今回はJoe Gibbsのアルバム

joe_gibbs_06a

「Scorchers From The Mighty Two」です。

Joe GibbsはエンジニアのErrol Thompsonとの名
コンビThe Mighty Twoでレゲエ界に多くのヒット曲
を残した名プロデューサーです。
またダブでは「African Dub」シリーズなど多くの
優れたダブを残し、ミックス曲などでも素晴らしい
仕事を残しています。

ジョー・ギブス-Wikipedia

今回のアルバムはそんなJoe GibbsのVPレーベルから
出ている2枚組のアンソロジーです。

Disc 1は全20曲で収録時間は79分34秒。
Disc 2は全20曲で収録時間は76分44秒。

バックはThe Professionalsという事になるの
でしょうか?
次のミュージシャンが参加しています。

Drums: Lowell 'Sly' Dunbar, Carlton 'Santa' Davis,
Leroy 'Horsemouth' Wallace
Bass: Loyd Parks, George 'Fully' Fullwood, Robbie Shakespeare
Guitar: Eric 'Bingy Bunny' Lamnt, Lenox Gordon,
Winston Bo Peep' Brown, Tony Chin
Keyboards: Ossie Hibbert, Fraklyn 'Bubbler' Waul,
Errol 'Tarzan'Nelson, Harold Butler
Trumpet: Bobby Ellis
Alto Saxophone: Herman Marquis
Trombone: Vin Gordon
Tenor Saxophone: Tommy McCook
Percussion: Sticky, Ruddy Thomas

プロデュースはGibbs & Errol Thompsonです。

さて今回のアルバムですが、まさにジャマイカの
レゲエの歴史とも言える楽曲とアーティストが
並びます。
これを聴けばルーツ期のジャマイカのレゲエとは
何だったのかが解る、そう言ってしまいたくなる
ほど内容の濃いアルバムです。
少なくともレゲエの歴史の一部がこのアルバム
には詰まっています。

収められているアーティストは、Culture、Dennis Brown、
Prince Mohammed(George Nooks)、Lloyd Parks & Ray-I、
Gregory Isaacs、Junior Murvin、Cornell Campbell、
Marcia Aitken、Ruddy Thomas、Trinity、The Mighty Diamonds、
Freddie McGrgor、Junior Byles、Dhaima、
Dolphin 'Naggo' Morris、Prince Far I、Prince Alla、
Sylford Walker、Jacob Miller、Glen Washington、
Bobby Melody、The President、Max Romeo、Black Uhuru、
Dennis Walks、Barrington Levy、Eak-A Mouse、Enos McLeod、
Chalice、Tyrone Taylor、Sammy Dread、Althea & Donna、
J.C. Lodgeといった人達です。
Dennis Brown、Gregory Isaacs、Freddie McGrgor
という大物歌手に交じってJunior Byles、Sylford Walker
といった強く印象に残る歌手が混じっているのは、
ちょっと嬉しいところです。

Disc 1の1曲目はCultureの「Two Seven Clash」。
「7と7がぶつかる時に何かが起きる」という
ラスタファリズムの指導者Marcus Garveyの予言を
歌にした曲で、デビュー当時の彼らを一気に
スターダムに押し上げた曲として知られています。

Two Seven Clash - Culture-リリック

2曲目はDennis Brownのヒット曲「Money In My
Pocket」とPrince Mohammedの「Cool Runnings」の
ミックス曲です。
「ポケットにお金はあっても、愛はお金じゃ買え
ないよ」と歌うこの曲は、全英チャート14位に
なっているのですが、その順位以上にDennis Brown
というアーティストを象徴する名曲です。

Dennis Brown - Money In My Pocket - リリック

その名曲になんだか頭の軽そうなディージェイ
Prince Mohammedの「Cool Runnings」をくっつけ
ちゃっている所が、このThe Mighty Two、Joe Gibbs
とErrol Thompsonのスゴイとこなんですね(笑)。
このPrince Mohammedという人、実は歌手の
George Nooksという人なんです。
ちょっと鼻から空気が抜けているような歌い方が
特徴の人なんですが、ディージェイPrince Mohammed
だとそれが小馬鹿にしてヘラヘラしているような感じ
でカッコイイんですが、歌手として歌うとなんか
息がスースー抜けてて変な感じの人なんですよね(笑)。
個人的にはこのPrince Mohammedの路線で行って
欲しかったなぁと思う人です。

