今回はMad Professorのアルバム

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「Psychedelic Dub: Dub Me Crazy
10」です。

Mad Professor(本名:Neil Joseph
Stephen Fraser)は80年代からイギリス
の自分のスタジオAriwaを拠点に活動を
続けるプロデューサーであり、ダブの
クリエイターである人です。
プロデューサーとしてはSandra Cross
など多くのラヴァーズロック・レゲエの
アーティストのプロデュースや、Massive
AttackやJamiroquaiなど他ジャンルの
アーティストのプロデュースまで幅広い
ジャンルのアーティストをプロデュース
しています。
また「Dub Me Crazy」シリーズや
「Black Liberation Dub」シリーズなど
の数多くのダブを作った事でもよく知られ
ています。

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Mad Professor - Dub Me Crazy (1982)

ネットのDiscogsによると、88枚ぐらい
のアルバムと、71枚ぐらいのシングル盤
をリリースし、数多くのプロデュースを
しているのがこのMad Professorという人
です。

レーベル特集 Ariwa (アリワ)

マッド・プロフェッサー - Wikipedia

今回のアルバムは1990年にUKの
AriwaからリリースされたMad Professor
のダブ・アルバムです。
副題が「Dub Me Crazy 10」となっている
ように「Dub Me Crazy」シリーズの
第10作目として作られたアルバムで、
Mad Professorらしい遊び心溢れるダブが
楽しめるアルバムとなっています。

この「Dub Me Crazy」シリーズは全部で
12作のアルバムが作られていています。
まずは82年に1作目の「Dub Me Crazy
!!」、同82年に2作目の「Beyond The
Realms Of Dub」、83年に3作目
「The African Connection」と4作目
「Escape To The Asylum Of Dub」、
85年に5作目「Who Knows The Secret
Of The Master Tape?」、86年に6作目
「Schizophrenic Dub」、87年に7作目
「The Adventures Of A Dub」、88年に
8作目「Experiments Of The Aural Kind」、
89年に9作目「Science And The Witch
Doctor」、90年に10作目「Psychedelic
Dub」、91年に11作目「Hi-Jacked To
Xaymaca (Jamaica)」、そして92年に
12作目「Dub Maniacs On The Rampage」
と、コンスタントに12作が82~92年
の約11年間に作られています。

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Mad Professor ‎– Beyond The Realms Of Dub: Dub Me Crazy! The Second Chapter (1982)

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Mad Professor ‎– The African Connection: Dub Me Crazy 3 (1983)

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Mad Professor ‎– Escape To The Asylum Of Dub: Dub Me Crazy Part 4 (1983)

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Mad Professor ‎– Who Knows The Secret Of The Master Tape?: Dub Me Crazy Part Five (1985)

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Mad Professor ‎– Schizophrenic Dub: Dub Me Crazy 6 (1986)

Mad Professor ‎– The Adventures Of A Dub: Dub Me Crazy 7 (1987)

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Mad Professor ‎– Experiments Of The Aural Kind: Dub Me Crazy Volume 8 (1988)

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Mad Professor ‎– Science And The Witch Doctor: Dub Me Crazy Part 9 (1989)

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Mad Professor ‎– Hi-Jacked To Xaymaca (Jamaica): Dub Me Crazy Part 11 (1991)

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Mad Professor ‎– Dub Me Crazy 12: Dub Maniacs On The Rampage (1992)

レゲエの音楽史の中でも、もっとも永く
続いたシリーズのひとつなんですね。
そこにはこのMad Professorという人の、
ダブに対する飽くなき探求心があったもの
と思われます。

手に入れたのはAriwaからリリースされた
CDの中古盤でした。

全12曲で収録時間は50分53秒。
最後の2曲はCDボーナス・トラックの
ようです。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Produced & Mixed by Mad Professor
Recorded & Mixed at Ariwa Sounds

Drums: Drumtan Ward, Fluxie, Robotiks
Programmes: Preacher, Steel, Cleveland, Fluxie
Bass: Preacher, Mafia, Derrick, Alvin, Jah Shaka, Fitzroy Brown
Piano: Mafia, Preacher, Steel
Flute: Kate Holmes
Vocals: Yasuyu O'Tani, Macka B, Sister Audrey, Kofi, Black Steel, Crucial Robbie
Sax: Michael 'Bammie' Rose
Trombone: Rico Rodriguez
Melodica: Laurent Voilot
Design: Teemac D. & M. Macdee

