今回はVarious(オムニバス)もののアルバム

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「Best Of Studio One」です。

まずStudio Oneとは何か?を説明します。
レゲエに詳しい方なら知っていると思いますが、スカ→
ロックステディ→レゲエと発展していたジャマイカの
音楽史を牽引していったのが、このStudio Oneという
レーベルだったんですね。
「レゲエのモータウン」とも評される老舗レーベルで、
主催者のC.S. Doddは常に高い音楽性を求めた音作りを
した事で定評があります。
ジャマイカの音楽史を作ったレーベルのひとつがこの
Studio Oneです。

Studio One (スタジオ・ワン)

今回のアルバムは1987年にHeart Beatレーベルから
出されたStudio Oneの代表曲を集めたコンピュレーション・
アルバムです。

ちなみにこのアルバム別ヴァージョンもあるらしく、
ネットで探したところC.S. Doddの顔写真が入ったこの
アルバムより4曲多い18曲入りのアルバムばかり出て
来て、このアルバムは出てきませんでした。

全14曲で収録時間は49分04秒。

詳細なミュージシャンの表記はありません。
ただ次のような文字が入っていました。

All selections produced by C.S. Dodd

C.S. Dodd自身がセレクション(選曲)を行ったのか?

さて今回のアルバムですが、Studio Oneというレーベルは
それこそもの凄い数のレゲエやロックステディ、スカの名曲
を作り続けてきたプロダクションなんですね。
それがたったの14曲で収まるはずはありません。
これがC.S. Dodd自身のセレクションならそれはそれで価値は
ありますが、あくまでStudio Oneというレーベルの一端を
知る事が出来るアルバムと考えるべきでしょう。

ただセレクション自体は、さすが!といえる程、魅力的な
セレクションであるのも事実です。

1曲目はロックステディ時代のThe Cables(ケーブルス)の
名曲
「Baby Why」です。このThe Cablesはレゲエの前身である
ロックステディの時代に活躍したコーラス・グループです。
この曲が収められているアルバム「What Kind Of World」は、
このロックステディの期のThe Heptonesの「On Top」と並ぶ
代表的なアルバムとしてよく知られているアルバムです。

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The Cables - What Kind Of World

3曲目「Melody Life」を歌っているのは、レゲエを代表
する女性シンガーMarcia Griffithsです。
彼女が一番よく知られているのは、The WilersからPeter
ToshとBunny Livingston(Wailer)が脱退したBob Marley
& The Wailersで、バックの女性コーラス・トリオI Three
として活躍した事です。
ただそれ以前からこの人は活躍していて、ソロでアルバムを
出したり、Bob Andyとデュエット・グループBob & Marciaを
組んで活動したりと、ジャマイカではすでに人気シンガー
だったんですね。
そしてこのStudio Oneにも曲を残しているという訳です。

4曲目「Can I Change My Mind」は名シンガーAlton Ellis
の名曲です。
この曲は彼の1969年のアルバム「The Best Of Alton
Ellis」にも収められています。

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Alton Ellis - The Best Of Alton Ellis

Alton Ellis - Can I Change My Mind - リリック

6曲目はMichigan And Smileyの名曲「Rab A Dub Style」。
実はダンスホール・レゲエの扉を開けたのも、このStudio One
だったというのは驚異的な事実です。
スカ→ロックステディ→レゲエと時代が変わっても活躍し
続けたこのレーベルですが、ルーツ・レゲエ→ダンスホール・
レゲエの橋渡しまでするパワーがまだあったんですね。
このアルバムが時代を変えたと言っても、過言ではありません。

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Michigan & Smiley - Rab-A-Dub Style

7曲目Dennis Brownの「Impossible」は、ポピュラー・
シンガーPerry Comoの有名曲「It's Impossible 」です。

8曲目はThe Heotonesの名曲「Party Time」です。
この曲は同タイトルのアルバムにも収められていますが、
ロックステディ期にジャマイカで一番売れたアルバム
という記録を作ったというアルバム「On Top」にも収め
られています。
このアルバムでThe HeotonesもStudio Oneも頂点を
迎えたという歴史的なアルバムです。

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The Heotones - On Top

11曲目がThe Gladiatorsの「Roots Natty」です。
この曲がこのアルバムの中でもルーツ・レゲエの香りが
色濃くする曲です。
この曲は「Bongo Red」をはじめStudio One時代のThe
Gladiatorsの多くのアルバムに収められている曲です。
このThe GladiatorsはBob Marley直系と言われるほど、
深くルーツに根差したコーラス・グループなんですね。
やはりルーツの時代に果たしたStudio Oneの役割を
忘れる事は出来ません。

13曲目はJudah Tafari Eskenderの「Rastafari
Tell You」。
この曲はこのアルバムの中でも、ある意味「目玉」
ともいえる曲です。
実はこの人の楽曲ってあんまりもう手に入らないん
ですね。
こういうオムニバスで聴けるのが貴重な人です。
ちなみにネットで調べたところ、多くのサイトで
綴りが「Judah Eskender Tafari」になっていました。

そして最後の14曲目がWailing Soulsの名曲
「Row Fisherman Row」です。
この曲は彼らのファースト・アルバム
「The Wailing Souls」に入っています。

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Wailing Souls - The Wailing Souls

実はこのファースト・アルバムがあまりに素晴らし
すぎて、彼らはその為に長いこと苦しむ事になるんですね。
多くのアルバムにファースト・アルバムの曲を「再演」
という形で入れているんです。
このStudio Oneというレーベルは彼らのコーラスの魅力に
プラスして、Studio Oneという魔法をかけてしまう
レーベルなんですね。
その魔法があまりにも凄すぎて多くのグループが
苦しむ事になる、その例がこのグループなんですね。

そしてその魔法とは何か?
それは音楽に対する愛、音楽に対する情熱です。
その強い思いがあるから、多くの人はこのレーベルの
虜になってしまうんですね。
そういう強い思いを持って作られた音楽は、いくら時代が
変わっても変わらずに輝き続け、色褪せるという事を
忘れてしまいます。

それはレゲエを愛する人間にとって幸福な出会い
なんだと思います。
Studio Oneというレーベルに出会い、その魔力を
知る事は…。
しかし一度出会ってしまうと、その魔力は一生解けません。
それがStudio Oneというレーベルの凄さであり、また
恐ろしさでもあるんですね(笑)。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Rastafari Tell You / Judah Eskender Tafari



○アーティスト: Various
○アルバム: Best Of Studio One
○レーベル: Heart Beat
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1987


○Various「Best Of Studio One」曲目
1. Baby Why - The Cables
2. My Last Love - The Termites
3. Melody Life - Marcia Griffiths
4. Can I Change My Mind - Alton Ellis
5. Jah Promise - Johnny Osbourne
6. Rab A Dub Style - Michigan And Smiley
7. Impossible - Dennis Brown
8. Party Time - The Heotones
9. Throw Me Corn - Larry Marshall
10. Born To Love - Slim Smith
11. Roots Natty - The Gladiators
12. Oh Mr. D. C. - Sugar Minott
13. Rastafari Tell You - Judah Tafari Eskender
14. Row Fisherman Row - Wailing Souls