今回はThe Professionalsのアルバム

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「Meet The Aggrovators At Joe Gibbs」です。

The ProfessionalsはJoe Gibbsのレコーディング時の
バック・バンド、対するThe Aggrovatorsはプロデューサー
のBunny Leeのバック・バンドという事です。
ただこの二つのバンド、実は同じようなメンバーがやって
いるバンドなんですね。
70年代当時のジャマイカの音楽状況は、基本的に
プロデューサーがスタジオをレンタルして、ミュージシャン
と歌手を「日雇い」で雇って録音するという形式だった
ようです。
その為Joe Gibbsが録音する時はThe Professionals、
Bunny Leeが録音する時はThe Aggrovatorsとバック・
バンドの名前は決まっていても、バンドはその時に
集まれる人が集まる「プラスティック・バンド」だった
ようです。
当時のレゲエ映画などでミュージシャンやコーラス・
グループなどが仕事を得るためにスタジオ前で
プロデューサーを待っているシーンがあったり
しますが、仕事を得るにはそうしてスタジオ前などに
集まっていたようです。

今回のアルバムはリリースは2007年頃のようですが、
そうした70年代の
ルーツ・レゲエの時代に活躍したバック・バンド
The ProfessionalsとThe Aggrovatorsの音源を集めた
アルバムです。
書いたように名前は違っても同じようなメンバーの
録音なので、曲によってのバンド名の表記はありません。
レゲエ・リイシュー・レーベルJamaican Recordings
からリリースされたアルバムです。

全14曲で収録時間は51分05秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Drums: Carlton 'Santa' Davis, Carlton Barrett, Leroy 'Horse Mouth' Wallace
Bass: Robbie Shakespeare, Aston 'Family Man' Barrett, George 'Fully' Fullwood, Lloyd Parks
Lead Guitar: Earl 'Chinna' Smith
Rhythm Guitar: Tony Chin, Winston 'Bo Beep'
Piano: Ansel Collins
Organ: Bernard 'Touter' Harvey, Winston Wright
Trumpet: Bobby Ellis
Trombone: Vin Gordon
Tenor Saxophone: Tommy McCook
Alto Saxophone: Lennox Brown

Recorded at: Joe Gibbs Studio
Engineered by: Errol 'E.T.' Thompson
Design by: Gary Hall @ Voodoo London

となっています。

今回のアルバムはジャケットにもあるように、大量の
テープの中からこれ!という音源を選び抜いたアルバム
なのか、プロデューサーの表記はありません。
ただJamaican Recordingsで、The Aggrovatorsも参加して
いるとなると、やっぱり「Bunny Lee音源」…という事
じゃないかと思います。
当時プロデューサーだったBunny Leeはこうした音源を
たくさん持っていて、今で回っている音源の多くがこの
「Bunny Lee音源」に依存しているんですよね。
特にJamaican Recordingsとその傘下のKingston Sounds
はその依存率が高いです。

kなるバムにはこの70年代を代表するような
ミュージシャンが揃っています。
しかしSly Dunbarの名前がありませんね。
Robbie Shakespeareの名前はありますが…。
のちにSly & Robbieで有名になる二人ですが、Sly Dunbar
はThe Revolutionariesのリーダーとして知られていますが、
Robbie ShakespeareもたまにThe Aggrovatorsのリーダー
と書かれている事があります。
The Professionalsなども含めていろいろなバンドで
演奏している彼らですが、実はバンドによってリーダー
を変えたりして、音を雇い主の好みに合わせて
使い分けていた節が見られます。
例えばChannnel OneのバンドThe Revolutionariesで
演奏する時にはドラムのSly Dunbarをリーダーとした
攻撃的な「ミリタント・ビート(別名ロッカーズ)」を
ウリにしたり、The Aggrovatorsでやる時には雇い主の
Bunny Leeの好みに合わせたのかTommy McCookなどの
ホーンを中心としたホーン・ダブを演奏したりと、
ちょっとずつ音を変えているんですね。
おそらくバンドごとにリーダーを変えたりして、
そのリーダーの音の好みなどで変化を付けて
いたんだと思います。
そういう切り替えが出来るのも、彼らのバック・
ミュージシャンとしての優秀さの表れなんですね。

今回のアルバムはレコーディングがJoe Gibbs Studio
で、エンジニアがErrol 'E.T.' Thompsonという事で、
彼のダブ・ミックスと考えて間違いないでしょう。
それでJoe GibbsのバンドThe Professionalsの名前が
入っている理由の説明が付きます。

では何故The Aggrovatorsの名前があるのか?
書いたようにJoe Gibbsのスタジオで、Bunny Leeが
録音した音源いわゆる「Bunny Lee音源」だから
なんですね。
Bunny Leeはスタジオを持たなかったので、いろいろな
スタジオをレンタルして録音をしているんですね。
そうして録音した大量の音源を保管していたおかげで、
今私たちが当時のレゲエを聴く事が出来るという訳です。

今回のアルバムもレゲエ・リイシュー・レーベルで
あるJamaican Recordingsらしい丁寧な仕事ぶりが
見られます。
表ジャケットの内側が小冊子になっていて、そこに
曲ごとのソースの記載があります。