となっています。

プロデュースとミックスはMad Professor
で、レコーディングとミックスはAriwa
Soundsで行われています。

ミュージシャンはドラムにDrumtan Wardと
Fluxie、Robotiks、プログラミングに
PreacherとSteel、Cleveland、Fluxie、
ベースにPreacherとMafia、Derrick、
Alvin、Jah Shaka、Fitzroy Brown、
ピアノにMafiaとPreacher、Steel、
フルートにKate Holmes、ヴォーカルに
Yasuyu O'TaniとMacka B、Sister Audrey、
Kofi、Black Steel、Crucial Robbie、
サックスにMichael 'Bammie' Rose、
トロンボーンにRico Rodriguez、
メロディカにLaurent Voilotという布陣
です。


やはり今回の一番の注目は、ヴォーカルに
入っているYasuyu O'Tani(ヤスヨ・
オオタニ?)という日本人女性です。
なんと!このアルバム1曲目「Cool
Runnings Mandela」で、この女性と思われ
る日本語で、
「最高のダブ、イカしたダブ、愛して
ます」
という言葉が入っているんですね。
ネットで調べてみたところ、そうした
面白さもあってかこのアルバムは特に海外
で人気で、プレミアが付く程なんだとか。
ちなみに8曲目「Raging Storm」の冒頭
にも、彼女の日本語のメッセージが入り
ます。

Mafia & FluxieとRobotiks、Black Steel、
Kofi、Macka BなどAriwaでおなじみの
メンバーが脇を固めているほか、ベース
でJah Shaka、トロンボーンでRico
Rodriguezなどが参加しています。

何曲かで印象的なメロディカの音色が聴け
ますが、Laurent Voilotという人が吹いて
いるようです。

デザインはTeemac D. & M. Macdeeと
なっていますが、おそらくTeemac D.は
このシリーズのデザインを務めている
Tony McDermott(T. McDermott)で
間違いないと思います。
問題はM. Macdeeの方で、「Macdee」は
McDermottの事だと思うのですが、「M」
が誰なのかはハッキリとは解りません。
奥さんか子供かなのでしょうか?
そういえばジャケットの絵に子供の
描いたような描写があるような…。
タイトル通りにサイケデリックで、遊び心
のあるデザインです。

さて今回のアルバムですが、やはり「Dub
Me Crazy」シリーズといえばこのUKの
ダブのスペシャリストMad Professorを
代表するシリーズで、ダブが好きな人に
とっては聴き逃せないシリーズだと思い
ます。

このMad Professorという人の凄いところ
は、ダブという音楽を今日に至るまで
まるでとり憑かれたかのように追求し続け
ているところなんですね。
その飽くなき探求心には、頭の下がる思い
がします。
この「Dub Me Crazy」シリーズは、その
Mad Professorのダブの作品中でも特に
代表作と言えるシリーズで、約11年間の
12作の中に彼のダブという音楽への想い
や情熱が込められたシリーズなんですね。

普通は11年間に12作も作品を作って
いると徐々に想いも薄れて、作品の質や
テンションも徐々に下がって行ってしまう
ものなのですが、このMad Professorの
作品に関してはそういう事も無く、ある
一定以上のレベルを保ち続けていて、
そこがこの人の凄いところなんですね。

ガイアナ出身の彼はもともとはレコード・
コレクターで、King TubbyやLee Perryの
ダブに出会い、自宅をスタジオに改装
して、自分でダブを作り始めたという人
なんですね。
ダブという音楽に惹かれて音楽を始めた人
だけあって、そのダブという音楽にかける
情熱は素晴らしいものがあります。
Mad Professorは「デジタル・ダブ」など
と呼ばれ、一見King Tubbyとはまったく
違う音作りをしているように見えますが、
その知的で理性的な音作りはやはり
King Tubbyのダブの影響を強く感じます。
今日まで飽く事無くダブを作り続けている
彼ですが、もっともよくKing Tubbyのダブ
を引き継いでいるのが彼Mad Professor
ではないかと思います。

その彼の代表作「Dub Me Crazy」シリーズ
の大きな特徴は、元の音源にルーツ・
レゲエではなく当時UKで流行していた
ラヴァーズの音源を使っている事です。
もともとはUKのルーツ・レゲエの
レーベルとしてAriwaを立ち上げた
Mad Professorでしたがそのルーツの
アルバムの売り上げが芳しくなく、この
レーベルが成功したのはラヴァーズの楽曲
でだったんですね。

