I今回はIsrael Vibrationのアルバム

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「Dub Combo」です。

Israel VibrationはWiss、Skelly
(Skeleton)、Appleの3人で結成された
コーラス・グループです。
彼ら3人ともが小児麻痺による身体的
障害者で、リハビリ施設で知り合った彼ら
は苦難の末に1978年に「Same Song」
でアルバム・デビューしています。

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Israel Vibration ‎– The Same Song (1978)

その後順調にキャリアを積み重ねた彼ら
ですが、97年にAppleが脱退し、以後は
二人で活動しています。

Israel Vibration - Wikipedia

今回のアルバムは2001年にUSの
Ras Recordsからリリースされた2人組
になった彼らIsrael Vibrationのダブ・
アルバムです。

今回のアルバムの元になったアルバムは、
98年の「Pay The Piper」(1~10曲
目)と、2000年の「Jericho」
(11~16曲目)という2枚のアルバム
です。
プロデュースはIsrael VibrationとRoots
RadicsのFlabba Holtで、ミックスは
Jim Foxで、まるでインストのように聴き
心地の良いダブに仕上がっています。

手に入れたのはRas Recordsからリリース
されたCDの中古盤でした。

全16曲で収録時間は70分33秒。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Produced by: Israel Vibration and Flabba Holt

Tracks 1-10 from "Pay The Piper"
tracks 3,4,5 Recorded Feb 26, 1998 by Rohan and Perry at Leggo Studios, Kingston JA
tracks 1,2,6-10 Recorded July 30, 1998 by Jim Fox at Leggo Studios, Kingston JA

Tracks 11-16 from "Jericho"
Recorded Jan. 3, 2000 by Jim Fox at Leggo Studios, Kingston JA

Mix Engineer and Mastering
Jim Fox: Dub Mix, all tracks at Lion and Fox Recording Studios, USA
tracks 1-10 mixed August 14, 1998
tracks 11-16 mixed Feb 28, 2000
tracks 1-16 mastered March 2001

Bass:
Flabba Holt Roots Radics on every last tracks 1-16
Drums:
Carl Ayton Roots Radics on tracks 1-10
Sly Dunbar on tracks 11,12,13,16
Derrick 'Stewy' Stewart on tracks 14,15
Lead Guitar:
Dwight Pinkney Roots Radics on tracks 1-10
Earl 'Chinna' Smith on tracks 11-15
Junior Marvin on tracks 14
Rhythm Guitar:
Steve Golding Roots Radics on every single tracks 1-15
Piano:
Tee Bird Roots Radics on tracks 3,4,5,7,11,12,13
Franklyn 'Bubbler' Waul on tracks 1,2,6,8,9,10
Keith Sterling on tracks 14,15
Organ:
Tee Bird Roots on tracks 3,4,5,7,8,13,14
Franklyn 'Bubbler' Waul on tracks 15
Robbie Lynn on tracks 1,2,9,10,11,12
Keyboards, Synthesizer:
Tee Bird Roots on tracks 5,13
Franklyn 'Bubbler' Waul on tracks 9,15
Robbie Lynn on tracks 1,10,11,12
Hornes:
Dean Fraser: Saxophone on tracks 2,4,5,7,9,11,12,13,14,15
'Nambo' Robinson: Trombone on tracks 2,4,5,7,9,11,12,13,14,15
'Chico' Chin: Trumpet on tracks 9,11,13,14,15
David Nadden: Trumpet on tracks 2,4,5,7,12
Percussion:
Harry 'T' Powell: Hand drum on tracks 7,11,13,16
Uzziah 'Sticky' Thompson: percussion on tracks 1,2,5-15
Steve Golding: Repeater, percussion on tracks 3,5
Flabba Holt: percussion on tracks 2,3,4
Harmony Vocals:
Pam Hall, J.C. Lodge and Wiss on track 16

となっています。

プロデュースはIsrael VibrationとFlabba
Holt。

1~11曲目まではアルバム「Pay The
Piper」の曲が使われています。
3~5曲目までの3曲は1998年2月
28日に、RohanとPerryによって
ジャマイカのキングストンにあるLeggo
Studiosで録音され、残りの1,2,6~
10曲目までは98年の7月30日に
Jim Foxによって同じLeggo Studiosで録音
されています。

