今回はGregory Isaacsのアルバム

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「Willow Tree: The Best Of Gregory
Isaacs」です。


Gregory Isaacs(本名:Gregory Anthony
Isaacs)はレゲエの歴史に偉大な足跡を
残したシンガーです。
70年代のルーツ・レゲエの時代から活躍
した彼は、その後のダンスホール・レゲエ、
さらにはデジタルのダンスホール・レゲエ
の時代になっても常に一線で活躍した
シンガーとして知られています。
その艶のあるヴォーカルは、Dennis Brown、
Sugar Minott、Freddie McGregorと並ぶ
4大ヴォーカリストとして、評価される
ほどの人気を博しました。

また負の側面としては、コカインなどの
薬物中毒に苦しんだ人としても知られて
います。

2010年にガンのため59歳で亡く
なっています。

ネットのDiscogsによると、共演盤を含め
て126枚ぐらいのアルバムと、789枚
ぐらいのシングル盤、さらには103枚
ぐらいのベスト盤(コンピュレーション)
をリリースしているのが、このGregory
Isaacsという人です。

アーティスト特集 Gregory Isaacs (グレゴリー・アイザックス)

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Gregory Isaacs ‎– Night Nurse (1982)

今回のアルバムは1978年にジャマイカ
のGG's Recordsからリリースされた
「The Best Of Gregory Isaacs」という
アルバムが元のアルバムで、それが
1992年にポルトガルのJamaican Gold
からリリースされる際に、今回のタイトル
「Willow Tree」に改題されたアルバム
です。
(表ジャケットの中にさらに小さく、写真
は同じで文字が「The Best Of Gregory
Isaacs」となっているジャケットの写真が
あります。)

元のタイトルが「The Best Of Gregory
Isaacs」となっていますが、有名曲は
「My Number One」ぐらいで、あまり
ベスト盤ぽくないアルバムなんですね。
売上アップのためにベスト盤の体裁にした
アルバムではないかと思われます。
表題曲のAlton Ellisの名曲のカヴァー
「Willow Tree」のほか、ヒット
曲の「My Number One」はディージェイの
Trinityとのディスク・ミックス・
ヴァージョン、Alton Ellisの名曲
「Breaking Up Is Hard To Do」の
カヴァー「Breaking Up」など、シンガー
としてのGregory Isaacsの魅力がうまく
収められたアルバムになっています。

手に入れたのはJamaican Goldから
リリースされたCDの中古盤でした。

全10曲で収録時間は38分44秒。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

All Songs are written by Gregory Isaacs, except nunber 1 and 2, which are adapted
Produced and arranged by Alvin Ranglin
Recorded at Channel One studio
Recording engineer Ernest Hoo Kim and Lancelot 'Maxie' Mckenzie
Photo Maria La Yacons
Digital transfer from the originl mastertape done at GG's Studio

Drums: Sly Dunbar
Bass: Robbie Shakespeare
Guitar: Rod Bryan
Percussion: Uzziah Thompson
Organ: Ansell Collins
Hornes: Headly Bennett, Bobby Ellis
Piano: Gladstone Anderson

となっています。

すべての曲の作曲はGregory Isaacs。
ただし1曲目「Willow Tree」と2曲目
「Breaking Up」はAlton Ellisのヒット曲
で、彼の作曲ではありません。

プロデュースとアレンジはGG's Records
のAlvin Ranglinが担当しています。
レコーディングはChannel One studioで
行われ、レコーディング・エンジニアは
Ernest Hoo KimとLancelot 'Maxie'
Mckenzieが担当しています。

写真はMaria La Yacons。
ジャケットの写真はマリファナを心地良さ
そうにふかすGregory Isaacsの横顔の写真
が使われています。
ちょっと気になるのが大量に発汗している
事で、頭から垂れた汗が頬に二筋つたって
いるのがハッキリと写っています。
その汗のかき方が尋常じゃないんですね。
この人はコカインの中毒で苦しんだ人です
が、この頃からそうした影響があったん
でしょうか?

