今回はAugustus Pabloのアルバム

augustus_pablo_02a

「One Step Dub」です。

Augustus Pabloはルーツ・レゲエを聴く人なら知らない
人は居ないほど有名なメロディカ奏者であり、
プロデューサーです。
それまで練習用の楽器ぐらいにしか思われていなかった
メロディカをプロの楽器として使用し、ルーツ・レゲエ
を他にない特別な音楽に変えたのがこのAugustus Pablo
という人です。
彼のスピリチュアルな奏法は、ルーツ・レゲエに特別な
ニュアンスをプラスしたんですね。

Augustus Pablo (オーガスタス・パブロ)

この回のアルバム「One Step Dub」は1988年の作品です。
彼は1999年に重度の筋無力症で45歳ぐらいで亡く
なっています。
敬虔なラスタファリアンであった彼は化学治療を拒否して、
自然治癒を目指したそうですが9、0年代になるとかなり
症状は悪化していったそうです。
このアルバムの当時にすでにその症状が現れていたかは
解りませんが、少なくとの彼のディスコグラフィーの中では
後期の初めか中期の終わりぐらいに位置するアルバムだと
思います。

全10曲で収録時間は41分29秒。

ミュージシャンについては以下の表記があります。

Produced By Augustus Pablo
Arranged By Horace Swaby
All Tracks By H. Swaby
Recorded At Tuff Gong, Easy St., Channel One, Dynamic Sounds
Engineers: Tony Kelly, Solgie, Steven Stanley, Pablo, Jr. Delgado

Bass: Danny Roots, Chris Meredith
Drums: Carlton 'Santa' Davis, Squiddy Cole, Eddie
Guitars: Earl 'Chinna' Smith, Leroy Badness, Junior Delgado
Bass Synths, Synth, Melodica, Organ, Piano: Augustus Pablo
Yamaha 1000: Jackie Mittoo
Piano: Red Fox
Emulator: Robbie Lyn
Percussion: Harry T., Sticky Thompson, Squiddy Cole
Trumpet: Chico Chin, Dizzy Moore
Saxes: Dean Fraser
Trombone: Nambo Robinson
Vocals: JR. Delgado, Anicia Banks, Bonny Brissett, Home T.,
Sharon Tucker, Jennifer Lala, Judith Emmanuel

となっています。

アレンジなどに名前のあるHorace SwabyはAugustus Pablo
の本名です。
Augustus Pabloという名前はデビュー当時に付けられた
アーティスト名なんですね。
今回目立つのはベース・シンセ、シンセ、メロディカ、
オルガン、ピアノとAugustus Pabloがかなりたくさんの
楽器を演奏している事です。
その為今回のアルバムではメロディカの出番は、いつもの
アルバムと較べると、かなり少なめのアルバムになって
います。

注目は「Yamaha 1000」で参加しているJackie Mittooです。
調べてみたらこの人は1990年の12月に癌で亡くなって
いるんですね。
つまりそれ以前の録音という事になります。

Carlton 'Santa' DavisやEarl 'Chinna' Smithなどルーツ期
からのベテランも居ますが、この時代になるとメンバーも
かなり様変わりしてきています。
ChinnaとSantaは仲が良かったのか、Augustus Pabloのかなりの
アルバムに参加しています。

あと多くのスタジオで録音したためかエンジニアもPabloや
Delgadoを含めてたくさん参加しています。
ダブは誰がミックスしたのか?ちょっと気になりますね。

さて今回のアルバムですが、1曲目「In The Red Dub」から
いつものAugustus Pabloのダブとはちょっと違う事に、初めは
ちょっとビックリします。
どう違うかというといつものメロディカ主体のダブではなく、
サウンドもすごくJazzyな曲が多いんですね。
一瞬フュージョン系のジャズを聴いているような錯覚に陥るほど、
今回のアルバムにはそうしたJazz的な要素も取り入れている
んですね。

このAugustus Pabloは初期の尖がった音から後半になるに
つれて音が丸くなって行く傾向が見られるのですが、この
アルバムにはそこに至るまでの明らかな模索が感じられる
アルバムになっています。
むしろそうしたハッキリした模索の後が感じられることが、
今回のアルバムの聴きどころといえるかもしれません。

1曲目「In The Red Dub」など、曲によってはJunior Delgado
のヴォーカルがけっこう入っています。
調べてみると今回のアルバムは、Junior Delgadoの1988年の
アルバム「One Step More」が元のアルバムのダブのようです。
残念ながらこちらのアルバムはかなり入手困難そうなアルバム
のようです。
ただ彼のヴォーカルがダブに効果的に入っていて、なかなか
良いアクセントになっています。

この80年代というのはジャマイカのレゲエ界はダンスホール・
レゲエの全盛期だったんですよね。
しかも80年代後半になって来るとレゲエもデジタル化が進んで、
King Jammyを中心とした「デジタル革命」コンピューター・ライズド
真っ盛りの時代だったんじゃないかと思います。
おそらくこのAugustus Pabloもそうした時代の中で、自分の
求める音楽との違いに苦悩はあったんじゃないかと思います。
ただこの人の音の模索の仕方は、ものづくりをする人間なら
かなり参考になる、誠実で冷静な向き合い方をしている気が
します。

今回のアルバムでもそうした冷静で論理的な作り方をして
いるので、音がJazzyになったとしても彼の持つ「本質」は壊れずに、
ちゃんとレヴェルを保った音楽になっているように思います。
結果的にきちんと自分の音楽の領域を広げているんですよね。

このアルバムはAugustus Pabloの模索が感じられるところが
一番面白いところだと思います。
なんだかんだ言っても彼が音楽の精神性を重んじた人であった
事は変わりはありません。
しかし精神性を重んじたからこそ、彼がより良く人々に伝える
ために腐心した事は間違いがありません。
このアルバムにはそうした彼の努力の跡が刻まれています。

機会があれば聴いてみてください。

Frozen Dub- Augustus Pablo (live)



○アーティスト: Augustus Pablo
○アルバム: One Step Dub
○レーベル: Greensleeves
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1988

○Augustus Pablo「One Step Dub」曲目
1. In The Red Dub
2. Hanging Dub
3. Riot Dub
4. One Step Dub
5. Zion Way Dub
6. Sunshine Dub
7. Dubbing King James
8. Rastaman Dub
9. Good Looking Dub
10. Night Patrol Dub