ちなみにラヴァーズ(ラヴァーズロック・
レゲエ)とは、70年代の中頃にUKで
誕生したレゲエの1ジャンルで、恋愛を
テーマにした歌詞とちょっとベタっとした
甘い質感のあるサウンドを特色とする音楽
です。
UKではジャマイカのプロテストの強い
ルーツ・レゲエより、ポップスに近い
こうしたラヴァーズの方が受け入れやすく
人気が高かったんですね。

ラヴァーズ・ロック - Wikipedia

そうした自分がプロデュースした
ラヴァーズの音源を使用して、
Mad Professorはクールで冷笑的な
独特のダブを作り上げるんですね。

またこの人の素晴らしいところは、どの
アルバムでも常にそれまでになかったよう
な実験的な試みを続けているところで、
今回のアルバムでも日本語の女性の声を
入れたり、Laurent Voilotという人の
メロディカを入れたりと、様々な事を
試しているんですね。
そうした知的で意欲的な音作りが、この人
の最大の魅力かもしれません。

1曲目は「Cool Runnings Mandela」
です。
「最高のダブ、イカしたダブ、愛して
ます」という日本語の女性のセリフから
ジングル、心地良いデジタルなドラミング
にホーンのメロディ…。

Mad Professor - Cool Runnings Mandela


2曲目は「Go Deh Nelson, Go Deh」
です。
1曲目「Cool Runnings Mandela」の
メロディカ・ヴァージョンのような曲
です。
男性の声のダブワイズ、逆回転、
ジングル、ホーンから哀愁のある
メロディカのメロディ…。

Mad Professor - Go Deh Nelson, Go Deh


3曲目は「In King David's Style」
です。
ギターとピアノのメロディ、心地良い
パーカッションを中心としたダブです。

Mad Professor - In Kind David's Style


4曲目は「Don't Drink The Piss」です。
ダブワイズした男性の呪文のような言葉、
水音のエフェクト、漂うような
キーボード、ベース音と心地良い
ドラミング…。

5曲目は「1990 Ariwa Style」です。
キーボードのメロディに男性の言葉、
リズミカルなドラミング…。

6曲目は表題曲の「Psychedelic Dub」
です。
心頃としたスティール・パンのメロディを
中心とした、ダブワイズの効いた曲です。

Mad Professor - Psychedelic Dub


7曲目は「Bammie Riff」です。
リズミカルなドラミングにホーンの
メロディのダブ。

Mad Professor - Bammie' Riff


8曲目は「Raging Storm」です。
「誰が作るレゲエもいいけど、やっぱり
一番はMad Professorの作るダブ…」と
いう日本語の女性の声で始まる曲です。
デジタルなドラミングに心地良い
キーボードのメロディ…。

9曲目は「Open Troppen」です。
華やかなホーンとキーボードのメロディ、
重いベース、ピアノなどが絡み合うダブ
です。

Mad Professor: Open Troppen [Psychedelic Dub]


10曲目は「Man From Senegal」です。
明るいホーンのメロディ、歯切れの良い
ドラミングのダブです。

11曲目は「Sunstroke」です。
漂うようなキーボードと哀愁のある
メロディカ、ズシっとしたベース音で構成
されたダブです。

12曲目は「Miss Mood」です。
ベースとギターを中心とした心地良い
サウンドのダブ。
スティール・パンが良いアクセントに
なっています。

Miss Mood


ざっと追いかけてきましたが、やはり
Mad Professorらしい緻密な音作りが
素晴らしく、聴いていて飽きないアルバム
だと思いました。
これだけ永く「Dub Me Crazy」シリーズが
続いたのは、けっして伊達では無いんです
ね。

音の背後に子供のように目をキラキラと
輝かせて音作りをしているMad Professor
の姿が見えるようです。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Mad Professor
○アルバム: Psychedelic Dub: Dub Me Crazy 10
○レーベル: Ariwa
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1990

○Mad Professor「Psychedelic Dub: Dub Me Crazy 10」曲目
1. Cool Runnings Mandela
2. Go Deh Nelson, Go Deh
3. In King David's Style
4. Don't Drink The Piss
5. 1990 Ariwa Style
6. Psychedelic Dub
7. Bammie Riff
8. Raging Storm
9. Open Troppen
10. Man From Senegal
11. Sunstroke
12. Miss Mood

〈2018年08月16日修正〉