例えば1曲目「Satta Dub」については、

1. Satta Dub
A lost dub to Jah Frankie Jone's Roots classic, 'Satta & Praise Jah'

という記載があります。

これを読むと原曲はJah Frankie Joneのルーツ・
クラシック「Satta & Praise Jah」だという事が
解ります。
こういう丁寧な仕事ぶりは、マニアックに音楽を
聴く人間には嬉しいところです。

ざっと小冊子に記載されている原曲を列挙していくと、
2曲目「Dubs Not Gone Forever」はJohnny Clarkeの
「Girl I Love You」。
3曲目「Dub In Vain」はThe Mighty Raving Rovers
の「Don't Check For Vanity。
4曲目「Ethiopian Dub」はHortense Ellisの
「Ethiopian」。
5曲目「Dub On The Beach」はJohn Holtが歌って
Johnny Clarkeがカヴァーした「On The Beach」。
6曲目「We All Feel Dub」はJah Frankie Joneの
「We Ah Feel It」。
7曲目「Great Dub Wall」はRaving Roversの
「Great Stone Wall」。
8曲目「Boastful Dub」はHortense Ellisの
「Love Not to Brag」。
10曲目「Brown Eyes Dub」はLynford Newgentの「Brown Eyes」。
11曲目「Dub Island」はThe Timelessの「Island In The Sun」。
12曲目「Lonely Dub」はJohn Holtの「I'll Be Lonely」。
13曲目「Dub My Fire」はDerrick Morganの「Blazing Fire」。
14曲目「Dub For The Meek」はDerrick MorganとHortense
Ellisの「Meekly Wail」となっています。

こうして見て行くと比較的有名な原曲は5曲目のJohn Holt
のThe Paragons時代のヒット曲「On The Beach」ぐらいで、
あとはちょっと地味目の曲が揃っている感じですね(笑)。
よく見たら裏面には「Unreleased Version」の文字がありました。
たぶん70年代当時でも地味と判断されて、眠っていた音源
なのかもしれません。
ただ有名でない分、このアルバムのレア度が高いとも言えます。
この「Bunny Lee音源」というのはけっこう出回っているので、
ありきたりの選択だとありがたみが少ないんですね。
ナイスな選曲と言えるでしょう。

さて今回のアルバムですが、やっぱりどちらかというと
ホーン・ダブなどが多いせいもあって、The Aggrovators色が
強いかなという印象です。
おそらくこのアルバムは70年代のインスト・ダブが好きな
人なら、ツボのアルバムなんじゃないか思います。

私もけっこうヤラレちゃいました(笑)。
このユラユラした心地良さはこの70年代ならではのもの
があります。
やはり創世記のダブを作ったKing Tubby、Lee Perry、
Keith Hudsonと並び称せられるErrol 'E.T.' Thompsonの
ミックスは、この人ならではという素晴らしさがあります。
この70年代のルーツ・レゲエ最大の発明、ダブという
音楽を堪能できるアルバムだと思います。

基本的にすべてインストのダブ・アルバムなので、歌もの
しか聴けないという人にはおススメしません。
しかし70年代のルーツ・レゲエを愛する人、ダブという
音楽の好きな人なら、このアルバムは聴いて損のない
アルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: The Professionals
○アルバム: Meet The Aggrovators At Joe Gibbs
○レーベル: Jamaican Recordings
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2007

○The Professionals「Meet The Aggrovators At Joe Gibbs」曲目
1. Satta Dub
2. Dubs Not Gone Forever
3. Dub In Vain
4. Ethiopian Dub
5. Dub On The Beach
6. We All Feel Dub
7. Great Dub Wall
8. Boastful Dub
9. Apple Yam Dub
10. Brown Eyes Dub
11. Dub Island
12. Lonely Dub
13. Dub My Fire
14. Dub For The Meek

●今までアップしたJoe Gibbs & The Professionals関連の記事
〇Joe Gibbs & The Professionals「Majestic Dub」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty Chapter 3」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty Chapter 4」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty Chapter Two」
〇Joe Gibbs & The Professionals「African Dub All-Mighty」
〇Joe Gibbs And The Professionals「State Of Emergency」
〇Joe Gibbs「Reggae Christmas」
〇Joe Gibbs「Scorchers From The Mighty Two」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.1」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.2」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.3」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.4」
〇Various「Joe Gibbs 12" Reggae Discomix Showcase Vol.5」
●今までアップしたAggrovators関連の記事
〇Aggrovators, Revolutionaries「Guerilla Dub」
〇Aggrovators「Dubbing At King Tubby's」
〇Aggrovators「Kaya Dub」
〇Aggrovators「Rasta Dub '76」
〇Agrovators, Revolutionaries「Agrovators Meets The Revolutionaries At Channel 1 Studios」
〇Tommy McCook & The Agrovators「King Tubby Meets The Agrovators At Dub Station」
〇Tommy McCook and The Agrovators「Cookin'」
〇Various (The Aggrovators)「Jackpot Dub: Rare Dubs From Jackpot Records 1974-1976」
〇Bunny Lee & King Tubby Present Tommy McCook And The Aggravators「Brass Rockers」
〇King Tubby's (Prince Jammy) And The Agrovators, (Delroy Wilson)「Dubbing In The Back Yard / (Go Away Dream)」
〇Various「Rubadub Revolution: Early Dancehall Productions From Bunny Lee」
〇Various「When Jah Shall Come」