今回はJezzreelのアルバム

wackies_01a

「Great Jah Jah: Showcase」です。

ネットなどの情報によるとJezzreelは、
ニューヨークのWackiesで活躍したClive
DavisとChristopher Harveyからなる
ヴォーカル・デュオとのことです。
ちなみに「Jezzreel」の読み方ですが、
「ジェジベル」、「イェズレル」、
「エズレル」などさまざまな読み方が
出ていました(笑)。
聖書に出てくる街の名前から付けた名前
らしいです。

Wackiesについても説明しておくと、
70年代からニューヨークの地下室を拠点
に、BullwackieことLloyd Barnesを主催者
として活動するレゲエ・レーベルです。
イギリスでは60年代のスカの時代から
ジャマイカの音楽が受け入れられたのに
対して、アメリカではなかなかレゲエが
浸透しなかったんですね。
当時のアメリカにはファンクやソウルと
いう人気の黒人音楽があり、リスナーが
ダブるレゲエはなかなか受け入れられ
なかったんですね。
そうした中でも頑張っていたのがこの
Wackiesというレーベルなんですね。
このWackiesにはHorace AndyやSugar
Minottなど、アメリカに渡った多くの
レゲエ・ミュージシャンが素晴らしい
アルバムを残しています。

Wackies (ワッキーズ)

今回のアルバムは1980年にUKの
Wackie'sからリリースされた彼ら
Jezzreelのソロ・アルバムです。

ジャケットに「Showcase」とあるように、
前半がJezzreelの歌、後半がダブまたは
ディージェイという「ショーケース・
スタイル」のアルバムになっています。

手に入れたのはWackie'sからリリース
されたCDでした。

全6曲で収録時間は38分56秒。

ミュージシャンについては以下の記述が
あります。

Drums: Jah Scotty, Bob Barnes, Luddie
Bass: Roy Robertson, Jerry Hitster, Brother Umojo
Keyboards: Steppy
Rhythm Guitar: Reggae Jerry, Shaan
Lead Guitar: Shaan, Reggae Jerry
Percussion: Chosen Brothers
Lead Vocals: Clive Davis, Christopher Harvey
Back Ground Vocals: Noel Delahaye (Junior)
DJ: Calabash

Photography: Clive Nelson
Cover, Concept, Design, Art, Graphics: LAM Graphics Int.

Recorded at: Wackies House Of Nusic
Engineer: Douglas Levy, Lloyd Barnes
Arranged by: Bullwackie, Jah Hamma

となっています。

ミュージシャンはドラムにJah Scottyと
Bob Barnes、Luddie、ベースに
Roy RobertsonとJerry Hitster、Brother
Umojo、キーボードにSteppy、リズム・
ギターにReggae Jerry, Shaan、リード・
ギターに ShaanとReggae Jerry、
パーカッションにChosen Brothers、
リード・ヴォーカルはJezzreelの2人、
Clive DavisとChristopher Harveyで、
バック・ヴォーカルにNoel Delahaye
(Junior)、DJにCalabashという布陣
です。

写真はClive Nelsonで、ジャケット・
デザインはLAM Graphics Int.となって
います。

レコーディングはWackies House Of
Nusicで行われ、エンジニアはDouglas
LevyとLloyd Barnes、アレンジは
BullwackieことLloyd BarnesとJah Hamma
が担当しています。

さて今回のアルバムですが、前半が歌、
後半がダブの「ショーケース・スタイル」
のアルバムで、聴きごたえもありなかなか
良い内容のアルバムだと思います。

書いたようにこの時代は、まだアメリカ
ではレゲエがあまり浸透していなかった
ようなんですね。
あのBob Marley & The Wailersですら、
やっと人気が出たのはBobの生前最後の
アルバム「Uprising」の頃だったといい
ます。
それもライオネル・リッチー(Lionel
Richie)が在籍した事で知られる
ファンク・バンドのコモドアーズ
(The Commodores)の前座でテレビ出演
したことがきっかけだというのだから、
驚きです。
The Commodoresは日本ではヒット曲が
1曲あるかないかぐらいの知名度の
グループで、おそらく世界的に見ても
それほど大物グループと言えないレベル
のグループなんですね。
その前座とは…(絶句)。

このエピソードはBob Marleyの伝記映画
「ボブ・マーリー/ルーツ・オブ・
レジェンド」の中で語られていますが、
Bob Marleyは「問題ない」と快諾した
そうですが、メンバーの一人は「逆だと
思ったよ」と語っています。

そのBob Marleyのアルバム「Uprising」
が発表されたのが1980年です。
レゲエで一番有名なシンガーの知名度が、
アメリカでは80年頃にやっと人気が出た
くらいだった事を考えれば、他のレゲエが
どの程度聴かれていたかはだいたい想像が
つきます。
この80年頃のアメリカは、おそらく
まったくの「レゲエ不毛の地」だったん
ですよね(笑)。

