今回はKing Jammy'sのアルバム

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「Selectors Choice Vol.4」です。

King Jammyはレゲエの歴史に偉大な足跡を残した
プロデューサーとして知られている人です。
初めに登場した頃はPrince Jammyと名乗っており、
ダブのエンジニアとして有名なKing Tubbyのもとで、
優秀なエンジニアとして働いていましたが独立し、
80年代の半ばにWayne Smithの曲「Under Me Sleng
Teng」で大ヒットを飛ばします。
これはレゲエ初のコンピューターを使った楽曲、
いわゆる「コンピューター・ライズド」の大ヒット
でした。
この「Sleng Teng」の大ヒットをきっかけに、彼は
レゲエ界に「デジタル革命」といわれる劇的な変化
をもたらします。
それまで生演奏だった曲作りをコンピューターに
よる制作にシフト・チェンジしたのです。
それにより劇的に曲作りのスピードが上がり、
プロデューサー主体の曲作りに世の中が変わった
のでした。

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Wayne Smith - Under Me Sleng Teng

King Jammy(キング・ジャミー)

今回はそのKing Jammyの足跡を追った「Selectors
Choiceシリーズ」の4集あるうちの4枚目のアルバム
です。
この「Selectors Choiceシリーズ」は丁寧な編集で、
これを聴けばKing Jammyの足跡および「デジタル革命」
当時に作られた曲の全貌が解るような構成になって
います。
果たしてKing Jammyが成し遂げようとした「デジタル
革命」とは何だったのか?
それを知りたければこのシリーズは必聴だと思います。

Disc 1が全20曲で収録時間は66分47秒。
Disc 2が全20曲で収録時間は70分56秒。

詳細なミュージシャンの表記はありませんが、
「Musicians」として次の表記があります。

Musicians: Roots Radics, High Times Band, Noel Davey,
Steely & Clevie, Mafia & Fluxy

Engineers: King Jammy, Bobby Digital, Beckettt, Squeengine,
Soljie, Fatman, Snakie, Genius

Produced By: Lloyd 'King Jammy' James

となっています。

どちらかというと私はルーツの時代について書いて
いる事が多いのですが、その時代とはミュージシャン
も様変わりしています。
その中でHigh Times Bandとありますが、これはEarl
'Chinna' SmithのレーベルHigh Timesのバンドという
事です。
ルーツの時代から頑張っている人が居るのは、
ちょっと嬉しいところです。

ミュージシャンとしては、Cocoa Tea、Home T、
Shabba Ranks、Tiger、Brian & Tony Gold、Leroy Gibbons、
Hugo Barrington、Admiral Bailey、Dean Fraser、John Holt、
Frankie Paul、Chuck Turner、Pinchers、Lt. Stitchie、Sanchez、
Thriller U、Chaka Demus、Flourgon、Daddy Lizard、Colin Roach、
Major Mackerel、Josey Wales、Robert Lee、Risto Benjie、
Major Worries、Little John、Ninja Man、Johnny P、Echo Minott
といった人達が参加しています。
この中でベテランを探すとJohn Holtぐらいですかね。
ロックステディの時代から活躍し続けているという
のはやっぱりスゴイ!ですね。

このダンスホール・レゲエ時代のもう一つの特徴
としては、インストが極端に減るんですね。
意外と70年代はダブを含めてインストがよく
聴かれているんですが、80年代に入るとこの
ダンスホールで頑張っているインストはDean Fraser
ぐらいなんですね。
その辺は日本の事情も似ていて、今はほとんどインスト
って聴かれないけれど、私の若い頃はイージーリスニング
も含めてインストってけっこう聴かれていたんですね。
どういう事情でインストが聴かれなくなるのか?
ちょっと興味深いテーマです。

今回のアルバムもリディムごとに曲が分類されていて、
Disc 1では「Who She Love Riddim」、「Missing You
Riddim」、「Carpenter Riddim」、「Tears Riddim」、
「Natty Dread Riddim」、「The Score Riddim」、
「Mamma Nan Riddim」の7つのリディムが、
Disc 2では「Peenie Peenie Riddim」、「Love Punaany
Bad Riddim」、「Punaany Riddim」の3つのリディム
が収められています。

この第4集まで聴いて一番印象的なのは、やっぱりこの
King Jammyという人のセンスの良さです。
この人の作る曲は、まだデジタルの性能も上がっていない
時代だったと思うので、それなりにずいぶん苦労もあった
と思うのですが、それでもちゃんと1曲1曲に聴かせ
どころをうまく付けてあるんですね。

意外と見過ごされがちな部分ですが、このレゲエという
音楽はとかく土着的な部分ばかり注目されがちですが、
実は現代に通じる音楽的なチャレンジを早くから展開した
音楽なんですよね。

今回このKing Jammyのダンスホール・レゲエを聴いて
みても、彼の音楽的なインテリジェンスやチャレンジ
精神がそこかしこに垣間見えます。
音楽の性格はルーツ・レゲエの時代とはだいぶ変わって
いるんですが、新しい音楽を作ろうという意欲はこの
時代になっても全く変わることが無いんですね。
やはりそれはスゴイ事だと思います。

