今回はThe Heptonesのアルバム

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「Sea Of Love」です。

The Heptonesはロックステディの時代からルーツ・レゲエ
の時代にかけて活躍したコーラス・グループです。
リード・ヴォーカルのLeroy Sibblesとハーモニーの
Earl MorganとBarry Llewelynの3人からなるこのグループ
ですが、特にロックステディの頃の活躍はすさまじく、
数々のヒット曲を飛ばして一世を風靡しました。
彼らのロックステディ期のアルバム「On Top」は、
ジャマイカでもっとも売れたアルバムとしてよく知られて
います。

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The Heptones - On Top (1968)

またリード・ヴォーカルのLeroy Sibblesはベーシスト
としても才能があり、Studio Oneのバック・バンド
Sound Dimensionのベーシストとしても活躍しています。

ロックステディの時代が終わりルーツ・レゲエの時代に
なっても活躍を続けたこのグループですが、ルーツ期の
後半にLeroy Sibblesが脱退しNaggo Morrisがリード・
ヴォーカルをとった時期も
ありました。ただリード・ヴォーカルが変わるとイメージ
が変わってしまうためか思うような成功は手に入れられずに、
のちにまたLeroy Sibblesがリード・ヴォーカルに復帰
しています。

やはり彼らの全盛期はやっぱりLeroy Sibblesがリード・
ヴォーカルとして活躍したロックステディからルーツ・
レゲエの頃だったと言えるでしょう。

Heptones (ヘプトーンズ)

今回のアルバムは1997年にHeartbeatレーベルから
発売された、彼らThe Heptonesのロックステディ期の
Studio Oneの音源を集めたアンソロジーです。

全16曲で収録時間は55分48秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Produced by C.S. Dodd
Recorded at Jamaica Recording and Publishing
Engineered by Sylvan Morris, C.S. Dodd
Transferred by C. Dodd, G. Adams, Courtny Dodd
Extended mixes by Chris Wilson

Arranged by Jackie Mittoo,Richard Ace, C.S. Dodd
Hornes arranged by Cedric 'Im' Brooks, Roland Alphonso, David Madden
Band include The Soul Vendors, Sound Dimension, Soul Defenders

Musicians:
Drums: Leroy Wallace, Phill Collender, Bunny Williams
Bass: Leroy Sibbles, Bryan Atkinson, unknown bassist
Guitar: Eric Frater, Ernest Ranglin
Keyboards: Jackie Mittoo, Richard Ace
Trumpet: David Madden
Trombone: Vin Gordon
Alto Sax: Deadley Headley
Tenor Sax: Cedric Brooks, Roland Alphonso

となっています。

エンジニアのSylvan Morrisはのちのルーツ・レゲエ
の時代にDub Specialist名でStudio Oneのダブを
作った人として知られています。

バック・バンドとしてクレジットされているのは
The Soul Vendors、Sound Dimension、Soul Defenders
の3つですが、このバンドはほぼ同じバンドで
Soul Defenders→The Soul Vendors→Sound Dimension
と名前を変えていったバンドなんですね。
キーボードのJackie Mittooを中心に、Leroy Sibbles
やサックスのRoland Alphonso、Cedric 'Im' Brooks
などが参加した、このロックステディ期に活躍した
バンドとして知られています。
特にJackie Mittooはこのロックステディの時代の
中心人物で、彼がカナダに移住したことをきっかけに、
このロックステディのブームは66年~68年という
わずか3年間で終わってしまうんですね。
そのロックステディの時代の後にやって来たのが、
レゲエ(ルーツ・レゲエ)の時代という訳です。

さて今回はアルバムについて説明する前に、タイトル曲
である3曲目「Sea Of Love」について説明したいと
思います。
この曲は多くの人は84年にThe Honeydrippersがヒット
させた曲として覚えているんじゃないでしょうか。
The Honeydrippersはハードロック・バンドLed Zeppelin
解散後にヴォーカルのRobert PlantとギターのJimmy Page
が組んだユニットですよね。
この曲のヒットで確か映画も作られたほどの人気曲でした。

The Honeydrippers - Sea Of Love


ただこの曲、彼らのオリジナルではないんですね。
オリジナルはPhil Phillipsという人で、1959年の
8月に全米のヒット・チャートで2位に入る大ヒット曲
なんだそうです。