そういう時代にこのWackiesという
レーベルは、ニューヨークの地下室の
スタジオで、ひたすら頑張っていた
レーベルなんですね。
このWackiesのサウンドの特徴は、大衆の
支持が無かった分、余計に純粋に理想の
音楽レゲエを追及していた傾向が見られ
ます。
おそらく充分な設備も、充分なプレイヤー
も居ない中で、ひたすら音を研ぎ澄まして
いって、ソリッドで純粋なレゲエを作り
上げていったんですね。
本場ジャマイカ以上にピュアで研ぎ澄ま
されたサウンドは、今の時代に聴いても
何の遜色もないクウォリティを維持して
いるんですね。
かえって今の時代にこそ、聴くべき
サウンドなのかもしれません。

今回のアルバムでも前半が歌、後半がダブ
かディージェイという「ショーケース・
スタイル」の楽曲は、ボリューム充分で
すごく楽しめる内容になっています。
また今回はデュオなので、そのソウルフル
で美しいコーラス・ワークもこのアルバム
の聴きどころになっています。

メローなヴォーカルが素晴らしい1曲目
「Love Of My Life」から始まり、コーラス
に絡むギター・ワークがイイ味を出して
いる2曲目「Sun Will Shine」、のびやか
なヴォーカルが気持ちいい表題曲3曲目
「Great Jah Jah」、陰影のある曲調に
乗せた美しいコーラス・ワークから後半
は印象的なトースティングの4曲目
「Roman Soldiers」、ディープ感のある
5曲目「Living In The Ghetto」、明るい
コーラス・ワークから後半のダブへの展開
が面白い6曲目「Where Is That Love」
など、聴きどころ満点のアルバムになって
います。

1曲目は「Love Of My Life」です。
ピアノ・ソロからドラミング、ギター、
キーボードのメロディ、Jezzreelのノビの
あるヴォーカルが素晴らしい曲です。

Love of my life - Jezzreel


2曲目は「Sun Will Shine」です。
ギターとキーボードのメロディに、語り
かけるようなソフトなヴォーカルに
コーラスが心地良い曲です。
コーラスに絡むギターワークが魅力的な曲
です。
ちょっとこもったようなキーボードは
クラヴィネットか?

3曲目は表題曲の「Great Jah Jah」
です。
心地良いキーボードのメロディに、
コーラス・ワークに乗せた心地良い
ヴォーカル…。

Jezzreel - Great jah jah


4曲目は「Roman Soldiers」です。
ギターの影のあるメロディに、哀愁の
あるコーラス・ワークとヴォーカル。

5曲目は「Living In The Ghetto」
です。
心地良いドラミングにキーボードとギター
のメロディ、感情を込めたヴォーカルに
ソフトなコーラス・ワーク…。
メローでありながらレゲエらしいビターな
味わいの曲です。

JEZZREEL - LIVING IN THE GHETTO


6曲目は「Where Is That Love」です。
浮遊感のあるキーボードと刻むような
ギターのメロディ、時折入る鳥の鳴き声の
ようなエフェクト、ソフトなヴォーカルに
コーラス・ワークが魅力。

Jezzreel - Where Is That Love


ざっと追いかけてきましたが、メローな
ヴォーカルとレゲエらしいビターな演奏の
楽曲はどれもが本当に素晴らしく、この
JezzreelというグループとWackiesという
レーベルの魅力をよく伝えているアルバム
だと思います。

今の時代に聴くとこの時代のWackiesの
アルバムは、本当に悪いアルバムが無いん
ですね。
シンプルにそしてストレートに、レゲエと
いう音楽の想いが綴られています。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Jezzreel
○アルバム: Great Jah Jah: Showcase
○レーベル: Wackies
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1980

○Jezzreel「Great Jah Jah: Showcase」曲目
1. Love Of My Life
2. Sun Will Shine
3. Great Jah Jah
4. Roman Soldiers
5. Living In The Ghetto
6. Where Is That Love

〈2018年05月09日修正〉

●今までアップしたWackies関連の記事
〇Wackies「African Roots Act-2」
〇Wackies「African Roots... ACT.3」
〇Wackies「Creation Dub」
〇Wackies「Jah Son Invasion」
〇Wackies「Jamaica Super Dub Session」
〇Bullwackies All Stars「Black World Dub」
〇Bullwackies All Stars「Dub Unlimited 」
〇Bullwackies All Stars「Natures Dub」
〇Horace Andy「Dance Hall Style」
〇Jah Batta「Argument」
〇John Clarke「Rootsy Reggae / Visions Of John Clarke」
〇Keith Hudson「Playing It Cool & Playing It Right」
〇Love Joys「Lovers Rock Reggae Style」
〇Love Joys「Reggae Vibes」
〇Meditations「I Love Jah」
〇Milton Henry「Who Do You Think I Am」
〇Sugar Minott「Dance Hall Showcase Vol.II」
〇Sugar Minott「Wicked Ago Feel It」
〇Various (Wackies)「Reggae Goodies Vol.1 & 2」
〇Jerry Harris「I'm For You...I'm For Me !」
〇Wayne Jarrett「Showcase Vol.1」
〇Junior Delahaye「Junior Delahaye Showcase」
〇Horace Andy, Naggo Morris, Wayne Jarrett「Horace Andy Meets Naggo Morris & Wayne Jarrett - Mini Showcase」
〇Jerry Johnson「For All Seasons」