今回はPanafricanistのアルバム

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「Pan In Dub」です。

PanafricanistはUKのMad Professorのレーベル
Ariwaなどで活躍するスティール・パン奏者です。
Mad Professorのアルバム「A Caribbean Taste Of
Technology」などで、そのスティール・パンを
披露しています。

Ariwa (アリワ)

ちなみにスティール・パンという楽器は、「ドラム缶
から作られた音階のある打楽器。」で、「独特の
倍音の響きを持った音色が特徴。」なんだそうです。
トリニダード・トバゴで発明された打楽器で、
トリニダード・トバゴでは国民的な楽器なんだ
そうです。

スティールパン

今回のアルバムですが、2002年にAriwaから
リリースされた、彼Panafricanistのソロ・アルバムです。

全16曲で収録時間は65分21秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Special Percussion by Genesis Cush
Drums: Sly Dunbar, Fluxy
Keyboards & Bass: Obeah, Mafia, Augustus Pablo, Baby Dread, Preacher
Guitar: Black Steel
Brass: Niles & Winston
Flute: Richard Doswell
Produced Mad Professor
Published by Ariwa Music
Recorded at Ariwa Sounds & Are We Mad Studios

All Tracks Recorded at Ariwa Studios
All Pans by award winning author Patrick Augustus Aka Pan Africanist

となっています。

バックにはSly DunbarやMafia & Fluxyなどのゲスト、
Ariwaで活躍するBlack Steelの名前などがあります。

キーボードにAugustus Pabloの名前があります。
彼は99年に亡くなっているんですが、それ以前の
録音なのか?
確かに生前最期のアルバム「Valley Of Jehosaphat」
(99年)ではUK録音もあり、Ariwaのスタジオも
使っていて、Black SteelもPabloのこのアルバムに
参加しています。
あくまで仮定の話ですが、その時にこのPanafricanist
の録音に参加したと考えられなくもありません。

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Augustus Pablo - Valley Of Jehosaphat (1999)

さて今回のアルバムですが、個人的にはこういう
変わった楽器をやってる人ってけっこう好きです(笑)。
実はこのPanafricanistも個人的にはだいぶ前から
マークしていて、機会があったら買おうと思っていた
人なんですよね。
それが今回新宿のdisk unionで、中古でワン・コイン
ぐらいで売っていたので即ゲット!したという訳です。

今回のPanafricanistはUK(イギリス)の人ですが、
本場のジャマイカの音楽史を見ていくと、たまに
こういう違う楽器を操る「異能の人」が居るんですよね。
古くはメントの時代に自作の竹で作ったサックス、
いわゆる「バンブー・サックス」で演奏したSugar Belly
という人や、Alpha Boys Schoolの教師でもあったという
ヴィヴラフォン奏者のLennie Hibbertなど、他の人が
あまり使わない楽器を操る人を輩出しているんですね。

その中でも頂点の人といえるのがあのAugustus Pablo
です。
それまで鍵盤練習用の楽器としか思われていなかった
メロディカをプロの楽器として使用して、ルーツ・
レゲエにそれまでにない「特別な音楽」というニュアンス
を付加したのは、このAugustus Pabloの功績です。
ダブ・アルバムの中に1曲彼のメロディカが入っている
曲があると、それだけで全くアルバムの広がりや意味が
違って来るんですね。

当然彼Augustus Pabloのスピリチュアルなメロディカ
による音楽は、Doctor PabloやHughie Izachaarなどの
追随者を生んでいます
今回のPanafricanistなども、楽器は違うけれど
そうした追随者のひとりと見る事が出来るかも
しれません。

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Hughie Izachaar - African Melodica Dub (1996)

今回のアルバムではガイアナ出身のUKレゲエの
プロデューサーMad Professorと、UK出身の
スチール・パン奏者Panafricanistで、本場ジャマイカ
にはない、まったく印象の違う「レゲエ」を作る事に
成功しています。

まるでRPGのゲームの南国のシーンあたりでバック・
ミュージックとして流れて来そうなスチール・パンの
音色を、この異色のプロデューサーはうまく料理して
います。
彼のレゲエの枠にとられない感性が、このアルバムでは
うまく機能している印象です。
一見レゲエでなさそうでいながら、不思議とレゲエの
枠内に収まっている、自由でいながらもレゲエである
ところが、このMad Professorというプロデューサーの
才能なんだと思います。

全体にダブの処理は抑え目で、スチール・パンの
インスト・アルバムというニュアンスが強いアルバムに
なっています。

ある意味ちょっと賛否の分かれるアルバムかも
しれません。
おそらくMad ProfessorなどのUKのダブが好きな
人にはツボのアルバムだと思います。

機会があれば聴いてみてください。

The Panafricanist - Togetherness



○アーティスト: Panafricanist
○アルバム: Pan In Dub
○レーベル: Ariwa
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2002

○Panafricanist「Pan In Dub」曲目
1. Togetherness
2. Pan Special
3. Steel & Skin
4. Rocking Vibration
5. King St Dub
6. African Roots
7. Limbo
8. Monsoon
9. Elaine The Osaka Dancer
10. Roddy's Best Friend
11. Castries Sun
12. Coconut Ice
13. Pablo Vibes
14. Bucket Top
15. Lover In You
16. Savona Rock