11~16曲目まではアルバム「Jericho」
の曲が使われています。
録音は2000年の1月3日に、Jim Fox
によってジャマイカのキングストンにある
Leggo Studiosで行われています。

ミックス・エンジニアはJim Foxで、1~
10曲目までが98年の8月14日に、
11~16曲目までが2000年の2月
28日にミックスされています。

ミュージシャンはベースにFlabba Holt
(Roots Radics)、ドラムにCarl Ayton
(Roots Radics、1~10曲目)と
Sly Dunbar(11~13、16曲目)、
Derrick 'Stewy' Stewart(14,15曲
目)、リード・ギターにDwight Pinkney
(Roots Radics、1~10曲目)とEarl
'Chinna' Smith(11~15曲目)、
Junior Marvin(14曲目)、リズム・
ギターにSteve Golding(Roots Radics、
1~15曲目)、ピアノにTee Bird
(Roots Radics、3~5,7,8,13,
14曲目)とFranklyn 'Bubbler' Waul
(1,2,6,8~10曲目)、Robbie Lynn
(1,2,9~12曲目)、オルガンに
Tee Bird Roots(3~5,7,8,13,
14曲目)とFranklyn 'Bubbler' Waul
(15曲目)、Robbie Lynn(1,2,
9~12曲目)、キーボードとシンセに
Tee Bird Roots(5,13曲目)、
Franklyn 'Bubbler' Waul(9,15曲
目)、Robbie Lynn(1,10~12曲
目)、ホーンはサックスにDean Fraser
(2,4,5,7,9,11~15曲目)、
トロンボーンに'Nambo' Robinson(2,
4,5,7,9,11~15曲目)、
トランペットに'Chico' Chin(9,11,
13~15曲目)とDavid Nadden(2,
4,5,7,12曲目)、パーカッション
はハンド・ドラムにHarry 'T' Powell
(7,11、13,16曲目)、
パーカッションにUzziah 'Sticky'
Thompson(1,2,5~15曲目)、
リピーターとパーカッションにSteve
Golding(3,5曲目)、パーカッション
にFlabba Holt(2~4曲目)、
ハーモニーにPam HallとJ.C. Lodge、
Wiss(16曲目)が参加した布陣です。

さて今回のアルバムですが、全体に落ち
着いた雰囲気のダブで、聴き心地は悪く
ありません。

もうこの90年代後半から2000年代に
入るとダブという音楽はめっりきりと作ら
れなくなります。
もともと実験的な音楽だったダブですが、
そうした音楽が作られるようになった背景
には、一度録音した音源を再利用できない
かというプロデューサーの切実な欲求が
あったんですね。

もともと大きなプロダクションが少ない
ジャマイカでは、70年代頃は
プロデューサーがミュージシャンや歌手を
集めてスタジオをレンタルし、レコードを
作るというインディーズのような形式が
一般的でした。
そうした資金はすべてプロデューサーが
調達し、儲けも損もすべてプロデューサー
が持っていたんですね。
そうしたプロデューサーにとって一度
録った音源を再利用するというのは、録音
のコストを下げるために必要な事だったん
ですね。
そうして生まれたのが、一度録った音源を
分解して再構築する実験的なダブであり、
歌手ではなくディージェイが喋る(トース
ティングする)ディージェイなどの音楽
だったんですね。

ダブ - Wikipedia

誕生したのは実験的で革新的な音楽だった
のですが、その裏にはかなり切実な経済的
な事情があったんですね。
ただそうして誕生したダブも、70年代
中盤から80年代前半頃までは盛んに作ら
れていたものの、ジャマイカの音楽産業が
豊かになるにつれて徐々に作られなく
なって行くんですね。
特にダブの第一人者であったKing Tubbyが
89年に何者かに自宅の前で暗殺されて
以降は、ジャマイカではダブはパッタリと
作られなくなって行くんですね。

