今回はThe Ethiopiansのアルバム

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「Engine 54」です。

The Ethiopiansはロックステディの時代
から活躍するヴォーカル・グループです。

ネットのDiscogsには彼らについて次の
ように書かれています。

The Ethiopians are a ska, rocksteady, and reggae vocal group, founded by Leonard Dillon, Stephen Taylor and Aston Morris.
The group started out recording for Clement 'Coxsone' Dodd in 1966.
Dillon had previously released some mento songs under the name Jack Sparrow (2).
Around late 1966, Morris left the Ethiopians.
Having left Dodd, the Ethiopians started recording at Dynamic Studios for the WIRL label, releasing the ska classic song
"Train to Skaville", which was their first success.
In 1968 they recorded the song "Everything Crash", their first big hit.

《The EthiopiansはLeonard Dillonと
Stephen Taylor、Aston Morrisによって
結成されたロックステディとレゲエの
ヴォーカル・グループです。
グループは1966年にClement
'Coxsone' Doddの元でレコーディング
し、キャリアをスタートさせました。
Dillonはそれ以前にJack Sparrowという
名前で、何曲かのメント曲をリリース
していました。
1966年後半にMorrisは
The Ethiopiansを脱退しました。
Doddの元を去り、The Ethiopiansは
WIRLレーベルの為にDynamic Studiosで
レコーディングをして、スカの古典曲
「Train To Skaville」をリリースし、
それが彼らの最初の成功につながりま
した。
1968年に「Everything Crash」を録音
し、それが彼らの最初の大ヒット曲となり
ました。》

60年代後半のロックステディの時代から
70年代のルーツ・レゲエの時代に活躍
したのがこのThe Ethiopiansという
グループです。
グループは3人や2人と人数を変えて活躍
し、1975年にStephen Taylorが事故で
亡くなって以降はLeonard Dillon1人が
このThe Ethiopiansを名乗っていたらしい
です。

ネットのDiscogsによると、5枚ぐらいの
アルバムと、189枚ぐらいのシングル盤
を残しているのが、このThe Ethiopiansと
いうグループです。

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The Ethiopians ‎– Slave Call (1977)

アーティスト特集 Ethiopians (エチオピアンズ)

ロックステディという音楽についても説明
しておきます。
ロックステディはレゲエの前身の音楽
です。

ジャマイカの音楽史を見ていくと、50年
代ぐらいまでは労働歌として発展した
ジャマイカのフォーク・ソングである
「メント」という音楽が聴かれていたの
ですが、50年代の後半になるとアメリカ
のブルースやR&Bなどに影響を受けた
「スカ」が誕生します。
そのスカがイギリスに輸出されて、労働
輸入元のレーベルの名前から「Blue Beat」
と呼ばれて、階級の若者に人気になるん
ですね。

そのスカの後に誕生したのがこの
「ロックステディ」という、スローな
リズムと甘いメロディを持った音楽です。
1966年から68年というわずか3年間
だけ流行した音楽で、その後の60年代
終わり頃に誕生したのがレゲエなんです
ね。
レゲエという音楽を調べてみると解ります
が、70年代にレゲエが世界的にブレイク
するまでには、60年代にスカやロック
ステディという音楽の時代があり、その
下地を築いていた時代があったからこそ、
レゲエのブレイクがあったんですね。

ロックステディ - Wikipedia

今回のアルバムは1968年にジャマイカ
のWIRLというレーベルからリリースされた
The Ethiopiansのファースト・アルバム
です。

彼らのヒット曲「Train To Skaville」を
はじめとして、甘い香りのするロック
ステディの彼らのヒット曲が収められた
アルバムで、The Ethiopiansのこの時代の
活躍ぶりがうかがえるアルバムとなって
います。

手に入れたのはTrojan Recordsから
リリースされたCD(新盤)でした。
         
全10曲で収録時間は30分32秒。

詳細なミュージシャンの表記はありません。

Produced by Leonard Dillon for Wirl Records
Recording Engineer: Lynford Anderson
Recorded at West Indies Studios Ltd.

という記述があります。

プロデュースはThe Ethiopiansの
メンバーの一人Leonard Dillonで、
レコーディング・エンジニアはLynford
Anderson、レコーディングはWest Indies
Studiosで行われています。

プロデュースに名前のあるLeonard Dillon
はThe Ethiopiansの中心だった
ヴォーカリストで、彼を中心にメンバーの
入れ替わりがありながらグループを続けて
いたようです。
今回のアルバムのジャケットでも機関車の
先頭でポーズをとる2人の人物が写って
いますが、デュオで活躍する期間が
長かったようです。
(デュオのもう一人の人物については、
イマイチよく解りませんでした。)

さて今回のアルバムですが、甘いメロディ
と少しスローなリズムがいかにもロック
ステディという香りがして、すごくこの
ロックステディの時代を感じる、なかなか
良いアルバムだと思います。

