今回はHugh Mundell Featuring Lasky Castel &
Augustus Pabloのアルバム
「Jah Fire」です。
Hugh Mundellはレゲエの歴史にあまりに鮮烈な印象
を残したシンガーです。
彼は師であるAugustus Pabloに可愛がられ、1978年に
「Africa Must Be Free By 1983」で衝撃的なデビューを
するのですが、83年にガンマンに撃たれて弱冠21歳
というあまりの若さで亡くなっています。
天才ルーツ・シンガー、ヒュー・マンデル(Hugh Mundell)の生涯
Hugh Mundell - Africa Must Be Free By 1983 + Dub
今回のアルバムは1980年に発表されたHugh Mundellの
サード・アルバムです。
ただこのアルバム、アルバムがLPで発売された当時は
8曲入りのアルバムだったのですが、その8曲のうち
3曲がHugh Mundellで、残りの5曲はLasky Castel、
のちに2枚のソロ・アルバムを残してこちらも24歳
という若さで亡くなったLacksley Castellが歌っている
アルバムなんですね。
名前の表記がLasky Castel→Lacksley Castellに
どうして変わったのか?までは、調べたけれど解り
ませんでした。
全11曲で収録時間は43分58秒。
今回のアルバムでは「Featuring Lasky Castel & Augustus
Pablo」となっているように、オリジナルの8曲に加えて
さらにAugustus Pabloのダブが2曲、Lacksley Castellの
歌が1曲、計3曲が追加されている……。
あれ!?違うな…。
日本の販売サイトには誰の曲か載っていないので、英語の
サイトの表記を参考にしたんですが、最後の曲はLacksley
CastellではなくてAugustus Pabloの曲ですね…。
とりあえずCDボーナス・トラック3曲はAugustus Pablo
という事にしておきます。
バックのミュージシャンについては表記がありません。
Arranger: King Jammys
Producer: King Jammys
という表記があるのみです。
ただ実はこの表記は間違っています。
この80当時はKing Jammyとは名乗っていなくて、
Prince Jammyだったんですね。
彼がPrince Jammy→King Jammyと名乗るのは85年に
Wayne Smithの「Under Me Sleng Teng」で初めての
コンピューター・ライズドでの大ヒットを飛ばした後なん
ですね。
Wayne Smithのアルバムまでは確かにPrince Jammyを名乗って
いるんです。
しかも「King Jammys」とあるのはKing Jammyのスタジオという
意味ですが、この80年の時点ではまだKing Tubbysのスタジオ
から独立したかしないかぐらいの時期なんですね。
おそらく「King TubbysのPrince Jammy」としてプロデュースと
アレンジを担当したんじゃないかと思います。
たぶん今はKing Tubbysの方が通りが良いので、誰かが
書き換えちゃったんでしょうね。
レゲエではよくあることです。
さて今回のアルバムは書いた通りHugh MundellとLacksley Castell
(Lasky Castel)というダブルキャストのアルバムなんですが、
これが本当に良いルーツのアルバムなんですね。
この二人かなり似た個性の持ち主で、ある意味「泣き節」が
得意な歌手なんですが、この二人の哀愁漂う泣き節には完全に
ヤラレちゃいます。
まさにルーツ・レゲエ好きだったら、これを聴かずして何を
聴くんだ?というアルバムです。
面白いのは後にコンピューターライズドでレゲエの世界を
全く変えてしまうPrince Jammyが、このアルバムでは比較的
ルーツ色の強いプロデュースとアレンジをしているという
事ですね。
80年のアルバムなので、音はだいぶソフィストケイトされて
来ていますが、この音はやっぱりルーツでしょうね。
やっぱりこの人は音楽というものを解っている人なんだと
思います。
無理に自分色に染めようとしないんですね。
良い意味でまだ角の取れていない二人の若者のヴォーカルを
ルーツ色の強いアレンジでまく生かしている気がします。
それでいてさりげなく自分流のアレンジを織り込んでくる、
そういう出し入れのウマさがこの人の才能をよく示しています。
すごく音が立っているというか、1曲1曲が心にグイグイ
入り込んでくるようなアルバムです。
どの曲も良いですが、特に1曲目Lacksley Castellの
「Be My Princess Lady」、2曲目Hugh Mundellの表題曲
「Jah Fire」、8曲目Lacksley Castellの「Black Sheep」
などは、ルーツ好きだったら絶対に聴いておきたいほどの
曲です。
Hugh Mundellのアルバムでもあるのですが、やっぱり
Lacksley Castellがイイんですよね。
今回のアルバムでは彼の繊細なヴォーカルが際立っています。
この人は82年に「Morning Glory」、83年に「Princes Lady」
というアルバムを残しています。
こちらもとても素晴らしいアルバムです。
ちなみに「Princes Lady」にも今回のアルバムに入っていた
「Black Sheep」が収められています。
Lacksley Castell - Morning Glory
Lacksley Castell - Princes Lady
最後になりましたが、CDボーナス・トラックの
Augustus Pabloもなかなか良いです。
特に11曲目「Pablo In Moonlight City」は、Pabloの作品の
中でもかなりの力作ではないでしょうか。
