今回はJoe Higgsのアルバム

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「Life Of Contradiction」です。

Joe HiggsはBob MarleyやBunny Wailerといった
The WailersのメンバーやWailing Soulsを育てた
人として有名なシンガーです。
彼自身もキングストンというスラム街から這い上がった
シンガーなんですが、その経験をもとに貧しい生活を
強いられている後輩ミュージシャンを育てたという、
レゲエが歴史を作っていく上ですごく功労のあった人
なんですね。

Joe Higgs (ジョー・ヒッグス)

今回の「Life Of Contradiction」は1975年の作品で、
彼の代表作ともいえる作品です。
ただこの作品はIslanndレーベルのChris Blackwellの元で
3年間も寝かされていた作品で、実際の録音は1972年
であり、その為当時流行っていたリズムとは若干のズレが
あり、有名評論家からは「時代遅れ」とまで酷評された作品
なんだとか。
ただ時代が経った今では、彼の代表作としてかなりの
高評価を得ているアルバムになっています。

今回のアルバムはPressure Soundsから出ているアルバムで、
オリジナル10曲にボーナス・トラック2曲を追加した
リイシュー盤です。

全12曲で収録時間は40分54秒。

ミュージシャンについては以下の表記があります。

All Tracks Produced and Arranged by: Joe Higgs

Vocals & Rhythm Guitar: Joe Higgs

Musicians: The New Generation
Drums: Mikey 'Boo' Richards
Bass: Val Douglas
Lead Guitar: Mikey Chung & Eric Gale
Rhythm Guitar: Geoffrey Chung
Keyboards: Earl 'Wire' Lindo & Robbie Lynn

Recorded at Harry J Recording Studio
Engineer: Sylvan Morris

となっています。

さて今回のアルバムですが、なかなかアルバムが発表され
なかったり、その為に「時代遅れ」と評価されたり、今一つ
不遇であったJoe Higgsですが、ずいぶん時間が経った今
聴くと内容はかなり充実したアルバムで、このアルバムが
徐々に高評価に変わったというのがうなずける内容の
アルバムです。

この人自身がスカ以前からHiggs & Wilsonというコンビで
活躍した人のせいか、その音楽からはR&Bやソウルの
影響が感じられその分レゲエ色は幾分薄目で、その事が
古い音楽と見られた要因のひとつかもしれません。
ただレゲエという音楽の根底にはそうしたR&Bやソウル
の影響がもともとあるんですね。
むしろそうしたベース・ミュージックとしてのR&Bや
ソウルを大事にして揺らがないところが、このJoe Higgsの
魅力かもしれません。
アルバムを聴き終わった後に、しっかりした充実感を
感じるアルバムになっています。

特に6曲目「There's A Reward」は本当に素晴らしい曲
です。
この曲はスカの時代のHiggs & WilsonのStudio Oneの
ヒット曲のリメイクという事なんですが、美しく力強い
メロディに心がジンとしてしまう名曲です。
この1曲を聴くためだけにアルバムを買っても損は
ありません。

アルバム(日本盤)に付いていた解説文を読むと、この
アルバムをリリースした直後にJoe Higgsはジャマイカを
離れ、教え子のJimmy Cliffのアメリカ・ツアーにバンド・
リーダーとして同行したそうです。
なぜ大切なアルバム発売直後にツアーに参加したのか?と
いうと、それはJimmy Cliffが「自身のルーツを見失って
しまった」と、Joe Higgsに救いを求めて来た為なんだ
そうです。
おそらく彼の師として、彼の窮状を見過ごせなかったの
でしょう。

その前にはBunny Wailerの抜けた穴を埋めるために
The Wailersのアメリカ・ツアーに同行した事もあった
そうで、そういうところに自分の事は犠牲にしてでも
教え子の為に行動する彼Joe Higgsの男気溢れる精神が
よく見えます。
結果的にこの人はレゲエのミュージシャンとして大きな
成功を収める事は出来なかったかもしれませんが、レゲエ
という音楽の根底に流れるアイデンティティーを支えて
いた人だったのは間違いのないところです。
彼Joe Higgsが高く評価される理由も、そこにあると
思います。

Bob MarleyもJimmy Cliffも世界的に活躍したシンガー
ですが、レゲエという音楽が世界的に認められる為には、
世界を飛び回った彼らのような人も居たし、Joe Higgs
のように陰から支えた人も居たんですね。
第三世界からの世界の音楽への飛躍は、けっして偶然に
起きた事ではなく、さまざまな立場から皆が努力した
成果だと思います。

このアルバムは初めはすごく地味なアルバムと感じる
かもしれません。
しかし聴けば聴くほど心にジワジワと染み込んでいく
ような不思議な魅力が秘められたアルバムです。
ルーツ・レゲエの好きな人、レゲエという音楽がもっと
深く知りたい人には、悪くないアルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Joe Higgs - There's A Reward For Me - (Life Of Contradiction)



○アーティスト: Joe Higgs
○アルバム: Life Of Contradiction
○レーベル: Pressure Sounds
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1975

○Joe Higgs「Life Of Contradiction」曲目
1. Come On Home
2. Got To Make A Way
3. Wake Up And Live
4. Life Of Contradiction
5. Who Brought Down The Curtains
6. There's A Reward
7. Hard Times Don't Bother Me
8. My Baby Still Loves Me
9. She Was The One
10. Song My Enemy Sings
11. Let Us Do Something
12. Freedom Journey - Karl Masters & Joe Higgs