今回はJohnny Osbourneのアルバム

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「Truths And Rights」です。

Johnny Osbourne(本名:Errol Osbourne)
は60年代のロックステディの時代から
80年代のデジタルのダンスホール・
レゲエの時代まで長く活躍したシンガー
です。
ロックステディの時代にはThe Sensations
のメンバーとして「Come Back Darling」
などのヒット曲を残して活躍するのです
が、70年にデビュー・アルバム
「Come Back Darling」をリリースした
その日にカナダに移住してしまい、カナダ
で音楽活動をした後に、70年代の後半に
再びジャマイカに戻って来て音楽活動を
再開したいう人です。

その後は79年にStudio Oneからアルバム
「Truths And Rights」を出して復活。
ベテランながらダンスホール・レゲエから
デジタルのダンスホール・レゲエの時代
にも対応し、長く活躍を続けたのがこの
Johnny Osbourneという人なんですね。

ネットのDiscogsによると、共演盤を
含めて25枚ぐらいのアルバムと、
482枚ぐらいのシングル盤を残して
います。

アーティスト特集 Johnny Osbourne (ジョニー・オズボーン)

今回のアルバムは1979年にジャマイカ
のStudio Oneレーベルからリリースされた
彼のソロ・アルバムです。

スカからロックステディ、初期レゲエの頃
はジャマイカの音楽界をけん引していた
Studio Oneですが、この70年代後半に
なるとChannel Oneなど新興勢力の
レーベルに押され、かなり勢いを失って
いたようです。
そのStudio Oneとジャマイカの音楽界での
再びの成功を望んでいたJohnny Osbourne
が組んで作ったのが今回のアルバムなん
ですね。
表題曲の「Truths And Rights」をはじめ、
Studio Oneがそれまでに撮り貯めた豊富
な音源を再利用して作られたのが今回の
アルバムで、このアルバムがヒットした事
でJohnny Osbourneは再びレゲエの第一線
のシンガーとして脚光を浴びるんですね。

手に入れたのは92年にHeartbeat
RecordsからリリースされたCDでした。

全10曲で収録時間は30分34秒。

詳細なミュージシャンの表記はありま
せん。

All songs written by Johnny Osbourne and C.S. Dodd
Recorded at Jamaica Recording Studio, Kingston, Jamaica

Engineered by C.S. Dodd
Produced by C.S. Dodd
Design by Nancy Given

という記述があります。

すべての作曲はJohnny OsbourneとStudio
Oneの主催者C.S. Doddで、レコーディング
はジャマイカのJamaica Recording Studio
で行われています。
エンジニアはC.S. Doddで、プロデュース
もC.S. Doddが担当しています。

後述しますがこの時代のStudio Oneは
かなり勢いを失っていて、主催者の
C.S. Doddもかなり情熱を失っていて、
スタジオの仕事をSylvan Morrisに任せて
いたと言われてます。
おそらく今回のアルバムは、ロック
ステディから初期レゲエの頃に
Studio Oneで活躍したバック・バンド
Sound DimensionsやSoul Defendersなど
の古い音源をSylvan Morrisが手直し
して使用したアルバムだと思われます。

ジャケット・デザインはNancy Givenが
担当しています。

さて今回のアルバムですが、Studio One
のちょっと懐かしめのサウンドに、
Johnny Osbourneの大人のヴォーカルが
乗ったアルバムで、内容は悪くないと思い
ます。

まずはこの当時のStudio Oneの状況がどう
であったのか、簡単に説明しておきます。

スカ→ロックステディ→レゲエと
ジャマイカの音楽界をリードして来た
Studio Oneですが、70年代も半ばを
過ぎるとChannel Oneなど他のレーベルの
台頭によって、その勢いにも陰りが見え
始めます。
その要因のひとつが主催者C.S. Doddの
金払いの悪さだと言われています。
スカ→ロックステディ→初期レゲエの頃
までは、ジャマイカではこのStudio Oneと
Duke Reidの主催するTrssure Isleが2大
レーベルとして君臨していたんですね。
ところがレゲエが世界的に認められて来る
と、他のレーベルも力を付けて競争がより
激しくなります。
そういう状況で金払いの悪いStudio One
は、徐々にミュージシャンから見限られて
行くんですね。
70年代半ば以降はそうした状況に
C.S. Doddもすっかり情熱を失って、
エンジニアのSylvan Morrisにほとんどの
仕事を任せていたと言われています。