Dennis Brown & Prince Mohammed - Money In My Pocket & Cool Runnings


このThe Mighty Twoというユニットはレゲエの
ミックスでも、独壇場と言って良いほどにたくさん
の良いミックスを残しているんですが、その中でも
このミックスは最高のミックスだと思います。
Dennis Brownの明るいキャラとPrince Mohammedの
軽さがめちゃくちゃに合っていて、かなりぶっ飛んだ
曲になっているんですね。
元気が出ない時にはこのアルバムを引っ張り出して、
この曲を聴くと元気になれる、そういう曲なんですね。

3曲目「Officially / One X One」もLloyd Parks
の「Officially」は多くのアーティストがカヴァー
しているヒット・リディムです。

5曲目Junior Murvinの「Cool Out Son」はStudio
Oneの名リディム「Real Rock」を使用した曲です。

Junior Murvin - Cool Out Son


7曲目Marcia Aitkenの「I'm Still In Love With
You」は、Alton EllisのStudio One時代のヒット曲
としても知られている名リディムです。

そして8曲目Ruddy Thomasの「Loving Pauper」は、
ロックステディの時代にDobby Dobsonがヒットさせた
ことで有名な曲なんですね。
切ない貧しい男の恋心を描いた「恋する貧乏人」
というタイトルのこの曲は、ロックステディの時代に
Studio Oneと肩を並べる勢いのあったTreasure Isle
レーベルの名曲として有名です。
この曲は今回のRuddy Thomasをはじめとして多くの
ミュージシャンにカヴァーされています。
後半がこの「Loving Pauper」のリディムを使った
Trinityの「Judgement Time」のミックスになって
いるのがキマッています。

Ruddy Thomas & Trinity - Loving Pauper / Judgement Time


9曲目The Mighty Diamondsの「Just Like A River」
は、このJoe GibbsレーベルのStranger Coleのヒット曲
として有名な曲なんだそうです。
The Mighty Diamondsが美しいコーラス・ワークで
歌い上げています。

The Mighty Diamonds - Just Like A River


11曲目George Nooksの「Left With A Broken Heart」
は、John Holtが居たThe Paragonsのヒット曲として
有名な曲です。

13曲目Cornell Campbellの「No Man's Land」は、
John Holtの「Up Park Camp」のリディムを使用した
カヴァー曲です。
この「Up Park Camp」もJohnny Clarkeなど、たびたび
カヴァーされている名リディムなんですね。

Cornell Campbell - No Man's Land + Version Killer Roots


18曲目Jacob Millerの「I'm A Natty」は、
Bob Marleyの「Soul Rebel」としてあまりにも有名な
曲です。
Bob Marleyの名曲中の名曲を、Inner Circleの
ヴォーカリストだった事でも有名なJacob Millerが、
彼らしい粘りのある歌い方で歌い上げています。

Disc 2の1曲目Bobby Melodyの「Jah Bring I Joy In
The Morning」は、ロックステディ期のGayladsのヒット
曲「Joy In The Morning」のリメイク曲です。

次の2曲目Sylford Walkerの「Burn Babylon」は、
この人の代表曲のひとつに数えられる曲です。
それほどリリースの多くないSylford Walkerですが、
この人の曲はルーツ好きだったら惹きつけられるもの
があります。

Sylford Walker - Burn Babylon


3曲目Culture & The Presidentの「See Them A Come
/ Natty Pass Him G.C.E.」は、Cultureのヒット曲
でもありますが、Studio Oneのヒット・リディム
「Heavy Rock」が使われています。
後半のThe Presidentという「Natty Pass Him G.C.E.」
をトースティングしているディージェイの人はちょっと
知らない人なんですが、今回の「歌+ディージェイ」と
いう組み合わせのミックスの中でも絶妙な出来で、彼ら
The Mighty Twoのプロデュース能力の高さを実感させ
られる1曲です。

4曲目George Nooksの「Tribal War」は、Little Royの
ルーツの名曲です。

9曲目Jacob Millerの「Keep On Knocking」は、
「Hypocrite」という多くのアーティストにカヴァー
されている有名なリディムです。