キング・タビー - Wikipedia

今回のダブはそうしたダブがバリバリと
作られていた70年代のダブのような
革新性はありませんが、ダブのノウハウを
心得た、聴き心地の良いダブに仕上がって
います。

1~10曲目までは98年のアルバム
「Pay The Piper」の曲のダブが収められ
ています。

1曲目は「False Babylon」です。
ギターとキーボードのメロディに、Flabba
Holtのどすの効いたベースを中心にした
ダブです。
テープの逆再生音など細かくエフェクトが
入っていて、ダブらしさを演出していま
す。

Israel Vibration - False Babylon


2曲目は「Show Me The Money」です。
心地良いドラミングにダブワイズした
ホーン、ギターの軽快なメロディ、
心地良いベースのリズム…。

Israel Vibration - Show Me The Money


3曲目は「True Revolutionaries」です。
キーボードのメロディに心地良い
パーカッション、元気の良いメタルな
ギター…。

Israel Vibration - True Revolutionaries


4曲目は「Nah Fix It」です。
キーボードと心地良いベースとギターの
メロディ…。

5曲目は「Take Cover」です。
ダブワイズしたキーボード音と
パーカッション、ベースを中心とした
ダブ。

6曲目は「Unfair Advantage」です。
心地良いドラミングにギターとホーンの
メロディのダブです。
切れ味のある演奏が魅力。

Israel Vibration - Unfair Advantage


7曲目は「Outta Here」です。
ズシっとしたベースにホーンのダブ
ワイズ、ギターのメロディ…。

8曲目は「Future Generation」です。
ギターとキーボードのダブワイズした
メロディ…。

9曲目は「Foul Talking」です。
ズシっとしたベースを軸としたダブです。

Israel Vibration - Foul Talking


10曲目は「Whole Heap A Dem」です。
キーボードとベースのメロディを軸と
した、ちょっと疾走感のあるダブです。

11~16曲目までは2000年の
アルバム「Jericho」の曲からのダブが
収められています。

11曲目は「Hope Springs Eternal」
です。
キーボードのメロディにダブワイズした
ホーンと叫び声…。

Israel Vibration (Dub Combo) "Hope Springs Eternal"


12曲目は「Don't Follow Trouble」
です。
キーボードとギターのユラユラとした
メロディ…コーラス…ズシっとした
ベース…。

13曲目は「Dusk Till Dawn」です。
ダブワイズしたピアノとヴォーカル、
キーボードの漂うようなメロディ…。

Israel Vibration - Dusk Till Dawn


14曲目は「Peace Process」です。
ベースとギターのダブワイズしたメロディ
のダブです。

15曲目は「Make Some Room」です。
キーボードとベースを中心とした渋めの
ダブ。

16曲目は「Oneness」です。
ベースを軸にヴォーカルやパーカッション
なども入った明るいダブ。

Israel Vibration - Oneness


ざっと追いかけてきましたが、やはり
70年代の彼らの活躍には及びませんが、
それでも変わらぬ情熱をもって音楽を
続けている彼らには拍手を贈りたいと
思います。

機会があれば聴いてみてください。


○アーティスト: Israel Vibration
○アルバム: Dub Combo
○レーベル: Ras Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 2001

○Israel Vibration「Dub Combo」曲目
1. False Babylon - Wiss
2. Show Me The Money - Skelly
3. True Revolutionaries - Wiss
4. Nah Fix It - Skelly
5. Take Cover - Wiss
6. Unfair Advantage - Skelly
7. Outta Here - Wiss
8. Future Generation - Skelly
9. Foul Talking - Skelly
10. Whole Heap A Dem - Wiss
11. Hope Springs Eternal - Wiss
12. Don't Follow Trouble - Skelly
13. Dusk Till Dawn - Wiss
14. Peace Process - Skelly
15. Make Some Room - Wiss
16. Oneness - Skelly

〈2018年8月02日修正〉

●今までアップしたIsrael Vibration関連の記事
〇Israel Vibration「Strength Of My Life」
〇Israel Vibration「The Same Song」
〇Israel Vibration「Unconquered People + Dub」