今回はKing Jammyのアルバム

king_jammy_01a

「King Jammys Dancehall 1985-1989 Part 1」です。

King JammyはもともとはPrince Jammyと名乗り、ダブ・
マスターのKing Tubbyのスタジオでミックスの仕事を
したのちに独立し、Black Uhuruなどのアーティスト
のプロデュースやダブ・アルバムのプロデュースや
ミキシングなどで名を馳せていました。
85年に彼はWayne Smithの「Under Me Sleng Teng」で
コンピューターを使ったジャマイカ初のデジタルの
ダンスホール・レゲエの大ヒットを飛ばします。

wayne_smith_01a
Wayne Smith - Under Me Sleng Teng (1985)

それを機に名前をKing Jammyに改名し、その後も
デジタルを使ったダンスホール・レゲエのヒット曲を
量産し、ジャマイカに「コンピューター・ライズド」の
大ブームを引き起こした人です。

JAMMYS PROFILE

この80年代というのは、音楽に限らずいろいろな産業に
コンピューターが入り込んで行った時代だったんですね。
それまで人間の経験値に頼っていたものが、それに代わって
コンピューターのデータや分析力が優位に立って行った
時代だったんですね。

このヒットをきっかけにジャマイカの音楽界も、それまで
の「生演奏」での音楽制作からコンピューターによる
「打ち込み」の音楽制作へと、一気に切り替わって
行ったんですね。
良い悪いではなく、それが時代の流れだったんですね。

今回のアルバムはそのKing Jammyの、Dub Store Records
から2011年に発売されたCD2枚組のアンソロジー
です。
タイトルが「King Jammys Dancehall 1985-1989 Part 1」
となっているように、彼King Jammyが「デジタル革命」
を起こした85年からコンピュータ-・ライズドの
ブーム真っ盛りの89年までの音源を集めたアルバム
です。
アルバムは2枚組ですが、Disc 1は「Vocals & Deejays」
というタイトルで歌とディージェイもの、Disc 2は
「Instrumental Dub Version」というタイトルでインスト
のダブが収められています。

Disc 1の「Vocals & Deejays」は全20曲で収録時間
は72分32秒。
Disc 2の「Instrumental Dub Version」は全15曲
で収録時間は45分42秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

All Tracks produced by Lloyd James

Engineers: King Jammy, Bobby Digital, Squeengine
Musicians: Jammys Studio Band, Super Power All Stars, Steelie & Clevie, High Times Band

となっています。

プロデューサーのLloyd JamesはKing Jammyの
本名です。

この時代ぐらいからSteelie & Clevieなど、打ち込み
の録音に対応できる人がバックで活躍するように
なってきます。
その分それまでお馴染みだった名前が減って来るん
ですね。

High Times BandはEarl 'Chnna' Smithのレーベル
High Timesのバンドです。

さて今回のアルバムですが、実はちょっと前から
買おうと思っていたアルバムです。
このブログにたびたび書いていますが、私は20代
の頃の70年代から80年代の初めにレゲエを
聴いていて、その後に20年以上の中断があり、
6年ぐらい前から再びレゲエを聴き始めた人間です。
その為私が若い頃聴きていたレゲエは、今では
ルーツ・レゲエと呼ばれているレゲエがほとんど
だったんですね。
少しだけ初期のダンスホール・レゲエも聴いて
いますが、こうしたデジタルのダンスホール・
レゲエは聴いていなかったんですね。
そのせいか再びレゲエを聴き始めた当初は、
こうしたデジタルのサウンドにすごく違和感と
抵抗がありました。

ただレゲエを本気で集め出すと、こうした
デジタルのダンスホール・レゲエも絶対に無視
出来ない音楽なんですね。
特にこのKing Jammyのデジタル・サウンドは、
何か新しい音楽を生み出そうという意欲に溢れて
いて、やっぱり面白いんですね。
このKing Jammyという人は、デジタル以前にも
素晴らしいダブ・アルバムなども作ってはいる
んですが、その時代の音には何か吹っ切れない
ものがあり、やっぱりこのデジタルのダンスホール・
レゲエの時代の音が一番面白いんですね。