ミュージシャンはドラムにSly Dunbar、
ベースにRobbie Shakespeare、ギターに
Rod Bryan、パーカッションにUzziah
Thompson、オルガンにAnsell Collins、
ホーンにHeadly BennettとBobby Ellis、
ピアノにGladstone Andersonという布陣
です。
GG's Recordsの録音なのでバンドは
GG's All Starsという事になるのかも
しれませんが、実質的にはChannel One
のバック・バンドThe Revolutionaries
と言って良い布陣です。

さて今回のアルバムですが、ベスト盤と
いう体裁をとっていますが、実質的には
GG's RecordsにおけるGregory Isaacsの
作品集といったアルバムで、もっとも充実
していた時期のGregory Isaacsの歌声が
楽しめる、好内容のアルバムだと思い
ます。

そのGregory Isaacsのもっとも充実して
いた78年頃に作られたアルバムが今回の
アルバムですが、その内容はかなり良い
です。
彼の大ヒット曲の6曲目「My Number
One」は、ディージェイTrinityとの
ディスコ・ミックス・ヴァージョンで7分
16秒にも及ぶ大作で、このアルバムの
ひとつの目玉となっています。
さらに1曲目は表題曲の「Willow Tree」
と2曲目「Breaking Up」は、いずれも
名シンガーAlton Ellisのカヴァー曲で、
このシンガーの実力を証明した彼の個性が
光る曲です。
他に3曲目の「No Speech, No Language」
や4曲目の「Lonely Teardrops」、7曲目
「Let Me Be Your Special Guest」、
9曲目の「If You Feeling Hot, I Will
Cool You」など、佳曲が多く収められた
アルバムで、この歌手Gregory Isaacsの
優れた実力が鮮やかに浮き上がって来る
アルバムとなっています。

ベスト盤の体裁をとっているので一見地味
に見えますが、Sly & Robbieをはじめと
するバック陣も見事で、この70年代後半
のジャマイカの「ルーツ・レゲエ」と
呼ばれた音楽の、素晴らしさを証明する
アルバムとなっています。

1曲目は表題曲の「Willow Tree」です。
書いたようにこの曲はAlton Ellisの
ヒット曲なんですね。
「柳の樹よ、どうか泣かないで。僕恋人を
見つけたから。」そう歌うこの歌は、恋人
を見つけた喜びが切々と歌われています。

アルトン・エリス(Alton Ellis) - Willow Tree -1968 リリック

漂うようなキーボードと力強いホーンの
メロディに、ファルセットなコーラスに
乗せたGregory Isaacsのスウィートな
ヴォーカルがとても魅力的な曲です。

Willow Tree (Gregory Isaacs)


2曲目は「Breaking Up」です。
こちらもオリジナルはAlton Ellisの
名曲「Breaking Up Is Hard To Do」
です。
「別れるのは難しいことさ。」と、去って
行こうとする恋人を引き留める男の心情が
歌われています。

アルトン・エリス(Alton Ellis) - Breaking Up - 1968 - リリック

またこちらは名リディムとして、多くの
アーティストにリピートされている曲でも
あります。

リズム特集 Breaking Up (ブレイキング・アップ)

心地良いドラミングに息の合ったホーン・
セクションのメロディ、心地良いコーラス
に乗せたGregory Isaacsのとても魅力的な
ヴォーカル。

Breaking Up


3曲目は「No Speech, No Language」
です。
こちらもちょっと「My Number One」に
なたニュアンスを持った曲です。
ユッタリとしたワン・ドロップの
ドラミングに、漂うようなキーボードと
ホーンのメロディ、男性コーラスに乗せた
Gregory Isaacsのちょっとセクシーな
ヴォーカル…。

Gregory Isaacs-No Speech,No Language.


