今回はTappa Zukieのアルバム

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「Tapper Roots」です。

Tappa ZukieはRanking Dreadなどとともに「第2世代」
のディージェイとして知られている人です。
この「第2世代」のディージェイ特徴としては、U Roy
などの「第1世代」のディージェイと較べてより政治性
が強い事があげられます。
当時のジャマイカは極貧国のひとつで、政治抗争も激しく、
当時の2大政党ジャマイカ労働党 (JLP)と人民国家党 (PNP)
の間で銃撃戦が起きるほど荒れた国だったんですね。
このTappa ZukieとRanking Dreadは、ジャマイカ労働党
(JLP)の熱烈な支持者として有名だったらしいです。
彼らはディージェイなので、銃ではなく言葉
(トースティング)で政治闘争をしていたんですね。
Bob Marleyなどにも見られるように、武器ではなく
言葉でプロパガンダを行うというのは、世の中を変える
有効な手段のひとつなんですね。

その彼Tappa Zukieの思想性はジャマイカだけに留まらず、
多くのパンクスなどの社会に不満を持つ人々にも影響を
与えました。
当時「パンクスの女王」と呼ばれたPatti Smithも彼に
刺激を受けたひとりで、彼を自分のステージのオープニング・
アクトに起用したほどでした。
さらにツアーを共にした彼女はTappa Zukieを師と仰ぎ、
トースティングの手ほどきを受けたと言われています。
さらにはあのSex PistolsのJohn Lydonも彼を絶賛した
とも言われています。
今回はそうしたパンクスにまで影響を与えたTappa Zukie
のアルバムです。

今回のアルバムは1978年にVirgin Front Lineから
発表されたアルバムです。
まず目を引くのはやっぱりこのジャケットですよね…。
エロジャケというにはもったいないくらいの…(笑)。
女性が胸を張って「かかって来なさい!」みたいな感じで、
けっこうカッコイイジャケットじゃないでしょうか。
内容的にも彼の代表作のひとつらしいです。

全10曲で収録時間は36分10秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

All Tracks Produced by D. Sinclair
exept Green Bay Murder Produced by D. Sinclair/G. Brown
Special Thanks to De Revolutionaries who lay down de riddims
Recorded at Channel One
Mixed at King Tubby's by Prince Jammy

となっています。

プロデュースはD. Sinclairで、録音はChannel Oneで
行われ、バックの演奏はRevolutionaries、ミックスは
King Tubby'sでまだ働いていた頃のPrince Jammyが
行っています。
Revolutionariesのメンバーの記載がないのが、ちょっと
残念なところです。

さて今回のアルバムですが、やっぱり代表作と言われる
だけあってなかなか聴きごたえのある内容のアルバム
だと思いました。
まずは彼Tappa Zukieがパンクスから支持されたのか
という事ですが、当時のレゲエ(ルーツ・レゲエ)と
パンク・ロックというのは思想的に兄弟みたいな
ところがあったんですね。

60年代の終わりに誕生し70年代に発展したレゲエは、
当時ジャマイカで最下層に置かれ貧困にあえいでいた
黒人層のやりきれない怒りを訴えるプロテスト・ソング
として支持を得てブレイクした音楽でした。
一方のパンク・ロックも技術的には高度になったものの
思想を失った既成のロック・ミュージックに対する反発
が原動力となり、やはり階級社会から抜け出せない
イギリスの若者などのやりきれない怒りを背景に、
成長してきた音楽なんですね。
Sex Pistolsなどの多くのパンク・グループがレゲエを
愛聴していたというのは、よく知られている話です。
音楽のリズムは違うけれど思想的に似ていたレゲエは、
パンクスにとっても学ぶべきものがある音楽だったん
ですね。
おそらくこの70年当時のレゲエとパンク・ロックは、
この時代のもっともハード・コアな音楽だったんだと
思います。

さて話が長くなってしまいましたが、今回のアルバムは
バックにChannel Oneで勢いのあったRevolutionariesに、
ミックスがPrince Jammyという最高の組み合わせで
作られたアルバムです。
それにTappa Zukieの味のあるトースティングとくれば、
もうケチの付けようのない組み合わせです。

実際に聴いた印象でも1曲目のちょっとルーズな
トースティングの「Oh Lord!」から始まり、2曲目の
The Abyssiniansの名曲として知られる「Satta Massagana」
を使った「Satta」、そして白眉はTommy McCookと思われる
サックスが素晴らしい8曲目「Green Bay Murder」と、
まさに彼Tappa Zukieの代表作と言われるのに相応しい
充実した内容のアルバムになっています。

一見ユルくても実は中身はハード・コア、それがレゲエの
面白さなんですね。
やはりそうしたハード・コアなリリックを持っていた
70年代が、レゲエが一番輝いていた時代だったのかも
しれません。

ルーツ・レゲエが好きな人、特にディージェイものが
好きな人には絶対ハズせないアルバムだと思います。

機会があればぜひ聴いてみてください。

Tappa Zukie LIVE @ Dub Club, Los Angeles 7/30/2008



○アーティスト: Tappa Zukie
○アルバム: Tapper Roots
○レーベル: Virgin Front Line
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○Tappa Zukie「Tapper Roots」曲目
1. Oh Lord!
2. Satta
3. Don't Shoot The Youth
4. Rastaman Skank
5. Riding West
6. Tapper Roots
7. First Street Rock
8. Green Bay Murder
9. Freedom Street
10. Simpleton Leave Violence

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〇Tappa Zukie「Living In The Ghetto」
〇Tappa Zukie「Raggamuffin」
〇Tappa Zukie「Tappa Zukie In Dub」
Tapper Zukie「Escape From Hell」
〇Tapper Zukie「MPLA」
〇Tapper Zukie「Raggy Joey Boy」
〇Tapper Zukie「The Man From Bozrah」