今回はWinston Jarrett & The Righteous Flamesのアルバム

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「Man Of The Ghetto」です。

Winston Jarrettは70年代のルーツ・レゲエの
時代から活躍するシンガーです。
今回のアルバムの販売サイトなどのによると、
Alton Ellisのバック・コーラスFlamesに所属して
いたという事だそうで、それが独立しWinston
Jarrett & The Righteous Flamesになって、
出したのがこのアルバムという事らしいです。

今回手に入れたのはIrokoというレーベルから
出ているCDでしたが、もともとは1977年に
出したLPのようです。
なんでもかなりレア化していて、入手困難な
アルバムだったらしいです。
そういうアルバムがリイシューされるのはとても
嬉しい事です。

ちなみにジャケット写真を見ると、右の上半身裸の
人物がWinston Jarrettに見えてしまい
ますが、どうも真ん中のギターを持ったチョッキの
人物がWinston Jarrettのようです。
彼の別のアルバムの写真や表ジャケになっている
小冊子の中の写真などを見ると、どうもこっちの
人のようです。

実はこのアルバム、ちょっと前にIrokoから出た時に
買いそびれたアルバムです。
次に買い物に行く時までは売っているだろうと
思っていたら、売り切れちゃっていたんですね。
やっぱりルーツ好きはみんな狙っていたアルバム
だったようです(笑)。
仕方がないのでレゲエレコード・コムの「入荷待ち」
に登録しておいたら、幸運なことにしばらくしたら
また入荷したようで連絡メールが来ました。
さっそく「取り置き」をお願いして、今月街に出た
際に新宿にあるレゲエレコード・コムのお店
Dub Storeでゲットしました。
欲しいけれど売り切れているアルバムは、こうして
「入荷待ち」に登録しておくと、メールで連絡が
来るので便利です。

ちなみにこのWinston Jarrettですが、Wackiesから
アルバムを出しているWayne Jarrettとは別人の
ようです。
ジャケ写なんかを較べてみると、今回のWinston
Jarrettの方がちょっとゴツい感じの人です(笑)。
さらに英語のディスコグラフィーなどを見ると、別々に
なっています。

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Wayne Jarrett - Showcase Vol.1 (1982) ←別人です

全10曲で収録時間は38分31秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

All songs Arranged By Winston Jarrett and Tony Shabazz
Vocal harmony Arranged By Winston Jarrett, Tony Shabazz and Maxie Mckenzie
Produced by Tony Shabazz

Musicians:
Drums: Sly Dunbar
Lead Guitar, Wah Wah and Bass: Ranchie Mclean
Wah Wah Guitar: Duggie
Bass: Robert Shakespeare
Piano, Organ: Ansel Collins, Touter Harvey
Piano (Jungle Collie): Gladstone Anderson
Percussions: Sticky Thompson, Barnabass
Bongos Drums: Scully
Hornes section Arranged by Bobby Ellis
Trumpet: Tommy McCook
Alto Sax: Dirty Harry
Tenor Sax: Trammy as Don De Junior

Engineers: Ernest Hoo Kim, Maxie McKenzie
Edit by Maxie McKenzie

Original Album design by: Moo Young / Butler Assoc. Ltd.
Photo by Howard Moo Young
Design by Cholo
Photo inside by Beth Lester

となっています。

どこでレコーディングしたかの記載がありませんが、
エンジニアにErnest Hoo Kimの名前がある事から、
おそらく録音はChannel Oneで、バック・バンドは
Sly & Robbieが居る事からThe Revolutionaries
なんじゃないかと思います。

ちょっと不自然なのはホーンの編成です。
いつもはトランペットを担当しているBobby Ellisが
ホーン・セクションのアレンジ、いつもはテナー・
サックス担当のTommy McCookがトランペット、
いつもはトロンボーン担当のTrammyことDon De Junior
(Vin Gordon)がテナー・サックスを吹いている事に
なっています。
まあジャマイカのミュージシャンて器用なので、
吹けない事は無いかもしれませんが…。

さて今回のアルバムですが、やっぱりルーツ・レゲエ
好きとしては押さえておきたいアルバムだと思います。
このWinston Jarrettですが、販売サイトのアルバム評
などを読むとかなりのBob Marley好きのようなんですが、
そのせいか7曲目「Kaya」と9曲目「Cry To Me」は
Bob Marleyのヒット曲です。