そんな事もあって、よくレゲエレコード・コムを
運営するDub Store RecordsからKing Jammyプ
ロデュースのシングルEP盤が再発されると、
買わないけれどよく試聴していたんですね(笑)。
そのうちにある事に気が付きました。

意外と歌入りのA面より、「Version」(ダブ)の
B面の方が面白いんですね。
ある意味歌が抜けている分、曲の良さがよりよく
解るんです。
King Jammyというとこの時期はプロデュースに
専念していて、あまりダブは作っていない印象を
持っていたけれど、実はこうしたB面のダブをよく
作っているんですね。
しかも内容的にも質が高く、素晴らしいという事に
気が付きました。

そんな事もあって、このデジタルの時代のKing Jammy
のダブが聴きたいと思うようになりました。
ただ探してみると、この時代のKing Jammyのダブを
集めたアルバムって、あんまり無いんですね。
そんな時に新宿のDub Storeの店員さんに聴いてみた
ところ、「それならうちから出したアルバムに入って
いますよ。」と教えてもらったのが、このアルバムです。
その時は買わなかったんですが、今回レゲエのアルバム
集めに街に出た時に、新宿のDub Storeで買ってきました。
やっぱり教えてもらったのに、他で買う訳にはいき
ませんからね(笑)。

さて今回のアルバムですが、レゲエレコード・コム
などの説明によると、「膨大なカタログの中から厳選
セレクトしたキラー・デジタル・ダンスホール音源」
との事ですが、期待に違わぬ素晴らしいアルバムだと
思います。
書いたように、この時代のJammysのダブを集めた
アルバムってあんまり無いんですね。
その意味でもとても貴重なんじゃないでしょうか。

Disc 1は「Vocals & Deejays」となっていて、歌や
ディージェイが収められています。
収録されているアーティストはJohnny Osbourne、
Nitty Gritty、Dennis Brown、Wayne Smith、Little Kirk、
Tonto Irie、Chaka Demus、Chuck Turner、Robert Lee、
Junior Murvin、Anthony Johnson、Eccleton Jarrett、
Bunny General、Red Dragon、Leslie Thunder
といった人達です。

そのうちWayne Smithが全20曲中最多の4曲収められて
います。
そのあたりに彼がいかに時代の寵児だったかが解りますね。
あえて「Under Me Sleng Teng」をハズしているのも、
ちょっとニクイところですね(笑)。

あとベテランのJohnny Osbourneが2曲収められていますが、
この人は長い経歴を持つ人ですが、このデジタル期にまた
復活しているんですよね。
またルーツ期から活躍するDennis Brownも、この時期に
「The Exit」という名曲を残しています。
ベテランでは他にもJunior Murvinの名前もあるし、この
デジタル期に全てのベテラン歌手が淘汰されたしまった
という訳ではないんですね。
ちゃんと生き延びる人は生き延びています。

デジタル期の歌手の中ではNitty Grittyの名前があるのが
嬉しいところです。
この人は撃たれて早く亡くなっているんですが、やっぱり
声を聴けば彼と解る、印象的なヴォーカリストです。

このデジタルのダンスホール・レゲエというと、どちらか
というと音が軽いというイメージがあるのですが、今回の
セレクトはかなりヘヴィーな印象の曲が多く選ばれています。

Disc 2は「Instrumental Dub Version」となっていて、
Disc 1に収められた曲のダブ・ヴァージョンで構成されて
います。
ただ20曲全てにまでダブ・ヴァージョンが無かったのか、
15曲と5曲少なめです。
面白いものでヴォーカルが抜けると、よりクッキリと曲の
良し悪しが解るんですね。