Disc 1の1~3曲目は、(Who She Love Riddim)。
どうやら1曲目の「Who She Love」という曲が元の
リディムのようです。

Cocoa Tea ft. Home T and Shabba Ranks - Who She Love


4~7曲目は、(Missing You Riddim)。
こちらもLeroy Gibbonsの曲が元のリディムのよう
です。

Missing you Leroy Gibbon


8,9曲目は、(Carpenter Riddim)。

John Holt-If I Were a Carpenter


10,11曲目は、(Tears Riddim)。

Chuck Turner - Tears


12~14曲目は、(Natty Dread Riddim)。

Lt. Stitchie - Natty Dread


15~18曲目は、(The Score Riddim)。

Frankie Paul - I Know The Score


19,20曲目は(Mamma Man Riddim)。

Chaka Demus - Ital Man.wmv


Disc 2の1~3曲目は、(Peenie Peenie Riddim)。
このリディムのオリジナルは1975年のJunior Byles
のヒット曲「Fade Away」だそうです。
それがShabba Ranksのヒットで(Peenie Peenie Riddim)
とも呼ばれるようになったようです。

Shabba Ranks - Peeny Peeny (1991)


Fade Away/Peanie Peanie (フェイド・アウェイ/ピニ・ピニ)

4~8曲目は、(Love Punaany Bad Riddim)。
これまたShabba Ranksのヒット曲のようです。
やっぱりこの時代のShabba Ranksの活躍あ無視できない
ものがあります。

Love Punany Bad - Shabba Ranks


Love Punanny Bad (ラブ・プナニー・バッド)

9~20曲目は、(Punaany Riddim)。
レゲエレコード・コムの「リズム特集」によると、
「Steely & Clevieによる大ヒット・リズム」なんだ
そうです。

Punanny - Admiral Bailey (Punanny Riddim)


Punanny (プナニー)

という事でざっと曲を追いかけて来ましたが、同じ
曲でも様々なアーティストに歌わせて盛り上げていく
のが、レゲエのやり方なんですね。
実際にこの4集目ぐらいになると、ネットで調べても
なかなかリディムが出て来ない曲もけっこうありました。
それでも古いリディムから新しいリディムまで、使える
ものは徹底的に使って音楽を作っていく、その
たくましさこそがレゲエという音楽の本質なのかも
しれません。

この「Selectors Choiceシリーズ」は、レゲエという
音楽の歴史の中でKing Jammyという人がどういう仕事を
して、どういう役割を果たしたのか?それが解るシリーズ
としてとても貴重だと思います。
ダンスホール・レゲエが好きな人はもちろんですが、
レゲエの歴史を深く知りたい人も、ぜひこのシリーズ
を聴く事をおススメします。


○アーティスト: King Jammy's
○アルバム: Selectors Choice Vol.4
○レーベル: VP
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2006

○King Jammy's「Selectors Choice Vol.4」曲目
Disc 1
(Who She Love Riddim)
1. Who She Love - Cocoa Tea, Home T, Shabba Ranks
2. Boombastic - Tiger
3. Bull's Eye - Brian & Tony Gold
(Missing You Riddim)
4. Missing You - Leroy Gibbons
5. Lodi Lodi - Hugo Barrington
6. Chatty Chatty Mouth - Admiral Bailey
7. Champagne Sax - Dean Fraser
(Carpenter Riddim)
8. If I Were A Carpenter - John Holt
9. Kissing In The Moonlight - Frankie Paul
(Tears Riddim)
10. Tears - Chuck Turner
11. Genie - Pinchers
(Natty Dread Riddim)
12. Live Blanket - Shabba Ranks
13. Think Me Did Done - Admiral Bailey
14. Natty Dread - Lt. Stitchie
(The Score Riddim)
15. I Know The Score - Frankie Paul
16. End Of The World - Sanchez
17. My Love - Thriller U
18. Mr. Sea - Sanchez
(Mamma Man Riddim)
19. Ital Man - Chaka Demus
20. Jump & Shock Out - Flourgon, Daddy Lizard

Disc 2
(Peenie Peenie Riddim)
1. Pennie Penie - Shabba Ranks
2. Original Kuff - Chaka Demus
3. Johnny Too Bad - Colin Roach
(Love Punaany Bad Riddim)
4. Love Punaany Bad - Shabba Ranks
5. Pretty Looks Done - Major Mackerel
6. Water Come A Mi Eye - Josey Wales
7. Love Mi Stylee - Robert Lee
8. Me Ah De Danger - Admiral Bailey
(Punaany Riddim)
9. Needle Eye Pum Pum - Shabba Ranks
10. Punaany - Admiral Bailey
11. Healthy Body - Admiral Bailey
12. Gimme The Money - Risto Benjie
13. Babylon Boops - Major Worries
14. No Borrow No Gun - Pinchers
15. Yes Mama - Little John
16. Border Clash - Ninja Man
17. Bike Back - Johnny P
18. Wrong Move - Josey Wales
19. Been Around The Wrold - Echo Minott
20. Punaany Sax - Dean Fraser

ちなみにこのシリーズは第4集までありますが
Vol.1~Vol.3はこういうジャケットです。。

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King Jammy's - Selector's Choice Vol.1

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King Jammy's - Selector's Choice Vol.2

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King Jammy's - Selector's Choice Vol.3