10曲目Barrington Levyの「My Woman」は、ダンス
ホール・レゲエで活躍したこの人の大ヒット・リディム
なんだそうです。

Barrington Levy - My Woman 1985


18曲目Althea & Donnaの「Uptown Top Ranking」は、
当時17歳と18歳だったAlthea & Donnaのヒット曲です。
言わば「ジャマイカ版AKB」みたいな感じです(笑)。
あまり歌のうまくない女性デュオなのですが、こういう
「企画もの」を仕掛けちゃうのも、The Mighty Twoらしい
遊び心があって面白いところです。

最後20曲目J.C. Lodge & Prince Muhammedの
「Someone Loves You Honey / One Time Daughter」は
ちょっといわくつきの曲です。
このJ.C. Lodgeの「Someone Loves You Honey」は、
アメリカの黒人カントリー・ウェスタン・シンガー
Charlie Prideのヒット曲のカヴァー曲なんですが、
Joe GibbsはCharlie Prideにお金を払わず訴訟を起こされ、
裁判に負けて多額の賠償金を支払えずに、倒産すること
になるんです。
つまりすべてを失ってしまうんですね。
せっかくレゲエ界にたくさんの功績を残してきたJoe
Gibbsなのに、もったいない事をしたものだと思います。

June Lodge & Prince Mohammed - Someone loves you honey


まあざっと今回のアルバムを紹介しましたが、1曲1曲に
The Mighty Twoという名コンビの音楽愛が詰め込まれて
いて、とても聴きごたえがあります。
こうしてレゲエのアルバムのブログを書いていたりすると、
よく「資料」として引っ張り出して聴くことがあるアルバム
でもあります(笑)。

とにかくレゲエ好きだったら持っていて損のないアルバム
だと思います。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Joe Gibbs
○アルバム: Scorchers From The Mighty Two
○レーベル: VP
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2008

○Joe Gibbs「Scorchers From The Mighty Two」曲目
Disc 1
1. Two Seven Clash - Culture
2. Money In My Pocket / Cool Runnings - Dennis Brown & Prince Mohammed
3. Officially / One X One - Lloyd Parks & Ray-I
4. Babylon Too Rough - Gregory Isaacs
5. Cool Out Son - Junior Murvin
6. Boxing Around - Cornell Campbell
7. I'm Still In Love With You - Marcia Aitken
8. Loving Pauper / Judgement Time - Ruddy Thomas & Trinity
9. Just Like A River - The Mighty Diamonds
10. No Competition - Freddie McGrgor
11. Left With A Broken Heart - George Nooks
12. Heart And Soul - Junior Byles
13. No Man's Land - Cornell Campbell
14. Ina Jah Children - Dhaima
15. Su Su Pon Rasta / Heavy Manners - Dolphin 'Naggo' Morris & Prince Far I
16. Funeral - Prince Alla
17. Jah Golden Pen - Sylford Walker
18. I'm A Natty - Jacob Miller
19. Rockers A Nuh Crackers - Glen Washington
20. Ghetto Girl - Dennis Brown

Disc 2
1. Jah Bring I Joy In The Morning - Bobby Melody
2. Burn Babylon - Sylford Walker
3. See Them A Come / Natty Pass Him G.C.E. - Culture & The President
4. Tribal War - George Nooks
5. Identity - The Mighty Diamonds
6. Stop Picking On Me - Max Romeo
7. Rent Man - Black Uhuru
8. Almighty I - Dennis Walks
9. Keep On Knocking = Jacob Miller
10. My Woman - Barrington Levy
11. Virgin Girl - Eak-A Mouse
12. Hellow Carol - Enos McLeod
13. Rope In - Cornell Campbell
14. When I Think Of You - Ruddy Thomas
15. Good To Be There - Chalice
16. Heavy Waist Line - Tyrone Taylor
17. My Princes - Sammy Dread
18. Uptown Top Ranking - Althea & Donna
19. Love Has Found It's Way - Dennis Brown
20. Someone Loves You Honey / One Time Daughter - J.C. Lodge & Prince Muhammed

●今までアップしたJoe Gibbs & The Professionals関連の記事
〇Joe Gibbs & The Professionals「Majestic Dub」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty Chapter 3」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty Chapter 4」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty Chapter Two」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty」
〇Joe Gibbs And The Professionals「State Of Emergency」
〇Joe Gibbs「Reggae Christmas」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.1」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.2」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.3」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.4」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.5」
〇Professionals「Meet The Aggrovators At Joe Gibbs」