln 'Style' Scott
Lead Guitar: Noel 'Sowell' Bailey
Rhythm Guitar: Dalton Brownie, Bingy Bunny
Percussion: Bongo Herman, Scully
Piano: Gladstone Anderson
Organ: Anthony Nelso 'Steelie'
Alto Sax: Felix 'Deadley' Headley
Backing Vocals: Edi Fitzroy, Earl Sixteen, Watty Burnett (The Congoes Barritone)

となっています。

バッキング・ヴォーカルにEarl Sixteenの名前が
あります。

さて今回のアルバムですが、この81年当時の
Scientistと
Roots Radicsはあの有名な「漫画ジャケ・シリーズ」
を作っている時期で、彼らが一番ノッている時期
だったんですよね。  
そういう波に乗っているバックにも恵まれて、
Mikey Dreadは気持ち良い歌声を聴かせています。

Scientist - Rids The World Of The Evil Curse Of The Vampires (1981)

このMikey Dreadはルーツ・レゲエの時代の70年代
の後半からアルバムを出していますが、さすがラジオ
のDJをしていた人らしく、ダンスホール・レゲエ
という時代の流れにも対応しています。
曲を聴いた印象としては、いかにもScientist!と
いったダブワイズが効いた曲があるものの、全体には
スマートなヴォーカル・スタイルが印象に残りました。
今回のアルバムを聴く限りは歌っているような
スタイルなんですが、この人はディージェイに分類
されている事があって、歌とディージェイの中間的な
スタイル、シング・ジェイのスタイルを得意として
いるようです。

意外とスマートな歌い方(トースティング?)なので、
今回のアルバムなど5分以上ある曲が多く入って
いるんですが、あまり曲の長さが気になりません。
シンコー・ミュージック刊行の本「Roots Rock Reggae」
にはこの人のアルバム評もあるのですが、クロス・
オーヴァーな活躍が逆にレゲエ・ファンに人気の無い
ような事が書いてありますが、ある意味曲のスマートさ
軽さがコアなファンから敬遠されたのかも?
ただ曲のタイトルなどを見る限りは、かなりルーツで
ラスタな内容のようで、そういう「コンシャス」な
姿勢があるので、悪くはない気がします。

やはり注目はScientistのミックスで、曲の多くが
「Extended」、つまり歌とダブを合わせたディスコ・
ミックス・スタイルの曲が多く収められていて、
かなりヘヴィーなダブを聴かせてくれています。

4曲目「Israel (12 Tribe) Stylee (Extended Play)」
から5曲目「Warrior Stylee (Extended Stereo Style)」
まで続くディスコ・ミックスはかなり圧巻です。
全体にMikey Dreadのヴォーカル・スタイルもあって、
軽い軽快なナンバーが多い印象ですが、Scientistの
ミックスはかなり凝っていて、聴けば聴くほど音の
面白さに気付かされるアルバムです。

8曲目「Mental Slavery (Extended Play)」も
Scientistのミックスが冴え渡った曲です。
このアルバムの中でも白眉の1曲だと思います。

このアルバムを聴くと、あらためてこの80年代前半の
レゲエの音楽性の高さを思い知らされる気がします。
特にこのScientistとRoots Radicsはこの80年代前半に
かなり面白いアルバムをけっこう残しているんですね。
80年代半ばにはKing Jammyの「デジタル革命」が
始まるので意外と見過ごされがちなこの時期ですが、
実はこの時代にかなり音楽性の高いアルバムが多く
作られているんですね。
そういう意味ではこの時代の音源は、けっこう探し
甲斐があります。

今回のアルバムはMikey Dreadのアルバムの中でも
特に面白い1枚だと思います。
ダブ好き、ルーツ・レゲエ好き、初期のダンスホール
好きはもちろんこと、この時代のScientistのミックスが
好きな人には絶対と言って良いほどおススメです。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Mikey Dread - World War III (Extended)


MIKEY DREAD - Mental Slavery (Extended Play)



○アーティスト: Mikey Dread
○アルバム: World War Ⅲ
○レーベル: Heart Beat
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1981

○Mikey Dread「World War Ⅲ」曲目
1. Break Down The Walls
2. Jah Jah Love (In The Morning)
3. The Jumping Master
4. Israel (12 Tribe) Stylee (Extended Play)
5. Warrior Stylee (Extended Stereo Style)
6. Money Dread
7. Rockers Delight (Extended Play)
8. Mental Slavery (Extended Play)
9. World War Ⅲ

●今までアップしたMikey Dread関連の記事
〇Mikey Dread「African Anthem: The Mikey Dread Show Dubwise」(CD-R)
〇Mikey Dread「At The Control Dubwise」
〇Various「Can't Stop The Dread」