あくまでオマケ・トラックという事でしょうが、ダブ好きは
ちょっと注目です。
このアルバムは80年という時代の変わり目に、鮮やかな
ルーツ・レゲエの華を咲かせた見事なアルバムだと思います。
美しい華には余分な手を加えずただ咲かせれば良い、
その事をPrince Jammyという人はよく解っています。
そして咲いた大輪の華がこのアルバムです。
二人の若者の生涯は短かったかもしれません。
しかしその輝きはこのアルバムに焼き付けられて
永遠に残っています。
機会があればぜひ聴いてみてください。
Hugh Mundell - Jah Fire 1980
Lacksley Castell - Be My Princess Lady 1980
○アーティスト: Hugh Mundell, Lasky Castel, Augustus Pablo
○アルバム: Jah Fire
○レーベル: Black Arrow Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1980
○Hugh Mundell Featuring Lasky Castel & Augustus Pablo「Jah Fire」曲目
1. Be My Princess Lady - Lacksley Castell
2. Jah Fire - Hugh Mundell
3. Walk With Jah - Hugh Mundell
4. King Of Israel - Hugh Mundell
5. Million Miles - Lacksley Castell
6. My Woman Can - Lacksley Castell
7. You Over There - Lacksley Castell
8. Black Sheep - Lacksley Castell
9. Million Dub - Augustus Pablo *
10. King Pablo - Augustus Pablo *
11. Pablo In Moonlight City - Augustus Pablo *
* CD Bonus Tracks
●今までアップしたHugh Mundell関連の記事
〇Hugh Mundell, Augustus Pablo「Africa Must Be Free By 1983 / Africa Must Be Free By 1983 Dub」
〇Hugh Mundell「Arise」
〇Hugh Mundell「Mundell」
〇Hugh Mundell「The Blessed Youth」
〇Hugh Mundell「Time And Place」
●今までアップしたLacksley Castell関連の記事
〇Lacksley Castell「Morning Glory」
〇Lacksley Castell「Princes Lady」
Augustus Pabloのアルバム
「Jah Fire」です。
Hugh Mundellはレゲエの歴史にあまりに鮮烈な印象
を残したシンガーです。
彼は師であるAugustus Pabloに可愛がられ、1978年に
「Africa Must Be Free By 1983」で衝撃的なデビューを
するのですが、83年にガンマンに撃たれて弱冠21歳
というあまりの若さで亡くなっています。
天才ルーツ・シンガー、ヒュー・マンデル(Hugh Mundell)の生涯
Hugh Mundell - Africa Must Be Free By 1983 + Dub
今回のアルバムは1980年に発表されたHugh Mundellの
サード・アルバムです。
ただこのアルバム、アルバムがLPで発売された当時は
8曲入りのアルバムだったのですが、その8曲のうち
3曲がHugh Mundellで、残りの5曲はLasky Castel、
のちに2枚のソロ・アルバムを残してこちらも24歳
という若さで亡くなったLacksley Castellが歌っている
アルバムなんですね。
名前の表記がLasky Castel→Lacksley Castellに
どうして変わったのか?までは、調べたけれど解り
ませんでした。
全11曲で収録時間は43分58秒。
今回のアルバムでは「Featuring Lasky Castel & Augustus
Pablo」となっているように、オリジナルの8曲に加えて
さらにAugustus Pabloのダブが2曲、Lacksley Castellの
歌が1曲、計3曲が追加されている……。
あれ!?違うな…。
日本の販売サイトには誰の曲か載っていないので、英語の
サイトの表記を参考にしたんですが、最後の曲はLacksley
CastellではなくてAugustus Pabloの曲ですね…。
とりあえずCDボーナス・トラック3曲はAugustus Pablo
という事にしておきます。
バックのミュージシャンについては表記がありません。
Arranger: King Jammys
Producer: King Jammys
という表記があるのみです。
ただ実はこの表記は間違っています。
この80当時はKing Jammyとは名乗っていなくて、
Prince Jammyだったんですね。
彼がPrince Jammy→King Jammyと名乗るのは85年に
Wayne Smithの「Under Me Sleng Teng」で初めての
コンピューター・ライズドでの大ヒットを飛ばした後なん
ですね。
Wayne Smithのアルバムまでは確かにPrince Jammyを名乗って
いるんです。
しかも「King Jammys」とあるのはKing Jammyのスタジオという
意味ですが、この80年の時点ではまだKing Tubbysのスタジオ
から独立したかしないかぐらいの時期なんですね。
