今回はMad Professorのアルバム

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「Schizophrenic Dub: Dub Me Crazy Vol.6」です。

Mad Professorは80年代から80年代からイギリスの
自身のレーベルAriwa Soundsで活躍するプロデューサー
です。
彼のプロデュースの活動範囲は幅広く、Sandra Crossなど
ラヴァーズ・ロックのアーティストのプロデュースから
「Dub Me Crazy」シリーズなどの自身のダブ、また
他ジャンルのJamiroquaiやBeastie Boysといったアーティスト
のプロデュースまで手掛けています。
80年代にイギリスから新風を吹き込んだプロデューサー
と言えるでしょう。

マッド・プロフェッサー - Wikipedia

Ariwa (アリワ)

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Mad Professor - Dub Me Crazy (1982)

今回の作品はMad Professor自身のダブで、1986年の
作品で、「Dub Me Crazy Vol.6」とあるように「Dub Me
Crazy」シリーズの6作目の作品です。

全12曲で収録時間は41分57秒。

ミュージシャンについては以下の表記があります。

Drums: Robitiks, Drumtan Ward, Billy Cross
Bass: Preacher, Black Steel, Macka Dub, Bernard
Piano: Pepper, Black Steel, Macka Dub, Cleveland Neunie
Guitar: Black Steel, Macka Dub, Jeffrey Beckford
Percussion: Drumtan Ward, Mad Prof., Popeye, Black Steel
Hornes: Tabanko, Roger, Patrick
Flute: Kate Holmes
Violin: Bobby Valentino
Voices: Aisha, Steel, Mad Prof., Voices From The Unknown, The Other Mad Professor
Intoroducing: Ras Preacher
Produced,Arranged & Mixed by Mad Professor

となっています。

カヴァー・デザインが「T. McD.」となっています。
これはTony McDermottの略ですね。
この人はこの「Dub Me Crazy」シリーズのほか、あの
Scientistの「漫画ジャケシリーズ」なども手掛けています。
ここのところこの人のイラストのジャケットをよく紹介して
いますが、ゴチャゴチャ人を描いたジャケットが特徴的な
人ですね。
今回のジャケットにはアメリカのパンツをはいたゴルバチョフ
や体がひとつでレーガンとサッチャーの二つの頭がある人物
などが描かれています。
このあたりに冷戦と言われた80年代という時代を感じます。

ちなみに今回のアルバム・タイトル「Schizophrenic Dub」って
どういう意味なのか「Schizophrenic」をネットで調べてみた
ところ、「精神分裂病の」という言葉が出てきました。
つまり今回のアルバム・タイトルは、「精神分裂病のダブ」
というタイトルなんですね(笑)。
そのせいかジャケットの中央に描かれた「マッド教授」は、
右側が半袖シャツにGパン、左側はハットをかぶってネクタイ
にスーツ姿という奇妙な格好をしています。
画面左に「Dub Me Crazy」の1作目の「マッド教授」が
描かれているのもご愛嬌ですね。
なかなか遊び心があって楽しいジャケットです。

このMad Professorが登場してきた80年代の前半頃に
なると、レゲエは新しい感性を求め始めます。
70年代に世界的にブレイクしたレゲエですが、初めは
レゲエといえば「ルーツ・レゲエ」だったんですね。
(ちなみに当時は単に「レゲエ」と呼ばれていて、「ルーツ・
レゲエ」という呼び方は、他と分類するために後から付け
られた呼び方です。)
大雑把に言えば、70年代はその「ルーツ・レゲエ」が
ダブやディージェイという新しい音楽を生みだしながら、
進化していきます。
ところが80年に近くなるとダンスホール・レゲエや
ラヴァーズ・ロックといったそれまでのルーツとはまた
感性の違うレゲエが生まれて来るんですね。

その時代にレゲエのダブの分野に登場してくるのが、
ジャマイカではPrince Jammy(のちのKing Jammy)や
Scientistであり、イギリスではこのMad Professorや
Jah Shakaという人達だったんですね。
いわばこれらの人達が、それまであったルーツ・レゲエ
からダンスホール・レゲエやラヴァーズ・ロックに変化
したレゲエを再構築していく訳なんですね。

今回のアルバムもMad Professorというダブのスペシャリスト
の才能を充分に感じる事の出来るアルバムだと思います。
彼の作るダブは、80年代に入ってレゲエという音楽の質が
変わって来ているという事もありますが、それまでダブを
作ってきた70年代のダブのクリエイターと感性がどこか
違うんですね。
まさに新しい時代のダブを作り始めたクリエイターのひとり
だと思います。

彼のダブは時に「デジタル・ダブ」という呼び方がされる
ほど現代の音楽に近い感性を持っているのですが、ネットに
あった彼のインタビューなどを読むと、実はデジタルな
機材が嫌いで全てアナログで音作りをしているそうです。
自分の感性に合わせた機材を自身のスタジオAriwaに
そろえているそうです。
そこからこのMad Professor独特の「Ariwaサウンズ」が
生まれるんだそうです。

今回のアルバムを聴いても、やっぱりMad Professorで
なければ作れない、独特の「世界観」があるんですよね。
もともとはKing Tubbyのダブを聴いて刺激を受けて音楽
作りを始めたそうですが、おそらく彼がKing Tubbyから
一番学んだのは、その理知的な音楽構築方法だったようです。
それまでの感覚的な音の作り方ではなく、彼やKing Tubby
の作る音はもっと理知的に音を組み立てて行くような
作り方なんですね。

正直なところMad Professorのダブというのは、70年代の
ヘヴィーなルーツ系のダブが好きな人間からすると、ちょっと
軽く感じてしまうダブなんですよね。
私自身も初めはそう思っていました。
ところが何枚かこの人のアルバムを聴いていると、恐ろしい
ほどの無限のイマジネーションを持った人だと解ってきます。
そうなると評価がガラッと変わって、やっぱり才能のある
スゴイ人だという事が解るんですね。
一見軽く聴こえる音に、彼のスゴさが隠れています。

このアルバムはダブが好きな人なら、押さえておいて
損のないアルバムだと思います。

機会があれば聴いてみてください。

Mad Professor Live Buenos Aires.



○アーティスト: Mad Professor
○アルバム: Schizophrenic Dub: Dub Me Crazy Vol.6
○レーベル: Ariwa
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1986

○Mad Professor「Schizophrenic Dub: Dub Me Crazy Vol.6」曲目
1. Medusa's Head
2. War Cry
3. Cosmis Ray
4. Haunts Of Evil Spirits
5. Russian Roulette
6. Preacher's Chant
7. Schizophrenic Dub
8. The Case Of The Disappearing Sari
9. Drunken Scotsman
10. High-Tec Dub
11. Heavyweight Dub
12. Medusa's Tail