ただ「レゲエのモータウン」とまで言わ
れたStudio Oneには、それまでに録り貯め
したたくさんの素晴らしい音源があったん
ですね。
Sylvan Morrisはその音源を使って
Dub Specialist名で素晴らしいダブを
作ったり、多くのミュージシャンの
プロデュースをしているんですね。
(プロデューサー名はC.S. Doddになって
いても、実際にはSylvan Morrisが
プロデュースした音源がけっこうあるよう
です。)

レーベル特集 Studio One (スタジオ・ワン)

今回のアルバムもそうしたアルバムの
1枚で、バックの音源はロックステディ
から初期レゲエの頃にStudio Oneで活躍
したバック・バンドSound Dimensionsや
Soul Defendersなどの音源を、Sylvan
Morrisがリメイクした音源が使われている
ようです。
70年代後半のアルバムなのに、どこか
懐かしい楽曲が並んでいるのはその為
なんですね。

例えば表題曲の「Truths And Rights」
は、ロックステディの時代だった
1968年のAl Campbell & Thrillers
の「Take A Ride」という曲のバックの
音源が使われています。
10年以上前の曲をリメイクして使って
いる訳ですが、今聴いてもどこか哀愁を
秘めたメロディと、Johnny Osbourneの
大人の味わいの渋いヴォーカルが合わ
さって、とても魅力的な曲に仕上がって
います。

「レゲエのモータウン」と言われた
Studio Oneの音源は1曲1曲が丁寧に
作られていて、その為こうした再利用が
出来たんですね。
この時代は録音技術が進んだ時代だった
ので、トラック数の違いなどから多少音が
平板に感じてしまう部分もありますが、
そこは後からオーヴァー・ダブなどを
施してなんとかカヴァーしているよう
です。
ある意味エンジニアのSylvan Morrisの
手腕が冴える音作りなんですね。

またJohnny Osbourneはこのアルバムが
ジャマイカでの「再デビュー盤」となる訳
ですが、シッカリした実力者ぶりを発揮
していて、見事な歌声を披露しています。
レゲエレコード・コムなどの彼の履歴を
見ると、カナダではThe Ishan Peopleと
いうグループに所属して歌っていたよう
ですが、そうした多様性のある経験が
生きたのか、このアルバムをきっかけに
レゲエのヴォーカリストとして長く活躍
する事になるんですね。

6曲目「We Need Love」はそうした多様性
のある経験が反映した楽曲で、オリジナル
はソウル・グループThe Spinnersのヒット
曲「I'll Be Around」ですが、本家に負け
ない粘りのあるソウルフルな歌い方で
輝きを放っています。
どんな曲にでも自分のオリジナルで歌い
こなす実力が身に付いており、その実力で
後の80年代のアーリー・ダンスホール
からデジタルのダンスホールの時代を、
常にトップ・ランナーとして走り続ける事
になるんですね。

1曲目は「Truth And Rights」です。
リディムはAl Campbell & Thrillersの
「Take A Ride」。
心地良いドラミングから浮遊感のある
キーボードのメロディ、ジワっと入って
来るJohnny Osbourneのヴォーカルに
コーラス…。
とても心地良いグルーヴ感のある曲です。

Johnny Osbourne "Truth & Rights"


リズム特集 Take A Ride/Truth & Rights (テイク・ア・ライド/トゥルース・アンド・ライツ)

2曲目は「Children Are Crying」です。
この曲はリディムが解りませんでした。
ピアノと鳴くギターのメロディに、
ちょっとエコーのかかったJohnny
Osbourneのヴォーカルにコーラス…。
レゲエには珍しい鳴くギターが、印象的
な曲です。