おそらく「King TubbysのPrince Jammy」としてプロデュースと
アレンジを担当したんじゃないかと思います。
たぶん今はKing Tubbysの方が通りが良いので、誰かが
書き換えちゃったんでしょうね。
レゲエではよくあることです。
さて今回のアルバムは書いた通りHugh MundellとLacksley Castell
(Lasky Castel)というダブルキャストのアルバムなんですが、
これが本当に良いルーツのアルバムなんですね。
この二人かなり似た個性の持ち主で、ある意味「泣き節」が
得意な歌手なんですが、この二人の哀愁漂う泣き節には完全に
ヤラレちゃいます。
まさにルーツ・レゲエ好きだったら、これを聴かずして何を
聴くんだ?というアルバムです。
面白いのは後にコンピューターライズドでレゲエの世界を
全く変えてしまうPrince Jammyが、このアルバムでは比較的
ルーツ色の強いプロデュースとアレンジをしているという
事ですね。
80年のアルバムなので、音はだいぶソフィストケイトされて
来ていますが、この音はやっぱりルーツでしょうね。
やっぱりこの人は音楽というものを解っている人なんだと
思います。
無理に自分色に染めようとしないんですね。
良い意味でまだ角の取れていない二人の若者のヴォーカルを
ルーツ色の強いアレンジでまく生かしている気がします。
それでいてさりげなく自分流のアレンジを織り込んでくる、
そういう出し入れのウマさがこの人の才能をよく示しています。
すごく音が立っているというか、1曲1曲が心にグイグイ
入り込んでくるようなアルバムです。
どの曲も良いですが、特に1曲目Lacksley Castellの
「Be My Princess Lady」、2曲目Hugh Mundellの表題曲
「Jah Fire」、8曲目Lacksley Castellの「Black Sheep」
などは、ルーツ好きだったら絶対に聴いておきたいほどの
曲です。
Hugh Mundellのアルバムでもあるのですが、やっぱり
Lacksley Castellがイイんですよね。
今回のアルバムでは彼の繊細なヴォーカルが際立っています。
この人は82年に「Morning Glory」、83年に「Princes Lady」
というアルバムを残しています。
こちらもとても素晴らしいアルバムです。
ちなみに「Princes Lady」にも今回のアルバムに入っていた
「Black Sheep」が収められています。
Lacksley Castell - Morning Glory
Lacksley Castell - Princes Lady
最後になりましたが、CDボーナス・トラックの
Augustus Pabloもなかなか良いです。
特に11曲目「Pablo In Moonlight City」は、Pabloの作品の
中でもかなりの力作ではないでしょうか。
あくまでオマケ・トラックという事でしょうが、ダブ好きは
ちょっと注目です。
このアルバムは80年という時代の変わり目に、鮮やかな
ルーツ・レゲエの華を咲かせた見事なアルバムだと思います。
美しい華には余分な手を加えずただ咲かせれば良い、
その事をPrince Jammyという人はよく解っています。
そして咲いた大輪の華がこのアルバムです。
二人の若者の生涯は短かったかもしれません。
しかしその輝きはこのアルバムに焼き付けられて
永遠に残っています。
機会があればぜひ聴いてみてください。
Hugh Mundell - Jah Fire 1980
Lacksley Castell - Be My Princess Lady 1980
○アーティスト: Hugh Mundell, Lasky Castel, Augustus Pablo
○アルバム: Jah Fire
○レーベル: Black Arrow Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1980
○Hugh Mundell Featuring Lasky Castel & Augustus Pablo「Jah Fire」曲目
1. Be My Princess Lady - Lacksley Castell
2. Jah Fire - Hugh Mundell
3. Walk With Jah - Hugh Mundell
4. King Of Israel - Hugh Mundell
5. Million Miles - Lacksley Castell
6. My Woman Can - Lacksley Castell
7. You Over There - Lacksley Castell
8. Black Sheep - Lacksley Castell
9. Million Dub - Augustus Pablo *
10. King Pablo - Augustus Pablo *
11. Pablo In Moonlight City - Augustus Pablo *
* CD Bonus Tracks
●今までアップしたHugh Mundell関連の記事
〇Hugh Mundell, Augustus Pablo「Africa Must Be Free By 1983 / Africa Must Be Free By 1983 Dub」
〇Hugh Mundell「Arise」
〇Hugh Mundell「Mundell」
〇Hugh Mundell「The Blessed Youth」
〇Hugh Mundell「Time And Place」
●今までアップしたLacksley Castell関連の記事
〇Lacksley Castell「Morning Glory」
〇Lacksley Castell「Princes Lady」
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