この時代のKing Jammyのダブの特徴としては、ルーツ期の
ダブと較べると音数が少なくなっている事です。
ルーツ期はホーンが入っていたり、けっこう重厚さを追求
した音作りがされているんですが、80年代のダンスホール期
に入るとホーンなどの使用が減って、少ない楽器でニュアンス
を付ける演奏に変わって来るんですね。
デジタルになってからもその傾向が残っていて、ホーンなどの
重厚な音はあまり好まれなかったようです。。
ただそうなるとニュアンスを付けるのに、より技量を要求
される事になります。
もちろんそこはKing Jammyですから、すごくひとつひとつの
音が立った素晴らしい音作りをしているんですが、やはりこの
デジタルの時代になるとよりダブを作るのが難しくなった
という側面があるのかもしれません。
そのせいかこのKing Jammyのコンピュ-ター・ライズド以降、
ジャマイカではあまりダブが作られなくなる傾向が見られます。
やっぱりダブというと70年代のルーツ・レゲエの時代が、
一番盛んだったんですね。

ただあまり作られなくなっているからこそ、このKing Jammy
のダブは貴重だとも言えます。
ほとんどインストに聴こえてしまうような曲もありますが、
よく聴くとひとつひとつの音にシッカリとした意図がある
んですね。
この音の完成度は、やはりダブという音楽のひとつの到達点
なのかもしれません。
デジタルという軽くなりがちな音楽を、じっくりじっくり
煮詰めていったような「濃さ」が、このKing Jammyのダブには
あります。
聴けば聴くほど深みにハマる、そんなダブをこのKing Jammy
は作っています。

残念なのは「Part 1」と銘打たれていながら、いまだに
「Part 2」が発表されていない事です。
このKing Jammyのダブは、今の時代に聴いても充分にリスナーに
訴えかける力があります。
ぜひ「Part 2」も作ってもらいたいですね。

このアルバムはデジタルの時代に活躍したKing Jammyという
人の魅力が詰まったアルバムだと思います。
デジタルのダンスホール・レゲエの好きな人、デジタルの
インストに興味のある人、ダブという音楽の進化に興味の
ある人にはおススメです。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Dennis Brown - The Exit (Jammy's)



○アーティスト: King Jammy
○アルバム: King Jammys Dancehall 1985-1989 Part 1
○レーベル: Dub Store Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2011

○King Jammy「King Jammys Dancehall 1985-1989 Part 1」曲目
Disc 1: Vocals & Deejays
1. In The Area (What A La La) - Johnny Osbourne
2. Good Morning Teacher - Nitty Gritty
3. The Exit - Dennis Brown
4. My Lord My God - Wayne Smith
5. Don't Touch The Crack - Little Kirk
6. In Thing - Wayne Smith
7. Icky All Over - Wayne Smith
8. Life Story - Tonto Irie
9. Original Kuff - Chaka Demus
10. We Rule The Dancehall - Chuck Turner
11. Come Now - Robert Lee
12. E20 - Wayne Smith
13. Jack Slick - Junior Murvin
14. Dancehall Vibes - Anthony Johnson
15. Rock Them One By One - Eccleton Jarrett
16. Midnight Hour - Robert Lee, Bunny General
17. Jam Down Posse - Red Dragon
18. We Gonna Rock It Tonight (Dub Plate Playing) - Johnny Osbourne
19. Ram Dance Man - Leslie Thunder
20. Love Me Stylee - Robert Lee

Disc 2: Instrumental Dub Version
1. In The Area Version
2. The Exit Version
3. Don't Touch The Crack Version
4. In Thing Version
5. Icky All Over Version
6. We Rule The Dancehall Version
7. Original Kuff Version
8. Come Now Version
9. E20 Version
10. Jack Slick Version
11. Rock Them One By One Version
12. Midnight Hour Version
13. Jam Down Posse Version
14. We Gonna Rock It Tonight Version
15. Love Me Stylee Version