今回はSuper Catのアルバム

super_cat_01a

「Don Dada」です。

Super Catはインド系移民とジャマイカ人の
ハーフのダンスホールで活躍したディージェイ
です。

スーパーキャット - Wikipedia

今回のアルバムは1991年の作品で、
「Don Dada」というのは彼のニックネームの
ひとつだそうです。
ちなみに「Cat」というのはインド系移民を
指すスラングなんだそうです。
つまりSuper Catという名前は「超人的な
インド系移民」という名前なんですね。

全14曲で収録時間は52分01秒。

今回のアルバムは表ジャケが2つ折りに
なっており、そこに曲ごとのバックの参加
ミュージシャンの記載があります。

Bass: Danny 'Axe Man' Thompson, Steely Johnson,
Drums: Raf Allen, Clevie Brown, George 'Firehouse' Miller,
Keyboards: Raf Allen, Steely Johnson, Danny 'Axe Man' Thompson,
All Instrument: Raf Allen(3,4,6,7,9,10,12,13), Dennis Halburton(5),
Dave Fluxy & Leroy Mafia(8),
Paul Jazwad Yebuah(14)

Produced By Robert Livingston, William Maragh & Andrew Harpaul

となっています。

Steely & ClevieやMafia & Fluxyなどがバックを
担当しています。

この時代になるとレゲエもコンピューターに
よる音作り「デジタル革命」が進んで、オール・
インストゥルメンタルを一人で作るようになって
きています。
一人でほとんど作れてしまうので曲作りがかなり
効率化して、曲が大量に作られるようになるのですが、
半面ミュージシャンがそれほど要らなくなって、
ミュージシャンにとってはかなり大変な時代だった
ようです。

この90年頃というのはおそらく他の業界でも、
コンピュータでの情報処理が主流になり、それまで
経験がものをいっていた社会から大きく様変わり
した時代だと思います。
例えばそれまで帳簿による経理が、パソコンに
よるデータでの管理に変わっていったんですね。
会社のデスクに当り前にパソコンが置かれる
ようになったのは、この90年代ぐらいから
じゃないでしょうか。
もちろんそれで良くなった面と悪くなった面が
あるんですね。

さて今回のアルバムですが、まさにコンピューター・
ライズドのサウンドに乗ってSuper Catが弾け
まくっているというアルバムなので、この手の
ダンスホール・レゲエが好きな人にはツボの
アルバムだと思います。
ある意味このちょっと薄っぺらにも聴こえる
バックもこの時代の特徴で、それなりの面白さ
があります。

このダンスホール・レゲエの時代になると、
ルーツ・レゲエの
時代にあったような身汚さが無くなり、レゲエは
すごくオシャレな音楽へと変貌します。
ただその分ルーツ・レゲエの頃にあったような
思想性も極端に希薄になります。

例えば今回のアルバムの4曲目に入っている
「Dolly My Baby」という曲の歌詞が、レゲエ
レコード・コムのサイトに載っていたのですが、
その歌詞を見るとちょっとイヤラしいラヴ・
ソングなんですね(笑)。
一応「ジャー(神)」などという言葉も入って
いますが、そこにはBob Marleyが唱えたような
思想性はもはやあまりありません。
それが良い事なのか悪い事なのかは、微妙な
ところです。

Dolly My Baby - リリック

思想性や宗教性を持っていた70年代、快楽的
でオシャレな80年代以降…。
レゲエの歴史を見ていくと、何度かコンシャスな
方向に引き戻そうという動きはあるものの、
徐々にスラックネスな快楽志向の音楽が主流に
なっていくようです。

ただある意味『特殊な時代』だったのは70年代
の方だったのかもしれません。
レゲエを生んだジャマイカの音楽界というのは、
一貫してアメリカ音楽への憧れのようなものが
あるのですが、70年代はアメリカ音楽への憧れを
否定して、音楽の志向もアフリカへと傾いています。

アメリカのような物欲志向の国は「バビロン」で
あり、そこで暮らす物欲志向の人間は「バビロニアン」
であり、そうした生活はいつかは滅びる…。
それに対して心正しい精神主義の生活を送る「我々」
は「ラスタファリアン」であり、いつか故郷である
アフリカの理想郷「ザイオン」に帰る…。
それが70年代当時に唱えられたラスタファリズム
だったんですね。

ところが皮肉な事にそのレゲエの成功でジャマイカ
が豊かになって来ると、徐々にその思想の精神性は
廃れ、徐々に快楽志向・物欲志向に音楽も傾いて
行くんですね。
精神に生きる「ラスタファリアン」は、物欲に生きる
「バビロニアン」へと変わってしまいます。

そしてこの時代のレゲエになると、もうルーツ・
レゲエの時代とはまったく違う別の音楽といえる
ような音楽を作っているんですね。
そうした変化もレゲエの面白いところなのかも
しれません。

正直なところ個人的にはルーツ・レゲエが一番
好きな音楽なんですが、こういうコンピュータを
使ったダンスホール・レゲエも、ルーツから
ここまで違う音楽に進化したというのは、ちょっと
面白いですよね(笑)。
ある意味何でもありの雑多なパワーが溢れている、
実はそれがレゲエの本質なのかもしれません。

このアルバムはダンスホール・レゲエ、特に
コンピュータ-・ライズド以降のダンスホールが
好きな人におススメです。

機会があれば聴いてみてください。

Super Cat- Don Dada - Reggae at the Apollo



○アーティスト: Super Cat
○アルバム: Don Dada
○レーベル: Columbia
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年:

○Super Cat「Don Dada」曲目
1. Them No Worry We - With Heavy D
2. Ghetto Red Hot
3. Them No Care
4. Dolly My Baby - With Trevor Sparks
5. Don't Test
6. Must Be Bright
7. Don Dada
8. Think Me Come Fi Play
9. Big And Ready - Whith Heavy D & Frankie Paul
10. Coke Don
11. Nuff Man A Dead
12. Oh It's You
13. Fight Fi Power
14. Yush Talk

Super Catのアルバムをもう1枚紹介しておきます。
彼の1986年のデビュー・アルバム

super_cat_02a

「Si Boops Deh!」です。
Techniquesレーベルからのアルバムで、プロデュース
をWinston RileyとPrince Jammyが担当しています。
Jammyが絡んでいるせいか曲の輪郭がしっかりして
いる印象があります。