今回のアルバムにも「My Love」や
「Unchanged Love」といった曲が収められ
ているように、このロックステディの時代
には甘いラヴ・ソングが数多く作られて
いるんですね。
このロックステディはじめレゲエ以前の
ジャマイカの音楽には、当時のアメリカ
音楽に対する強い憧憬の念が感じられ
ます。
ところがこの後のレゲエの時代になると
ジャマイカの音楽は、このアメリカに対
する幻想を捨てて自己のアイデンティティ
(自己同一性)に根差した、アフリカ思考
の音楽でに快進撃を始めるんですね。
甘い幻想を捨てた分、レゲエという音楽は
ちょっぴりビターなテイストになります。

ただそれ以前のこのロックステディの時代
の音楽は、どこまでもスウィートで
ロマンチックなメロディで、それがまた
素晴らしいんですね。
アメリカに対するジャマイカの「片想い」
は、結局は実らない「恋」だったのかも
しれませんが…。
それでもこの時代のロックステディの輝き
は、今も私達を魅了するものがあります。
この時代に生きたThe Ethiopiansの
サウンドには、やっぱりこの時代独特の
輝きがあります。

その中でも4曲目「Train To Skaville」
は、のちのレゲエの時代のなっても
たびたび再演される彼らの重要曲のひとつ
です。
この曲にはよく聴くと独特のリズムがある
んですね。
こうしたジャマイカ人独特のリズムが、
このロックステディの時代になると徐々に
生まれ始めているんですね。
少しずつ時代が胎動を始めた、それがこの
ロックステディの時代の魅力なのかもしれ
ません。

ちなみに余談ですが、ジャケットには
機関車が写っていますがまだこの60年代
の終わり頃までは、ジャマイカでは交通
手段として鉄道が使われていたようです。
今回のアルバムに「Engine 54」や
「Train To Skaville」、「Train To
Glory」など、鉄道関係のタイトルが付いて
いますが、この頃はまだジャマイカで
機関車が走っていたんですね。
その後88年に旅客鉄道は廃止されたそう
です。
その後2011年頃に鉄道復活の噂は
あったようですが、どうも復活はして
いないようです。

田舎から鉄道で上京してくる、当時の
ジャマイカではそういう世界があったん
ですね(笑)。

1曲目は表題曲の「Engine 54」です。
汽笛音のエフェクトから、歯切れの良い
ピアノとギター、サックスのメロディ、
コーラス・ワークも楽し気な
The Ethiopiansのヴォーカル…。

The Ethiopians - Engine 54


2曲目は「My Love」です。
ギターのユッタリしたメロディに乗せた
語り、ファルセットなコーラスの
ヴォーカル・ワーク…。
いかにもロックステディといった、甘い
空気感の1曲。

3曲目は「You Got The Dough」です。
ロックステディらしい心地良いギターを
中心としたバックに、ファルセットな
コーラスと歌い込むようなヴォーカル。

4曲目は「Train To Skaville」です。
書いたように彼らのヒット曲。
ギターのメロディに「チィキチィキ…」と
いうスキャット、汽笛音を模した
ファルセットなコーラス、合間良く入る
ホーンが良い味を出している曲です。

TRAIN TO SKAVILLE - THE ETHIOPIANS


5曲目は「Give Me Your Love」です。
ホーンとピアノのメロディに乗せた、
いかにもロックステディといった甘い
ヴォーカルとコーラス・ワークの曲です。

The Ethiopians - Give me your love


6曲目は「Train To Glory」です。
ホーンとギターのメロディに「ヒュ~~」
という何かが打ちあがるような擬音、
ファルセットなヴォーカルにコーラス・
ワークが楽しい1曲。

The Ethiopians - Train to glory


7曲目は「Long Time Now」です。
ロックステディらしいギターと手拍子、
歯切れの居ヴォーカルにファルセットな
コーラス…。

8曲目は「Woman's World」です。
明るいホーンのメロディに、ファルセット
なコーラスと語るようなヴォーカル…。

9曲目は「Unchanged Love」です。
スウィートなホーンとギターのメロディ
に、心を込めたファルセットなヴォーカル
にコーラス…。
ちょっと語るような歌い口も魅力。

The Ethiopians - Unchanged love


10曲目は「Come On Now」です。
ロックステディらしい硬いドラミングに
ホーンとピアノのメロディ、感情を乗せた
ヴォーカル…。

The Ethiopians-Come On Now


ざっと追いかけてきましたが、ロック
ステディらしいスローで甘いメロディの曲
から、ちょっと明るいとボケた曲まで、
このロックステディの時代の匂いが濃厚な
アルバムで、内容は悪くないと思います。

またうまくファルセットを使いこなす
The Ethiopiansのコーラス・ワークも
見事で、このグループが長く活躍出来たの
もこのヴォーカル・ワークがあったから
なんですね。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: The Ethiopians
○アルバム: Engine 54
○レーベル: Trojan Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1968

○The Ethiopians「Engine 54」曲目
1. Engine 54
2. My Love
3. You Got The Dough
4. Train To Skaville
5. Give Me Your Love
6. Train To Glory
7. Long Time Now
8. Woman's World
9. Unchanged Love
10. Come On Now

〈2018年04月28日修正〉

●今までアップしたEthiopians関連の記事
〇Ethiopians「Slave Call」