Phil Phillips - Sea Of Love


The Heptonesもこのロックステディ期にすでにこの曲を
歌っていて、68年のアルバム「On Top」にもこの曲が
収められています。

The Heptones - Sea Of Love b/w Version


The Honeydrippers以前にすでにこの曲を持ち歌のひとつ
にしているんですね。

ちなみにこの曲「Sea Of Love」は2006年にTom Waits
がカヴァーしていたり、レゲエでもMarcia Griffithsや
Dennis Brownがカヴァーしているそうです。
やっぱり海と愛というテーマが、この曲の人気の秘密なの
かもしれませんね(笑)。

ヘプトーンズ(Heptones) - Sea of Love - 1972 - リリック

さて前置きが長くなりましたが、今回のアルバムですが、
この「Sea Of Love」を中心に、The Heptonesのもっとも
全盛期といえるロックステディの時代のそれもStudio Oneの
音源を集めたアルバムです。
これはもう「On Top」にシビレた人なら、間違いなくツボ
のアルバムですよね(笑)。
その期待にたがわずThe Heptonesは、ロックステディ独特の
ユッタリとしたリズムの中で気持ちの良いハーモニーを
聴かせてくれています。

今回のアルバムの特徴としては、2曲目「Stick Man」や
10曲目「Learn」、さらには12曲目「Nine Pounds Of Steel」
と16曲目「Joy Joy」など、いつもはハーモニーの
Barry Llewelynのリード・ヴォーカルの曲が多く収められた、
かなりマニアックな選曲が目を引きます。
ただそれでも彼らのヴォーカル力が落ちることはけっして無い
んですね。
ちゃんとリードをとれるだけの実力者が、普段はハ-モニー
を担当しているんですね。

そうした曲の合間にポピュラリティーのある曲を入れ込んで
あるのもウマい選曲という気がしました。
「Sea Of Love」はPhil Phillipsの曲という事は書きましたが、
他にも6曲目「Young Gifted And Black」は、このロックステディ
期に恋仲だったBob AndyとMarcia Griffithsのヒット曲として
よく知られている曲です。

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Bob Andy & Marcia Griffiths - Young Gifted And Black (1970)

ちなみにこの曲は、オリジナルはアメリカのジャズ・シンガー
Nina Simoneの曲なんだそうです。

11曲目「I Shall Be Released」は、アメリカのフォーク・
シンガーとして知られるBob Dylanの名曲です。
この「I Shall Be Released」は無実の罪で投獄された人の
開放を歌った歌だと言われていますが、「俺を解放(釈放)
してくれ」という歌詞が当時のレゲエ・ミュージシャンの
心情に合ったのか、のちにKeith Hudsonもこの歌を自身の
アルバムで歌っています。

「Sea Of Love」などが特徴的ですが、意外とこうした有名曲を
The Heptonesはサラッと歌っているんですね。
それでも香り立つような濃厚さがあるのは、このロックステディ
の時代のパワーや、彼らの歌に賭ける想いが自然に滲み出ている
からかもしれません。
やっぱりこのロックステディの時代のThe Heptonesというのは、
自然に人を釘付けにしてしまう凄味のようなものがあるんです
よね。
このロックステディの時代は、彼らThe Heptones抜きには
語れない気がします。

このアルバムはロックステディの時代にひときわ強い光を
放ったThe Heptonesというグループを知るには、とても良い
アルバムだと思います。
時代は残酷なほどのスピードで過ぎ去っていきますが、
それでもひときわ輝いたという記憶は、人々の心から簡単に
消えるものではありません。
彼らThe Heptonesの輝きはレゲエという音楽の大切な宝物です。

The Heptonesが好きな人、ロックステディが好きな人、レゲエ
という音楽を深く知りたいと思っている人にはなかなか良い
アルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: The Heptones
○アルバム: Sea Of Love
○レーベル: Heartbeat
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1997

○The Heptones「Sea Of Love」曲目
1. Be A Man
2. Stick Man
3. Sea Of Love
4. Tea For Two
5. Choice Of Color (Extended Mix)
6. Young Gifted And Black
7. Ting A Ling (Oiginal Version)
8. Please Be True (featuring Alton Ellis)
9. Get In The Groove (Extended Mx)
10. Learn
11. I Shall Be Released
12. Nine Pounds Of Steel
13. Love Won't Come Easy
14. Love Me With All Of Your Heart
15. You've Lost That Loving Feeling
16. Joy Joy

●今までアップしたHeptones関連の記事
〇Heptones「Meet The Now Generation」
〇Heptones「Night Food」
〇Heptones「On Top」
〇Niney The Observer「Deep Roots Observer Style」