今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

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「Ska-Ra-Van: Top Sounds From Top Deck Volume One」です。

今回のアルバムは1997年にWestsideというレーベル
からリリースされた
アルバムですが、元の音源は60年代のスカの音源を
集めたものです。

ジャマイカの音楽はスカ→ロックステディ→レゲエという
発展をして、世界でも認められる音楽に育って行ったの
ですが、一番初めに世界で注目されたのがこのスカという
音楽だったんですね。
スカはもともとはアメリカのR&Bやブルースの影響を
受けて生まれた音楽で、それがイギリスに輸入されて
輸入元のBlue Beatというレーベル名から「ブルー・ビート」
という名前で、イギリスのモッズなどに人気の音楽となった
んですね。

さらにジャマイカではスカの評価が高まった事で、元々
ジャズをやっていたミュージシャンなどもスカの世界に
入り込んできて、ジャズのビッグ・バンドのような管楽器を
多く配した形式のスカに変化して来るんですね。
そのスカの代表的なバンドがThe Skatalitesです。
The Skatalitesには今回のアルバムに入っている
Roland Alphonso、Don Drummond、Tommy McCookなども
在籍していました。

60年代にスカでイギリスに受け入れられたジャマイカの
音楽は、その後も順調に発展して60年代後半の3年間が
ロックステディ、60年代の最後についに初期のレゲエが
誕生し、世界的なブレイクに至るわけなんですね。

今回のアルバムはそのジャマイカの60年代のスカの時代
を切り取ったアルバムです。
副題として「Top Sounds From Top Deck Volume One」と
あるように、スカの時代に活躍したレーベルTop Deckの
音源を集めた作品集のようです。

Top Deck (トップ・デック)

上のページにあるようにTop Deckは中国系ジャマイカ人
Justin Yapのレーベルで、妥協を許さない高品質の音作りで
有名なレーベルだったそうです。
そのTop Deckの音源集の1作目らしいです。

全14曲で収録時間は38分10秒。

今回のアルバムはジャケットの内側が小冊子になっていて、
そこにレゲエ博士」として有名なSteve Barrow氏の文章が
載っています。
残念ながら英語が苦手なので読めないけれど…(苦笑)。
さらに曲に関わった人達の名前なのか、ミュージシャンの
名前が列記されています。
それを写すと、

Drums: Lloyd Knibbs
Bass: Lloyd Brevitt, Lloyd Spence
Guitar: Jah Jerry Haynes, Harold McKenzie, Lynn Tait
Piano: Jackie Mittoo, Gladdy Anderson
Baritone Sax: Carl 'Cannonball' Bryan
Alto Sax: Lester Sterling
Tenor Sax: Tommy McCook, Dennis Campbell, Roland Alphonso
Trumpet: Dave Madden, Raymond Harper, Baba Brooks, Johnny 'Dizzy' Moore
Trombone: Ron Wilson, Don Drummond

という名前があります。

特徴的なのはこのスカの時代にはまだバリトン・サックスが
使われている点ですね。
これが時代が進んでレゲエの頃になるとアルトとテナーは
残っているけれど、バリトン・サックスの奏者はほとんど
居なくなるんですね。
このあたりにもビッグ・バンドで管楽器主体だったスカの
痕跡が残っていますね。

やっぱりLloyd Knibbs、Lloyd Brevitt、Jackie Mittoo、
Tommy McCook、Roland Alphonso、Don Drummondなど
The Skatalitesのメンバーの名前が多く見受けられます。
The SkatalitesはDon Drummondの殺人事件をきっかけに
解散してしまうんですね。
ある意味スカという音楽の幕引きをしてしまったのは、
Don Drummondだったのかもしれません。

こうしてみて行くとバックのメンバーも見過ごせない人
たちばかりですよね。
まさにジャマイカの音楽史を作って行った人たちと言える
でしょう。

さて今回の曲を見ていくと、5曲目「Love Will Find A Way」
は「Unknown Artist」となっていて誰の曲か解っていない
ようですが、他の曲はRoland Alphonso、Johnny Moore、
The Avalons、Don Drummond、The Angelic Brothers、
Baba Brooks、Al & The Vibrators、Tommy McCook、
Raymond Harper、King Sporty & Justin Yapといった人達が
名前を連ねています。
正直なところThe Skatalitesのメンバー以外は知らない名前
も多いですが、どの曲も力の入った良い演奏を聴かせてくれて
います。

やはり注目点は演奏によっては(Take 3)まで演奏を録っている
ところです。
お金や効率を重視するジャマイカでは珍しいほどのこの姿勢から、
このTop Deckというレーベルの音楽に対する熱意を感じます。
まだ貧しかったスカの時代のジャマイカで、この姿勢は称賛に
値するのではないでしょうか。

このスカという音楽は、その後もUKのThe Specialsなどを
中心としたいわゆる「2トーン・ブーム」などたびたび
リヴァイバルされる事になるのですが、そのオリジナルである
60年代のスカと後のスカで決定的に違うのは、やはりこの
オリジナルの持つジャズ的な要素が、後のスカではロック色が
強くなって希薄になって行く点です。
その分軽く聴き易い音楽にはなって行くんですが、やはりこの
オリジナルの持つジャズ的なしっかりとした演奏は、とても
魅力的です。

今回収められているのはほとんどがインストのスカですが、
特にインストになった時には確かなミュージシャンの「腕」が
要求されます。
その基盤になっているのが、この当時のミュージシャンに
とってはジャズだったんですね。
そうしたジャズ的な要素を持ったTommy McCookなどがルーツ・
レゲエの時代になっても残り続ける事で、ジャズの影響力も
また残り続けるんですね。
ルーツ・レゲエの時代までのジャマイカの音楽を根底で
支えていたのは、このジャズの素養だったのかもしれません。

この60年代にすでにこれだけの音楽をジャマイカで
行っていたというは、やはりとても素晴らしい事だと
思います。
聴いてみるとスカにはスカの、レゲエには無い魅力が
ある事に、あらためて気付かされます。
スカという音楽の魅力を知るには、悪いアルバムでは
ないと思います。

機会があれば聴いてみてください。

Ska-Ra-Van - The Skatalites



○アーティスト: Various
○アルバム: Ska-Ra-Van: Top Sounds From Top Deck Volume One
○レーベル: Westside
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1997

○Various「Ska-Ra-Van: Top Sounds From Top Deck Volume One」曲目
1. Ska-Ra-Van (Take 2) - Roland Alphonso
2. Yogi Man (Take 2)- Johnny Moore
3. Everyday - The Avalons
4. Cleo's Back (Take 2) - Roland Alphonso
5. Love Will Find A Way - Unknown Artist
6. Red Is Danger (Take 3) - Johnny Moore
7. Love In The Afternoon - Don Drummond
8. Ten Virgins - The Angelic Brothers
9. Five O'Clock Whistle - Baba Brooks
10. Money Or Love - Al & The Vibrators
11. Scattered Lights - Tommy McCook
12. Ti-Pi-Tin - Raymond Harper
13. A Shot In The Dark (Take 1) - Roland Alphonso
14. El Cid (Take 3) - King Sporty & Justin Yap