さらには3曲目「Sheriff And His Deputy」は、
Bob Marleyのヒット曲「I Shot The Sheriff」を
連想させるタイトルで、曲調は「Burnin' And Lootin'」
に似ています。
これ程解りやすい人は居ないというくらい、Bob Marley
好きの匂いのする人なんですね(笑)。
まあそれだけ当時のBob Marleyは、ジャマイカの
人の憧れだったという事でしょうか。

けっこう日本ではまるでBunny Wailerより下
みたいな評価もされちゃう事があるBob Marleyですが、
世界中にジャマイカの窮状や最下層の黒人層の心情を
訴えたという意義は大きいんじゃないでしょうかね?
Bob MarleyやPeter Toshの世界に広めたレゲエは、
のちにアフリカのレゲエ・ミュージシャンのプロテスト・
ソングを基盤としたレゲエを生んでいます。
そういう点でも彼らのレゲエで果たした役割って、
とても大きいんですよね。
当然当時のジャマイカでもBob MarleyやPeter Toshは
ミュージシャンの憧れであり、目標でもあったんじゃ
ないですかね。

またタイトル曲の1曲目「Man Of The Ghetto」も
彼のオリジナル曲ではなく、アメリカのMarlena Shaw
という女性シンガーの「Woman Of The Ghetto」という
曲がオリジナルで1969年のヒット曲のようです。

Marlena Shaw Woman of the ghetto


実際に曲を聴いた印象では、Marlena Shawはジャズ・
シンガーのようです。

この「Woman Of The Ghetto」はAlton Ellisの妹の
Hortense Ellisが75年ぐらいにRandy'sのレーベル
Impactですでにカヴァーしています。
書いたようにWinston JarrettはAlton Ellisと縁の
ある人なので、妹のHortense Ellisの曲を聴いて「
男性版」としてカヴァーしたのかもしれませんね。
ちなみにこのHortense Ellisの「Woman Of The Ghetto」
は、VPレーベルから出ているRandy'sの50周年を記念
したアルバム「Randy's 50th Anniversary」にも収め
られています。

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Various - Randy's 50th Anniversary

またこのアルバムで「Man Of The Ghetto」は彼の
代表曲となったようで、後の2006年にJah Shaka
と作ったアルバムでは似たタイトルの「Children Of
The Ghetto」というアルバムも作っています。

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Winston Jarrett - Children Of The Ghetto (2006)

さてアルバムに話を戻しますが、いかにもこの
ルーツ期のアルバムという管楽器とコーラスをバックに、
Winston Jarrettのヴォーカルが冴えわたった1枚
という感じです。
ある意味ルーツというスタイルが一番完成していた
時代の、充実したアルバムという事が出来ます。
やっぱりこの時代のリズム隊に管楽器が乗った
重厚なサウンドってイイですよね。
これが80年代のダンスホール期になるともう少し
シンプルなサウンドが好まれるようになるのですが、
この時代の「濃さ」はすごく魅力的です。
不思議なもので時代が変わっちゃうと、この空気感
は再現出来なくなっちゃうんですね。
ある意味「アナログゆえの輝き」みたいなものが、
このサウンドにはあるんですね(笑)。
再現出来ないゆえに、今もこのサウンドを聴きたい
と思う人が居るサウンドなんですね。

このアルバムはWinston Jarrettの代表作であり、
おそらくルーツ・レゲエという音楽の中でも
最も完成度が高かった時代の「輝き」を収めた
アルバムだと思います。
ルーツ・レゲエの好きな人なら押さえておきたい
アルバムじゃないでしょうか。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Winston Jarrett - Man of The Ghetto



○アーティスト: Winston Jarrett & The Righteous Flames
○アルバム: Man Of The Ghetto
○レーベル: Iroko
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1977

○Winston Jarrett & The Righteous Flames「Man Of The Ghetto」曲目
1. Man Of The Ghetto
2. Jungle Coollie
3. Sheriff And His Deputy
4. Fear Not Almighty Dread
5. Sleepers
6. Chucky Hark And Shark
7. Kaya
8. My Sheep
9. Cry To Me
10. Born To Be Loved

●今までアップしたWinston Jarrett関連の記事
〇Winston Jarrett「Kingston Vibrations」