Johnny Osbourne - Children are crying


3曲目は「Can't Buy Love」です。
リディムはSoul Vendorsのロックステディ
のヒット曲「Swing Easy」です。
ギターとホーンのメロディに、Johnny
Osbourneの滑らかなヴォーカル。

リズム特集 Swing Easy (スウィング・イージー)

4曲目は「Jah Promise」です。
リディムはヴォーカル・グループ
Chosen Fewの「Don't Break Your
Promise」。
粘りのあるロックステディらしいホーンと
ギターのメロディに、感情を乗せたJohnny
Osbourneのヴォーカルとコーラス。

Johnnie Osbourne - Jah promise


5曲目は「Nah Skin Up」です。
リディムはBasil Daleyの「Hold Me
Baby」。
明るいホーンとギターのロックステディ
らしいメロディに、Johnnie Osbourneの
男臭いヴォーカルにコーラス…。

Johnny Osbourne - Nah Skin Up


6曲目は「We Need Love」です。
リディムはソウル・グループThe Spinners
のヒット曲「I'll Be Around」。
レゲエではこの曲をOtis Gayleが、Studio
Oneでカヴァーしているんですね。
つまりカヴァー曲のカヴァーなんです
ね(笑)。
浮遊感のあるキーボードのメロディに、
ソウルフルなJohnny Osbourneの
ヴォーカルが冴える曲です。

Johnny Osbourne - We Need Love


7曲目は「Eternal Peace」です。
この曲はRiddimguideではJohnny Osbourne
の曲となっていましたが、Irvin Brownの
「Run Come」(1970年)がオリジナル・
リディムのようです。
ギターの刻むようなメロディに心地良い
コーラス、ユッタリとしたテンポの
Johnny Osbourneのヴォーカル…。

8曲目は「Sing Jah Stylee」です。
リディムはAlexander Henryの「Please
Be True」。
明るいホーン・セクションのメロディに、
ちょっと力の抜けたJohnny Osbourneの
ヴォーカルが良いグルーヴ感を醸し出して
いる曲です。

Johnny Osbourne - Sing-Jah Stylee


9曲目は「Love Jah So」です。
リディムはAlton Ellis の「Pearls」。
刻むギターと浮遊感のあるキーボードに
乗せた、Johnny Osbourneの粘り気のある
ヴォーカルがグッド。

10曲目は「Let Me In」です。
リディムはThe Heptonesの「I Love
You」。
ギターと浮遊感のあるキーボードに
コーラス、ジックリと歌い込むような
Johnny Osbourneのヴォーカル…。

ざっと追いかけてきましたが、やはり
Johnny Osbourneというヴォーカリストの
歌声は他に無い魅力があり、その歌声を
武器に彼は長く活躍する事になるんです
ね。

またこの時代にSylvan MorrisのStudio
Oneに残した音源は、苦肉の策であった
とはいえ古くて新しいとても面白い音源
で、今でもレゲエの宝物になっている音源
なんですね。

このJohnny OsbourneとStudio Oneの
出会いは、彼の再出発として素晴らしい
出会いであった事は間違いありません。

機会があればぜひ聴いてみてください。


○アーティスト: Johnny Osbourne
○アルバム: Truths And Rights
○レーベル: Heartbeat Records
○フォーマット: CD
○オリジナル・アルバム制作年: 1979

○Johnny Osbourne「Truths And Rights」曲目
1. Truths And Rights
2. Children Are Crying
3. Can't Buy Love
4. Jah Promise
5. Nah Skin Up
6. We Need Love
7. Eternal Peace
8. Sing Jah Stylee
9. Love Jah So
10. Let Me In

〈2018年04月11日修正〉

●今までアップしたJohnny Osbourne関連の記事
〇Johnnie Osbourne (Johnny Osbourne)「Yo-Yo」
〇Johnny Osbourne「Come Back Darling Meet Warrior」
〇Johnny Osbourne「Dancing Time」
〇Johnny Osbourne「Smiling Faces」
〇Johnny Osbourne「Nightfall」