今回はThe Ethiopiansのアルバム

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「Engine 54」です。

The Ethiopiansはロックステディの時代から活躍する
ヴォーカル・グループです。

Ethiopians (エチオピアンズ)

今回のアルバムは1968年にリリースされたアルバムで、
彼らのロックステディ時代の代表作「Train To Skaville」
や「Train To Glory」などが収められたアルバムです。

一応ロックステディという音楽についても説明しておきます。
一言でいうとロックステディはレゲエの前身の音楽です。
ジャマイカの音楽史を見ていくと、50年代ぐらいまでは
労働歌として発展したジャマイカのフォーク・ソングである
「メント」という音楽が聴かれていたのですが、50年代の
後半になるとアメリカのブルースやR&Bなどに影響を受けた
「スカ」が誕生します。
そのスカがイギリスに輸出されて、労働階級の若者に輸入元の
レーベルの名前から「Blue Beat」として人気になるんですね。
それをきっかけに大した輸出品を持たないジャマイカでは、
音楽産業が盛んになるんですね。
そしてスカは管楽器を主体としたジャズのビッグ・バンド
みたいな形式になっていくんですね。

そのスカの後に誕生したのがこの「ロックステディ」という
ちょっと甘いメロディを持った音楽形式です。
残念な事にこのロックステディという音楽形式は、66年から
68年というわずか3年間しか続きませんでした。
そのロックステディの中心人物だったJackie Mittooや
Lyn Taittなどがカナダ移住を決めてしまった為だと言われて
います。

その後の69年あたりからはいよいよ世界を席巻する事になる
「レゲエ」が誕生するんですね。
レゲエという音楽を調べてみると解りますが、70年代に
レゲエが世界的にブレイクするまでには、60年代にスカや
ロックステディという長く下地を築いていた時代があるん
ですね。
それゆえのレゲエのブレイクだったと思います。

全10曲で収録時間は30分32秒。

ミュージシャンについては以下の記述があります。

Produced by Leonard Dillon for Wirl Records
Recording Engineer: Lynford Anderson
Recorded at West Indies Studios Ltd.

となっています。

残念ながらバック・ミュージシャンなどの表記はありません。

プロデュースに名前のあるLeonard DillonはThe Ethiopiansの
中心だったヴォーカリストで、彼を中心にメンバーの入れ替わり
がありながらグループを続けていたようです。
今回のアルバムのジャケットでも機関車の先頭でポーズをとる
二人の人物が写っていますが、デュオで活躍する期間が長かった
ようです。
(デュオのもう一人の人物については、レゲエレコード・コムの
このグループの紹介文章などを読みましたが、イマイチよく解り
ませんでした。)

さて今回のアルバムですが、甘いメロディとレゲエやスカより
少しスローなリズムがいかにもロックステディという香りがして、
すごくこの時代を感じるなかなか良いアルバムだと思います。
今回のアルバムにも「My Love」や「Unchanged Love」といった
曲が収められているように、このロックステディの時代には
甘いラヴ・ソングが数多く作られているんですよね。
このロックステディはじめレゲエ以前のジャマイカの音楽には
アメリカ音楽に対する憧れや影響が色濃く見えるんですね。
ところがこの後のレゲエの時代になるとジャマイカの音楽は、
アメリカに対する幻想を捨てて、自己のアイデンティティに
根差したアフリカ回帰思想を武器に快進撃を始めるんですね。
甘い幻想を捨てた分、レゲエという音楽はちょっぴりビターな
音楽になります。

ただそれ以前のこのロックステディの時代の音楽は、どこまでも
スウィートなメロディでそれがまた素晴らしいんですね。
アメリカに対するジャマイカの「片想い」は、結局は実らない
「恋」だったのかもしれません…。
それでもその時代の輝きは、今も私達を魅了するんですね(笑)。
やっぱりこのロックステディのサウンドは、この時代だからこそ
生まれたものであり、この時代だからこそ聞けた音だったん
ですね。
その時代に生きたThe Ethiopiansのサウンドには、やっぱり
その時代独特の輝きがあります。

どの曲も独特のスウィートさがあり素晴らしいですが、やっぱり
その中でも4曲目「Train To Skaville」は、のちのレゲエの
時代のなってもたびたび使われている重要曲のひとつです。
よく聴くと独特のリズムがあるんですね。
こうした独特のリズムがこのロックステディの時代になると、
徐々に生まれ始めているんですね。
徐々に時代が胎動を始めた、それがこのロックステディの
時代なのかもしれません。

ちなみにジャケットには機関車が写っていますが、まだこの
60年代の終わり頃は、ジャマイカでは交通手段として鉄道が
使われていたようです。
今回のアルバムに「Engine 54」や「Train To Skaville」、
「Train To Glory」など、鉄道関係のタイトルがついていますが、
機関車が走っていたんですね。
その後88年に旅客鉄道は廃止されたそうです。
その後2011年頃に鉄道復活の噂はあったようなんですが、
どうも復活はしていないようです。

田舎から鉄道で上京してくる、そういう世界があったのかも
しれませんね。

ロックステディの好きな人はぜひ押さえておきたいアルバム
じゃないかと思います。
レゲエを深く知りたいという人にもおススメできるアルバムです。

機会があれば聴いてみてください。

Leonard Dillon (The Ethiopians): Train to Skaville. Nowa Reggae Festival, 10th July 2009.



○アーティスト: The Ethiopians
○アルバム: Engine 54
○レーベル: Trojan Records
○フォーマット: CD LP
○オリジナル・アルバム制作年: 1968

○The Ethiopians「Engine 54」曲目
1. Engine 54
2. My Love
3. You Got The Dough
4. Train To Skaville
5. Give Me Your Love
6. Train To Glory
7. Long Time Now
8. Woman's World
9. Unchanged Love
10. Come On Now