4曲目は「Lonely Teardrops」です。
こちらもGregory Isaacsらしい佳曲です。
ホーンのユッタリとしたメロディに、
Gregory Isaacsらしい芳香漂うような
ヴォーカルにコーラス・ワーク…。

Gregory Isaacs - Lonely Teardrops 1977


5曲目は「Everything Is Going Alright」
です。
こちらも心地良いワン・ドロップのリズム
に乗せたホーンとギターのメロディ、
ユッタリと語りかけるようなGregory
Isaacsの説得力のあるヴォーカルが魅力
的。

6曲目は「My Number One」です。
書いたように前半はGregory Isaacsの歌、
後半はTrinityによるディージェイという
ディスク・ミックス・ヴァージョンの、
このアルバムで一番長い7分16秒に及ぶ
曲です。
耳馴染みの良い漂うようなキーボードと
ホーンのメロディに、ズシっと重い
ベース、ソフトで心地良いGregory Isaacs
のヴォーカル…。
後半になるとリズムに乗ったTrinityの
トースティング、電話のベル音の
エフェクト、女性のささやき、漂うような
キーボード…。
とてもよく出来たミックスです。

Gregory Isaacs - My Number One


7曲目は「Let Me Be Your Special
Guest」です。
こちらも彼の佳曲のひとつです。
漂うようなキーボードとホーン・
セクションの奏でるメロディ、心地良い
メロディに乗せたGregory Isaacsの表情
豊かなヴォーカル。

Let Me Be Your Special Guest


8曲目は「Look Before You Leap」です。
明るいホーンとギターの刻むような
メロディ、ノビのあるGregory Isaacsの
ソフトで表情豊かなヴォーカル…。

9曲目は「If You Feeling Hot, I Will
Cool You」です。
ちょっと哀愁のあるギターのメロディに、
語るように歌うGregory Isaacsのソフトな
ヴォーカル…。

10曲目は「Happiness」です。
キーボードとリリカルなピアノのメロディ
に、重いベース、Gregory Isaacsの語り
かけるようなヴォーカル。

ざっと追いかけてきましたが、この時代の
Gregory Isaacsの好調さを感じさせる
アルバムで、内容はとても良いと思い
ます。

薬物依存で苦しんだという負の側面のある
彼ですが、それでもヴォーカリストとして
の実力は本物で、長いレゲエの歴史の中
でも1,2を争うほどの実力の持ち主
だった事は間違いがありません。
その事は彼の残したアルバムとシングル、
コンピュレーションの異常なほどの多さ
が、彼の実力を証明しています。
ルーツ・レゲエの時代から活躍し、その
歌声を知った世界中のレゲエ・ファンから
愛され続けたシンガーが、このGregory
Isaacsだったんですね。
彼を抜きにレゲエの歴史は語れません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Gregory Isaacs
○アルバム: Willow Tree
○レーベル: Jamaican Gold
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1978

○Gregory Isaacs「Willow Tree: The Best Of Gregory Isaacs」曲目
1. Willow Tree
2. Breaking Up
3. No Speech, No Language
4. Lonely Teardrops
5. Everything Is Going Alright
6. My Number One
7. Let Me Be Your Special Guest
8. Look Before You Leap
9. If You Feeling Hot, I Will Cool You
10. Happiness

〈2018年08月18日修正〉

●今までアップしたGregory Isaacs関連の記事
〇Gregory Isaacs「Cool Ruler」
〇Gregory Isaacs「Hardcore」
〇Gregory Isaacs「In Person」
〇Gregory Isaacs「Live」
〇Gregory Isaacs「Mr. Isaacs」
〇Gregory Isaacs「My Number One」
〇Gregory Isaacs「Private Beach Party」
〇Gregory Isaacs「Red Rose For Gregory」
〇Gregory Isaacs「Remixed」
〇Gregory Isaacs「Slum In Dub」
〇Gregory Isaacs「Soon Forward」
〇Gregory Isaacs「The Ruler 1972- 1990」
〇Gregory Isaacs「Warning」
〇Gregory Isaacs「Night Nurse」